《走りながら考えます》
■挑んで死にたい、ダンボールアーティストとして[16]
2016年の抱負とデジクリのテーマ
いわい ともひさ
■グラフィック薄氷大魔王[460]
「Procreateはホントに良い」他、小ネタ集
吉井 宏
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■挑んで死にたい、ダンボールアーティストとして[16]
2016年の抱負とデジクリのテーマ
いわい ともひさ
https://bn.dgcr.com/archives/20160120140200.html
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●2016年は勝負の年!
皆様、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
ということで、2016年が始まってしまいましたね。2015年も終わってみれば、あっという間の一年でした。
2015年は準備の年と位置付けて、自身がやろうとしている事業について考え、様々な仕事を経験し、多くの人と会いました。
ダンボールアーティストという肩書きで活動をしており、これからも様々な作品を作っていきたいと考えていますが、それだけではなかなか満足な収益が得られません。
もともとダンボールアートだけで食べていけるとは思っておらず、自身で製品を開発して販売していくことを計画していて、2015年は様々な仕事をする傍らでダンボールアート作品を作り、製品の案を考えていました。
今年はそれを形にして世に送り出します。売れてくれなければ生活できなくなるので、必死ですよ(笑)
●ものづくりへのこだわり
当初は紙やダンボールという素材にこだわったものづくりを考えていましたが、現在はもう少し幅を広げて、木も選択肢に含めています。
ディズニーから子ども向け映画の宣伝用に、ダンボールアート制作の依頼をもらったことが、紙やダンボールという素材でものづくりをすることを考え始めたきっかけでした。
最近の子どもは生まれたときにはすでに3DCG映画が当たり前で、そのような映像に見慣れてしまっており、映像そのものに対する驚きはそれほど大きくないそうです。
高度な技術を使ったCG映像よりも、ダンボールという身近な素材で作ったキャラクターの方が子ども達に響くのではないか、というのがディズニー側の考えでした。
狙いはズバリ的中し、子ども達はダンボールで作ったキャラクターに強い関心を示してくれました。結果的に触られまくって破壊されたんですが(苦笑)
しかし、子どもたちにとっては目の前のダンボールアートに触ってみたいという気持ちがあり、ゲームにばかり関心を持っているわけではないことがわかりました。
もしかしたら、ここに商機があるかもしれないと考えるようになり、市場に出ているダンボールを素材にした製品を調べてみました。
そして、もっとおもしろいもの、売れるものが作れるんじゃないかと思うようになりました。
今の子ども向けおもちゃに樹脂や電子部品を使ったものが多いのは、皆さんご存知のとおりですが、ブームが過ぎ去った後、それらは粗大ゴミです。
子ども向けのおもちゃの末路が、その子ども達の行く末を塞ぎかねないゴミであるとは皮肉なものです。
おもちゃに限らず、車や家電製品など、完全なリサイクルが難しい製品は多くあります。
私自身、スマートフォンやパソコンは仕事に欠かせませんし、家電も必要です。そのような製品を作ることも使うことも否定しません。ただ、もう少し環境負荷の低い製品が増えても良いのではないかと考えています。
環境のことを考えろと押し付けがましく訴えるのではなく、皆が夢中になれるような製品を生み出し、それが結果的に環境に配慮した素材であるというのが理想的・現実的なのではないかなと。
紙とダンボールから、木という素材にまで範囲を広げた理由は、昨年、鯖江うるしアワードで受賞したことがきっかけでした。
受賞した作品は商品化される予定ですが、考えた製品は漆器で、漆を塗る対象は木です。紙やダンボールは使われません。
事業で行うものづくりと個人制作を分けて考え、事業では紙とダンボールにこだわり、個人制作には制限を設けないという方法もありました。
しかし、木という素材を加えることは、私が持っているものづくりの基本精神に反するものではなかったので、幅を広げて考え、選択肢を増やすことにしました。
●2016年の「デジクリ」のテーマ
昨年は、ブログを始めてから会社を退職して独立するまでの「過去」を中心に書きました。
また、昨年連載をしているときに起きたことは番外編としてそのまま伝えてきたので、ネタの貯金がほぼなくなりました(笑)
引き続き、近況は伝えていきますが連載を続けるためのテーマが必要です。できる限り、読んでくれる人にとって、そして自分にとっても何か意味のあるものとしたいので、仕事に関することを書いていきます。
具体的には、マーケティング、ブランディング、営業手法、ITの活用法、などといったところです。新しいことを吸収しながら、書いていきます。
●今年やること
今年は、前年に準備したことを形にして行きます。具体的には製品の販売を始めます。
これまでは準備期間だったため、出費も最低限に抑えてきましたが、これからはある程度の金額を投入する必要があります。
当然、リスクを伴いますが、勝負するというのはそういうことです。すでに昨年から製品のアイデアを考え、複数の会社に試作をお願いしています。
重要なことは原価を見誤らないことです。製造費用以外にも、流通や営業経費など、見込んでおくべき様々な費用があります。
費用がかかるからといって利益を乗せすぎて、製品が高くなってしまっては誰も買ってくれません。原価を正確に見極めた上で、価格設定をする必要があります。
そもそも原価を試算した時点で売値が高くなりすぎるようであれば、どこに無駄があるのかを見直す必要がありますし、どう考えても採算が合わないようであれば、中止という決断も必要です。
宣伝だけを考えても様々な手法や媒体があり、何をどのように使うのが効果的であるかの考えなくてはいけません。
まあ、予算が限られているので、何でもかんでも自由にできるわけではありませんが。
いまは多くの人が情報収集にインターネットを利用します。ウェブサイトが製品を知るきっかけにもなりますし、どこかで製品のことを知った人がウェブサイトを訪れることもあります。
ここに手を抜いて、素人くさいデザインのウェブサイトに、イマイチな商品写真が並んでいては製品の魅力が半減します。
昨年、ダンボールアート作品をプロのフォトグラファーにスタジオで撮影してもらったときに、その重要性を再認識しました。ダンボールアート作品がとても魅力的に写っているのです。
プロと同じカメラを持っていたとしても、構図の感覚や適切なカメラ操作、照明設備などは素人ではなかなか真似ができません。
写真に数万円かけるかどうかで、その後の製品の売上に大きく影響するのであれば、そこには投資すべきですよね。
今年はさらに法人設立も予定しています。会社法が変わったことにより、資本金はなくとも株式会社が設立できるようになりました。
とはいえ、資本金0円では信用されないので、やはりある程度の金額は入れておくべきですし、公的手続きのための費用も何十万円かは必要です。
などと考えていると、時間もお金もすぐになくなっていきますし、計画に時間をかけすぎても物事が前に進みません。これまでと同様に走りながら考えていきます。
【いわい ともひさ/ダンボールアーティスト】
Blog http://iwaimotors.com/blog/
Twitter https://twitter.com/iwai
Behance https://www.behance.net/iwai
今週の一言:今年は勝負! 結果出す!
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■グラフィック薄氷大魔王[460]
「Procreateはホントに良い」他、小ネタ集
吉井 宏
https://bn.dgcr.com/archives/20160120140100.html
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●iPad Pro+Pencilの続編
まつむらまきおさんも、同じくクリアファイルやグリップで工夫してるとのことで、親近感w 僕のクリアファイルも曇った感じのもの。
透明度は低いけど線画ラフ専用なので問題ない。紙みたいな感触が良い。グリップはプラチナ萬年筆の、グラマーソフトというシリーズのペンのものを外して使ってる。Pencilは持ったときの重心が後方にあってイマイチなのだが、グリップでしっかり握れば気にならない。
ところで、クリアファイルなしでなんとか描けないかやってたら、ちょっと筆圧を強めにするとけっこう摩擦出るね。軽く描いてると気づかなかったけど、ツルツルカチカチが大丈夫な人は筆圧が強い人なのかも。
そういえば、ゴム球や導電布のペンではどうだろう? と試してみたところ……描きやすい! 画面が広いから手を大きく動かして、描き飛ばしのラクガキラフとか描くと非常に具合がいい。最初に登場したpogoペンですら描きやすい。
う〜ん、旧iPadは画面が狭いから描きにくいと思ってたのは正解だったようだ。とか言いつつ、Pencilがここまで性能がいいのなら、iPad Airやminiなどでも使えるようになればいいのになあ。
●Procreateはホントに良い
iPadのお絵描きアプリをいろいろ試してきたけど、今のところProcreateがベスト。アイディアスケッチやラフ描きにしか使わないものの、「仕事で使える唯一のアプリ」に近い。
他にも優れたお絵描き系アプリはいろいろあるけど、描画機能が優秀なのは当たり前としても、下記の3つの点を兼ね備えたものは他には発見できてない。あれば教えて。
https://itunes.apple.com/jp/app/procreate/id425073498?mt=8
・パソコンとの画像のやりとりがラク
DropboxやiCloud経由で、Macとの画像のやりとりがしやすい。他アプリのように「インポートして配置」ではなく、インポートした画像をサイズそのまま新規画像として開くことができる。レイヤーのままインポートできないのが惜しい(PSDレイヤーを書き出すのは可能)。
・投げ縄選択と編集機能
適当に描き散らかしたスケッチを整理したり、サイズを整えたりできるし、切り貼り移動もできるから、ラフ描きには最適。選択範囲を比率を変えずに拡大縮小したり回らないようする「マグネットをオン」がわかってから、頻繁に使うようになった。
・筆圧調整機能
環境設定の「筆圧曲線を編集」。Painterの「ブラシトラッキング」のように個人の筆圧をグラフで調整する機能。Pencilの標準の筆圧が堅すぎてまともに描けないアプリが多いのだが、この機能があるおかげで軽ーく描ける。
他には、左手のマルチタッチで回転や移動拡大が、紙に近い感覚でできるのは非常にイイ。拡大縮小表示が出来る分、紙より上かも。ただ、グリッド機能がないのが惜しい。画面回転や拡大縮小すると水平垂直やサイズ感がわからなくなるのだ。
それで、Illustratorで作ったグリッド画像を、上のレイヤーに入れることにしている。新規画像を作成するときにはグリッド画像を開いてレイヤーを作って描けばOK。
あと、二本指三本指タップのアンドゥーリドゥーが使いやすい!
もうひとつ、「指モード」を消しゴムにしておくと、Pencilで描いて指で消せる! 超絶便利。
しばらくわからなかったのが選択範囲を消去。選択範囲を作って三本指を上か下に動かすと「カット・コピー・ペースト」のボタンが出てくる。カットすれば消去と同じ。ペーストすると別レイヤーになる。そのへんPainterに似てる。
ブラシ先端の形状やテクスチャは、ブラシの「参照元」クリック「ソースを選択」→「Proライブラリー」から選べる。
ここまできれば、iPadでアイディア出しからラフの清書まで行けちゃう。
●液タブ首いたい
3週間くらいぶっ続けでラフ描きしてると、首が痛い〜。最悪に痛いわけじゃないけど、手元の液タブや紙に作業するのがツライ。軽いスマホネック状態。
原因はもちろん、iPad Pro等でラフ描きをずっとやってたから。下を向かなくていいように、机に台を置いて高くしたり気をつけてるんだけど、3週間もやってると限界が来る。
板タブ+普通のディスプレイに戻ると、姿勢がラクでホッとする。しかし、液タブでずっと描いてから、板タブで描けなくなってしまう弊害が出てる。
板タブで調子がいいときは「液タブいらんわ!」って思うくらい快適に描けるのに、液タブ使ったとたんにダメになる。そんなの十何年も繰り返してきてよくわかってること。
ラフ描き後半戦は液タブ・iPad Proは封印しよう! いやマジに、「液タブを使えなくしてしまえばいい!」とか思ってたから、最終手段として液タブを手放してしばらく板タブのみでやってて特に不自由してなかったのに。液タブを復活させたとたんに元の木阿弥。
iPad Pro+Pencilが描きやすいのは素晴らしいことだけど、「手元を見ながら描く」のは変えられない。姿勢良く真っ直ぐ前を見て、手だけ下で動かす板タブがラクに決まってる。
以前の結論どおり、液タブ的なものは「ラフの清書」など、どう考えても板タブより結果が良いものだけに使うって決めておくのが吉かもしれん。
【吉井 宏/イラストレーター】
HP http://www.yoshii.com
Blog http://yoshii-blog.blogspot.com/
割と順調に進めてるのに、一週間〜10日押しになってる。たいした作業量じゃない修正・追加対応なのに、1〜2日×仕事数で10日くらいすぐ遅れてしまう〜。非常にまずい。あの手この手を使って集中・効率アップ図るのみ……。
・パリの老舗百貨店Printemps 150周年記念マスコット「ROSEちゃん」
http://departmentstoreparis.printemps.com/news/w/150ans-41500
・rinkakの3Dプリント作品ショップ
https://www.rinkak.com/jp/shop/hiroshiyoshii
・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii
・ハイウェイ島の大冒険
http://kids.e-nexco.co.jp
・App Store「REAL STEELPAN」
https://itunes.apple.com/jp/app/real-steelpan/id398902899?mt=8
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編集後記(01/20)
●2012年制作のインド映画「女神は二度微笑む」を見た。かつての歌って踊るインド映画の面影はまったくない。しかも「本格派(って、意味よくわかんないけど)サスペンス」なのだ。この作品はインド・フィルムフェア賞(同国のアカデミー賞と呼ばれる)で監督賞、主演女優賞など五部門を独占したそうだ。舞台はコルカタ、どこだ? と思ったらかつてのカルカッタだった。地下鉄で起きた無差別テロがイントロ。そして、国際空港に降りたったのは美しい妊婦・ヴィディヤである。大きなお腹をかかえた若い女性が主役とは珍しい。一か月前にコルカタで行方不明になった夫を捜しに、ロンドンからやって来たのだ。
だが、滞在先だったホテルにも勤務先にも、夫の形跡がまったくない。彼女は相談に訪れた警察で知り合った、若くて誠実な警官ラナを巻き込んで、夫の捜索を始める。そして、夫と瓜二つの顔をしたテロリストの存在を知る。とにかく美しき妊婦というのがナイスな設定で、彼女のずいぶん強引な非合法的行動も、関わる人たちはつい許容してしまうし、なによりも性的な攻撃が避けられる。お約束のロマンスを描かなくてもいいのだから、映画制作はちょっと楽かも。彼女はIT技術者で、若干ご都合主義的だが、ぐいぐい核心らしきものに迫っていくのだから、たんなる健気な妊婦とは思えなくなる。何者なんだろう。
結局ヴィディヤは、ラナや国家情報局の切れ者幹部ばかりか、映画を見ている者までを欺くのである。想像もつかなかった急展開と結末。「どんでん返し」という表現とはちょっとニュアンスが違うが、いやはやトンデモなことになっていた。途中に細かな伏線が張られていたようだが、事前にあらすじさえ読んでいないから、何も気がつかない。いいように転がされる一方である。まあ、それはそれで気持ちいいんだけど。だが、すべてが解明されたわけではない。そうだったのか! いやー、うまく組み立てたねえ、なんて言えないわたしだ。いくつもの謎が残る。ネットでネタバレを読んで、再挑戦するつもりだ。
主演女優のヴィディヤー・バーランが素晴らしい。役柄である美しくて強い人妻のお役に立ちたい、なにか命じてほしいと思うのは、わたしだけではあるまい。善良で生真面目な警官役の青年もいい感じ。無能な保険外交員じつは殺し屋という、なんとも不気味な奴もインパクトがあった。ハリウッドでリメイクされるようだが、舞台はどこになるのだろう。ところで、恥ずかしながら、ものすごく重要なことがわからない。「女神は二度微笑む」の意味がわからない。ヒンドゥー教の戦いの女神の笑み? 原題は「物語」だって。ネットを探って得た結論は「見る前は絶対にネットを覗いてはいけない」であった。 (柴田)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B010OQEO7Y/dgcrcom-22/
「女神は二度微笑む」
●iPhoneアプリから「『聖戦士ジョン』死亡確認」という通知が飛び込んできて、聖闘士星矢を連想した。誰? ニュースを見に行くと「ジハーディ・ジョン」というタイトルになっていて、記憶と結びついた。著名人が亡くなった時、「死亡確認」なんて使わないしね。
仕事中のBGM続き。カフェでの仕事ははかどるよね、と書いていた。と、「スタバの男女とサラリーマン」という山里將樹さんのイラストと文章に出会う。スタバで仕事をされていた時の何気ない出来事を、面白く読ませてくれる。上手いっ!
そこのスタバには仕事や勉強を目的としたお客さんが多かったらしい。山里さんが仕事をしていると、久しぶりに出会った男女の会話が耳に入り、そして……という流れ。
途中まで読んで、まわりの人の気持ちはわからないでもないが、まぁそういうこともあるわなぁ、カフェだもん、と。そしてオチで爆笑した。この人はカフェでのこういう文章とイラストで、十分仕事になりそうだ。
作品は今のところ5作。「ラーメン店の暗闇の中で」も読んで爆笑した。上手いわぁ。他のも読んでみよう。
あれ? 脱線した。読むのに夢中になって時間が過ぎていってしまった……。
続く。 (hammer.mule)
「スタバの男女とサラリーマン」
https://note.mu/toumeishounen/n/nf67e6c0e6221
「ラーメン店の暗闇の中で」
https://note.mu/toumeishounen/n/ne7105859d076
note内の山里將樹さんの作品
https://note.mu/toumeishounen
山里將樹さんのサイト。
http://masaki-yamazato.com/
あっ、このイラスト知ってる! note以外にも読ませるのがあった。ほんと面白いわ。
林伸次さん。「女性の喋り方バンザイ」
https://note.mu/bar_bossa/n/n7a31176bb8f0
そうなのよ〜、なるべく気をつけようとは思うんだけど。後記でも脱線しまくり着地点が移動しまくり。