[3985] 機種選定というネバーエンディングストーリー

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《よくここまで無臭にできたもんだ》

■ネタを訪ねて三万歩[126]
 機種選定というネバーエンディングストーリー
 海津ヨシノリ

■グラフィック薄氷大魔王[447]
 新水性カラー アクリジョンを試してみた
 吉井 宏




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■ネタを訪ねて三万歩[126]
機種選定というネバーエンディングストーリー

海津ヨシノリ
< https://bn.dgcr.com/archives/20150930140200.html
>
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8月から9月にかけて大学も夏休みなので、どうも調子が悪くてダメですね。

いくつかの大学に関わっている中で、東京工芸大学(中野キャンパス)と多摩美術大学(上野毛キャンパス)へは、MacBookProとタブレット、各種ケーブル類を入れたキャリーバッグで出校していたのですが、都内をキャリーで移動するのは意外と重労働。

特に東京工芸大学は、都心の一番下を走っている地下鉄大江戸線なので大騒ぎ。エスカレーターが上下揃っている駅って意外と少ないのです。しかし、授業優先なので結局は、なし崩し的にダラダラとキャリーバックでの移動を続けていたのです。

しかし、今年から午前中は二松学舎大学、午後は東京工芸大学となって完全にアウト。もう耐えられない苦痛に悲鳴を上げていたのです。

もちろん文句を言う筋合いではなく、ひたすら我慢をしていたのですが、とうとう、MacBook Airでも買うか? と決める寸前ににVAIOの存在を思い出しました。

もちろん埃を被っているわけではなく、現役で色々と使っていましたが、何故か授業はMacというイメージが擦り込まれてしまっていたようです。とにかく見逃していました(猛省)。

要するにVAIOでHDMI接続すれば、電源だけを持って行くことで授業が出来ることに気が付いたのです。気がつくのが遅すぎですね。

ただし、実は何度か実験をしていたのですが、どうしても音声が出ないので諦めていたのです。結局14日目の授業の時は音声が出なくてもよかったため、割り切ってVAIOにしたところ、何事もなかったかのように音声が出てくれました。

もうこれで重い思いをしなくて済みます。ただし、スクリーンや資料を見ながらの講義では、タブレットペンは実用になりません。そこでマイクロソフトのワイアレスマウスを買いました。タブレットが直接使えるVAIOは、宝の持ち腐れと言うことに成ります。

これは液晶タブレット全般の欠点ですね。ソフトのメニューを自分の手で隠してしまうのも液晶のデメリットです。一般的なペンタブレットに意味不明なボタン類が搭載されているのと同じかも知れません。指が触れて誤動作の元になるので、私はあれが大嫌い。ですからすべてオフにしています。

●問題はクリーン・インストール

さて、ここでやっと本題です。ただし、8月の掲載分を焦って執筆していて、ギリギリで8月の掲載がないことを知って一か月放置したネタになってしまったことをはじめにお断りしておきます。

ということで、夏休みにMacBookProの活躍が激減するので、やっとの思いでMacOSXをYosemiteにすることにしました。

Adobe CC2015もOffice 2016もYosemiteにしないと使えないですからね。私のMacBookProはMountain Lionで止まっていましたので、最後の悪あがきといったところです。

問題はクリーン・インストール。まずはネットの情報を元に、USBメモリに起動ディスクを作成しなくてはなりません。

ところが、これが何度やってもターミナル処理で先に進めません。半日かかって、とうとう諦めかけたときにiPhoneに電話が入り、所用が発生して作業は中断することになりました。結果として、この中断は大正解でした。クールダウンという意味で。

4時間後に帰宅し、最後の試みとしてAppleの情報ページを調べることにして、唖然としてしまいました。当たり前なのですが、こちらの方が説明が単刀直入で無駄がなく、しかもターミナルで入力すべきテキストに間違いがあったことが判明しました。

ネットで見つけた間違いデータ
sudo /Applications/Install\ OS\ X\ Yosemite.app/Contents/Resources/createinstallmedia --volume /Volumes/MyVolume --applicationpath /Applications/Install\ OS\ X\ Yosemite.app --nointeraction

Appleのサイトで公開されていたデータ
sudo /Applications/Install\ OS\ X\ Yosemite.app/Contents/Resources/createinstallmedia --volume /Volumes/MyVolume --applicationpath /Applications/Install\ OS\ X\ Yosemite.app

よく見れば解ることだったのですが「このままコピー&ペーストしてください」を鵜呑みにし過ぎた失敗でした。良い子はターミナルなんて使わないですかね。

で、とりあえずこれで無事にUSB起動環境を構築することが出来ました。あとは起動システムをUSBに切り替えてインストールするだけです。

ところで、ここでまたまた大きなミス……いや、お笑いをしてしまいました。任せっきりで他の作業をメインマシンで行っていたので、USBから再起動後にまたまた上書きしてしまう、これを三回も繰り返してしまいました。

ここで、Adobe製品等のアクチべーションを返還することを忘れていたことに気が付き……三回も繰り返して私に知らせてくれたことに感謝。

ということで四回目にしてはじめてHDDをフォーマットし、クリーンなインストールが出来ました。まだまだコンピュータは発展途上ですね。

ちなみに今回のMacBookProよりも古いメインマシンを、Yosemiteにする事に躊躇しています。確実に重くなるのは明白。もうマシンを買い換えた方が精神的にも正しいと判断したからです。

ただし、問題は機種選定。あのMacProは本体内への拡張性がないので躊躇しているわです。さりとてiMacはもっと拡張性がない……いや拡張性に対する考え方を変えれば済むことかも知れない……だとしたらMacBookProの新しいのでも仕事は出来る……いやいや……と、ネバーエンディングストーリー状態がいまだに続いています。

それと、あと一つの問題点。それは機種が古いのでKeynoteやNumbers、Pages等が無料にはならないこと。

これはかなり困ったことでしたが、私の環境ではOfficeの環境の方が都合が良いので、過去のKeynoteのデータはPDF化またはPowerPoint化し、新規はPowerPointで作成することにしました。

Numbers、Pagesはそれほど使っていませんでしたし、なによりApple製品は全世界共通というルールで作成されていますので、日本語の組版ルールが少し変な部分もあり、この際割り切ってしまったというわけです。

例えば、句読点や引用符は本来は二分(半角)の幅を持っているので、二分を標準とする空きが入るべきで、Microsoft Wordでは正しく組版されるのですが、PagesやKeynoteでは全角空きになってしまうなど……。

いっそのこと、次はWindowsという選択肢も視野に入れたくなってきました。


■今月のお気に入りミュージックと映画
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[Centre of Everywhere]by JTR in 1991(日本)

JTRとは、スウェーデン出身の3兄弟(John、Tom、Robin)からなる新鋭の音楽ユニットです。8月26日発売のアルバム "On My Way" は日本オリジナルアルバムです。

彼らは日本のアニメ『セーラームーン』と漫画『犬夜叉』を知ってスウェーデンでイラストレーター・漫画家として活動後、2011年に東京へ移り住んだそうです。 好きな食べ物はラーメンで、一番好きなアニメは『少女革命ウテナ』、一番好きな漫画は『ナナ』という日本通なのがとても嬉しいです。しっかりと応援していきたいユニットです。

JTR - Centre of Everywhere
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[忍びの者]by 山本薩夫 in 1962(日本)

市川雷蔵の当たり役のひとつ。織田信長暗殺に翻弄される、伊賀忍者石川五右衛門の物語。当時は城健三朗と名乗っていた若山富三朗の、織田信長がなかなか迫力があっていいです。でも、私はマキ役の藤村志保さんが一番のお気に入り。無類の清楚な雰囲気は時代劇には欠かせませんね。最初に見てファンになったキッカケは「大魔神怒る」でした。

続編では一部の俳優が変更になっていますが、不思議なことに続編の方がお金の掛かったシーンが多くてビックリ。その後にシリーズ化され全部で八本が制作されています。なお、石川五右衛門としての作品は初めの二本だけです。

忍びの者
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【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/
怪しいお菓子研究家
yoshinori@kaizu.com
< http://www.kaizu.com
>
< http://kaizu-blog.blogspot.com
>
< https://www.facebook.com/yoshinori.kaizu
>

ほとんどエネルギーをfacebookに費やしてしまっていたのですが、Blogも細々と続けています。しかし、スパムが多くなりコメントを承認制にしたのですが、それでも面倒になってしまい、コメントをオフにしてしまいました。

もともとそれほどコメントは付かなかったのですが、一部の常連さんには申し訳ないと思っています。個別にコメント可能に設定すると、それはそれで後々別の方から突っ込まれそうですから。

ところで、ボーンデジタルさんで行っている月例セミナーの告知をすることを忘れていました。

10月の画像処理セッションは10月15日(木)の19時からです。
Photoshopの復習【応用力が付く最新バージョンの再点検】

◎講演内容
Photoshop CC2015の新機能と可能性について独自の視点で整理してみます。
・リンクされたアセットすべてに反映
・レイヤースタイル追加機能
・字形パネルの追加
・簡単な画像の書き出し

参加は無料ですが、申し込みが必要です。
< http://www.borndigital.co.jp/seminar/3943.html
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■グラフィック薄氷大魔王[447]
新水性カラー アクリジョンを試してみた

吉井 宏
< https://bn.dgcr.com/archives/20150930140100.html
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ちょうど一年前、「有機溶剤の臭いをさせずに立体制作」について書いた。溶剤系のパテやラッカーなどを使わず、水粘土やジェッソや水性アクリル塗料でどこまで可能か? と。

ふたつの中型立体を作ってみた結果、「ある程度はイケるけど、筆塗りではを使った場合の仕上がりには程遠い」だった。

当時、発売されたばかりで情報が少なく、試さなかったものにクレオスの「新水性カラー アクリジョン」というプラモデル用塗料がある。

水性アクリル塗料のアルコール臭でさえ許されない家庭環境と、水性塗料の塗膜の乾燥の遅さや強度の低さに対応して開発されたものらしい。レビュー記事などによれば、「塗膜はラッカー並みに硬いけど、隠蔽力が弱いのが弱点」だそう。

プレスリリースPDF < http://www.gsi.co.jp/up_pdf/20131212141126.pdf
>
Hobby Link Japan < https://hlj.co.jp/acrision
>

今年12月の展覧会に立体作品を出品する可能性があるので、テストしてみた。結論から言うと、「溶剤臭なし制作には最適だけど、隠蔽力が弱い色には苦労させられる予感」。

・ほぼ無臭

臭いはほとんどない。くんくんしてみると、水性ペンキやアルコールのような臭いがかすかにする程度。よくここまで無臭にできたもんだ。

・塗膜はそこそこ硬い

従来の水性アクリル塗料の「乾いてもペタペタべたつく感じ」がなく、カラッとしている。塗膜は水性アクリルよりぜんぜん硬い。薄塗りならラッカーと同等と言っていい感じ。

でも、厚塗り部分は爪が引っかかれば傷はつくし凹む。三日くらいおいて完全に乾けば、よほどの厚塗り部分以外は凹まなくなるようだ。

・隠蔽力が弱い色もある

ラッカーや水性アクリルなどと、隠蔽力に極端に差があるとは感じない。しかし、黄色やオレンジ系はほとんど透明色なので、白で下地を作ってから塗り重ねる必要がある。筆塗りでムラをなくすのはかなりむずかしそう。

・乾燥の早さはそれほどでもない

固形化し始めるのは早いかもしれないけど、ラッカーよりは明らかに遅い。乾いたと思われた厚塗り部分が表面しか固まってなくて、筆でいじってズルっと剥がれてしまうこともある。しっかり乾かないうちにいじるのはキケン。本格的導入にはドライブースが必要でしょう。

・筆塗り

細かい部分を筆塗りする場合、ラッカーだと筆の先端がどんどん乾いてしまってじっくり描けなかった。アクリジョンだとさすがに水性だけあって、適度に遅くて助かる。ありがたいのは、下地の色が溶け出さないこと。ラッカーや水性アクリルは下地が溶けて色が混ざって大変だったから。

・マスキング

普通にマスキングテープを使えるけど、ムラなく塗ろうとするとどうしても塗膜が分厚くなってしまう。マスキングテープを剥がすととてつもない段差がorz 段差を削ってクリアーを塗ればなんとかごまかせるけど。やはりエアブラシを使うのがベストだろうなあ。エアブラシ用の濃度調整はむずかしいらしい。

・その他

本格的な塗装は実家でラッカーを使うとしても、原型作業にアクリジョンをサーフェイサーとして使えれば助かる。分厚く塗っておいてサンドペーパーかけるのは十分イケる。あと、クリアーは筆塗りでもきれいだし硬い。

写真(特に説明なし)
< http://www.yoshii.com/dgcr/acrysion-P1070533 >
< http://www.yoshii.com/dgcr/acrysion-P9212195 >
< http://www.yoshii.com/dgcr/acrysion-P9212196 >

……どうしても実家制作に行く時間が取れず、東京の部屋で作業しなきゃいけない場合はアクリジョン一択、と言えそう。でも、ラッカーが使えるに越したことないかなあ。


【吉井 宏/イラストレーター】
HP < http://www.yoshii.com
>
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/
>

マンションの郵便受けにチラシを入れてる若いヤツがいて、通りすがりにちょっとにらんでやったら「おはようございます」と。で、そのチラシは近くの整体治療院みたいな店のもの。代表者の写真が……チラシ入れてたヤツだ〜! ……えらいなあw

・パリの老舗百貨店Printemps 150周年記念マスコット「ROSEちゃん」
< http://departmentstoreparis.printemps.com/news/w/150ans-41500
>

・rinkakの3Dプリント作品ショップ
< https://www.rinkak.com/jp/shop/hiroshiyoshii
>

・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
< https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii
>

・ハイウェイ島の大冒険
< http://kids.e-nexco.co.jp
>

・App Store「REAL STEELPAN」
< https://itunes.apple.com/jp/app/real-steelpan/id398902899?mt=8
>


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編集後記(09/30)

●「五十代の終わりからから六十代にかけて、読書好きのおおくは、齢をとったらじぶんの性にあった本だけ読んでのんびり暮らそうと、心のどこかで漠然とそう考えている。現に、かつての私がそうだった。しかし六十五歳をすぎる頃になるとそんな幻想はうすれ、たちまち七十歳。そのあたりから体力・気力・記憶力がすさまじい速度でおとろえはじめ、本物の、それこそハンパじゃない老年が向こうからバンバン押しよせてくる。あきれるほどの迫力である」。と津野海太郎「百歳までの読書術」にあった。わたしはいま、それほど差し迫った老いは感じないが、いずれ本が読めなくなったらと考えるだけでこわい。

身体的な老化は避けようがないうえ、70歳をこえれば、殆どの人は慢性的な収入激減状態を黙々と受け入れるしか手がない。自分の暮らしから読みたい本、必要な本を買う経済力が急速に失われる。わたしなんか50歳で自由人になったから、早くも60歳でそうなった。40代のダブルインカム、妻と合わせてトリプルインカムの時代は、本の値段を見ないでドカドカ買ってもへいちゃらだったから、ここ10年の本の購買力は当時と比べるとほとんどゼロに等しい。それでも読みたい本は読める。買わなくても読める。公立図書館のおかげだ。じつは金に余裕がある頃は、図書館を無料貸本屋などとバカにしていたわたしだ。

津野は「収入減老人がこらす工夫のあれこれ。それが防御的な書物削減法の肝所ということになる」という。つまり、図書館の利用だ。今の図書館は昔の図書館とは全然違う。必要な情報が Online Public Access Catalogue(電子化された蔵書目録)で簡単に入手できる。津野の住むさいたま市には23の図書館がありおよそ250万点の蔵書、県立図書館3館では専門書が150万点もある。複
の地域図書館の蔵書目録が電子的に統合されたことで、大学図書館クラスの
を持つ巨大図書館がとつぜん身近に出現した、ということになる。たいていのことは地域の図書館ネットワークでまにあうのである。

わたしの行く図書館は、戸田市は6館、川口市は9館ある。それぞれ家の近くの
をベースにして、OPACで検索した本の受取と返却に利用する。残念なことに地元・戸田の図書館の蔵書はお粗末だから、もっぱら川口市の図書館に通う。一番近い(500m以内)戸田市の図書館分室には、それほど頻繁には行かないのだが、女性司書にすっかり顔と名前を覚えられていて、カウンターに立つだけで「本が届いています」と言われるのだ。恥ずかしいタイトルの本のときは、ほんとに恥ずかしい。ときどき分室の書棚を見て回り、わたしの教養がしのばれるタイトルを借り出す。年寄りの見栄である。ちゃんと読むけど。(柴田)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4860112741/dgcrcom-22/
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津野海太郎「百歳までの読書術」


●Ingress続き。いつも白いポータルが並ぶ、お寺の中の有料庭園があった。これならガーディアンメダルがもらえるだろうと、お金を払って入り、かたいポータルにする。が、庭園を出るや否や壊される。

攻撃はできるけれど、オーナーにはなれない距離ということが判明。そうか、だからいつも白かったんだ。目的は果たせなかったが、蓮の花が美しかったので良し。

このゲームをはじめてから、お地蔵さんや宗教施設が結構あることを知るのだが、寺や神社、新興宗教などは大きく立派な建物という印象を持っていた。

が、教会は違っていたわ。ポータルキーになんちゃら教会とあって、そこを探すのだが見つからない。よくよく見ると、民家や長屋、ビルの一部屋が教会になっていたりするのね。もちろん立派な教会もあるんだけれど。

そういう民家教会は暗くて不気味で人がいなさそうで、仏教徒なせいか近寄りがたいし、無理してオーナーになってみても、速攻壊されてしまう。民家教会は、何故か敵味方とも維持できないし、維持しようとする人もいないようだ。続く。 (hammer.mule)