[3882] 仕事が生み出す価値

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《泣き泣き録画を消す作業......》

■装飾山イバラ道[153]
 鳥肌が立っちゃった!
 武田瑛夢

■Take IT Easy![48]
 仕事が生み出す価値
 若林健一 / kwaka1208

■おかだの光画部トーク[133]
 盛況でした「第一回AUGM神戸」
 岡田陽一




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■装飾山イバラ道[153]
鳥肌が立っちゃった!

武田瑛夢
< https://bn.dgcr.com/archives/20150331140300.html
>
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●アメリカン・アイドルシーズン14

アメリカン・アイドルシーズン14は、今回も地方予選からずっと見ている。審査員の三人は前回と変わらなかった。しかし、今回から合格者ばかりを圧倒的に画面に映すスタイルに変わったような気がしている。

以前はオーディションに参加する不合格の人も、強烈な個性ならどんどんテレビに映っていたけれど、その部分はだいぶ削られた。コミカルで奇抜なだけの人もあまり見かけなかった。

これから候補者が投票によって勝ち抜けて行く中では、歌唱シーンの放送がされた人が圧倒的に有利になる。残っていく人に、限られた放送時間を出来るだけ使おうということではないかと思う。

初めてアカペラで歌う地方予選の様子からハリウッド予選まで、去っていく人のシーン数は減らされている。逆に残っていく人の歌のシーンはしっかりと聞かせて、お気に入りを早めにみつけられるようにしたようだ。

●今シーズンのお気に入りは

日本ではファイナルTOP12が既に決まっていわゆる本戦を放送している。ここから一人づつ脱落していくわけだけれど、私のお気に入りは男性のクラーク・ベッカム(Clark Beckham)と、女性のティアナ・ジョーンズ(Tyanna Jones)だ。ずっと残って欲しいと思う。

男性のクラーク・ベッカム(Clark Beckham)22歳は、なんとも軽く歌っているように見えて声の魅力がすごい。フィリップ・フィリップにも通じる、声を張り上げる時のパワーも男っぽくてアメリカ受けしそうだ。

青い髪で個性的なジョーイ・クック(Joey Cook)23歳も、一度聞くと忘れられなくなるような独特のトーンの声とノリの良さで好きだ。なんだか天才なんだろうなと感じさせる人。日本だと確実に不思議ちゃんの部類だけれど、好きな人は大好きになるタイプのアーティストだ。

女性のティアナ・ジョーンズ(Tyanna Jones)16歳は「Tightrope」という曲を歌って、伸びやかな声も音程も何もかもばっちりで、会場のお客さんを虜にして審査員の絶賛を浴びていた。

審査員のキース・アーバンが「一生歌い続けたいと言った君に感動した。歌は得意だから歌う人もいるし、仕事で歌う人もいる。でも君は喜びを感じるから歌うんだ」と言ってあげて、彼女を泣かせていたのがとても印象的。まさに真の言葉な気がした。

ステージ上で歌う一人から放たれた喜びが、ホール全体の人の気持ちを高めていくような感じ。テレビを通じてもそれが伝わったし、彼女の歌で足がビリビリと響くような、いわゆる鳥肌になってしまって足を押さえた。

次にテレビに映ったジェニファー・ロペスが、私と同じように足を触っていたのが面白かった。鳥肌って、とりあえず触って治したくなるのは皆同じなようだ。実際、彼女は歌を聞いては「鳥肌が立っちゃった!」とよく言っている。

感動で鳥肌になる生理現象の理由っていったい何だろう。ちょっと調べてみたら、もともと鳥肌は獣や鳥が緊張や興奮で毛を逆立てること(威嚇)の名残だけれど、感動の場合はプロセスが違うらしい。

人間の場合は強い感情、感動が生まれると大脳が刺激されて体の筋肉(立毛筋)の収縮が起こり、それが鳥肌として現れるという。恐れや怯え以外に感動でも毛が逆立つのが人間。

感動そのものが他の動物にあるかどうかはわからないから、本当は人間独自のものかは知らない。昔から「感動に打震える」という言葉もあるし、心の動きが体に現れるというのはわかる。打震えた結果が鳥肌になる人もいるということか。

●感動を歌のスパイスに使う

ちょっと前に流行った、青と黒か白と金のドレスの話題の時期がほとんど一緒だったので、アメリカと日本ではあまり時間の差なく放映しているみたいだ。話題のドレスの本物を着て歌った候補者がいたのだ。

私は写真も青と黒に見えたし、ステージ上でももちろん青と黒だったので何が不思議なのかわからないけれど、夫は写真は白と金に見えたと言う。今まであった錯覚の図と違って、別の見方があると言われてもそっちの見え方にできないのが本当に不思議な写真だ。

今シーズンから、合格の結果発表の直後に一人づつすぐ歌う形式にしている。動揺を押さえて気持ちを切り替えるのが大変そうだけれど、うまくいく人は感動を歌のスパイスに使えているようだ。

以前ほどの高視聴率ではなくなり、放送回数を減らすことも目的なのかもしれない。こうなると録画の整理もしやすくなっていい。

録画は気に入った歌のシーンと審査員の評価コメントだけ残して残りを消すと、一時間のものも16分くらいに短縮できる。審査員の評価コメントを残すのは、心からの賞賛を得ている人を見るのはとても気持ちの良いものだからだ。審査員三人の中には厳しいことを言う人もいるけれど、どう厳しく言うのかも参考になっている。

アメリカの公式サイトを見てしまうと、まだ知らない先の結果がわかってしまいそうで、あまり見たくない。Youtubeのリンクもどれが違法性がないかわかりにくいので、候補者に興味のある方は名前で検索してみてほしい。

・FOX アメリカン・アイドル シーズン14
< http://tv.foxjapan.com/fox/lineup/prgmtop/index/prgm_cd/2190
>

録画残量の問題で過去のアメリカン・アイドルの録画を消す作業をしている。ずっと昔だとさすがにもう見なくなってるものも多かったのだ。最後に一回チラッと見てから消しているけれど、録画に残した曲なだけあっていちいち確認しながら泣いちゃってつらい。候補者が去って行くシーンは特にその頃を思い出す。

実は今はすっかり忘れちゃっていた候補者も、WEBで検索したらCDを出しているのがわかると嬉しい。日本のアイドルを応援する人も、これからどうなっていくのかずっと気にしていくのだと思う。昔好きだった人の今というのは、永遠に気になるものなのかもしれない。

【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
< http://www.eimu.com/
>

冷凍庫が欲しい。冷蔵庫ではなくフリーザーだけのやつだ。あれがあれば肉も魚もうどんもたっぷり入れられるのに。うちの冷蔵庫には二か所冷凍スペースがあるけれど、それでも到底足りなくなってきている。でもあまり貯めると停電が怖い。


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■Take IT Easy![48]
仕事が生み出す価値

若林健一 / kwaka1208
< https://bn.dgcr.com/archives/20150331140200.html
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こんにちは、若林です。今回は、仕事がどれだけの価値を生み出すものかを評価することが必要、というお話。主にIT業界のことですが、他の業界でもほぼ同じことが言えると思います。

私たちIT業界のお仕事は、「人月」とか「人日」という単位でその仕事量を計ります。例えば、「二人月」といえば二人の人間が一か月かかる仕事量という意味で、当然二人でやれば一か月で終わりますが、一人でやれば二か月かかります。

実際にはそんなに単純なものでもなくて、二人で分担するには分担を決めたり、分担している作業を確認し合うためのコミュニケーションの時間が必要になるため、その分の仕事量が増えることもあります。

そして、その「人月」に単価をかけたものが、開発にかかるコストとなります。もちろん、実際にはそれ以外の諸経費などが加算されます。

単価は人によって異なり、経験豊富なレベルの高い人は単価も高く、そうでない人は安くなります。

であれば、安い方がいいか? というとそうでもなく、当然仕事の質やスピードが違いますので、経験値の低い方だと期間も長くなってしまうため、単純計算でのトータルのコストとしては変わらないこともあります。

ケースバイケースではありますが、もし単純計算で同じコストになるなら、レベルの高いエンジニアの方が仕事の質も高いはずなので、優秀なエンジニアを雇って短期間で作り上げた方がメリットがあると思います。

仕事を受ける側は、この「人月」と「単価」をアウトプットとして依頼された仕事の仕事量を見積もります。

仕事をお願いする側としては、これらのトータルが安い方がいいので、相見積もりを取って競わせて価格を下げさせ、受ける側はなんとかして仕事を取りたいので、「人月」を削るか「単価」を削って安くなるよう努力します。

「人月」とは元々かかるはずの仕事量なので、これを削るということはどこかにしわ寄せが来ます。その分仕事を減らす(目標を低くする)という方向に行けば問題ありませんが、多くは「サービス残業」と呼ばれる給料の出ない残業であったり働く側に無理が生じます。

「単価」を減らすと給料が減りますので、やはり働く側に無理が生じます。

このようにして、仕事の価値は下がっていってしまうのですね。

仕事の価値が「どれだけの人が動くか?」で決まってしまっている現在、「生み出す価値」に対する評価や議論が行われていないことが問題だと私は感じています。

現在の価値の決まり方では、「より良いものを作ろう」という方向には動きにくい。「より良いもの」を作るためには、コストはプラスに働きますので、「値段が上がる」となった時点でその議論が止まってしまいます。

しかし、100万円のコストを上乗せして作ったものが、1,000万円の利益を生むとなれば、どうでしょう? 100万円の投資で900万円の差額を得られるのなら、積極的に投資するという考え方になると思います。

このような考え方にならないのは、投資がどれだけの価値を生むのかを仕事を出す側が評価できていない点にあります。創出される価値の評価が正しくできていないから、コストだけが浮き彫りになり、「それは無駄」という結論にな
ってしまう。

もし生み出す価値が評価できて、その価値に見合う投資(開発コスト)であることが分かれば、あえて無理な値下げ競争をすることもありませんし、働く人たちが相応の報酬を得られれば購買力も上がり、市場が活性化する。そんな良いサイクルが回っていくはずなのです。

もちろん、それが理想論だということも分かっています。「生み出す価値」が評価通りの結果になればいいのですが、評価通りにならない可能性もありますので、やはり開発コストは下げたい。

しかし、そこは主に仕事を出す側である企業、特に大手には頑張ってもらって現在の価値の決まり方を変えて欲しいところです。「生み出す価値」ベースで仕事が評価されるようになれば、日本のもの作りはより良い方向へと進んで行くに違いありません。

【若林健一 / kwaka1208】 kwaka1208@pote2.net
crossroads
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CoderDojo奈良
< http://coderdojonara.wordpress.com/
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■おかだの光画部トーク[133]
盛況でした「第一回AUGM神戸」

岡田陽一
< https://bn.dgcr.com/archives/20150331140100.html
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2015年3月29日(日)第一回AUGM(アップル・ユーザーグループ・ミーティング)神戸を開催しました。関係者含め約150名が参加し、盛況の中、無事終了しました。

昨年11月に行われた「神戸ITフェスティバル」内の企画「Macintosh 30 Years Meeting KOBE」を進めるにあたって
< https://www.facebook.com/events/336807573156747/
>

神戸大学医師の杉本真樹さんと意気投合し、神戸のアップルユーザーグループを立ち上げてAUGMをやろうということになり、事務局として裏方でいろいろと関わることになりました。

会場となった神戸情報大学院大学、神戸電子専門学校の先生、音響を担当してくださったサウンドクリエイトチームの学生のみなさん、出展いただいた企業のみなさん、出演いただいたスピーカーのみなさん、スタッフのみなさん、そしてご参加いただいたみなさん、おかげさまでとても素晴らしい内容のAUGMとなりました。

運営上の細々した部分で、反省点もいろいろとありますが、今後のイベントに活かしていきたいと思います。

当日のTwitterのまとめ
< http://togetter.com/li/801799
>

ということで、裏方として関わっていたのでセッションの内容をすべては追えませんでしたが、気になった内容をいくつかピックアップ。

まずはITジャーナリスト、nobiさんこと林信行さんのキーノートから、発売目前のApple Watchに関して興味深い話しがあった。

「目の前にいる人とのコミュニケーションをもっと大切にするために、iPhoneを鞄の中にしまって、情報は腕時計に表示される最小限の通知をちらっと見るだけにしましょう」というコンセプトの提案だそうだ。

Glanceという通知機能で、必要な情報をチラッと一瞬見るだけで内容を把握すればOK。

実際に現在の普段の生活を考えてみると、あまりにもスマホ中心になりすぎていて、誰かと一緒に食事していても、メールやSNSでiPhoneの画面ばかり見てしまって、会話がおろそかになったりしがちだ。

LINEなどでのいじめやトラブルも、そういう習慣が少なからず原因になっているのかもしれない。

Apple Watchのような小さな画面では、できることや得られる情報は限られているので、チラッと見てさほど緊急ではない通知であれば、わざわざiPhoneを出して返事しなくても、後でゆっくり時間がある時にすればよい。

目の前にいる人とのコミュニケーションをもっと大切にしましょうというのは、当たり前のことだが、現代の社会にとても重要なことだと思う。

そういう意味では、実験的にApple Watchを身につける生活も試してみたくなってきた。

そんな話の最後に、nobiさんからの「One more thing...」。書籍『ジョナサン・アイブ』< http://amzn.to/1BEPVYO
> の装丁デザインに関してパロディ動画を作ったそうだ。かなり本気で作られているこの動画は、4月1日に公開されるそうなので、お楽しみに。会場は大爆笑でした。


【岡田陽一/株式会社ふわっと 代表取締役 ディレクター+フォトグラファー】
< mailto:okada@fuwhat.com > <Twitter:http://twitter.com/okada41
>

2015年、マンスリーで開催中の「CSS Nite in KOBE。Vol.8」は4月24日(金)に開催。こもりまさあきさんに、Web制作効率化のための制作環境構築に関して「デバイス多様時代 2015年のWeb制作(仮)」を3時間。こちらも申込み受付がはじまっています。
< http://cssnite-kobe.jp/vol8/
>

効率よくWebサイトを制作するための、さまざまなノウハウを紹介するのですが、なにも怠けるために効率化するわけではありません。今まで、制作に多くの時間を割いていた部分を効率化し、時間を圧縮することで、制作に取りかかる全段階の、理解し情報整理する時間と、公開後に、しっかりとチェックし改善する時間を多く割り振ることができるのです。

限られた予算と時間の中で、制作の効率化はますます重要になっています。デザイナーやコーディングを担当しているWeb制作者のみなさんは、是非参加ご検討ください。

Vol.9は5月24日(日)『Webデザインの現場ですぐに役立つ Photoshop仕事術』も、申込み受付始まっています。こちらもチェックしてみてください。
< http://cssnite-kobe.jp/vol9/vol9list/vol9outline.html
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編集後記(03/31)

●里見清一「医師の一分」を読んだ(新潮新書、2014)。「私という現代の医者は、死ぬまで患者と家族につきあうのだから、寿命の番人みたいなものであって、つまりは『死神』の仕事まで担う。私はこれを良いとか悪いとか言っているのでない。ただ現代の医者は、その職責を甘んじて受けなければならない。それが『医師の一分』である」という筆者のシニカルで辛辣な筆致が快い。主題は「寿命の番人」の目から見た現代人の死に方と、そこでの医者の役割である。この本で提示されるのは、普通の病気での死に方とそれを巡る問題である。つまりこれは、読者である「わたしの死に方」に関することである。

患者は「自己決定」を迫られるタイミングがあるらしい。「昔ながらの、傲岸不遜で高圧的な医者による、方針の押しつけ」と「責任逃れの医者による、患者への決定権丸投げ」の二者択一しかないようだが、筆者はさすがにもうちょっとマシな「落としどころ」もあるだろうという。場合によっては、医者は「もう死にたい」という人間を叱咤激励して生かし、「生きたい」という人間に「贅沢言うな、もう寿命だからあきらめろ」と引導を渡す役割を果たすべきではないかという。要するに命の価値を、人間の尊厳を「寿命の番人」である医者に決めさせろということだ。暴論ではない。わたしは賛成である。

「死ぬなら癌がいい」と医者が言っているのは、あれは別に気障や韜晦の表現ではないことがわかった。癌死の長所は「予定が立つ」ということである。ということは「先が見える」ということでもある。病人の介護で何が大変といって、「先が見えない」のが一番辛いところだ。「癌である」「末期である」という病人に対しては家族も優しいことが多い。「もう先が見えている」のだから、そこまで優しくしようという余裕が生まれる。これが患者本人のメリットに直結するのは当然だ。余命を区切られ、死の恐怖に怯えながら闘病することになるのだが、周囲への迷惑が最小限ですむのだからそれでもいい。

ところで、他の病気より「癌の患者には優しくしよう」という国民的感覚があるらしい。「それ自体は悪いことではないが、やや不適切な表現を使えばそれに『つけこんでいるのではないか』と勘ぐりたくなることもある」と筆者は言う。有名人が自分も癌になったとか告白して、「あえていえばやや自慢気に闘病記などを書き、ほとんど『売り』にしているようなのをちょいちょい見かける。正直言うと私は、少なからず鼻白む思いを抱いてしまう。こんな『たいしたことない癌』よりよほどひどい、嫌な病気で苦しんでいる人は世の中にいっぱいいるのに、こいつは何様のつもりなのだろうか」。同感。同感。(柴田)


●hammer.mule の編集後記はしばらくお休みします