[3700] 酔狂の先の新しい縁

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《絶対に続編希望10000「いいね!」》

■ネタを訪ねて三万歩[111]
 酔狂の先の新しい縁
 海津ヨシノリ

■ショート・ストーリーのKUNI[154]
 試作品
 ヤマシタクニコ

■3Dプリンター奮闘記[37]
 そろそろワークショップ始めようかと
 織田隆治


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■ネタを訪ねて三万歩[111]
酔狂の先の新しい縁

海津ヨシノリ
< https://bn.dgcr.com/archives/20140529140300.html
>
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ここのところ教え子達との飲み会が続いて、嬉しい悲鳴を上げていました。それぞれが、業界のさまざまな方面で活躍している様子は本当に嬉しいことです。大切なのは人との繋がり。つまりは出会いですね。出会わなければどうにもならないわけです。

ところで、私は面識がなければ「忍ぶ会」やら「励ます会」の類に参加するのは失礼だと思い続けていましたが、世の中ではそんなことはないみたいですね。

「忍ぶ会」であれば本人は亡くなっているわけですから、交友関係がどの程度であったかなど分らないわけです。結局、厚顔無礼な方達はそういった場で積極的に名刺を配りまくって顔を売るわけですね。私にはできないことです。私は本当に親交のあった方でなければ動く気がしませんし、実際動くことはありません。

愚直すぎると言われたことがありますが、本人は至って普通だと思っています。とにかく嘘ついてまで取り繕いたくないですからね。

そういえばこんな事がありました。8年ほど前に、多摩美出身の某大先輩から声を掛けられて仕事を一緒にやっていたことがありました。要するにPCでの処理が苦手である故の、アシスタント的な対応だったわけです。

それでもかなりの高齢者でしたので、愚直に対応していました。同窓会で知り合ったのが運の尽きだったのかもしれません。やはり先輩から声を掛けられてしまうと断りにくいですからね。

そんなある日、もう一人のスタッフを加えるので打合せをしたいということで、その方と会うために田園調布の喫茶店に集まることになりました。新しいスタッフとして現れたのは女性でした。

某大先輩とは既に顔見知りのようで、ひとしきり世間話をしたところで仕事の本題に入りました。暫くは勝手が読めない私がボーとしていると、どう考えても「あんた何を言っているの?」という傍若無人な指示をその女性に対して言い始めたのです。

流石にその女性も「それならば私はお断りします」という流れになった時、いきなり大先輩はその方に対して「あんたはそんなことだからいつもダメなんだよ!」とキレてしまったのです。

そしてその頃には全体の流れが理解できていた私は、衝動的に大先輩に対して「あんた何を馬鹿なこといっているの?」というような言葉を気が付いたら発していました。そして、この大先輩との関係は切れました。

思えば大手の仕事の尻ぬぐいを随分させられていたわけですから、タイミング的には良かったのかも知れません。要するに自分の自由勝手に使える人をほしがっていたようです。自分では何も出来ないが故に。

こうして大先輩とは疎遠となり、その女性とは年賀状程度のお付き合いが続いたのですが、2年前に始めたfacebookで繋がり、今年に入ってグループ展を行うというので出掛けてみたら、なんと数名の別の友人と間接的に繋がっているコトが判明してビックリ仰天。

それはちょっとしたタイミングの悪戯からでした。一通り展示物を鑑賞し、本人とも雑談をした後に芳名帳に名前を書こうとしたところ、そのページの上に近所に住む同業者の名前があるではありませんか。

しかも、彼は同業者ですが仕事やネットとは無縁の、プライベートな交友関係から生まれた友人であり、25年来の付き合いです。グループ展に出掛けるタイミングが少しずれていたら、目にすることはなかったわけです。確認してみたところ、彼はそのグループ展を主催していた協会の幹部の方と知り合いだったようです。

そして、許可を取り作品を撮影してfacebookにアップしたところ、別の友人が気になってグループ展に出掛け、なんと展示をしていた女性と仕事で間接的な接点があることが判明しました。

私が某大先輩を立てて、怒らずに喫茶店での打合せを終了していたら、こんな繋がりは発生しなかったわけです。そもそもその某大先輩と出会った多摩美術大学の同窓会も、ほとんど酔狂で参加したようなモノでした。

その酔狂も非常勤講師をしていたことで生まれたものであり、非常勤講師もちょっとした酔狂がスイッチとなって発生した仕事でした。いや、酔狂という縁ですね。色々な縁の繋がりが複雑に組み合わさった先にある、新しい縁という流れです。そして、それは今も流れ続けています。

そんなことを思っていると、別の不思議な体験を思い出しました。今年2月に行われた中学校の同期会へ、都合が付かず二次会から参加した私は、隣のクラスの元女生徒Aさんと何故か意気投合し、ほとんどサシで話し込んでしまったのです。

その後の三次会では、別の元女生徒達と盛り上がり帰路についたわけですが、その後Aさんからfacebookの友達申請があり、盛り上がった勢いで数名の同期生とまたまた飲み会を決行。気が付くと旧知の仲になっていました。

同期生なのだから当たり前と思われる方がほとんどだと思いますが、彼女とは中学3年間に一度も会話をしたことがなかったのです。恐らく廊下ですれ違う程度の関わりしかなかったはずです。とにかく記憶がほとんどないのです。

もちろん会話をしたことがなくても、記憶に残っている人もいます。でも、彼女の記憶は大変失礼ながら私にはありませんでした。聞けば彼女も同じだったそうです。ですから後日、数人で行った飲み会の参加者のほとんども、同じように中学時代にはまったく会話のなかった同期生だったのです。本当に不思議な縁です。

とにかくそんな不思議な繋がりがfacebook上で発生し、気が付けばまだ会ったこともない多くの友人が彼女を通じて出来てしまいました。もちろん、それをもって友人と言うべきかについては難しいかも知れませんが、相性のようなモノはなんとなく伝わってきます。

私達の両親や祖父母の時代であれば、仕事関係の繋がりが一番で、それ以外は基本的に近所の人達だけでした。今は国境を越え、会ったこともない外国人とコミュニケーションを交わすことも珍しくもありません。そんな交友関係を昔の判断だけで決め付けることは、ナンセンス以外のなにものでもないですね。

考えてみれば、良好だと思っていた交友関係にもかかわらず、突然疎遠になってしまう場合も少なくありません。理由も解らず悩んでしまうことも多々ありましたが、それも縁と割り切るようになりました。原因を突き詰める暇があれば、新しい縁を楽しんだ方が賢明だと悟ったからです。

誤解や疎遠も縁の内というわけです。そして、その縁が創作に大きな影響を与えることは、改めて私がここで言うほどのことではなく、当たり前のことです。

そう割り切ると、習慣的に続けていたPCソフトのアップデートも案外割り切れてしまいますね。

それほど使い込んでいるわけではないのに、毎回律儀にアップデートを繰り返していたソフトが幾つかあるのですが、考えてみれば別に今のままで困ることは一切無いと気が付いてしまえば、アップデートはどうでも良くなってしまいました。

もちろん、この先永遠にアップデートをしないという意味ではありません。ひとつおき、あるいは2つおきでも構わないという判断です。メーカーさん、ごめんなさい。

ところで、お話はココで終わるはずだったのですが、冒頭文章に繋がることに気が付きました。厚顔無礼と言われても、縁を見つけるチャンスを優先する集まりに出席することは必要悪じゃないですか。この場合、バレバレの金銭目当ての縁捜しです。

そんな疑問が「ふっ」と湧いてきたわけです。でも私は今まで通りに愚直に行動するだけです。自分の行動の先にある縁を大切にしたいからです。もっとストレートに言ってしまえば、金儲けのキッカケとしてしか縁を見る事が出来ない人にはなりたくありません。そうでなければ、縁で繋がっている人達に対してとても失礼ですからね。

■今月のお気に入りミュージックと映画

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[Soapbox]by Crookes in 2014(U.K)

イギリスのシェフィールドで、2008年に結成されたインディーポップ、ネオアコ及びロックバンドである、クルックスのサードアルバムに収められたタイトル曲。ちなみに既にインディーズバンドではありません。

ファーストアルバムに戻ったような楽曲も、じっくり聞くとモダンな流れでウットリしてしまいます。ケーブルで電気的に処理する録音が一般的であるロックは、どれもこれも楽曲が尖りすぎているなかにあって、わざわざ教会にてマイクによるアナログ録音を行って作成されているので、とても暖かみのある楽曲に仕上がっています。何よりテクニックがあるから為し得る処理ですね。
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[R.I.P.D.(Rest In Peace Department)] by Robert Schwentke in 2013
(U.S.A)

邦題「ゴースト・エージェントR.I.P.D.」。殉職したライアン・レイノルズ演ずる警官"ニック"が、R.I.P.D.(Rest In Peace Department 安らかに眠れ捜査局)にスカウトされ、ジェフ・ブリッジス演じるベテラン・エージェント"ロイ"と組んだ彼は、死後も現世にとどまり悪事を働く悪霊たちから世界を守る任務に就く……というお話。

とにかく「勇気ある追跡」のリメイク作品「トゥルー・グリット」で存在感を出したマーシャル・ルーベン・J・コグバーンを彷彿させるキャラクター(ただし、こちらはコメディー仕上げ)を演じるジェフ・ブリッジスと、グリーンランタンを演じたライアン・レイノルズの駆け引きが最高です。

更に一般の人間から見ると2人はマリサ・ミラー(ファッションモデル)とジェームズ・ホン(ブレードランナーのハンニバル・チュウ役)というズレまくりの設定もナイス。そしてラストのオチも。もう絶対に続編希望10000「いいね!」ですね。

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【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/
怪しいお菓子研究家

yoshinori@kaizu.com
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仕事部屋は風通しが悪い放熱地獄でなので、例年であればこの4月末からエアコンを使い始めるのですが、一昨年エアコン直撃で肩を傷めてしまい完治に一年半掛かってしまった経験から、エアコンが苦手になっています。

もともとあまり好きではなかったのですが、体中がベタベタになってしまうのは効率低下の元ですからね。省エネというわけではなく、今年は出来るだけエアコンを使わないようにするつもりです。

そこで小型の扇風機を購入し、窓を開けて風通しを良くする……という単純な処理でいきなり挫折。網戸が破れていたのです。修理をする為には窓周辺の荷物や本などを整理しなくてはなりません。

ということで、頑張って整理し、網戸も無事に張り替えました。そうしたら突然涼しくなってしまったのは、お約束の結末なのでしょうね。


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■ショート・ストーリーのKUNI[154]
試作品

ヤマシタクニコ
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5月のさわやかな朝、ハセガワくんは出社するなり部長の机に向かったが、部長は低気圧の接近を控えどんよりとした曇り空のような状態であった。

「部長、新製品の試作品ができました」
「おお、ハセガワくんか。新製品の試作品。試作品。試作品…はてなんだったかな」
「心が分析できる、心分析機です」

「ああそうだったかな。うーん。そんなものが売れるのかね。一度市場の反応を調査する必要があるな。売れそうにないものに予算を割くわけにはいかんからな」

「ごもっともです。ぼくもそう思います。これからさっそく行ってきます」

そういうわけで、ハセガワくんは心分析器の試作品を持って街に出た。街はいろんな人であふれている。

「えーっと、どうしようかな。そうだ、あの人がいい」

ハセガワくんはでぶでぶと太った体を青と黄色のまだらのシャツに包み、何かもの思いにふけっているようにも単にだらんとしてるだけのようにも見える男に近づいた。

「失礼ですが、何か迷っておられますか」

「おお、そうだとも。よくわかったな。実はおれはまだ朝飯を食べていないのだが、何を食べようかそれともいっそのこと朝飯抜きにしようかと悩んでいたんだ」

「やっぱりそうですか。ではこの心分析器を使ってみましょう。あなたが心の中で何を望んでいるかを調べることができます」

「ふうん。どうせよくアンケートにある○そう思う○思わない○どちらでもない、みたいな答えが出るんだろ」

「とんでもない。ぼくは常々あのような選択肢の設定が疑問でした。人間の心は二つや三つの選択肢にまとめられるほど単純なものではありません。本人も自覚がないまま同時にいろんなことを考えていたりします。そんな複雑な人間のこころを複雑なまま俯瞰できるのがこの心分析器」

「ふうん。めんどくさいことを言うやつだ。なんだかわからんが、まあやってみるか」

「ありがとうございます。ではこれをおでこにぴたりとくっつけまして…はい、これでだいじょうぶです…えーっと、あなたの心の分析結果は」

「出たか。おれの心はどうなってるんだ」

「そこのファミレスで朝定食を食べたい37%、ファミレスの3軒となりの牛丼屋で大盛りつゆだくを食べる29%、もう少し向こうの喫茶店で『ボリュームたっぷりモーニング』を食べる21%、コンビニで弁当を買って帰って家で食べる13%、となっております」

「え、朝飯抜きにする、というのがないじゃないか」

「そうですね。つまり、あなたはそのようなことは全然思ってらっしゃらないということになるかと」

「そ、そんなことはない、健康のために一食抜くのもいいかと思ってたはずだ!」

「うふふ。そんなことはありません。この分析器は優秀ですので。そもそもたまには一食抜くということができる人は、そんなに太っているはずがないと」

全部言い終わらないうちにバーン! とはりとばされ、ハセガワくんは隣町まで飛んでいった。

「あー、痛かった。なんで怒られるんだろうな。変なひとだよまったく。あ、向こうからやってくる眉根にしわを寄せた気難しそうな人に試してみよう。すいません、怪しいものではありません。ちょっとこの新製品を試していただきたいのですが」

「新製品? 心分析器? そんなものに何がわかるというのか。人間の心が機械で分析できれば、相撲取りも金魚売りも存在意義がなくなるというものだ」

「意味がわかりませんが、これをおでこにぴたりとくっつけるとこちらの機械にあなたが何を思っているかがわかるのです。ちょっと試させてもらっていいですか」

「ああ、やりたいならやってもいいが、自分の考えていることくらい自分でわかっておる。私はこの国の未来を案じておった。まったくもってこの数十年を振り返ってかんがみるに諸外国との」

「結果が出ました。前を歩いている脚のきれいな女性の顔を見てみたいものだ59%、そろそろ洗濯をしないと着替えがない、いやパンツはまだ一枚あったかなどうだったかな27%、昨日の晩に何を食べたか思い出せないが私もぼけてきたのだろうか7%、トイレットペーパー12ロール298円は安いが1巻き50メートルなんだよな5.5%、爪を切りたい1%、今の内閣の外交姿勢はいかがなものか0.5%」

「し、失礼な!」

バーンとはりとばされてハセガワくんはまた隣町にふっとんだ。

「あー、痛かった。なんでこんなことになるんだろう。いや、しかしめげていられない。せっかくの試作品だ」

さっさとめげたほうがいいのにめげないで、ハセガワくんは通りかかったサラリーマン風の男の心を強引に分析した。

「失礼します。あなたの心の分析結果が出ました。早くこの仕事を終えて飲みに行きたいもんだ90%、靴があわないので早く脱ぎたい7%、お尻かゆい3%」

「なななな何を言うか! すいません、社長、わわわわ私はそんなことは思っておりません! この男の言うことはでたらめです!」

よく見たらぱりっとしたスーツを着込んだいかにもな男と二人連れだったのに、それに気づいたときはバーンとはりとばされたあとだった。

ハセガワくんはさらにめげずに、ぶっとばされた街で分析を続け、またぶっとばされ、またぶっとばされ、いつしかぐるりとまわって自分の住む街に戻っていた。器用なものである。

「なんでどこに行っても理解されないのだろう。せっかくすばらしい発明だと思ったのに。と思ってふと見上げればここはぼくのアパートの前ではないか」

ハセガワくんは腰だとかひじだとか、あちこちの負傷箇所をさすりながら、自分の住む部屋の窓を見上げた。西日に焼けた安物のカーテンのかかる窓。すると驚いたことにそのカーテンがさっと引かれ、恋人が顔を出した。

「あら、いま勤務時間中じゃないの」恋人もハセガワくんに気づいて微笑んだ。

「うん。そうだけど、ちょっと近くに来たもんで。びっくりしたよ、君が来てるなんて」

部屋に入ると恋人はテーブルにひじをつき、アカツメクサで編んだ首飾りをもてあそびながらうつむいていた。

「どうしたんだい」
「なんでもないの。ただ」
「ただ?」
「あたし、自分の心がわからなくなったの」
「えっ」
「自分がハセガワくんのことをどう思っているかわからなくなったの」
「えっ」
「なんだかハセガワくんって変だし」
「えっ」
「ごめん。今日はだから、鍵を返しにきたの」
「はあ」
「じゃあ、そういうことで」
「はあ」
「どうしたの? 何か言いたいことあるの?」
「いや…その…あの」
「ん?」

「新製品の試作品をつくったんだけど…心の分析って…してほしくないよね」
恋人は黙って立ち上がり、玄関のドアをバーンと閉めて、行ってしまった。

翌日もさわやかな5月の朝はやってきたが、ハセガワくんの頭の中はまるでエルニーニョであったと、意味不明ながら言っておく。出社するなりハセガワくんは部長の席に歩み寄り、言った。

「すいません、部長。昨日の新製品は取り下げます」
「なんだ、そうか」
「ぼくの力不足でした。すいません」

「気にすることはないよ。でも、昨日は頭がどんよりしていて言いそびれたんだが、うちは高野豆腐のメーカーなのに心分析器とは変わったものをつくるもんだなと思ってたんだ、実は」

部長の言葉も、すごすごと自分の席に戻るハセガワくんには届いていないようだった。

【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
< http://midtan.net/
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< http://koo-yamashita.main.jp/wp/
>

私は図書館かどこかのカウンターの前にいるのだが、足下はなぜか丸太を半分に切ったような、かまぼこ状態の曲面が底になっているので絶えずスイングして落ち着かないことこのうえない、という夢をみた。はてどういう意味なんでしょうね、これ。


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■3Dプリンター奮闘記[37]
そろそろワークショップ始めようかと

織田隆治
< https://bn.dgcr.com/archives/20140529140100.html
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最近では、大型家電量販店でも3Dプリンターが普通に置かれるようになってきましたね〜。で、「売れてるの?」って思うんですよね。

あと、興売り場の人の知識ってどうなんだろ? 一般ユーザーに広げていく為には、そういった知識のある人を売り場にに配置するとかしないと、買う人もどう使っていいのかなんて分からないんじゃないかな〜とか思ったり。

で、買って来たりしても、しばらくちょっと使ってみて「なんだ、こんなもんか…」って終ってしまう人って、凄く多いんじゃないかなぁ。

ブログなんかで、「3Dプリンターカイマシタ!」で始まって、2〜3週間で更新が止まってしまっている……というブログが沢山あるとか…(´・_・`)

最近では、web上で多様なデータが配布されるようになってきて、色々と出力してみて、満足しちゃうんだろうか?

今の段階では、量販店で販売されている3Dプリンターは、熱で溶かして積層するタイプがメインなんだけど、あれって、結局仕上げはあまり良くないので、出力しただけのものって、そんなに面白いものは出来ないんですよね。

やっぱり後加工とか出来ないと、本当に使っている意味がなくなっちゃう。そういった、アフターまでやってるFabLabみたいな所ってるのかな?

3Dプリンターの取り扱いだけを指導したところで、後でどうやって使うか?な〜んて事をちゃんとワークとしてやって行く必要があるんじゃないのかな。

そうやって、いろいろと使う用途が増えるにつれて、3Dプリンターを使うメリットというか、使いこなす、って事に繋がっている気がしてます。

うちは、3Dプリンターで出力したものを、後加工して製品に仕上げたりする事が多くて、その方法とかノウハウを伝えて行く必要があるんじゃないかな……とか最近思ってきたりして、ワークショップ的なものも、そろそろ始めて行った方がいいんじゃないの? と、思う訳です、はい。

特に関西では、あんまりそこまで突っ込んだ事をしている所はあまりないよね。

そこで……事務所には7〜8人入るスペースはある。3Dプリンターも熱溶解型が一台、DLP型(UV硬化タイプ)が一台、レーザー彫刻機が一台あるしなぁ……。なんか、そういったワークショップ的セミナーをやらんかい! という声を頂くんですけどね…。

今、ある大学と専門学校で3Dプリンターについての授業をやらせて頂いているので、そこから抜粋して、ある程度の知識と技術を伝える事が可能。

でも、ここで問題が。仕事をしているブツによっては、守秘義務がバキバキに厳しいものが多くて、部外者であるセミナー参加者を、あまりスムーズに事務所に入れる事が出来ないって事情もあったりして。

そんなわけで、まだ踏み切れずにいるところです。もうちょっと事務所がちゃんと整理出来てれば、出来るんでしょうけど(笑)

ちょっと真面目に考えても良い時期に来ているようです。

昨今のプリンター自主規制とか、バカげた事を言い出す人なんかも増えて来たんだけど、もっと広めていかないとね。

前回も書いちゃったけど、そこが今の日本人の悪い所。右向け右で全部右向いちゃったり、回れ右でだいたいの人が回転しちゃったり。みんなと同じだと安心するのね〜。

僕は案外「あまのじゃく」的な人間で、みんなが良いって言っても、逆に自分でやっちゃわないと、気が済まない性格なんですよね。

そこで、失敗する事も多いんだけど、成功した時の嬉しさってハンパなくデカい。アタマデッカチで理論で武装しても、所詮それは空論でしかなくて、やっぱり手を動かしてモノに触れている人の言う事が、一番説得力があるんですよ。

だから、世論がどう言ったところで、自分でやらなきゃ始まらない。

色々なモノヅクリに顔を突っ込んで、向いてない、向いている、ってもの分かって来るし、以前は引きこもり気味で仕事してましたけど、最近は色々な所に出向いて行く事にしてますよ。

そうすると、いろいろなモノが見えて来て、人との繋がりも増えて来て、自分の肥やしになっていきます。

職人さんって、そうやって「引きこもり」して仕事しているイメージが強いけど、最近では色々なジャンルとコラボをして、凄く良い製品が出て来たりしてます。僕がフィギュアなんかを作るようになったのもその為で、今は楽しくてしょうがない。また今年、新しい事もやって行こうと思ってます。はい。

そういった新しい発想とか、コンビネーションを通して、日本のモノヅクリってのは発展していくんじゃないかなぁ。

……あ、またなんかマトモっぽい事を書いてしまった…。僕もそんなエラそうな事言える立場も技量も持ち合わせてないんですがね。。。。ちょっと語ってみたい時もあるんですよ。

さて、今年はもう一個、新しい3Dプリンターも入れたいと思っているので、頑張って仕事しなきゃ。

【織田隆治】FULL DIMENSIONS STUDIO(フル ディメンションズ スタジオ)
< http://www.f-d-studio.jp
>

あ、そういやそろそろ模型イベント「ワンフェス」の準備だ…。


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編集後記(05/29)

●嵐山光三郎「年をとったら驚いた!」を読む(新講社、2014)。筆者はわたしが勝手に師事している自由人で、現在72歳である。わくわくしながら「不良中年」シリーズを読んで、こんなカッコいい中年になりたいと憧れていたが、なにもしないうちに老年になってしまった。この前読んだ嵐山先生の本は「魔がさす年頃」という、タイトルのわりにはただの寄せ集めエッセイ集で、いささかがっかりしたものだ。今回は週刊朝日の連載「コンセント抜いたか」を大幅に加筆、書き下ろしを足したもので、ヘタレなタイトル通りであまり面白くなかった。

嵐山は大学を卒業する時に、やってみたいことを夢想して100個列記した。たわいないものもあるが、なにしろ100個である。金のかかる愛人を連れてマドリッド豪遊とか、サハラ砂漠縦断とか。これらは50歳にしてすべてなしとげた。次は70歳までにやることを100個書き出す。神楽坂隠棲、温泉耽溺、妻との修復などで、それらもすべて成し遂げた。えらいものである。しかし、心身ともにガックリきたのが65歳で、70歳で足にガタがきて、視力と聴力が格段に落ちたのにはビックリしたという。

「かくして『年をとったら驚いた』現象を繰り返していくうちにそれが愉しくなる。ここんところ、重大なポイントです。自分のカラダが弱って行くのが面白い。だって、昔できたことができなくなるんだから、笑っちゃいますよ」という心境で、なんだかんだで一日五回ぐらい眠っているようだ。もっと元気で生臭いのが嵐山師匠のはずだが、日常を記す文章は毒気も薄れて、単なる老人の感想文だ。それでも交友関係の話は相変わらず面白い。「早く昔になればいい」と願っているそうで、意味不明だがなぜか共感する。

「50歳というのは、なってみるとぜんぜん老人ではなく、体力はあるし、アイデアはガンガンわくし、能力が増して、金銭が入ってくるし、身をもてあますほどの力があった。それはなってみればわかる」と回想しているが、ここんところ、重大なポイントです。50歳で退職したわたしも、その後の10年間は人生で一番面白かった。その後はまあ清貧の日々なんですけど。この本とは関係ないが、「この世で一番怖ろしいのは市民感覚という妖怪で、市民と名のつくものはすべてうさんくさい」という嵐山コメントはじつに正しい!/新国立競技場のデザイン、邪悪なエイリアンの宇宙艇みたい。(柴田)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4860815084/dgcrcom-22/
>
嵐山光三郎「年をとったら驚いた!」


●続き。で、その残高やら出入りやらを自動的に記録し、グラフ化してくれるのが『マネーフォワード』。やっとここに戻ってきた。Webサービスとアプリがある。無料版だと一年分の動きが見られる。

再度書くけれど、情報は筒抜けになる。ビッグデータ化は利用料代わり。個々の口座のIDやPWも保管される。口座の解約や送金には別PWが必要だからその恐れはないが、気になる人は使わない方がいいだろう。

信頼していないわけではないけれど、見ようと思えば見られるんだから。これはレンタルサーバやクラウドサービス、オンラインショップなども同じ。情報は保管される。

でも便利。持っている口座、クレジットカード、現金、交通系ICカード、ポイントカードなどを登録すると、「毎日」「自動的」に情報取得し、動きがあったら教えてくれるし、カードなら引き落とし予定金額などもわかる。続く。(hammer.mule)