[4607] 机上のマウスの居場所◇東大駒場寮の事◇「殿、利息でござる」

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《見た目は机上の寄せ集め》

■装飾山イバラ道[227]
マウスの居場所
武田瑛夢

■Scenes Around Me[31]
東京大学駒場寮の事(10)
アリテンで出会った人々
関根正幸




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■装飾山イバラ道[227]
マウスの居場所

武田瑛夢
https://bn.dgcr.com/archives/20180717110200.html

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パンダに行ってきた話の次は、マウスの話。ネズミじゃなくてごめんなさい。

最近はペンタブレットではなく、マウスで絵を描いている。弾力のあるジェルが入っていて、手首をサポートしてくれるマウスパッドを使っていて気にっているけれど、ポジションはどうしても固定されてしまう。

椅子の位置や背中の角度にかかわらず、なんだかいつも腕が机に貼り付いているような状態だった。これではさすがに疲れるので困った。

なんとかならないかと、以前IKEAで買っていた半月型でクッション付きのボードを出してきて、キーボードとマウスを置いてみた。どちらもワイヤレスで小型なので難なく置ける。

この製品は「IKEAラップトップサポート」で、検索するとたくさん画像が出てくる。「BYLLAN ビッラン」ともいうらしい。本来の用途はソファなどで、ノートPCを膝の上で作業できるようにするものだ。

私は机の前に置いたキーボードデスクも使っているので、その上にこのボードを置いてみたところ、とても調子がいい。椅子の右の肘掛にもかかるように置いたり、レイアウトが自由なのってこんなによかったのかと驚いている。

・IKEAラップトップサポート
http://eimu.com/dgcol/dsk001

半月の置き方の向きは通常とは真逆にして、マウスをより上に置けるようにしてみた。ここはしっかりと、置き方を間違っていくのが正解。見た目は寄せ集めという感じだ。

傾斜による脱落防止に置いたアームレストとマウスパッドは、元から使っていたもの。軽く何かで貼り付けてもいいかもしれない。奥に見える赤いKindle Oasisは、キーボードをどかしてアームレストを使って読むと、位置関係がちょうどいい。

写真のラップトップサポートは、ずいぶん昔に購入したクッションがグレーのタイプ。私のように通常とは置く方向を反対にすると、手前側が丸いので、角度を調整しても邪魔にならずに使いやすいのだ。

机の上を使いたい時は、このキーボードとマウス置き場のセットごと持ち上げて移動すればいい。

いつもはもっと手前に引いて角度をつけたり、ぐっと右側に寄せて椅子の肘掛にも半分乗せたりして使っている。

可動式のキーボード台だと可動域が制限されるけれど、これは制限がない。背筋を伸ばして制作する時にも、椅子をリクライニングさせてYouTubeを見る時などにも、腕に負担なく対応できている。

姿勢ってとても大事なので、机や椅子全体を買い換えるのも、いつか必要な時が来たらやろう。机と椅子が一体型になっていて、歯医者さんの椅子のように動くPCデスクも憧れだ。

椅子がフルフラットになっても、モニタ操作ができるようなアレだ。でもあまりに快適だと、一日中そこに貼り付くことになるのかな。


【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
http://www.eimu.com/


お風呂の鏡をきれいにした。随分前に買っておいた鏡のウロコ取りの専用クレンザーと、曇り止め液を使った。

研磨剤入りの固形クレンザーは、水分が飛んでヒビ割れていたけれど、掘り起こしながら無理やり使う。新品のクレンザーをヒビが入るまで使わなかったことを反省。仕上げに曇り止め液を塗り込んで乾かす。

親水膜コートのタイプで、水をかければ鏡はピカピカで曇らない。少し残った白い跡も、水をかければきれいに消えるのが良かった。

かつてリトグラフをやっていたので、親水や保水の効果を使ったものは結構信じている。水滴が付かないで、まったりとした水の膜で覆われるみたい。どれだけ持つのかなー。


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■Scenes Around Me[31]
東京大学駒場寮の事(10)
アリテンで出会った人々

関根正幸
https://bn.dgcr.com/archives/20180717110100.html

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これまで書いてきたように、1998年に入ってから私は駒場寮内にあったサークル蟻天獄の部屋(アリテン)に入り浸り、寝泊まりを繰り返す様になりました。

当時のアリテンには様々な人が出入りしていましたが、彼らとの間で思い出せる事はそれほど多くありません。

というのも、私は前回書いた事情で自宅に帰れず、アリテンを避難所にしていました。

そのため、アリテンでは誰とも話さずに寝てしまうことが多かったせいかも知れません。

今回は、その数少ない記憶の中から、印象に残っている幾つかの出来事について書いてみることにします。



蟻天獄の設立メンバーのうち、歌舞伎の女形の中村しのぶさんは、海外に巡業に出ていました。

武盾一郎さんも、阪神淡路大震災で被災した神戸市長田区内の下中島公園(しんげんち)に移り住んで、仮設住宅村の集会所に壁画を描いていました。

なので、アリテンでよく顔を合わせていたのは、サークルの責任者だったテツ君と、大川興業にいたバンビ高橋(ヒデ)さん、および彼らの仲間たちでした。



ある晩、アリテンの有志で、駒場キャンパス一号館(時計塔のある建物)と駒場寮を結ぶ、地下道の探索を試みました。

参加者はテツ君の同級生(?)だったヤノ君と、ヒデさんの大学時代の知り合いのコック、他二、三人だったと思います。

一号館の北東隅には地下に下る階段があり、その先に扉がありました。

その扉は普段施錠されているのですが、たまに鍵が開いているらしく、扉から地下道に入ることができたそうです。

そして、その地下道は駒場寮までつながっている、という話は以前から聞いていました。

その晩、扉の鍵が開いているとの情報を得て、皆で一号館に向かいました。

ところが、扉は施錠されていて、一号館から地下道には入れませんでした。

ヤノ君は駒場寮の入り口付近にあった鉄蓋を開けて中に入ってみましたが、地下道を見つけられなかったかったようで、しばらくしてから這い出てきました。

そこで探索は終了しました。

この日の写真は何枚か撮っているはずですが、ネガが見つからず、今回は紹介しません。



次に、駒場寮生だったバタイユ君の話をします。

バタイユ君は、数学(数理科学)科の学生だったので、私の後輩にあたります。

ですが、バタイユ君はだめ連界隈に出入りしていたので、彼を知ったのは大学ではなく、だめ連が運営していた早稲田あかねでした。

ある時、バタイユ君がアリテンにやって来て、自分で根性焼きを入れてみたと、赤く腫れ上がった腕を見せてくれたことがありました。

その時、私は何を考えたのか、タバコの火は高温なので火傷したが、ロウなら大丈夫だろうと思い、明り用のロウソクを手にとって、ロウをバタイユ君の腕に垂らしました。

バタイユ君は特に何も抵抗せず、ロウを腕に落されるがままにしていました。

ところが、次にバタイユ君に会った時に腕を見せられると、ロウを垂らした跡
は根性焼きと同様、赤く腫れ上がっていました。

しばらくの間、ことあるごとにバタイユ君は私に腕を見せてくるので、辟易し
ていましたが、今は悪いことをしたと思っています。



また、リョウさんというロックギタリストが、私が大学で数学を教えていると知り、訊きたいことがある、とアリテンにやってきたことがありました。

その時は、奢ってやるからと言われ、駒場東大前にあるスナックに連れていかれました。

そこで、リョウさんに次のような質問をされました。

「私は宇宙の根底に流れる真理を知りたいと思った。そのためには物理の法則を知る必要があると考えて、物理の本を入手して紐解いてみた。ところが、そこで行き詰まってしまった」

「本に出てくる方程式が、左辺=0、と右辺が0になっているのが理解できない。だって、方程式というのは右辺と左辺が釣り合っていることを表しているのだろう? だったら0と釣り合うなんてありえないじゃないか」

今思うと、その物理の本を見せてもらって話をするべきでした。

もしくは、小中学校で習ったはずの、移項の話を復習してもらえばよかったのかも知れません。

ですがその時は、リョウさんはエスプリのある説明や例えを求めている、と私は思いました。

結局、私は、方程式をそのような形に変形することは可能だと説明するに留まり、リョウさんを納得させられる話は出来ずに終わりました。

リョウさんとはそれ以来会うことはありませんでした。

リョウさんがTHE FOOLSの川田良さんだと知ったのは、数年前にネットでリョウさんの訃報を見た時でした。

今でも、リョウさんに上手い説明の仕方はなかったものかと考えることはあります。



今回は、1999年3月に撮影した同潤会清砂通アパートの写真を紹介します。

https://farm1.staticflickr.com/922/43081108662_3f5bab00b0_c

この頃、私はオブスキュアギャラリーのメンバーが共同生活をしていた、豪徳寺の一軒家に出入りしていました。

ある時、豪徳寺に遊びに行くと、彼らはロケ写真の撮影に適した螺旋階段を探していました。

そして、参考資料として「散歩の達人」に掲載された、清砂通アパートの階段の写真を見ることになります。

別の機会に、東京都の再開発計画が記載された地図を見て、清砂通アパートが2000年末に取り壊される予定であることを知り、慌てて撮影に行きました。

写真は、前の年に写真展を見たアジェの影響を受けていると思っています。


【せきね・まさゆき】
sekinema@hotmail.com
http://www.geocities.jp/sekinemajp/photos


1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔


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編集後記(07/17)

●映画「殿、利息でござる」を見てから、原作者・磯田道史の「無私の日本人を読んだ(2012/文藝春秋)。ここには無名の三偉人、穀田屋十三郎、中根東里、太田垣蓮月の話がある。いずれも初めて聞く名前だ。「濁ったものを清らかなほうにかえる浄化の力を宿らせた人」を描いているのだ。過激な清浄を生きた人を、自分の子どもがいつか読んでくれたら、という思いを込めたという。

映画を先に見て、この苦難のサクセスストーリーをエンタメとして楽しんだ。主役の穀田屋十三郎(阿部サダヲ)の喜怒哀楽がうまい。弟の浅野屋甚内(妻夫木聡)がもっとうまい。知恵者の菅原屋(瑛太)が意外といい。架空のヒロイン・煮売り屋のとき(竹内結子)も素敵だ。大肝煎も重要な役だが、千葉雄大とかいう少年顔が重みなさ過ぎ。軽妙な両替屋(西村雅彦)うまいな〜。

映画のサイトがよくできている。モニタに写真入り配役のページを出しておき、その前で本を読み進めるとなかなかいい感じだ。おそるべき手腕、冷酷無比、最大の敵、藩の財政担当・出入司が萱場杢(松田龍平)。これはみごとな配役だ。藩主・伊達重村(羽生結弦)がいきなりお出ましになるシーンもいい。

これは途方もない「プロジェクトX」なのだ。映画では銭(寛永通宝)500万枚「5000貫文」通り相場でおおよそ1000両(3億円)集め、藩に貸し付けて利息の100両を毎年村民に分配する、というアイデアの実現までを描いている。もちろん超弩級の艱難辛苦である。ところが、本当は1000両では足りなかった。

仙台藩はいま銭を鋳造し始めている。銭を増やせば銭の価値が下がる。いまの相場は金1000両は580万枚ぐらいになっている。萱場はここに着目し、吉岡の民からさらに金をむしり取ることを思いついた。もう80万枚出せという。汚いというよりはしたない。なりふりかまわぬ守銭奴と化した仙台藩であった。

あと80万枚とは、吉岡宿にとって天文学的な数字である。それでも吉岡宿チームは必死になって捻出し、なんとか契約が成立。あしかけ8年、辛苦に耐えてやってきた。ところが、大晦日になっても藩から沙汰がない。2月になっても何もいってこない。結局4月になってようやく利息が支払われた。ということは、映画のタイトルはまさしく、吉岡宿が殿につきつけた正しい請求なのだ。

映画は普通に面白かったが、泣くほどのものではない。原作の小説は説得力があり実に面白かった。古文書を読み説いて書いているからだろう。コピペとフィクションの歴史叙述が巷にあふれているなかで、貴重な歴史研究家・作家である。古文書から過去の津波災害を探ろうと、わざわざ津波常襲地の浜松に移住した人でもある。

司馬遼太郎が小説中に余話を挿入するように、磯田も関連する情報を加える。「江戸時代はかつてないほどに、行政の手続をややこしくした時代であった。人類史上、これほどまで、わざとのように、行政書類を煩雑にする社会も珍しい」「廉恥、というものがこの国の隅々、庶民の隅々まで行き渡っており、潔さは武士の専売特許ではなかった」といった具合で、非常にいい味を出す。

「このみちのくの地に、昭和になって、原子力発電所の立地がなされ、東京に産業の主食である電気を送ることがなされた。結果、放射能がばらまかれ、美しいみちのくの山々の一部が、ほんとうに一山百文になりかねなくなった」という、おそるべき短絡、非科学的な余話には困ったものであるが。 (柴田)

「殿、利息でござる!」サイト
http://tono-gozaru.jp/


「殿、利息でござる!」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01IQYWX0Q/dgcrcom-22/


磯田道史「日本史の内幕」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4121024559/dgcrcom-22/


磯田道史「無私の日本人」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4167903881/dgcrcom-22/



●ミュージカル続き。そしてミュージカルは歌って踊る時間が必要なため、本筋はわりと単純。歌詞を聞き逃すと、細かいことがわからないこともあるけれど、雰囲気でわかる。

トニー賞をとって、今度日本でも上演される「サムシング・ロッテン!」は、ミュージカルというものができるまでの話(たぶん)。なぜ急に歌い出すんだ? 踊り出すんだ? とミュージカルの中でやっちゃう。面白そう。

あ、派手な印象の宝塚だけど、今やっている「凱旋門」は、わりと重厚な作り。何度も見るのはしんどいけれど、終わった後に、再確認のためにもう一度見たくなる。東京ではこれから。機会があったらぜひ。続く。  (hammer.mule)

サムシング・ロッテン!
http://www.something-rotten.jp/


Something Rotten Performance Tony Awards 2015


凱旋門‐エリッヒ・マリア・レマルクの小説による‐
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/2018/gaisenmon/