[4303] 懐古主義による総天然色の夢

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《ワインガールズは地元・塩尻の高校がモデル》

■腕時計百科事典[34]
 腕時計のブランド(ヴァシュロン・コンスタンタン)
 吉田貴之

■クリエイター手抜きプロジェクト[495]Illustrator CS6〜CC 2017編
 ドキュメントを縦横n分割し四角形を作成する
 古籏一浩

■映画ザビエル[31]
 懐古主義による総天然色の夢
 カンクロー





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■腕時計百科事典[34]
腕時計のブランド(ヴァシュロン・コンスタンタン)

吉田貴之
https://bn.dgcr.com/archives/20170313140300.html

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ヴァシュロン・コンスタンタンは、キャビノチェの精神を受け継ぐスイスの名門時計メーカーです。「世界三大高級時計メーカー」の一つに数えられ、またパテック・フィリップと共に「世界二大高級時計メーカー」ともいわれます。

●キャビノチェ

ヴァシュロン・コンスタンタンが創業した18世紀頃、ジュネーブには「キャビノチェ」と呼ばれる時計職人がいました。彼らは時計職人でありながら、同時に芸術や哲学など幅広い知識をもつ知識人でした。

ヴァシュロン・コンスタンタンの創業者、ジャン・マルク・ヴァシュロンもそんなキャビノチェの一人です。1755年に時計工房を設立し、当時は珍しかった複数人による時計製作をすすめていきました。

当時の時計産業の中心地はイギリスでした。スイスはいわゆる廉価品を製造していたようです。

●共同経営者による経営の改革

ジャン・マルク・ヴァシュロンの後継者である2代目アブラム・ヴァシュロン、また3代目ジャック・バルテルミー・ヴァシュロンも、キャビノチェとして時計を製作していました。

1819年にフランソワ・コンスタンタンを共同経営者として迎え入れると、同社は転機を迎えます。この頃から海外販売にも積極的になっていきます。

●近代時計産業への移行

1839年に製造技師ジョルジュ・オーギュスト・レショーが経営陣に加わると、ヴァシュロン・コンンスタンタンは時計工業に機械生産を導入します。

この二年後には、ほぼすべてのサイズの時計部品を製造できる工作機械を完成させています。これにより、時計職人が人間にしかできない作業に集中できるようになり、生産効率が飛躍的に向上しました。

「キャビノチェのブランド」としての印象が強いヴァシュロン・コンスタンタンが、スイスでいち早く機械生産を導入したことは興味深い事実です。また、これによりイギリスを追い抜き世界一の時計産業国となっていきます。

●マルタ十字

ヴァシュロン・コンスタンタンのシンボルマークとしてつかわれる「マルタ十字」は、1880年から使われています。これは香箱に設けられた、ゼンマイの巻き過ぎを防ぐための部品に由来します。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

イディア:情報デザインと情報アーキテクチャ
http://www.idia.jp/


兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。


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■クリエイター手抜きプロジェクト[495]Illustrator CS6〜CC 2017編
ドキュメントを縦横n分割し四角形を作成する

古籏一浩
https://bn.dgcr.com/archives/20170313140200.html

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今回はIllustrator用の二つのスクリプトです。どちらもn分割した四角形を作成します。似たような処理はグリッド作成でもできますが、スクリプトの場合、四角形だけでなく楕円形や多角形なども作成できます。

まず、「ドキュメントを縦横n分割し四角形を作成する」スクリプトです。

// ドキュメントをn分割して四角形を作成する
(function(){
var countW = prompt("横の分割数",2);
if (!countW){ return; }
var countH = prompt("縦の分割数",2);
if (!countH){ return; }
var w = app.activeDocument.width/countW;
var h = app.activeDocument.height/countH;
for(var y=0; y<countH; y++){
for(var x=0; x<countW; x++){
var rect = app.activeDocument.pathItems.rectangle(-y*h,x*w,w,h);
rect.filled = false;
rect.stroked = false;
}
}
})();

次のスクリプトは、ドキュメントでなくアクティブになっているアートボードでn分割します。

// ドキュメントをn分割して四角形を作成する
(function(){
var countW = prompt("横の分割数",2);
if (!countW){ return; }
var countH = prompt("縦の分割数",2);
if (!countH){ return; }
var saveCoords = app.coordinateSystem;
app.coordinateSystem= CoordinateSystem.ARTBOARDCOORDINATESYSTEM;
var idx = app.activeDocument.artboards.getActiveArtboardIndex();
var rect = app.activeDocument.artboards[idx].artboardRect;
var w = (rect[2]-rect[1])/countW;
var h = (Math.abs(rect[3])-Math.abs(rect[1]))/countH;
for(var y=0; y<countH; y++){
for(var x=0; x<countW; x++){
var rect = app.activeDocument.pathItems.rectangle(-y*h,x*w,w,h);
rect.filled = false;
rect.stroked = false;
}
}
app.coordinateSystem= saveCoords;
})();

四角形でなく楕円形を作成する場合は以下の行を変更してください。

var rect = app.activeDocument.pathItems.rectangle(-y*h,x*w,w,h);
rect.filled = false;
rect.stroked = false;

 ↓

var ellipse = app.activeDocument.pathItems.ellipse(-y*h,x*w,w,h);
ellipse.filled = false;
ellipse.stroked = false;


【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
http://www.openspc2.org/


たまたま本屋に行ったら、地元のTVやCMで見た人が本にサインしている現場に遭遇。本屋のお姉さん方が「早く早く! 本にサインしてもらいなよ」というので本を手にとってサインしてもらいました。先週に続いてサイン本を入手。

・ワインガールズ
https://www.amazon.co.jp/dp/4591154157/


・松山三四六
http://346web.jp/


本の発売日だったので、本屋まわりをしてサインしているみたいでした。ワインガールズは地元の塩尻志學館高校がモデルだそうな。実在の先生の名前とかを一文字変えるのは定番の手法みたいで。

・IchigoLatteでIoT体験
https://www.amazon.co.jp/dp/B06X3X1CHP

http://digiconcart.com/dccartstore/cart/info/2561/218591


・みんなのIchigoJam入門 BASICで楽しむゲーム作りと電子工作
http://www.amazon.co.jp/dp/4865940332/


・Premiere Pro & Media Encoder自動化サンプル集
http://www.amazon.co.jp/dp/4802090471/


・Photoshop自動化基本編
http://www.amazon.co.jp/dp/B00W952JQW/


・Illustrator自動化基本編
http://www.amazon.co.jp/dp/B00R5MZ1PA/


・Adobe JavaScriptリファレンス
http://www.amazon.co.jp/dp/B00FZEK6J6/


・4K/ハイビジョン映像素材集
http://www.openspc2.org/HDTV/


・クリエイター手抜きプロジェクト
http://www.openspc2.org/projectX/



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■映画ザビエル[31]
懐古主義による総天然色の夢

カンクロー
https://bn.dgcr.com/archives/20170313140100.html

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◎ラ・ラ・ランド

原題:La La Land
制作年度:2016年
制作国・地域:アメリカ
上映時間:128分
監督:デイミアン・チャゼル
出演:エマ・ストーン、ライアン・ゴズリング

●だいたいこんな話(作品概要)

他者から見れば笑われるような夢を追い求める街、ロサンゼルス。ハリウッドのカフェでアルバイトしながら映画女優を目指すミア。今では時代遅れのジャズを、思う存分演奏できる店をいつか持ちたいと考えるセバスチャン。

LA名物の渋滞の中で出会った、夢を追いかける一組の男女の物語をミュージカル映画全盛期の華やかさをもって実現させた、本年度アカデミー賞最多ノミネート作品。監督賞、主演女優賞など最優秀賞を多数受賞。

●わたくし的見解

個人的にファーストインプレッションは、タイトルがダサいと思っていて、アカデミー賞最多ノミニーだろうが何だろうが、スルーしかねない作品でした。

しかし、これもまったく個人的に「エマ・ストーン」ウォッチャーを自負しているので、色々チェックしてみると、なんと「セッション」の監督作品で、しかもミュージカルだと知り結果、公開日を待ちに待つ形で気持ちの上では多少食い気味に鑑賞いたしました。

「セッション」も、ある意味のジャンル映画というか、音楽もの(かつ青春もの)ではあったのですが、いきなりミュージカルって「大丈夫? デイミアン・チャゼルぅ(監督)」と実は鑑賞前は少々心配しておりました。

ところが、完全無欠の見事なミュージカル映画で、めちゃくちゃ楽しかったです。しかも、ブロードウェイで成功したミュージカルの映画化ではなく、オリジナル作品という点も、楽しくて忘れていましたけど何気に凄いことだと思われます。

その凄さは、アカデミー賞で最多部門ノミニー(美術賞、撮影賞、作曲賞、歌曲賞などではウィナー)という形で反映されています。

そもそもデイミアン・チャゼル監督は大学卒業制作の初長編監督作品で、すでにミュージカルを手掛けており、その時予算や技術面などで実現できなかったアイディアをモリモリ盛り込んだのが、今回の「ラ・ラ・ランド」なのだそうです。

私ごときが「大丈夫ぅ?」などと心配するに及ばない実績と実力の持ち主だった訳で、いやはや失礼つかまつる。

歌や踊り、その画面構成などが素晴らしく、もちろん単純にその演出だけでも楽しめた作品ですが、そこにさらに往年の作品へのオマージュがたくさん散りばめられており、そのジャイアンツ愛に勝るほどの映画愛が、鑑賞時の気分の高揚に拍車をかけたことは言うまでもありません。

いや言ってますけどね。映画史に残ると思われる、本作品のオーバーチュアでの、テクニカラーを意識したあえてカラフルな女性の衣装。現在の規格よりも横幅の割合の大きいシネマスコープの採用も、オープニングを筆頭に様々な場面でその効果を遺憾なく発揮しています。

物語は大変にシンプルで、正直、作品の一曲目ですべて語られています。はじめは予告だけで全部わかってしまうほどの、単純な男女の出会いと別れ、だと捉えていました。

しかし、CMなどで告知されている通り、夢追い人の物語に他ならないのです。私のような「セッション」ファンをニヤリとさせる、Jazz is deadの現実に、主人公の一人セブが葛藤する匂いづけと同様、ラブストーリーはあくまで夢の実現のサイドストーリーに過ぎない。

けれど、この単純なラブストーリーを珠玉なものにしているのは、一度は交差した二人の人生が、夢が叶ったことで離ればなれになってしまう、ベッタベタな切なさ。そして何より、この恋愛なくして二人の夢は実現しなかったことに尽きます。

この作品に向けられる批判は、おそらく「意外性のないストーリー」についてが最たるものかと想像しています。ただ私は、この手の作品に複雑な物語は不要だと考えています。

ミュージカルは歌と踊りを見せる必要があるので、視覚、音響の情報量が多くなります。舞台よりも映像の情報量が増える映画ならば、なおのこと。単純なストーリーは、ミュージカル映画の飽和しがちな情報量とバランスをとることに長けていると思うのです。

あと、あまりにも楽しくて忘れていたことが、もうひとつ。

そもそもミュージカルを受け入れられない人には、ストーリーの重厚さに関わりなく、まったく何っにも面白くない映画だと思うので、私や世間がどれだけ煽ってもスルーして下さい。

ただし、ミュージカル好きの自覚がある場合には(最終的な評価の保証は出来ませんが)オープニング10分だけで、映画一本分の価値がありますので必ずや鑑賞をおすすめします。


【カンクロー】info@eigaxavier.com
映画ザビエル http://www.eigaxavier.com/


映画については好みが固定化されてきており、こういったコラムを書く者としては年間の鑑賞本数は少ないと思います。その分、だいぶ鼻が利くようになっていて、劇場まで足を運んでハズレにあたることは、まずありません。

時間とお金を費やした以上は、元を取るまで楽しまないと、というケチな思考からくる結果かも知れませんが。

私の文章と比べれば、必ず時間を費やす価値のある映画をご紹介します。読んで下さった方が「映画を楽しむ」時に、ほんの少しでもお役に立てれば嬉しく思います。


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編集後記(03/13)

●原宏一「極楽カンパニー」を読んだ(1998/幻冬舎、2009/集英社文庫)。主人公は定年退職して三年、これからはのんびりとハッピーリタイヤメントを謳歌するつもりですよ、と公言した手前本音はいえないが、毎日が退屈で空白で寂しくてたまらない。

会社と一心同体で生きてきた、日本株式会社の申し子みたいな男である。まだ壮年というべき60代に、会社勤めという心地よいライフスタイルを奪われた男は、なすすべもなく図書館や書店に通う。いわば、「会社勤めの様式美」を失ってしまった寂寥感、空白感でいっぱいである。

わたしは50歳で会社勤めをやめて遊民に堕ちた(or上がった)から、主人公の気持ちは分からないわけではないが、切実感はぜんぜんない。だから、ちっとも主人公らの言動に共感を覚えないのだが、お話は面白い。

彼は図書館で同じ境遇の男と意気投合し、絵空事、馬鹿正直、度外視という三つの企業理念をもつ、フェイク会社「株式会社ごっこ」を設立し、潰れかかった喫茶店をベースに、この知的ゲームを開始した。会社勤めの様式美そのままに、彼が会社人間だった当時さながら、働き蜂の日々が続く。妻が海外旅行中の創業(?)である。

同好の士、つまりは社員を募集したら、わずか数日で100人以上が押し寄せる。この会社は給料が出ないどころか会費制だ。社員は年金や小遣いの持ち出しで働く。会社のない毎日がどんなに辛く侘しいものか、そんな自分に周囲の人間がいかに無理解か、といった心の葛藤を持つ男達が集まってくる。

応募者全員を社員にし、元喫茶店を手作りオフィスに変える。商談したり電話をかけたりする相手だってほしい。社員を二つにわけて片方を別会社の「株式会社得意先」にした。すべてを知り尽くした熱心な会社信奉者ばかりで、全員本物より本物らしくしようと夢中で働く。やがて支社も次々に設立される。

主人公の息子の恋人が有能なマーケッターで、このフェイク会社ムーブメントを画期的高齢者福祉事業だと見立てる。次世代への提言者になるという意義ある役割が、高齢者に与えられる。となれば高齢者にとって、これほどの生きがいはないし、メンタルケア、老いに直面した彼らの生きる励みにもなる。

フェイク会社はいわば高齢者に向けたアミューズメント産業、娯楽ヒーリング空間でもある。じつのところ左前店主救済事業そのものじゃないか、と見抜いたのが息子で、フェイク会社のフランチャイズ事業を企画し……、というわけでフェイクが生臭い話になっていき、やがて……。団塊の世代が定年を迎えるころを想定した話かもしれないが、物語が生まれたのはそれよりずっと前。文庫版では大幅に加筆、再編集したとある。どう変わったか、確認はしていない。面白かったがピンとこない、団塊より少し上のわたしであった。 (柴田)

原宏一「極楽カンパニー」(集英社文庫)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087464601/dgcrcom-22/



●「ラ・ラ・ランド」もう見はったんや〜! めっちゃ気になってます。/「マイ・インターン」のリタイヤ後の話が面白かった。あれもした、これもした、でも退屈だったので応募しましたという冒頭の部分。デニーロがいい味出してたなぁ。話自体はほんわかまったり。なのに妙に頭に残る。ああいう高齢者になりたい。

/先週の続き。経験がある。違うディレクトリを丸ごと書き換えたことが。気づいて自分でリカバリできる範囲なら、一瞬のことだしどうにかなる。今回は本人が気づかないままでコトが大きくなってしまった。

問題は元ファイルがない時だ。archive.orgで古いファイルを探したことや、ブラウザのキャッシュから書き出したことも。あの時の気持ちを思い出すと、心臓がキュッとなるよ。続く。 (hammer.mule)