《自分の「問題行動」がよくわかってきた》
■ローマでMANGA[128]
待ち望んでいた中間講評の日
Midori
■グラフィック薄氷大魔王[558]
「なんで仕事が進まないんだろう?」他、小ネタ集
吉井 宏
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■ローマでMANGA[128]
待ち望んでいた中間講評の日
Midori
https://bn.dgcr.com/archives/20180314110200.html
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ローマ在、マンガ学校で講師をしているMidoriです。私の周辺のマンガ事情を通して、特にmangaとの融合、イタリア人のmangaとの関わりなどを柱におしゃべりして行きます。
●大雪と中止と調整と
イタリアの学年度は10月(小、中、高校は9月半ばから)から翌年の6月までの8か月間。だから、始まって4か月後の2月は中間講評の時期となる。
ローマのマンガ学校で講師を始めて20年。でも今まで私が講義をしていたのは成績に関係のないセミナーだったので、講評をしたことがなかった。
今学期から私のセミナーが最終学年三年生の正式コースとなり、2月の講評が執り行われたのだった。
私がいかにこの講評を待ち望んでいたか、以下のエピソードでわかっていただけるはずです。
どのコースも講師は二人いる。週に二回の授業を一回ずつ担当する。私は火曜日の受け持ち。もう一人の講師パオロ君は木曜日の受け持ち。中間講評は、その日に当たった講師が担当する。
2月の講評は、同月の最終授業日となっていて、その日はたまたま火曜日だった。私が講評をするんだ! よーし! と手ぐすね引いて待っていたら、22年ぶりの大雪になって、ローマ市は私立を含めた全ての学校の休校を決めた。つまり、この日の講評会は中止だ。
私はすぐに教務課長に連絡を取って、こういう場合はどのようにするのか聞いた。何しろ初めての経験だから、学校側の習慣的な対処の仕方を知らない(学校側から、流れた講評日についての連絡がないのはイタリア的)。
同じ週の次の授業であるところの木曜日にまわす(もう一人の講師が担当するから、私は講評をしない)のか、と。お答えは、木曜日でもいいし、次週の火曜日にしてもいいとのこと。
是非とも講評というものをしてみたいので、次週私の担当日に回して欲しいとお願いした。
日本の皆さんは「えっ、そういう適当なことでいいの?」と思ったりするかな。どちらかと言うと、言われるのを待ってしまう性癖の私が、自分からやらせてほしいというのは相当なことなのだ。
もう一人の講師、パオロ君にも礼儀として「私がやりたいので、来週の火曜日に講評を回すことにしたよ」と伝えて、その日を迎えた。
●教務課長のジョルジャ嬢の眼力
教務課長は校長の娘で、39歳の美女だ。公私にわたり、何か問題が起こると、ちゃんとまな板にあげて分析し、それに対処する方法をさぐる人。
ジョルジャが学校に入ったのは、もちろん校長の娘だから、というのが大きい。でも、彼女の聡明さと分析力の鋭さで、その存在感を示していった。ジョルジャが入ってから、面白いイベントやゲスト、ワークショップなども増えた。
娘のような年齢(実際にジョルジャの母上は私の一つ下)の彼女とは気が合い、友達付き合いをしている。こういう人とオトモダチになれるのは、人生の至福だと思う。
あ、ちなみに、私の担当日に講評を回す事に同意してくれたのは、オトモダチだから忖度(日本の報道で知った言葉)ではありません。
この年齢のイタリア人のほとんどがそうであるように、日本のアニメを見て育ち、日本の文化に興味を持っている。映画が大好きで、暇つぶし的に見て愉しむだけはなくて、監督や演出やストーリーの深さなど分析して愉しむ。
さて、講評である。授業をする教室ではなく、入学希望者のオリエンテーションをする別室で、私とジョルジャが並ぶ。テーブルを挟んで、生徒を一人づつ呼んで、今まで制作した作品を見せてもらう。
ジョルジャは丁寧に作品を見て、白黒原稿の場合は白と黒の割合の有効性とか、カラーの場合は全体のバランスや絵全体のトーンを決めるベースになる色の有無など、的確に指摘していく。
自分では絵を描かないけれど、長年たくさんの生徒の作品を見てきた蓄積と、映画やmangaやマンガやアニメを分析する頭でじっくり見てきた成果だ。
生徒の話にも耳を傾け、心理的な部分まで解析してアドバイスを与える。これ以上の講評者は望めないんじゃないかな。
こうしたジョルジャの講評の姿勢を間近に見たかったのも、講評をぜひともしてみたかった理由の一つなので大いに満足だった。
●私の講評
ユーロマンガコース在籍8人の講評をしてみて気がついたこと。
「絵が上手い人ほど、きちんとプレゼンテーションの体裁を保っている」
制作した原稿をリング式のクリアファイルに整理したり、課題ごとにバインダーにまとめたりしてきた。講評する方も見やすい。
要するに、人に見せることを考えている。人に見せることを考えるということは、人に伝えるということを意識するということだ。
人に伝えるという事を意識するというのは、自分の絵も何を伝えるために描いているのか、ということを無意識のうちにでも考えているということだ。
つまり、絵を描きながら、描いているものを客観的に見られるということではなかろうか。
8人の中で、特に描けない生徒がふたりいる。ふたりとも、コマの人物の周りによけいな線をいっぱいに描き込む。
地面のデコボコだったり、壁だったりするのだけど、コマの中で重要な人物や小道具と同じ太さの線でコマ一杯に描くので、見にくいことこの上ない。
二人とも口を揃えて、描き込まないと白っぽすぎるように感じる、と言う。
思うに、あるコマを描いている時は、近視眼的にそのコマしか、というより、描いているその隙間しか見ることができないのではなかろうか。
描いている物からちょっと離れて、客観的に見ることができないのだ。
ジョルジャと一緒に、何分かに一度立ち上がって原稿を遠くから全体を見てごらん、とか、原稿用紙を片手で持ってなるべく遠くに離して見てごらん、とサジェスチョンした。
●私の課題
私はペンでの原稿制作ではなくて、その前のストーリーボードの段階を授業する。ケント紙の原稿用紙ではなく、A4のヘラヘラの紙に鉛筆描きだ。
ネーム(フキダシにセリフも書き込んだストーリーボード)だから、人物の細かいところまで描いていない。
ネームって、見慣れないと読めない。見てもよくわからない。ペンでインクを入れた原稿と比べると、当然見劣りがする。そこで気がついた。
学年度が終わると、もう一度、教務課長と担当講師とで講評をする。期末試験のようなものだ。そして、三年生は在籍するコース以外の講師も交えて卒業試験に当たる講評を受ける。
コース担当講師以外の講師がネームを見てもわからない。ということは、プレゼンテーションに工夫をしてもらう必要がある。
構築法の授業というのは他ではやっていないから、なんで鉛筆書きのスケッチなんか持ってくるのだ? と、マイナス評価の対象になりかねない。
さらに言うなら、せっかく正式コースになったのに、構築法の授業という特殊性が無視されるのは困るのだ。
つまり、「人に伝える」、「見せることを意識する」というのを視野に入れて、生徒に準備してもらうように伝えねば、ということなのだ。
【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】
本文でも書いたけれど、2月の終わりにヨーロッパはロシアからの大寒波に襲われて、ローマも5年ぶり、積雪量でいうと22年ぶりの雪が降った。零下にまでなったからね。野菜が凍って農家は大打撃。
アスファルトがツギハギだらけのローマの道は、大雪で凍ってその後大雨で、モザイクが欠けていくように、継ぎ接ぎしたアスファルトが剥がれていった。その上を車が通っていくから、モザイクはさらに剥がれていく。
深さ10センチほどで、座布団ほどの大きさの穴があちこちに開いている。走りながらその穴を避けようとして、ハンドルを切る車やバイクが多くなって危ないったらない。
雨が降って、その穴を水が埋めてしまうと見えなくなって、まともにツッこんでパンクする車が増えているそうだ。雪降ってタイヤ屋さん儲かる。
夏暑く冬寒いというとげもメリハリのある気候が普通になって行くそうな。
↓ローマの穴ぼこを伝えるニュース
[注・親ばかリンク] 息子のバンドPSYCOLYT
MangaBox 縦スクロールマンガ 「私の小さな家」
https://www-indies.mangabox.me/episode/58232/
主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
http://midoroma.blog87.fc2.com/
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■グラフィック薄氷大魔王[558]
「なんで仕事が進まないんだろう?」他、小ネタ集
吉井 宏
https://bn.dgcr.com/archives/20180314110100.html
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●なんで仕事が進まないんだろう?
最近、「なんで仕事が進まないか?」の原因というか、自分の「問題行動」がよくわかってきた。
「うおお〜!」って仕事を猛烈に進めてる最中なのに、ちょっとした「どっちにするか決断しなきゃいけないこと」が出てくると、立ち上がってお茶を飲みに行ってしまったり、他のこと始めたりして、そのまま忘れちゃうんだw
しばらくしてその仕事に戻っても、自動的に決断が終わってるわけでもない。で、決めようとするとまた立ち上がってしまう。以下繰り返し。そこで立ち上がりさえしなければ3倍は早く進められるに違いないw
あと、熟考しても結論が出るようなものじゃなかったら、とりあえず二通りでも三通りでも進めてしまってから決断するほうが、たぶん早いんだろうな。
●4Kディスプレイで困る点
昨年からディスプレイの入れ替えが相次ぎ、一気に4Kばかりになってしまった。4Kの何が便利かといえば、画面解像度の設定がかなり自由。
1152x648という20年以上前の15インチCRTディスプレイみたいな解像度から、3840x2160っていうフルHD4枚分の広さまで、画面がボケることなく表示可能。
広くすれば文字が極小になってしまうけど、ファイル整理など多くのウインドウを出しっぱなしにして作業するには都合がいい。どんなソフトだって、パネルを出し放題にしても作業領域が狭くて困ることもない。
ただ、PDFなどの表示がここまで遅くなるとは思ってなかった。Acrobatは数年前に改良されて、プレビュー.app並みに素早いページめくりができるようになったのだが、それが台無し。4倍の画面に表示するのはMac Proでさえ負荷が大きいようだ。
KindleのMac版などもともと遅すぎて使う気になれないものだったが、4Kの画面では笑っちゃうくらい遅い。次のページをめくるだけならなんとかガマンするけど、ざっと内容を見渡すようにペラペラするのは不可能。
なぜ一般のPDF閲覧ソフトのように、サムネール表示を実装しないんだろう。
あと、Photoshopなどで100%表示にした画像が小さすぎる。そりゃ100%ピクセル等倍なのはわかるけど、倍寸に表示してくれないと不便。
○僕も最近知ったのだが、Macのディスプレイ環境設定でoptionキーを押しながら「変更」をクリックすると、選べる解像度がめちゃくちゃ増えるよ!
●メモ用紙の話
久しぶりにメモ用紙の話。昨年前半に実家にいたとき、仕事とプライベートの予定やチェック項目、書き留めておくことがめちゃくちゃ多かったのだが、その時やってた方法。
A3コピー用紙を2回折って畳むと裏表でA5サイズが8面できる。ノートの8ページ分みたいなもので、よほど書き込んでも数日はもつ。
これを持ち歩いていつでもメモる。数週間分のメモが畳んだ数枚に集約。紙が広くてどこに何が書いてあるか把握しやすいので便利だった。
用がなくなった紙は捨てるし、重要事項を書き写すのが面倒な場合は半分に切ってScanSnap。以前Evernoteのノベルティでもらった「保存するメモ帳」の大型バージョンってだけだけどね。
https://superclassic.jp/?pid=16591184
その後、東京に戻ってきてからもこの便利なメモ用紙の使い方を続けてみたけど、いつでも目の前にパソコンがある場合は、それほど便利でもなかったのでやめちゃった。今はA5の紙に戻ってる。
【吉井 宏/イラストレーター】
HP http://www.yoshii.com
Blog http://yoshii-blog.blogspot.com/
Androidスマホに貼ってある「ゴリラガラスの保護フィルム」。最近気がついたのが、指紋がぜんぜんつかない! ちょっとした汚れはつくものの、袖でちょっと拭えば取れちゃう。
今までは指紋や手脂が気になって、いつでも油脂取り眼鏡拭きなんかでゴシゴシやってたたものだが。すごいな。
・スワロフスキー「招き猫」と「HOOT HAPPY BIRTHDAY」が出ました。
http://bit.ly/2ni8HaD
http://bit.ly/2orkDIs
・スワロフスキー干支モチーフの「ZODIAC」
https://www.fashion-press.net/news/33277
・スワロフスキーのLovlotsシリーズ「Hoot the Owl」
http://bit.ly/2ruVM9x
・パリの老舗百貨店Printemps 150周年記念マスコット「ROSEちゃん」
http://departmentstoreparis.printemps.com/news/w/150ans-41500
・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii
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編集後記(03/14)
●三橋貴明「財務省が日本を滅ぼす」を読んだ(2017/小学館)。筆者はこの本の末尾に「財務省から『国税庁を飛ばされる』覚悟を決めた上で、日本国民に正しい情報を提供するべく、本書の執筆を思い立った。(略)財務省の警察力である国税庁から容赦ない攻撃を受けたとしても、本書に書かれたことは全て真実であることを断言し、筆をおくことにしよう。2017年10月」とある。
省庁中の省庁。日本一の天才集団。これが財務省の別名である。超エリート集団が日本を歪んだ方向に導いているという。国の借金は1000兆円超、国民一人あたり800万円の借金、このままでは破綻する、とか大いに国民の不安を煽り立てているが、これは本当だろうか。じつは虚偽の財政プロパガンダなのだ。
財務省は1990年代中盤から緊縮財政路線を突っ走る。それにより、日本のデフレ脱却が妨げられ、国民の貧困化、国力の衰退を促進している。そして制度を破壊し、国の形すら変貌させてしまうグローバル路線(政府の権限を弱体化させ、規制を緩和もしくは撤廃し、最終的には『小さな政府』を目指すべきという考え方)を正当化させた。それはまさしく、日本の発展途上国化である。
筆者は以前、テレビ番組で「日本国債は100%自国通貨建てであり、子会社の日本銀行が買い取れば政府の実質的な負債は消滅するため、財政破綻などありえない」と語ったが、その部分は編集でカットされた。財務省にとって最も不都合なのは、この事実が広まることだ。その後、筆者のスキャンダル、お約束通り財務省に仕返しされたのかも……。
財務省は自らの記者クラブ「財政研究会」を通し、マスコミをコントロールする。緊縮財政至上主義の論客を次々と新聞やテレビに送り出し、結果として日本国民は偽情報で洗脳されていく。国民が貧困化している中、御用学者に世迷い言を垂れ流しさせ、次なる増税の場を整えようとするのが財務省のやり口だ。
財務省は「社会保障を抑制しないと日本経済が破局を迎える」というプロパガンダを拡散し、御用学者を広告塔に使い、デフレ下の緊縮財政を継続している。社会保障費という需要を削減した結果、日本はデフレ脱却を果たせず、GDP成長をとり戻せず、財政悪化も続く。GDPが拡大しない限り財政は健全化しない。
財務省のご機嫌を損なうと、自省の予算を減らされる。財務省の権力に逆らい得る官庁はない。政治家、マスコミも同様である。財務省の緊縮財政に反対すると、国税庁という警察力=伝家の宝刀を抜かれるからだ。これが日本を滅ぼす緊縮財政の本質なのだ。財務省を上回る権力を与えられているのが国会議員であるが、頭脳の出来が違う。やがて緊縮財政至上主義に染められてしまう。
財務省では緊縮財政派が出世し、次なる緊縮財政派に権力を引き継ぐ形で「緊縮財政派の再生産」が続いている。財務省は国益より省益、前例踏襲主義を頑なに守っている。官僚の生きる目的は「出世」だそうだ。いま国会では財務省が大問題になっている。政権の責任だとは思わないがよく分らない。野党がズル休みしてのはよく分かる。財務省解体がベストなのかもしれない。(柴田)
三橋貴明「財務省が日本を滅ぼす」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4093885796/dgcrcom-22/
●ドラマ「オー・マイ・ジャンプ」で、右開きの漫画がはじめて採用されたのはイタリアだというエピソードがあった。
/「問題行動」わかりすぎる! どころか、頭だけ動いて選択肢が増殖する時も。迷っている間に全部試せばいいと思うことはあったが、そのパワーはなかったりする。
/有名な食パン屋さんの続き。百貨店以外だと、あとは「Cocoro」「パン工房鳴門屋」「Parigot」ぐらいかな。
大きな郵便局や区役所に予定があれば、Parigotに寄ってみたり、ポケモンGOのジムバトルがあればCocoroに行ってみたり。
パンより、ついシュークリームを買ってしまう「LEAI」にも行くことがあるなぁ。ここのシュークリームおすすめです! (hammer.mule)
オー・マイ・ジャンプ
http://www.tv-tokyo.co.jp/oh_my_jump/
8話が好き。漫画と絡めるの大変そうなのだがこれはアリ!
16日配信終了
https://video.tv-tokyo.co.jp/oh_my_jump/
Cocoro(ココロ)
https://tabelog.com/osaka/A2702/A270205/27015189/
パン工房鳴門屋
http://www.narutoya.net/
「東大阪ラグカレー」は、日本全国ご当地パン祭りで準優勝
Parigot(パリゴ)
http://www.panportal.jp/parigot/
ここもサイトがないんだなぁ
LEAI(ル・アイ)
https://leai.jimdo.com/%E8%B0%B7%E7%94%BA6%E4%B8%81%E7%9B%AE%E5%BA%97/
「シューパリ野郎」と「ナポレオンパイ(ミルフィーユ)」が好き