[4448] SF(すこし・ふしぎ)の巻

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《良い書体をたくさん見よ》

■わが逃走[206]
 SF(すこし・ふしぎ)の巻
 齋藤 浩

■もじもじトーク[73]
 欧文書体を学ぶ
 関口浩之




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■わが逃走[206]
SF(すこし・ふしぎ)の巻

齋藤 浩
https://bn.dgcr.com/archives/20171102110200.html

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昼間っから布団で横になっているとどうでもいいことを考える。

そうそう、iPhoneのことをケータイと呼ぶ人はジジイなのだそうだ。

私なんざ、スマホもガラケーもひっくるめてケータイだと思ってしまうが、言われてみれば、今世紀初頭の高校生に向けた電話会社のアンケート調査において、ケータイで最も不要な機能のトップは通話だった。

このことを考えると、すでに「携帯する電話」という認識自体が前世紀的と言える。

ひとりでぼーっとしていると、いろんな「もしも」について考える。

そうそう、「携帯電話」とは誰が最初に名付けたのであろうか。持ち歩ける電話だから携帯電話。おそらく名付け親自身も、その立場を認識していなかったのではなかろうか。

それくらい直球、かつシンプルなネーミングだと思う。

初期の携帯電話は肩から下げる巨大なものだったが、もし最初から手のひらサイズだったとしたら、たとえば懐中電話と名付けられた可能性もあったはずだ。

だとしたら、略称は「カイチュー」である。

「あ、カイチュー忘れた!」とか「そこのカイチュー取ってくれる?」とか、ごく自然な会話がなされ、時が経つにつれ「スマホのことカイチューつて呼んでる。ダサ〜」などと言われる世の中になっていた可能性もあったわけだ。

カイチューといえば回虫である。

初めて回虫を知ったのは『ドラえもん』のひとコマからで、映画化もされたエピソード『のび太の恐竜』にそれはある。

のび太が恐竜について勉強するシーン、彼が積み上げた本のタイトルは、「大昔の動物」「恐竜の発見」「化石の見つけ方」「怪獣図鑑」、そして「回虫のおろし方」だ。

恐竜、怪獣、回虫という並びを児童漫画で平然としてのける、藤子不二雄のセンスは天才的だ。心から感銘を受ける。

そんなことを思い出していると、ゴジラやギャオス、ゼットンが怪獣でなく回虫だったら? なんて考えた。

もし怪獣映画が回虫映画だったら嫌だなあ、と思う。

そもそも回虫映画って何? そんなのあるのか?

ある! 『エイリアン』である。

『エイリアン』を簡単に言ってしまえばこんな話だ。

卵から生まれた歩く生殖器が、人の顔にくっついて寄生虫を産み付ける。体内で育った寄生虫は宿主の腹を破って現れる。

そいつは脱皮を繰り返し、頭がちんちんみたいな形の生き物に育って、宇宙船内を暴れまわる。

うわー、こう書くとB級映画っぽいなあ。実際リドリー・スコット監督自身も自らの作品をそう評しているが、『エイリアン』はシンプルで古典的な“コワイ話”を巧みにアレンジ、舞台を宇宙に移し、究極の美しさとリアリズムで恐怖を表現した確信犯的名作なのである。

今年はエイリアン前日譚の2作目『エイリアン・コヴェナント』が公開され、人工知能の危なっかしさと、人間どもの愚かさを、マイケル・ファスベンダーの、なんだかもやもやする素晴らしい演技で描かれたわけだが。

見終わった後、妙な感覚が頭から離れない。どこかで見た何かと繋がるような気がしてならないのだ。

『ブレードランナー』? 『2001年』?

もちろんそうだが、もっと私の根源にある何かだ。

そもそもなぜエイリアンの話になったかというと、回虫の話をしていたからで、なぜ回虫の話になったかというと、ドラえもんの話をしていたからだ。

そう! まさに『ドラえもん』。

てんとう虫コミックス13巻収録のエピソード「ハロー宇宙人」は、『プロメテウス』『エイリアン・コヴェナント』の元ネタに違いない!(と思わなくもない)優れたSF作品だ。全22ページ、まさに現代文明に警鐘を鳴らす壮大なストーリーと言えよう。

スネ夫とジャイアンが撮るUFOのトリック写真に対抗し、のび太とドラえもんは本物の空飛ぶ円盤を撮影することを計画する。

宇宙人を呼ぶのでなく、宇宙人を“作る”のだ。

小さなロケットに進化放射線源を取り付けて発射、火星の極冠付近に生息する苔に照射し火星人へと進化させ、UFOを作れる程度にまで文明を発展させて地球へ来させよう、というもの。

この物語において、のび太は「エンジニア」とよばれる人類の創造主に相当し、ドラえもんこそ、リミッター解除された人工知能を持つ、アンドロイドそのものではないか。

とくに印象的なシーンは、ようやく動ける程度に進化した苔に、ドラえもんが火を放つ場面だ。

「ほとんど枯れるだろうけど水を求めて動きまわる新種がきっと生きのこるよ」

このセリフ! まさに火星人にとってドラえもんはプロメテウスであり、マイケル・ファスベンダー演ずるデイヴィッドだと言えよう。

その結果、火星人は思惑どおり急激な進化を遂げるのだが、苔にとって彼のとった行為はホロコーストだと思うし、進化の過程になにかあれば、火星人はより凶暴な生物(=エイリアン!)となっていた可能性もあったはずだ。

そんなことを考え出したらもう、眠れなくなってしまう!

かと思ったのだが、さっき飲んだ薬の影響か、急激な睡魔が。。。

それではみなさん、おやすみなさい。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[73]
欧文書体を学ぶ

関口浩之
https://bn.dgcr.com/archives/20171102110100.html

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。今年も、あっという間に11月になりました。えっ、あと二か月で2018年になるの……?

今回のテーマは「欧文書体を学ぶ」です。

昨日の夜、自分が主催するイベント「FONTPLUS DAY」セミナーを行いました。二か月に一度、第一水曜日に「文字とデザイン」をテーマで、新宿で開催しています。

・FONTPLUS DAYセミナー Vol. 11
『定番フォント ガイドブック』刊行記念トークショー 〜 akira1975さん・
山田和寛さんをお招きして 〜
https://fontplus.connpass.com/event/69274/


●瞬殺だった「欧文書体と和欧混植」セミナー

セミナー会場の定員は80名なのですが、募集開始して約2時間で定員に達しました。僕のTwitterアカウントで「募集開始しました」と書き込み告知しただけで、毎回、即日完売するようになりました。

「書体とデザイン」をテーマとして、毎回、素敵な登壇者をお招きしてイベントを企画しているので、FONTPLUS DAYの知名度が上がってきていると思うのですが、「欧文書体と和欧混植」をテーマとしたセミナーは、あまりないので貴重な存在だったのかもしれません。

では、セミナー会場の写真と懇親会の様子をチラ見せします。
https://goo.gl/Fkmi78


参加された皆さま、ありがとうございました。そして、登壇者のakira1975さん、山田和寛さん、ありがとうございました。

●どうやって学べばいいのか

欧文書体は大きく分けて、「セリフ書体」と「サンセリフ書体」という二つのデザインがあります。セリフは和文書体でいう明朝体、サンセリフはゴシック体と呼ばれる書体と考えると、わかりやすいかもしれません。

世の中には、何万書体も欧文書体があり、どうやって学べばいいのでしょうか? 実は、質の良い欧文書体だけでも5万書体ぐらいあると言われて、フリーフォントの欧文書体を含めると、数えきれないほど存在するようです。

セミナーの中で、気になったキーワードを書き出してみました。

・欧文書体の善し悪しを知るには、たくさんの良い書体を見る
・欧文書体の善し悪しを知るには、書体の作りかたを学ぶ
・質の悪いフォントでは、ペアカーニングの値がない、またはあやしい
・有料だからといって、質のいい書体だとは限らない
・信頼出来るだけフォントファウンドリー(フォントメーカー)の書体を選ぶ

5つだけ書きましたが、これだけでも簡単ではないですね。まずは、質の良い書籍を数冊、読んで見るのが、近道だと思いました。

今回のセミナーのテーマでもあった「定番フォント ガイドブック」は、質の良い欧文書体が満載なので、これを何度も眺めて、わからないことがあったら、調べたり、詳しい人に聞いたりすることを、数年やり続けると一定の知識が得られると思いました。

●この書籍の装丁がすごい

まず、この写真をみていただきたいのです。
https://goo.gl/BYdL8u


ねっ、すごいでしょ。3cmぐらいの厚さがある書籍なのに、開くと、ペタッと平らになるのです。どのページを開いてもなんです。

厚い本の場合、机に上に置いて、調べものするとき、折り目をきっちりつけるか、何か重しをのせないと、本が閉じてしまう経験したことありませんか? 

この本はそれがありません。書体を辞書的に調べたり、見本をじっくり眺めて観察するには、非常にありがたいのです。

「コデックス装」というらしいですね。糸で綴った背中がそのまま見える形の製本で、味わいがありますね。

そういえば、今年4月のもじもじトークで小林章さん登壇セミナーに関連して、「欧文フォントの読み方」という記事を書いたのを思い出しました。

もじもじトーク[60]欧文フォントの読み方
https://bn.dgcr.com/archives/20170406110100.html


その時に印象に残っていたことは、「見た目で選べはいいじゃん」というキーワード。

ただし、それは、自分の見た目の判断だけでなく、「読み手にとってどう映るかの見た目で選んで、正しく文字を組む」ということ。

そのためには、良い欧文書体をたくさん見ること、美しい組み方をしている欧文をたくさん見ること、と言っていました。

今回のセミナーでも、akira1975さんや山田さんが「良い書体の見分け方のスキルをアップするなら、良い書体をたくさん見ること」と言ってました。

なので、僕が、欧文書体の参考ベスト3をあげるとしたら、今回の『定番フォント ガイドブック』に加えて、ドイツ在住のMonotype小林章さんが買いた『欧文書体 その背景と使いかた』と『まちモジ』を二冊です。

僕がオススメする小林章さんの著書
https://goo.gl/7qUZB2


「まちモジ 日本の看板文字はなぜ丸ゴシックが多いのか?」本は、フォント初心者にもおすすめです。もじもじトークの大先輩って感じのノリで楽しく書体を学べます。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/


1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。


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編集後記(11/02)

●「戦争と平和」を読んだ。いい歳してトルストイか、って。そっちではなく、百田尚樹のほうだ(新潮新書/2017)。何としても戦争を回避しなければならない、という強い想いから真摯に綴った、真面目な反戦論である。高校生にぜひ読ませたい本だ。百田尚樹が大っ嫌いな大人も読んで、反論してみましょう。

百田は「九条は守らなければならない」と言う人と、過去に何度も論議を重ねたことがある。しかし、彼らの主張はまったく理論的ではなかった。「九条があるから、戦争が起こらない」ということを、論理立てて話してもらいたい。そして、百田自身が「なるほど、言われてみればその通りだ。九条とはすばらしい」と思えたら、すぐに護憲派に転向してもいい考えているという。

しかし、九条信奉者の中に論理的な説明をしてくれる人は、今日に至っても現れない。「もし、他国が日本に武力攻撃してきたら、どうやって国土と国民を守るのですか」という単純な質問にさえ、納得いく答えがもらえない。それは、自衛隊を無くしてしまえという主張ですかと聞くと、大抵の人は黙ってしまう。

九条を残したいと言う(共産党以外の)ほとんどの人は、自衛隊を無くすのは不安に思っている。その明かな論理矛盾に気がついていない。九条信奉者は自宅に鍵が必要だといいながら、国家には鍵が不要だという。九条を信奉する年配の人に九条の矛盾と弱点を説明すると、殆どの人が納得する。しかし……

殆どの人は「改憲派」にはならず、「やっぱり九条とは大事だと思う」というセリフで終わる。百田は最近になってその理由がわかった。戦後70年わたってマスコミ、日教組、進歩的文化人(笑)などにより「九条教」というカルト宗教の信者にされていたのだ。理屈をいくら説いても「洗脳」はとけない。

60歳以上の人の多く、とくに団塊の世代はほぼ洗脳されている。高学歴ほど洗脳率は高く、もう容易なことではそれがとけない。わたしは年寄りだが洗脳されてない。50代以下の洗脳の浅い世代、なかでも20代以下の若者は洗脳を受けていない人が少なくない。だから選挙でも若い人の自民党支持率は高い。

百田の「日本が侵略戦争をするとして、どこの国を侵略すると考えているのですか」という問いに明確な答えが返ってきたことはない。具体的にアジアのどこかの国を侵略しようとしても、実現は不可能、空想以前の話である。護憲派の人たちだけが「九条をなくせば、日本は戦争をする」と思い込んでいるのだ。

「私たちは決して侵略戦争をしない。しかしもし他国から侵略されたら徹底して戦う」「私たちは決して侵略戦争をしない。他国から侵略されても抵抗しない」どちらがより戦争を回避できる可能性が高いかは言うまでもない。この本とは関係ないが、「戦争反対と唱えるだけで本当に平和が保たれるなら、憲法に『地震台風大雨反対』を明記しよう」というナイスな意見あり。 (柴田)

百田尚樹「戦争と平和」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4106107317/dgcrcom-22/



●ストリートビュー(以下ストビュー)ぼかしの件。走りましたよ、頑張りましたよ(笑)。体中が痛くて重い……。練習不足をひしひしと。

結局そこは民家であった。Google Mapsに「不適切なストリートビューを報告」されたのね。

報告では「ぼかしのリクエスト」ができ、顔・自宅・表札・自分の車またはナンバープレート・別のオブジェクトの中から一つ選べるようになっているのだ。

実体を見ることができて満足。記憶を元に現地に赴き、周りの家や景色を見て、ストビューと同じだ、ここだと見つけた時は、ちょっとした探検気分で楽しかったわ。

区画整備のできていない場所で、帰宅しようとしたら、一本横に逸れただけなのに、いや角地なので確認のためにうろうろしたため方角を失い、少し迷った……。 (hammer.mule)

一軒丸ごとぼかしの様子
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上からだと時空がゆがんでいたり
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報告はストビュー画面内から。右上の縦三つに並ぶ点をクリック
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