《『がんばれ! 関西!』と言いたい》
■ショート・ストーリーのKUNI[162]
ぼくの自動車
ヤマシタクニコ
■3Dプリンター奮闘記[47]
フィギュア今昔、イベント今昔
織田隆治
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↓↓↓ デジクリ電子文庫第一弾! マイナビより発刊 ↓↓↓
怒りのブドウ球菌 電子版 〜或るクリエイターの不条理エッセイ〜
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00CIOU68M/dgcrcom-22/
>
◎デジクリから2005年に刊行された、永吉克之さんの『怒りのブドウ球菌』が
電子書籍になりました。前編/後編の二冊に分け、各26編を収録。もちろんイ
ラストも完全収録、独特の文章と合わせて不条理な世界観をお楽しみ下さい。
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ぼくの自動車
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ラストも完全収録、独特の文章と合わせて不条理な世界観をお楽しみ下さい。
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■ショート・ストーリーのKUNI[162]
ぼくの自動車
ヤマシタクニコ
< https://bn.dgcr.com/archives/20141030140200.html
>
───────────────────────────────────
20**年、近未来の世界ではクルマといえば自動車、つまり、行き先を告げると自動でどこにでも行ってくれるクルマだ。21世紀はじめに出現したそれは、この頃にはすでに大衆的な存在となり、日々進化しているのであった。
小説家の田子ノ浦五郎がクルマに乗って待っていると、派手なワンピースに身を包んだ元妻がやってきた。
「お待たせしちゃってごめんなさい、あなた。まだこのクルマに乗ってるのね」
「まだも何も、そもそも君を今日呼んだのはこのクルマにいっしょに乗ってほしかったからさ」
「あら、このクルマならさんざん乗ったじゃない。何をいまさら」
「いまさら乗ってほしいのさ」
「このクルマはあたしたちが結婚して間もなく買った『自動車』よね。17年前だったかしら。あなたったら喜んで、運転席に運転手の人形を作って置いたでしょ」
「ああ、自分が運転しなくてもいいなんて画期的じゃないか。自分が運転してたら外の景色をゆっくり見ることもできないし、君とキスすることもできない。だが、『自動車』ならそれがかなう。どうせならお抱え運転手に運転してもらっている気分を味わおうと思ってね」
「でも人形はわら人形じゃないほうがよかったわよね。不気味だったし。あら、これもまだあるのね。『降ります』ボタン」
「そうそう、お抱え運転手にも飽きて、次はバスの気分を味わいたくてオプションで付けた。これを押すと『次、とまります』とアナウンスが流れるんだぜ、うふふ。料金箱もあるさ」
「ほんとにあなたったらばかなんだから。でも、ばかでもいいと思ってたんだわ、当時は」
「さびしいこと言うなよ。当時は、なんて。ぼくは今でも君を」
「ばかにも程度があるってもんよ。それに、小説家なんて名ばかり。全然売れないんだから」
「それだよ、それ。確かにぼくは売れない小説家だった。苦労させてすまなかった。なにしろ、マイナーな小説月刊誌『超変』に時たま載せてもらえるだけだった。若いときからのライバル、屯田兵大輔にいつも頭ひとつリードされていた。ぼくがごくたまにしか載せてもらえないとしたら、あいつはふつうにたまに載せてもらっていた」
「なによそのレベルの低いライバル」
「屯田兵にだけは負けたくなかった。あいつより先に老眼鏡をかけたくない。あいつより先にはげたくない。あいつがiPhone6を買うならぼくは絶対iPhone6+」
「これ、近未来の話なんだけど」
「でも、いよいよ屯田兵大輔に追いつき追い越せそうなんだ。ああ、思っただけでほほがゆるむ。笑える。ふはははは。いまに見てろ屯田兵」
「そうなの?」
「ああ、文学のむずかしい話は君には関係なかったね。さあ、とにかく出発しよう」
「どこへ行くの?」
「それがわからないんだ」
「わからないって…」
「以前は行き先を告げると、クルマは正確にそこに行ってくれた」
「あたりまえじゃない。『自動車』なんだから」
「それが、あるときからこのクルマは、勝手に行くようになった。ほら、今もそうだ。何も言わないのにどこかに連れて行ってくれるんだ。不思議だろ」
「ええ?」
「最初は海沿いの小さな町だった。ぼくはおどろいたよ。シートに腰を下ろして、何も言わないうちからするするとクルマは動き出し、着いたところはさびれた食堂や雑貨店が点在し、無愛想な人々が行き来する町だった。赤錆の浮いた標識がぽつんと立っている。潮の香りがする。
なんでこんなところに? と思った。ところがしばらくするとぼくは猛然と小説が書きたくなった。その場所を舞台とする小説だ。そして実際、帰るやいなやパソコンに向かい、一気に書き上げた。あんなに熱中して書けたことはそれまでなかった。いつも全然やる気が出ず、いやいや書いていたんだ」
「やっぱりそうだったの!」
「そしてその次にクルマに乗ったときも、クルマは勝手に動き出し、あるところに来るとぴたっと止まった。それは日本の原風景かと思わせる農村地帯だった。赤とんぼが飛び交い、春の小川が流れ、かあさんが夜なべする」
「いっぺんに無理よ」
「そのときも、いきなりぼくの脳内には奔流のごとく小説の言葉があふれかえったんだ。ぼくはまたしても帰るなり一気に書き上げた。その次は都会の片隅の路地裏にクルマは強引に入って行って、止まった。またしても同じことだった。そして、ぼくは理解したんだ」
「はあ」
「このクルマは、ぼくなんだ」
「意味わかんないし」
「むかしから、年月を経たものは箪笥でも鏡でも魂をもつようになるというじゃないか。このクルマは長い年月いつもぼくとともにあった。そして意志を持つようになった。何も言わなくても、ぼくが心の奥深く、ぼく自身が願っていながら気づいてなかったところに連れて行ってくれるんだ。だから、これはぼくなんだ」
「あなた、むかしからそういうとこあったわよね。思い込みが強いっていうか」
「でないと説明できないじゃないか。あんなにすらすら、何かがとりついたように書けるなんて。それはもともとその小説はぼくの中にあったも同然だからなんだ。クルマがそれを引き出してくれた。
ぼくは自分には、ひょっとしたら才能がないのかと思っていた。絶望的になるときもあった。でも、それは眠っていただけなんだ。ぼくはその気になれば小説なんかあっという間に書けるんだ。ぼくには屯田兵大輔よりずっと、才能があるんだよ!」
「よかったわね。それよりなんだか臭くない?」
田子ノ浦五郎は元妻の言葉を意に介さずしゃべり続けた。
「ぼくはこの体験を大事にしたい。すでに5編。あといくつか書いて、一冊にまとめる」
「それは…早く発表したほうがよくないの?」
「まとめて連作にしたほうがいいと思うんだ。それぞれ単独で読んでもらってもおもしろいはずだが、連作のほうがぼくの意図をよりわかってもらえる。絶対これはものになる。賞がとれるかもしれない。売れるかもしれない。いや、かもしれないどころではない。君にもやっと、ぼくの本当の姿を見てもらうことができる。だから今日はこうやってこのクルマに」
「なんだか黒い煙が出てるみたいなんだけど…」
「煙なんかどうでもいいじゃないか。今日このクルマがどこに向かっているか はわからない。ぼくはクルマに任せるしかない。だがそうみえて、それはぼ くの無意識が、ぼくの文学的才能が命じていることなんだ。どんな場所に行 こうと、そこにはぼくによって書かれるべき素材が、ぼくを待っているんだ」
「音もなんだか変よ」
いまのクルマはほとんど音がしないはずなのにカクカク、カクカク、と小さな音がする。それは次第に大きくなり、ガクガク、ガクガクとなり、さらに異音が交じってガクガク、プスン、パスッ、ボッコン、ガクガク、プスパッタン、ドボリンガボリン、ボコガッタン、ドドドドドガクガク!
「連作集のタイトルは何とつけよう。クルマが書かせた物語、それとも」
「きゃー、火が出てる!」
え、と田子ノ浦五郎が振り向いたと同時にボムッ!と爆発音がしてクルマは跳ね上がり、一回転したと思うと道路脇の標識にぶつかった。
「あわわわわわわわわわわわ」
二人は大破したクルマから転がり出た。炎が上がる。
「ぼぼぼぼぼくのくうまぐわもえてるうう」
田子ノ浦五郎は泣き出した。元妻はあきれたように言った。
「あのさ、言おうかどうしようか迷ってたんだけど」
「なんだよおおおお…」
「あたし、いま屯田兵大輔とつきあってるのよ」
「は?」
「で、彼──大輔が連作書いてて、来月単行本になる予定なの。海沿いの町を 舞台にしたのと、農村を舞台にしたのと、それから都会の片隅の路地裏と… 全部で8編」
「はあ?」
「あなたってほんとにばか。ていうか、何やっても遅いんだから」
そこへ後ろから一台の車がやってきて止まった。中から降りて来たのは自動車メーカーのセールスマンだった。
「あああ、遅かったようですね。申し訳ありません。実はお客様に長年お使い いただいているこの車種に不具合が見つかりまして、回収を進めていたとこ ろでございました。
製造から一定年月を経過すると、運転手の意向にかかわらず勝手に走行する というバグが見つかりまして。それも、行き先が決まっておりまして、海沿 いの町、都会の片隅の路地裏、農村風景そのほか8カ所が無限に繰り返され ます。
プログラム担当者の個人的嗜好などのデータが誤って混入されたようですが、 詳細はまだわかっておりません。本当に申し訳ございません。ただ、15年以 上も乗っておられるお客様がおられたことは私どもにとりましても想定外で して…」
【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
< http://midtan.net/
>
< http://koo-yamashita.main.jp/wp/
>
腰、それも右側が痛むので調べたら、たとえばいつもショルダーバッグを右にさげてるとか、脚の組み方が決まっているとかで、だんだん体がゆがんでくることが原因の、よくあることだとか。
なるほど。そういえば若いときからずーーーーーっとショルダーバッグは右肩に。それで、次の日から左にしてみたら、これがものすごく難しい。
知らず知らずのうちに右肩を上げて歩いていたようで、左だとずるずる落ちる。なんだか気持ち悪い。落ち着かない。肩にかけたままバッグを落とさず財布やカギを取り出すのがこんなに難しかったとは。よほど私の体はゆがんでいたようだ。
前々回の「スナック『リリイ』のママの涙袋」で、一カ所「リリイ」とするべきところが「マーガレット」となっていた。最初「マーガレット」と仮の名前にして後から「リリイ」としたのだが、一か所直し忘れていたようだ。
何人もの読者からご指摘いただいた。おはずかしい。今後はよりいっそう注意いたしますのでご容赦を。指摘してくださった皆様、ありがとうございました。
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■3Dプリンター奮闘記[47]
フィギュア今昔、イベント今昔
織田隆治
< https://bn.dgcr.com/archives/20141030140100.html
>
───────────────────────────────────
なんだか突然寒くなってきました。
こう見えて(どんな奴か知らんでしょうけど……)、結構病弱な僕は、体調を崩しそうなので、こういった季節は気をつけないといけないです。
みなさんも、風邪などひかないようにしましょう。
で、今回は模型イベントについてちょっとお話を。
今週末の日曜に、関西では唯一となってしまった「トレジャーフェスタin神戸」というフィギュアのイベントが、神戸国際展示場にて開催されます。このイベントは、東京と神戸のみの開催です。
< http://www.treasure-festa.com/
>
こういったイベントで有名なのは、かの海洋堂が主催の「ワンダーフェスティバル」があります。
< http://wf.kaiyodo.net/
>
他にも大きなイベントとしては、「キャラホビ」「AK-GARDEN」等があります。
< http://www.chara-hobby.com/
>
< http://ak-garden.com/
>
どれも、基本的に関東で開催されています。
以前は、「ホビコン」が神戸、名古屋等で行われていましたが、今では「トレフェス」のみが神戸で開催されるだけになってしまいました。
ちょっと前までは、ホビー全盛期だった時がありました。
ガレージキットというものは、個人で原型を作って、それをシリコン等で型取り、レジンキャストと言われる樹脂で複製したものです。
こういったイベントが開催されるようになる以前は、ひっそりと交換会が行われていて、それが一部店舗で扱われるようになり、昨今のアニメの盛り上がりに乗じて大きなイベントが開催されるようになりました。
かつては、現ガイナックスの前身でもあるゼネラルプロダクツ(ゼネプロ)が、大阪は環状線の桃谷駅の高架下にあり、そこに大阪芸大の人がかなり入り浸っていました。
僕も高校の時からちょくちょく行ったものです。
その後、海洋堂(大阪府)が大きく取り上げるようになり、ボークス(京都府)もそういった分野に進出してきたかと思います。
出始めの頃は、海外のガレージキットが主流で、大アマゾンの半魚人や、宇宙水爆戦のメタルーナミュータント、ハリーハウゼンの映画に出て来る怪獣などが出ていました。
それまで、そんな物を見たことがなかったんですが、それは凄いディテールで、若い僕は夢中になったものでした。高額なものだったので、当然購入出来ませんでしたけどね……。
そういったものが出回るようになり、国内では、ウルトラマンや仮面ライダー、ゴジラやガメラなどといった、特撮のガレージキットが出回るようになってきます。
出始めた当時は、おおらかな時代でもあって、『版権』ということもあまり言われていませんでした。
今では、こういったイベントでは、きっちりと版権を取得することが出来てくるようになり、作る側も、買う側も、安心出来るイベントになっています。
コミケ等の2D系イベントでは、この『版権』といったものの取り扱いについて、色々と言われるようになってきました。
ファン活動のひとつ、では擁護出来ない状態になっている訳ですね。
そこは、後発であるこういうフィギュアのイベントでは、しっかりと押さえて行った感じでしょうか。
初期の頃は『知る人ぞ知る』といった感じで、「ホビージャパン」などの模型雑誌でちょこっと取り上げられるだけでしたが、最近では色々な模型雑誌も出て、3Dプリンターの普及もあり、3DCGの雑誌にも取り上げられるようになってきました。
3DCGの雑誌って、今は凄く少なくなってしまいましたけどね……。
逆に、ホビー系の雑誌はかなりの種類が出回っています。日本のそういったアニメブームも火付け役になっていますね。
今では、そういった日本のホビー分野が、海外でも『COOL!』という感じで話題になったりしていますね。日本のアニメも海外でかなり放送されています。
グローバルになってきたな〜なんて思います。で、よくよく考えてみれば、そういったサブカル的なガレージキットやフィギュアの聖地は、関西にあるのだなぁ、と実感します。
それが、今ではそのイベントのほとんどが関東で開催されるのみとなってしまいました。
大阪では、りんくうにアニメの聖地を作ろうとしているようですが、それも芳しくないスタートとなっているようです。
イベント会場も、有明ビッグサイトや幕張メッセが主となっていて、関西では大阪のインテックス、神戸の国際展示場があります。
以前、展示会のデザインや施工の仕事をしていて、今でもたまにそういった仕事が入って来ます。そこで凄く感じることなんですが、インテックスの展示会も、ここ数年でかなり数が減ってきました。
どないかならんですかねぇ……。
海洋堂、ボークス、ゼネプロ(現ガイナックス)も、元々は関西なんですから、こっちでもしっかりしたイベントをやって欲しいと思うんですが、出来ない理由があるんでしょうねぇ……。
インテックス等の会場のアクセスが不便! とかあるかもしれないですが、幕張も結構アクセス不便ですよね。有明もそんなに便利って訳でもないし……。
『がんばれ! 関西!』と言いたい!
と原稿を書いている僕ですが、日曜開催の「トレジャーフェスタin神戸」の準備に追われています。頑張りますよ〜!
【___FULL_DIMENSIONS_STUDIO_____ 織田隆治】
oda@f-d-studio.jp
< http://www.f-d-studio.jp
>
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編集後記(10/30)
●恐怖の殺人タイヤ(最後のクレジットでロバートという名前になっていた)が人を殺しまくるというホラー映画、いや不条理映画「ラバー」を見た(2010、フランス)。荒野にのびる道路に木製の椅子がばらばらに14脚置かれている。シュールなシーンだ。やがて脇道から現れたパトカーが、ゆっくりと走りながらすべての椅子を倒してから止まる。車のトランクから現れた警官がしゃべりだす。延々と続き、「偉大な映画には必ず理由なき重要な要素が入っている。なぜなら人生それ自体が理由のないことの連続だからだ。この映画は“理由がない”ことへのオマージュである」とわけのわからんことを言って去って行く。いやな予感がする。
ワイシャツ・ネクタイ男が、その場にいる人たちに双眼鏡を配って去って行く。彼らはこれから起こる出来事の観客である。砂に半分埋まったタイヤが、ぶるぶると震えだし、よろめきながら立ち上がり、ふらふら転がり始める。こいつは生きている。意思がある。やがてタイヤは快調に転がり出す。観客が双眼鏡でそれを眺めているという設定だ。タイヤの走行はCGではなく、たぶんラジコンと人力だと思うが、みごとな演出だ。そして、出会ったウサギやカラスは、タイヤがぶるぶる震えて怒気をみなぎらせると、一瞬で全身がバラバラになって吹っ飛ぶ。気に入らない対象を超能力で破壊できるのだ。わはは。
モーテルに至ったタイヤは開いているドアから忍び込み、若い女の裸を盗み見たり、くつろいでテレビを見たり、シャワーを浴びたりしている。わはは。もちろん人殺しもする。こいつがぶるぶる震えると人間の頭が砕けて飛び散る。「スキャナーズ」かい。古タイヤの山が野焼きされているのを見ている殺人タイヤ。次のシーンは頭のない血みどろの死体がいくつも。タイヤの復讐だ。警察はダイナマイトをくくりつけたマネキンを立たせる作戦に失敗するが、タイヤの潜んだ家に乗り込んだ警官がライフルであっさり仕留めて、タイヤはゴムの切れ端に変わる。はじめからそうすりゃよかったのに。
しかし、タイヤの生命体(?)は三輪車に乗り移っていた。これからあとは人の乗っていない三輪車が主役だ。こいつが道路をズンズン走っていくのだが、どういう仕掛けなんだろう。道路脇に捨てられていた古タイヤが次々と起き上がり、三輪車の後を追う。これがまたシュールなシーンで好きだなあ。クレジットタイトルでは、冒頭の警官の演説がまた延々と続く。はじめに、理由がないことこそ表現の最強要素だと勝手に宣言していたが、それはこの映画を指していたのだ。なぜタイヤに命が宿り殺人を繰り返すのか、その理由はない。不死身の警官がいたが、その理由もない。最初に予感したとおりだった。わけがわからない。くだらない。眠くなる。でも、案外好きかも。(柴田)
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B007HESZ6S/dgcrcom-22/
>
「ラバー」
●どなたかデザイン、WordPress、コーディング、Flashなどのお仕事を手伝ってくださいませんか? フットワークが軽く、連絡を密にしてくださる方。実績や費用目安などを教えてください。zacke@days-i.comまで。手を挙げてくださった方々、ありがとうございます。
私も右派であります。左にすると極端に肩をすくめないと落ちてきます。/海洋堂は京都か滋賀だと思ってた……。がんばれ! 関西!
昨日のに関連して。平田オリザ氏と石黒浩氏によるアンドロイド演劇を数年前に見、人間のゆらぎについての話を聞いた。人間は止まっているようでずっと揺れている、コップに手を持っていく動作では直線移動ではなく、微調整しつつ目標に向かう、など。
「ASUNAちゃん」の動画を見て、人間と何が違うんだろうと考えはじめ、目の光と仮説を立てた。顔の筋肉をあまり動かさない人はいて、それでも人間に見える。ブラックホールのような目が怖いと思う。生気がない、と言葉通り。ぬいぐるみには光がなくても、リカちゃんの目は塗料だけでもイキイキしているのに、不思議。
数週間前、目の検査のために瞳孔を開く薬を点眼してもらった。なかなか開かず、二度に渡って点眼してもらったよ。で、帰宅して鏡を見て爆笑。カラコンつけたらこんな感じなのかしらと思うぐらいの大きな黒目。キラキラ(笑)(hammer.mule)
< http://www.seinendan.org/play/2014/08/3796
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『さようなら』。これともう一本を見た
■ショート・ストーリーのKUNI[162]
ぼくの自動車
ヤマシタクニコ
< https://bn.dgcr.com/archives/20141030140200.html
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20**年、近未来の世界ではクルマといえば自動車、つまり、行き先を告げると自動でどこにでも行ってくれるクルマだ。21世紀はじめに出現したそれは、この頃にはすでに大衆的な存在となり、日々進化しているのであった。
小説家の田子ノ浦五郎がクルマに乗って待っていると、派手なワンピースに身を包んだ元妻がやってきた。
「お待たせしちゃってごめんなさい、あなた。まだこのクルマに乗ってるのね」
「まだも何も、そもそも君を今日呼んだのはこのクルマにいっしょに乗ってほしかったからさ」
「あら、このクルマならさんざん乗ったじゃない。何をいまさら」
「いまさら乗ってほしいのさ」
「このクルマはあたしたちが結婚して間もなく買った『自動車』よね。17年前だったかしら。あなたったら喜んで、運転席に運転手の人形を作って置いたでしょ」
「ああ、自分が運転しなくてもいいなんて画期的じゃないか。自分が運転してたら外の景色をゆっくり見ることもできないし、君とキスすることもできない。だが、『自動車』ならそれがかなう。どうせならお抱え運転手に運転してもらっている気分を味わおうと思ってね」
「でも人形はわら人形じゃないほうがよかったわよね。不気味だったし。あら、これもまだあるのね。『降ります』ボタン」
「そうそう、お抱え運転手にも飽きて、次はバスの気分を味わいたくてオプションで付けた。これを押すと『次、とまります』とアナウンスが流れるんだぜ、うふふ。料金箱もあるさ」
「ほんとにあなたったらばかなんだから。でも、ばかでもいいと思ってたんだわ、当時は」
「さびしいこと言うなよ。当時は、なんて。ぼくは今でも君を」
「ばかにも程度があるってもんよ。それに、小説家なんて名ばかり。全然売れないんだから」
「それだよ、それ。確かにぼくは売れない小説家だった。苦労させてすまなかった。なにしろ、マイナーな小説月刊誌『超変』に時たま載せてもらえるだけだった。若いときからのライバル、屯田兵大輔にいつも頭ひとつリードされていた。ぼくがごくたまにしか載せてもらえないとしたら、あいつはふつうにたまに載せてもらっていた」
「なによそのレベルの低いライバル」
「屯田兵にだけは負けたくなかった。あいつより先に老眼鏡をかけたくない。あいつより先にはげたくない。あいつがiPhone6を買うならぼくは絶対iPhone6+」
「これ、近未来の話なんだけど」
「でも、いよいよ屯田兵大輔に追いつき追い越せそうなんだ。ああ、思っただけでほほがゆるむ。笑える。ふはははは。いまに見てろ屯田兵」
「そうなの?」
「ああ、文学のむずかしい話は君には関係なかったね。さあ、とにかく出発しよう」
「どこへ行くの?」
「それがわからないんだ」
「わからないって…」
「以前は行き先を告げると、クルマは正確にそこに行ってくれた」
「あたりまえじゃない。『自動車』なんだから」
「それが、あるときからこのクルマは、勝手に行くようになった。ほら、今もそうだ。何も言わないのにどこかに連れて行ってくれるんだ。不思議だろ」
「ええ?」
「最初は海沿いの小さな町だった。ぼくはおどろいたよ。シートに腰を下ろして、何も言わないうちからするするとクルマは動き出し、着いたところはさびれた食堂や雑貨店が点在し、無愛想な人々が行き来する町だった。赤錆の浮いた標識がぽつんと立っている。潮の香りがする。
なんでこんなところに? と思った。ところがしばらくするとぼくは猛然と小説が書きたくなった。その場所を舞台とする小説だ。そして実際、帰るやいなやパソコンに向かい、一気に書き上げた。あんなに熱中して書けたことはそれまでなかった。いつも全然やる気が出ず、いやいや書いていたんだ」
「やっぱりそうだったの!」
「そしてその次にクルマに乗ったときも、クルマは勝手に動き出し、あるところに来るとぴたっと止まった。それは日本の原風景かと思わせる農村地帯だった。赤とんぼが飛び交い、春の小川が流れ、かあさんが夜なべする」
「いっぺんに無理よ」
「そのときも、いきなりぼくの脳内には奔流のごとく小説の言葉があふれかえったんだ。ぼくはまたしても帰るなり一気に書き上げた。その次は都会の片隅の路地裏にクルマは強引に入って行って、止まった。またしても同じことだった。そして、ぼくは理解したんだ」
「はあ」
「このクルマは、ぼくなんだ」
「意味わかんないし」
「むかしから、年月を経たものは箪笥でも鏡でも魂をもつようになるというじゃないか。このクルマは長い年月いつもぼくとともにあった。そして意志を持つようになった。何も言わなくても、ぼくが心の奥深く、ぼく自身が願っていながら気づいてなかったところに連れて行ってくれるんだ。だから、これはぼくなんだ」
「あなた、むかしからそういうとこあったわよね。思い込みが強いっていうか」
「でないと説明できないじゃないか。あんなにすらすら、何かがとりついたように書けるなんて。それはもともとその小説はぼくの中にあったも同然だからなんだ。クルマがそれを引き出してくれた。
ぼくは自分には、ひょっとしたら才能がないのかと思っていた。絶望的になるときもあった。でも、それは眠っていただけなんだ。ぼくはその気になれば小説なんかあっという間に書けるんだ。ぼくには屯田兵大輔よりずっと、才能があるんだよ!」
「よかったわね。それよりなんだか臭くない?」
田子ノ浦五郎は元妻の言葉を意に介さずしゃべり続けた。
「ぼくはこの体験を大事にしたい。すでに5編。あといくつか書いて、一冊にまとめる」
「それは…早く発表したほうがよくないの?」
「まとめて連作にしたほうがいいと思うんだ。それぞれ単独で読んでもらってもおもしろいはずだが、連作のほうがぼくの意図をよりわかってもらえる。絶対これはものになる。賞がとれるかもしれない。売れるかもしれない。いや、かもしれないどころではない。君にもやっと、ぼくの本当の姿を見てもらうことができる。だから今日はこうやってこのクルマに」
「なんだか黒い煙が出てるみたいなんだけど…」
「煙なんかどうでもいいじゃないか。今日このクルマがどこに向かっているか はわからない。ぼくはクルマに任せるしかない。だがそうみえて、それはぼ くの無意識が、ぼくの文学的才能が命じていることなんだ。どんな場所に行 こうと、そこにはぼくによって書かれるべき素材が、ぼくを待っているんだ」
「音もなんだか変よ」
いまのクルマはほとんど音がしないはずなのにカクカク、カクカク、と小さな音がする。それは次第に大きくなり、ガクガク、ガクガクとなり、さらに異音が交じってガクガク、プスン、パスッ、ボッコン、ガクガク、プスパッタン、ドボリンガボリン、ボコガッタン、ドドドドドガクガク!
「連作集のタイトルは何とつけよう。クルマが書かせた物語、それとも」
「きゃー、火が出てる!」
え、と田子ノ浦五郎が振り向いたと同時にボムッ!と爆発音がしてクルマは跳ね上がり、一回転したと思うと道路脇の標識にぶつかった。
「あわわわわわわわわわわわ」
二人は大破したクルマから転がり出た。炎が上がる。
「ぼぼぼぼぼくのくうまぐわもえてるうう」
田子ノ浦五郎は泣き出した。元妻はあきれたように言った。
「あのさ、言おうかどうしようか迷ってたんだけど」
「なんだよおおおお…」
「あたし、いま屯田兵大輔とつきあってるのよ」
「は?」
「で、彼──大輔が連作書いてて、来月単行本になる予定なの。海沿いの町を 舞台にしたのと、農村を舞台にしたのと、それから都会の片隅の路地裏と… 全部で8編」
「はあ?」
「あなたってほんとにばか。ていうか、何やっても遅いんだから」
そこへ後ろから一台の車がやってきて止まった。中から降りて来たのは自動車メーカーのセールスマンだった。
「あああ、遅かったようですね。申し訳ありません。実はお客様に長年お使い いただいているこの車種に不具合が見つかりまして、回収を進めていたとこ ろでございました。
製造から一定年月を経過すると、運転手の意向にかかわらず勝手に走行する というバグが見つかりまして。それも、行き先が決まっておりまして、海沿 いの町、都会の片隅の路地裏、農村風景そのほか8カ所が無限に繰り返され ます。
プログラム担当者の個人的嗜好などのデータが誤って混入されたようですが、 詳細はまだわかっておりません。本当に申し訳ございません。ただ、15年以 上も乗っておられるお客様がおられたことは私どもにとりましても想定外で して…」
【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
< http://midtan.net/
>
< http://koo-yamashita.main.jp/wp/
>
腰、それも右側が痛むので調べたら、たとえばいつもショルダーバッグを右にさげてるとか、脚の組み方が決まっているとかで、だんだん体がゆがんでくることが原因の、よくあることだとか。
なるほど。そういえば若いときからずーーーーーっとショルダーバッグは右肩に。それで、次の日から左にしてみたら、これがものすごく難しい。
知らず知らずのうちに右肩を上げて歩いていたようで、左だとずるずる落ちる。なんだか気持ち悪い。落ち着かない。肩にかけたままバッグを落とさず財布やカギを取り出すのがこんなに難しかったとは。よほど私の体はゆがんでいたようだ。
前々回の「スナック『リリイ』のママの涙袋」で、一カ所「リリイ」とするべきところが「マーガレット」となっていた。最初「マーガレット」と仮の名前にして後から「リリイ」としたのだが、一か所直し忘れていたようだ。
何人もの読者からご指摘いただいた。おはずかしい。今後はよりいっそう注意いたしますのでご容赦を。指摘してくださった皆様、ありがとうございました。
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■3Dプリンター奮闘記[47]
フィギュア今昔、イベント今昔
織田隆治
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なんだか突然寒くなってきました。
こう見えて(どんな奴か知らんでしょうけど……)、結構病弱な僕は、体調を崩しそうなので、こういった季節は気をつけないといけないです。
みなさんも、風邪などひかないようにしましょう。
で、今回は模型イベントについてちょっとお話を。
今週末の日曜に、関西では唯一となってしまった「トレジャーフェスタin神戸」というフィギュアのイベントが、神戸国際展示場にて開催されます。このイベントは、東京と神戸のみの開催です。
< http://www.treasure-festa.com/
>
こういったイベントで有名なのは、かの海洋堂が主催の「ワンダーフェスティバル」があります。
< http://wf.kaiyodo.net/
>
他にも大きなイベントとしては、「キャラホビ」「AK-GARDEN」等があります。
< http://www.chara-hobby.com/
>
< http://ak-garden.com/
>
どれも、基本的に関東で開催されています。
以前は、「ホビコン」が神戸、名古屋等で行われていましたが、今では「トレフェス」のみが神戸で開催されるだけになってしまいました。
ちょっと前までは、ホビー全盛期だった時がありました。
ガレージキットというものは、個人で原型を作って、それをシリコン等で型取り、レジンキャストと言われる樹脂で複製したものです。
こういったイベントが開催されるようになる以前は、ひっそりと交換会が行われていて、それが一部店舗で扱われるようになり、昨今のアニメの盛り上がりに乗じて大きなイベントが開催されるようになりました。
かつては、現ガイナックスの前身でもあるゼネラルプロダクツ(ゼネプロ)が、大阪は環状線の桃谷駅の高架下にあり、そこに大阪芸大の人がかなり入り浸っていました。
僕も高校の時からちょくちょく行ったものです。
その後、海洋堂(大阪府)が大きく取り上げるようになり、ボークス(京都府)もそういった分野に進出してきたかと思います。
出始めの頃は、海外のガレージキットが主流で、大アマゾンの半魚人や、宇宙水爆戦のメタルーナミュータント、ハリーハウゼンの映画に出て来る怪獣などが出ていました。
それまで、そんな物を見たことがなかったんですが、それは凄いディテールで、若い僕は夢中になったものでした。高額なものだったので、当然購入出来ませんでしたけどね……。
そういったものが出回るようになり、国内では、ウルトラマンや仮面ライダー、ゴジラやガメラなどといった、特撮のガレージキットが出回るようになってきます。
出始めた当時は、おおらかな時代でもあって、『版権』ということもあまり言われていませんでした。
今では、こういったイベントでは、きっちりと版権を取得することが出来てくるようになり、作る側も、買う側も、安心出来るイベントになっています。
コミケ等の2D系イベントでは、この『版権』といったものの取り扱いについて、色々と言われるようになってきました。
ファン活動のひとつ、では擁護出来ない状態になっている訳ですね。
そこは、後発であるこういうフィギュアのイベントでは、しっかりと押さえて行った感じでしょうか。
初期の頃は『知る人ぞ知る』といった感じで、「ホビージャパン」などの模型雑誌でちょこっと取り上げられるだけでしたが、最近では色々な模型雑誌も出て、3Dプリンターの普及もあり、3DCGの雑誌にも取り上げられるようになってきました。
3DCGの雑誌って、今は凄く少なくなってしまいましたけどね……。
逆に、ホビー系の雑誌はかなりの種類が出回っています。日本のそういったアニメブームも火付け役になっていますね。
今では、そういった日本のホビー分野が、海外でも『COOL!』という感じで話題になったりしていますね。日本のアニメも海外でかなり放送されています。
グローバルになってきたな〜なんて思います。で、よくよく考えてみれば、そういったサブカル的なガレージキットやフィギュアの聖地は、関西にあるのだなぁ、と実感します。
それが、今ではそのイベントのほとんどが関東で開催されるのみとなってしまいました。
大阪では、りんくうにアニメの聖地を作ろうとしているようですが、それも芳しくないスタートとなっているようです。
イベント会場も、有明ビッグサイトや幕張メッセが主となっていて、関西では大阪のインテックス、神戸の国際展示場があります。
以前、展示会のデザインや施工の仕事をしていて、今でもたまにそういった仕事が入って来ます。そこで凄く感じることなんですが、インテックスの展示会も、ここ数年でかなり数が減ってきました。
どないかならんですかねぇ……。
海洋堂、ボークス、ゼネプロ(現ガイナックス)も、元々は関西なんですから、こっちでもしっかりしたイベントをやって欲しいと思うんですが、出来ない理由があるんでしょうねぇ……。
インテックス等の会場のアクセスが不便! とかあるかもしれないですが、幕張も結構アクセス不便ですよね。有明もそんなに便利って訳でもないし……。
『がんばれ! 関西!』と言いたい!
と原稿を書いている僕ですが、日曜開催の「トレジャーフェスタin神戸」の準備に追われています。頑張りますよ〜!
【___FULL_DIMENSIONS_STUDIO_____ 織田隆治】
oda@f-d-studio.jp
< http://www.f-d-studio.jp
>
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編集後記(10/30)
●恐怖の殺人タイヤ(最後のクレジットでロバートという名前になっていた)が人を殺しまくるというホラー映画、いや不条理映画「ラバー」を見た(2010、フランス)。荒野にのびる道路に木製の椅子がばらばらに14脚置かれている。シュールなシーンだ。やがて脇道から現れたパトカーが、ゆっくりと走りながらすべての椅子を倒してから止まる。車のトランクから現れた警官がしゃべりだす。延々と続き、「偉大な映画には必ず理由なき重要な要素が入っている。なぜなら人生それ自体が理由のないことの連続だからだ。この映画は“理由がない”ことへのオマージュである」とわけのわからんことを言って去って行く。いやな予感がする。
ワイシャツ・ネクタイ男が、その場にいる人たちに双眼鏡を配って去って行く。彼らはこれから起こる出来事の観客である。砂に半分埋まったタイヤが、ぶるぶると震えだし、よろめきながら立ち上がり、ふらふら転がり始める。こいつは生きている。意思がある。やがてタイヤは快調に転がり出す。観客が双眼鏡でそれを眺めているという設定だ。タイヤの走行はCGではなく、たぶんラジコンと人力だと思うが、みごとな演出だ。そして、出会ったウサギやカラスは、タイヤがぶるぶる震えて怒気をみなぎらせると、一瞬で全身がバラバラになって吹っ飛ぶ。気に入らない対象を超能力で破壊できるのだ。わはは。
モーテルに至ったタイヤは開いているドアから忍び込み、若い女の裸を盗み見たり、くつろいでテレビを見たり、シャワーを浴びたりしている。わはは。もちろん人殺しもする。こいつがぶるぶる震えると人間の頭が砕けて飛び散る。「スキャナーズ」かい。古タイヤの山が野焼きされているのを見ている殺人タイヤ。次のシーンは頭のない血みどろの死体がいくつも。タイヤの復讐だ。警察はダイナマイトをくくりつけたマネキンを立たせる作戦に失敗するが、タイヤの潜んだ家に乗り込んだ警官がライフルであっさり仕留めて、タイヤはゴムの切れ端に変わる。はじめからそうすりゃよかったのに。
しかし、タイヤの生命体(?)は三輪車に乗り移っていた。これからあとは人の乗っていない三輪車が主役だ。こいつが道路をズンズン走っていくのだが、どういう仕掛けなんだろう。道路脇に捨てられていた古タイヤが次々と起き上がり、三輪車の後を追う。これがまたシュールなシーンで好きだなあ。クレジットタイトルでは、冒頭の警官の演説がまた延々と続く。はじめに、理由がないことこそ表現の最強要素だと勝手に宣言していたが、それはこの映画を指していたのだ。なぜタイヤに命が宿り殺人を繰り返すのか、その理由はない。不死身の警官がいたが、その理由もない。最初に予感したとおりだった。わけがわからない。くだらない。眠くなる。でも、案外好きかも。(柴田)
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B007HESZ6S/dgcrcom-22/
>
「ラバー」
●どなたかデザイン、WordPress、コーディング、Flashなどのお仕事を手伝ってくださいませんか? フットワークが軽く、連絡を密にしてくださる方。実績や費用目安などを教えてください。zacke@days-i.comまで。手を挙げてくださった方々、ありがとうございます。
私も右派であります。左にすると極端に肩をすくめないと落ちてきます。/海洋堂は京都か滋賀だと思ってた……。がんばれ! 関西!
昨日のに関連して。平田オリザ氏と石黒浩氏によるアンドロイド演劇を数年前に見、人間のゆらぎについての話を聞いた。人間は止まっているようでずっと揺れている、コップに手を持っていく動作では直線移動ではなく、微調整しつつ目標に向かう、など。
「ASUNAちゃん」の動画を見て、人間と何が違うんだろうと考えはじめ、目の光と仮説を立てた。顔の筋肉をあまり動かさない人はいて、それでも人間に見える。ブラックホールのような目が怖いと思う。生気がない、と言葉通り。ぬいぐるみには光がなくても、リカちゃんの目は塗料だけでもイキイキしているのに、不思議。
数週間前、目の検査のために瞳孔を開く薬を点眼してもらった。なかなか開かず、二度に渡って点眼してもらったよ。で、帰宅して鏡を見て爆笑。カラコンつけたらこんな感じなのかしらと思うぐらいの大きな黒目。キラキラ(笑)(hammer.mule)
< http://www.seinendan.org/play/2014/08/3796
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『さようなら』。これともう一本を見た