《ぼくは決して○○の回し者ではありませんが》
■エセー物語(エッセイ+超短編ストーリー)[004]
文房具の話
雨雲と絡新婦
海音寺ジョー:超短編ナンバーズ
■グラフィック薄氷大魔王[541]
3Dプリンタを導入してみた
吉井 宏
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■エセー物語(エッセイ+超短編ストーリー)[004]
文房具の話
雨雲と絡新婦
海音寺ジョー:超短編ナンバーズ
https://bn.dgcr.com/archives/20171101110200.html
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◎文房具の話
文章を書くのが好きで、昔は百均ショップに売ってた三冊で百円のミニノートをよく使ってました。ボールペンはノック式のやつで、この組み合わせなら狭いところや路上でも、素早く効率よく筆記ができました。
家で書くときは大学ノート、ワープロ、パソコンと時代とともに道具が変わっていって、今では八ミリ角の升目ノートを使って短い物語や、短歌や俳句をちまちま作ってます。
その物欲と言いますか、文房具欲の変遷の過程で、ワークパンツのポケットに入るぐらいの、筆記に特化したPOMERA(ポメラ)という小さいワープロ機を数年前に購入して、これも今も愛用してます。
ぼくはキングジム社の回し者ではありませんが、この機械のコンパクトさをとても気に入っていて、この文章も屋外で、ポメラを使って書いています。キーボードを折り畳むことでコンパクトに収納できるDM20という機種で、今ではもう電器屋に売ってません。
キングジム デジタルメモ ポメラ DM20クロ リザードブラック
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B002YQ2Z6A/dgcrcom-22/
通勤電車で何か書く時に、たとえば狭い西武電車のぎゅう詰めの席でも、膝の上でパチパチとタイピングできるので、急いで書くものがあるときには重宝しました。
しかし経年劣化で、真ん中の折り畳み部分のヒンジ周りの樹脂や、パチッと二つ折りにした時にキーボードを合わせる留め具が折れたり欠けたりして、つぶれる一歩手前の状態になってしまいました。
それでも少しVの字に中折れしたキーボードで、執念深く現役マシンとして使い続けています。
超短編小説を書く知人、先輩の中にはスマートフォンで原稿を書く方がいて、よくあんな小さい画面で複雑な文章を練られるなあ、と不思議に思います。
しかし、よく考えたらこのポメラも画面は小さいので、短い物語には小さい画面(モニター)を使う方が、案外俯瞰がしやすくて合うのかもしれません。
併用している方眼ノートとボールペンは、ポメラと比べるとはるかに良く使っていて(ポメラは通勤が電車から自動車にかわってから、以前に比べて使用頻度が下がりました)、まず方眼ノートに書いてから、パソコンで清書して推敲して色々なところに応募しています。
パソコンは昔はノートパソコンでしたが、今はデスクトップのパソコンを使ってます。場所をとりますが、モニターが大きい方が作業効率が良好です。
ノートに書くときはほとんどボールペンを使います。ぜんぜん紙に引っかからず、筆圧が低くても発色がよいので、ジェットストリームというボールペンを長年使っていたのですが、ポケットにひっかけるためのクリップの部分がよく欠けるので、この点が不満でした。
仕事の現場、ラーメン屋の厨房で使ってたので、湿気や熱気で劣化しやすかったのかもしれませんが。その後、ユニボールシグノというボールペンを使ってます。
これは漫画家の江口寿史さんがツイッターで、めちゃくちゃ使いやすいと書かれてたので試しに買ってみたら、とても低い筆圧でスピーディに書けるので、あっさり乗り換えました。
ぼくは決して三菱鉛筆の回し者ではありませんが、手首が常に痛い人や書くスピードが速い人にはお勧めです。
毎日日記もつけています。日記には、手帳を使ってます。ぼくは糸井重里さんの回し者ではありませんが、ほぼ日手帳を四年前から使い続けてます。
携帯するのにちょうどいいサイズで、どんなボールペンやシャープペンを使っても破れたり裏写りしにくいので重宝してます。
書くことはその日おこった、とても酷かったこと。それからその日に達成できたことや嬉しかったこと。これは、この順番で書きます。その方が、その日一日がハッピーエンドで終わったかのような演出が出来るからです。
実際はハッピーなことなど滅多に訪れないのですが、幸せ感も不幸せ感も主観的な区分だとみなしていて、戦略的にこの順番が良いとの結論に達しました。
何十年か後に、あと何十年か生き延びられたと仮定して、何十年か後、すべてを忘れ果てた後に、日記を読み返したとき「ほお、自分は毎日劇的に良い日々をおくっていたのだな」と目を細めながら大満足を得られるであろうという遠謀で、この順番を守り続けています。
◎雨雲と絡新婦
ガレージに巣を張った蜘蛛が、だんだん巣の規模を拡張していって、要塞のような豪壮な様相を呈している。
駆除せねばとは思ってたのだが、この巣を払っても数日後には違う蜘蛛が網を張るのである。むなしい気がして放置していたのだ。蜘蛛は隣の空き地に領土を拡張していって、多重的にネットが広がっている。
ガレージから車を出す度に、ぼくは蜘蛛の巣を見やるのだが、こうも大きくなると殺虫剤で瞬時に蜘蛛を殺して、棒きれで巣を払うということが心底億劫になってきて、彼女の遂げるであろう最終の王国を見てみたいという衝動が大きくなってきた。
季節はずれの台風のせいで強く雨が降ってきて、ぼくは今日はやることやらねばならぬことが山積みであるにもかかわらず、安曇の図書館に春日井建歌集を読みに行こうとガレージを開けた。
ほとんど動かない巣の中央の蜘蛛がわたわた、と強い雨に撃たれて体勢を崩すまいと震えていた。
ぼくは蜘蛛は大嫌いだが、逆境に耐えて何とかしようとしている彼女の気概には敬意を覚えた。
台風がさらなる大雨をもたらすという明後日は選挙の投票日だ。その日は夜勤日なので、投票に行ったら、夜のために眠ろうと思う。
【海音寺ジョー】
kareido111@gmail.com
ツイッターアカウント
@kaionjijoe
@kareido1111
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■グラフィック薄氷大魔王[541]
3Dプリンタを導入してみた
吉井 宏
https://bn.dgcr.com/archives/20171101110100.html
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「3Dプリンタは自前で持たない主義」とか言ってたけど、撤回。まあ、一台あってもいいんじゃないかと。
ZBrushエバンジェリストの福井信明さんなど、ベテランの皆さんがお勧めの「FLASHFORGE Finder」。カラリオ2台程度の安価なのに、驚くような高性能、ってことで。
FLASHFORGE Finder
http://flashforge.co.jp/finder/
福井さんのZBrush Core入門サイト
http://zbrushcore.club/
●第一回テスト出力「高さ調整は重要」
さっそくテスト出力。rinkakでカラーフィギュアを作った時の3Dデータが、そのまま使える。サイズもそのまんまで。
福井さんにチャット状態で教えてもらいつつ、専用スライスソフトで処理してプリンタに送信。
ドギャギャギャとすごい音! 輸送中ヘッドが動かないように、固定してあった結束バンドを切るの忘れてたのだ。あわてて切断。ヘッドがちゃんと動かなかったため、モジャモジャになって失敗。

最初は台の高さの調整が必要とのことでやってみたら、なぜか高すぎて台に貼る3Mのテープがバリバリ削れた。

再度調整しても高すぎて、ヘッドと台が接触してゴリゴリ音がする。手動でちょっと下げたらうまくいった。

とりあえず出力成功。1時間20分くらい。高さ約6cm。最低品質とはいえなかなかきれい。

まあ、出力したことに特に感激はないw
10年以上前から3Dプリンタ出力物を原型に立体制作してたし、フルカラープリントも数え切れないほどやったし、各種マシンで出力してもらったサンプル持ってるし、切削式と言えば発泡スチロールを削ってもらって巨大フィギュア作ったしw
初めてでもだいたい3個出力したら、出力できること自体には飽きると思う。興味は、出力そのものより「出力に足る作品を作らねば!」の方に向かう。
自分で操作して3Dプリントしたことがないことが引け目だったけど、これでもう大丈夫w
で、出力物の腹に大穴が。何だこりゃ? と思ったら、rinkakフルカラー石膏プリンタ用データに作成した、余った石膏の粉を排出するための穴だ! ってことはつまり、中空形状を出力しちゃったわけだ。

出力途中の内部がハニカム構造じゃなくて変だと思ったのは、わざわざ内部にサポートを作成してたんだ。時間も余計にかかったのだった。
●第二回テスト出力「最高品質」
内部の中空構造を削除して、穴をふさいだデータを最高品質で出力。(最低品質<標準品質<高品質<最高品質の4段階)
昨日、中空状態と気づかずにスライスしたら7時間だったのが、5時間と見積もられた。やはり内部のサポート作成に時間がかかってたらしい。
出力スタートすると、今回はちゃんと内部にハニカム構造ができてる。

さすが最高品質! 玉子の殻程度にはスベスベ。サーフェイサー吹いてちょっと磨けば原型に使えそうなレベル。

上から見ると品質の違いがよくわかる。等高線の密度が4倍?

rinkakフルカラー石膏のものと記念撮影

●第三回テスト出力「フィラメント交換」
今回はちょっとだけ大きめ。高さ10cm。最近作ったもののなかで、最も複雑な形のものを選んだ。
下から二番目の「標準品質」でプリント。内部のハニカム構造の充填率を下げて8%にした。出力時間ずいぶんかせげる。プリント中の細いハニカムを見ても強度に問題あるようには見えない。もっと下げても大丈夫だろう。
福井さんに教えてもらった他社製フィラメント、polymakerのグレーを使った。
毛羽立ちが少ないそう。
リールは本体に収納できないので、ベアリング入りのリールスタンドを使う。標準のリールが空になったら、polymakerのフィラメントを巻き直せば収納できそうだけどね。

5時間ほどでトラブルなく出力完了。数か所空振りしたっぽいスジがあるものの、標準品質でぜんぜんきれい。表面を簡単に処理して色を塗ってみたい。

下側は原理上どうしても汚くなる。複雑なものでなければ、上半分、下半分に分けて出力して接着するのもアリだな。

●塗装してみた
3DプリンタFinderの出力物に色を塗ってみる。複製のための原型を作るわけじゃないので、気負わず適当に済ませる。サーフェイサー塗ってはサンドペーパーを二度。

いきなり新水性塗料アクリジョンで塗装にとりかかったが……失敗 orz

アクリジョンのクセを思い出す前に塗り始めたもんだから「塗料が垂れてたまってしまうと致命的」を忘れてた。こうなっちゃうと、時間かけて完全乾燥後に削るしかしょうがない。
アクリジョンが優れてる点は、下地を溶かさないこと。ラッカーも水性アクリルも、下地が溶けるので筆塗りしにくい。塗り重ね回数多くなるけど、垂れさえ気をつければ、めちゃくちゃキレイな仕上がりになるんだよなあ。
ラッカー系塗料は少々溜まりができても乾けばほぼ平らになるのだが、処分しちゃった。タミヤのエナメル系は持ってるので、アクリジョンとどちらを使うか迷ったのだが、エナメル系にしとけばよかったかなあ。
とか言いつつ、あくまで色塗りテストなので深刻に考えない!
●完成したものの……
後でトップコート吹く以外完成。ボコボコの表面と目のガタガタorz
不器用な僕に1cm以下の円形が描けるわけがない。マスキング切り抜くのだって無理。大きけりゃそのあたりラクだろうってことで、僕のフィギュアはだんだん巨大化していって90cmまで行ったんだよっw

しかし、10cmでは塗るには小さいな。Finderの出力サイズ14cmくらいを標準に考えるかね。
所要時間は、出力に1日、サーフェイサー塗りから塗装完成まで6日。仕事の合間にちょっと塗っては、乾燥器に入れたまま半日って感じなので、正味6〜8時間くらいかな。
見慣れたらそれほどひどい仕上がりに見えなくなってきた。塗ってたときには「やっぱアナログ作業は不器用すぎてダメだ。しんどい。同じく時間を使うならデジタルでたくさん作るほうがいいや」とか思ってたけど、もう次に何作ろうかワクワクしてる。回復早いw
【吉井 宏/イラストレーター】
HP http://www.yoshii.com
Blog http://yoshii-blog.blogspot.com/
いつもはホワイトサフ吹くけど、今回使ったのはタミヤのサフなので、クレオスよりはかなり白く、まあこれでいいやと。
近所の環境上、スプレーもエアブラシも使えない。最終のサーフェイサースプレーや仕上げのトップコートのみ、人目を忍んで駐車場の隅っこで素早く吹いて逃げたりしてるw
・スワロフスキー干支モチーフの「ZODIAC」発売
https://www.fashion-press.net/news/33277
・スワロフスキーのLovlotsシリーズ「Hoot the Owl」
http://bit.ly/2ruVM9x
・ショップジャパンのキャラクター「WOWくん」
https://shopjapan.com/wow_kun/
・パリの老舗百貨店Printemps 150周年記念マスコット「ROSEちゃん」
http://departmentstoreparis.printemps.com/news/w/150ans-41500
・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii
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編集後記(11/01)
●「トマホーク ガンマンvs食人族」なるB級西部劇を見た(2015/アメリカ)。「男たちに待ち受ける、絶望という名の地獄」とか「映画史に残る、衝撃のラスト30分」とか煽り立てるが、それは勘違いというくらいのダメダメ迷作であった。B級映画好きのわたしにとって、タイトルからして好餌ではある。
西部劇で食人族……。南カリフォルニアの小さな町。原住民がインディアンではなくて食人族。彼らが登場するのは「衝撃のラスト30分」である。そこに至るまでが長い長い。町から三人の男女が姿を消し、納屋には惨殺死体が残されていた。保安官は原住民の仕業と判断し、三人の男と原住民の住処に向かう。
ここから延々と続く追跡行。チームワークはあまりよくない。見ていて居心地が悪い。一人は足を怪我しているが、妻が攫われたのだから一行に加わざるを得ない。途中で傷が悪化して脚切断の危機もある。結局チームから外れ、足を引きずりながら歩いて後を追うことになる。映画の大部分はこの追跡行である。
退屈である。我慢して見つつ考える。そもそもなぜ食人族なのだ。町から攫った三人は食用なのだろう。追跡チームは馬で移動しても何泊かしている。食人族の住処と町とは、それくらいの距離がある。住民三人を連れた食人族の移動シーンが想像できない。たぶん騎乗ではないと思うが、どうやって?
追跡チームは食人族の住処の位置を把握しているようだ。三人の男女を攫っていったのは食人族であると即断するからには、過去にもあったことなのだろう。だったら、インディアンを容赦なく滅ぼしたように、住処を襲って抹殺するのが西部の掟だろう。三人を救助できたとしても、どうやって町に帰るんだ。
退屈である。炎天下の原野をヨロヨロと歩く男。水と食料はあったかどうか覚えていないが、つまらないこと夥しい。こんなざまで食人族と争うのか〜。クライマックスの食人族との戦いは、凄惨な場面もあっていい感じだが、なにか物足りない。食人族というより食人家族だから人数(頭数か)も多くないし。
食人族のメイクはそこそこいいし、戦い方にバラエティもあって面白い。でも、延々と引っ張ってきたわりに、この見せ場はあまりにあっけなく終わった感じもする。もっとしつこく凄惨な場面を展開すれば、それまで忍んできた退屈さを帳消しにできたはずだ。なんか途中で腰砕けという感じがしたのだった。
それにしても、人食いの先住民の住処まで分かっているのに、どうしていままで放置していたのだ。インディアンは容赦なく殲滅したのに、なぜなんだ〜と言ってもしょうがないな。ガンマンの相手はプレデターでもエイリアンでもいいわけだ。まじめに考えてはいけない。これはこれでいいのだ。 (柴田)
「トマホーク ガンマンvs食人族」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01LNWU3VO/dgcrcom-22/
●ポメラ欲しかったっ。もうフリック入力に慣れて、スマホで多少長くても入力できるようになってしまった。/3Dプリンターで、自分のキャラクターが自宅で出力できるなんて。
/TSUTAYAオリジナル文具「HEDERA(ヘデラ)」のホッチキスは、折りたため、その形状がリップスティックのよう。きれい。
/そろそろ来年の手帳のことを考えないとなぁ。今年は気に入ったものがなく、もらったA6サイズのロクシタンのを使っていたが、書き込むスペースが足りず、月間カレンダー代わりになっている。デジタルと、必要に応じてプリントアウトしたもので補足。
来年のは十分なスペースのあるバーチカルタイプを用意するつもり。以前は24時間書き込めるものを使っていたが、今は夜中の作業はイレギュラーであると認識しているので(スケジューリングしないし、記録として使うにしても書き込む元気はないし)、5時〜22時ぐらいの欄が設けられていたらいいや。
日本製のは、紙の質が良く、印刷は筆記を邪魔しない濃さのものが多くて素晴らしいと思うわ。 (hammer.mule)
TSUTAYAオリジナル文具&雑貨
http://tsutaya.tsite.jp/product/stationery/index
ホッチキスは左上の
http://top.tsite.jp/news/lifetrend/i/37389248/photo/118338/
商品一覧
http://tsutaya.tsite.jp/product/stationery/hedera/index