[4960] オモシロイ被写体の巻-2◇おかしな英語、伝わらない英語

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《お、アイデア出る出る。》

■わが逃走[255]
 オモシロイ被写体の巻 その2
 齋藤 浩

■もじもじトーク[124]
 おかしな英語、伝わらない英語
 関口浩之
 



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■わが逃走[255]
オモシロイ被写体の巻 その2

齋藤 浩
https://bn.dgcr.com/archives/20200227110200.html
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前回に引き続き、尾道周辺を彷徨いつつ、さまざまな物件をオモシロがってきた話を書きます。

2日目は曇り。たしかに晴れた方が嬉しいが、曇りは曇りで味わいがある。ツブレず、トバず、光がきれいに行き渡るともいえる。

とくに狙ったわけではないが、この日はまず友人の形見である戦前の50mmレンズを装着した。シャープすぎず階調も豊かで風情のある描写が特徴。と言われている。しかし使い慣れてないので、撮影の際ははいろいろと悩んだ。

この写真もデジタルで撮ってはいるが、最新のカメラではないので高感度耐性はそんなに良くない。結果的に解放3.5で撮って、「コレジャナイ写真」を大量に産むことになってしまった。

さて、駅に荷物を預け線路を越えて、山手の路地に入る。ここ尾道では細い路地があるなーと思うと、そこから一気に階段道が迷路のように続くのだ。

一歩進むたびに景色が変わる。遠くに見える島の形もオモシロければ、足元の階段の形状ひとつひとつもオモシロイ。海も山も寄りも引きも、すべてがオモシロイのだ。

ふと脇を見ると、不思議な手すりを発見。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/02/27/images/001

この路地も、何十回も往復しているはずなのだが、あまりに自然すぎて気づかなかった。階段の手すりにしては低く、柵だったとしても設置する意味をあまり感じない。

よく見れば、シンプルかつ絶妙な三次曲線ではないか。これぞ無作為の芸術。角度を変え、複数回シャッターを切って思ったのは、立体としてのオモシロさを平面で伝えるのは難しいなあ、ということだった。

さらに階段をゆく。おお、これはオレの好きな手すりの根っこ!

https://bn.dgcr.com/archives/2020/02/27/images/002

尾道を訪れる度、ここに来てしまう。今回は見下ろしの構図で、4本分をまとめてフレームに収めた。

一見ただの手すりだが、よく見ると基部の形状がすべて違うのだ。しかも柱を構成する円柱の中心が全てずれている。このずれ方が絶妙なリズムを生んでいると言えましょう。

手すりだけに注目して散歩したら、ものすごい写真集ができるかもしれない。お、アイデア出る出る。

そして路地をゆく。尾道は東西に長く広がっている。この路地も、東西をむすぶ山手の幹線と言えましょう。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/02/27/images/003

レンズを90ミリに変えた。50年以上前のレンズだけど、気持ちいい写りをしてくれる。昔、富士フイルムから出ていた「ベルビア」というポジフィルムがあったのだが、そんなイメージで現像してみた。

構造を素直に伝えたいときはモノクロ現像しているが、曇りの日の尾道の家並みは、上品な色彩が魅力ともいえる。

もう少し手前にピンを持ってくればよかった。また撮りに行こう。たのしみが増えた。さらにちょっと脇の階段を上る。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/02/27/images/004

いつも構造を伝えることを第一義として撮っていたのだが、色彩を意識してみるのも楽しいものだなあ。と思うようになった。年取った証拠か。石の青ってこんなにきれいなんだなあと、今更ながら気づいた次第。

これは普通だったらヨコ位置の構図なんだろうけど、あえてタテ位置としてみた。タテ位置とすることで、平衡感覚が崩れてくる。

足を踏み外しそうな不安感、落下したとしても、画面の上の方が標高が低いという不思議な感覚が伝わればよいのだが。

何をどう伝えるかってことを、角度を変えることでコントロールできるようになれば、構図マスターだ! 精進します。

さらに東へ進む。階段に沿って固定されていたトタン板が、はずれてしまったところを鑑賞。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/02/27/images/005

波板のデコボコが階段といっしょに続く様子は、なんともかわいらしい!と思う。思い立って、これを90度回転させて鮮やかなカラー写真として現像してみると、まったく違う印象になった。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/02/27/images/006

画面をナナメに2分割し、左側が鮮やかエリア、右側がグレイッシュなエリア。何の写真か一瞬では判断できない、抽象画的な写真になる。

想像以上に赤が上品で、トタンの赤と、セメントに残った赤とをつなぐ距離とか空気とか、ヨコ位置モノクロでは気づかなかったものが見えてくる。こいつあ、オモシロイ。

こんどはカラーを意識して、また撮りに行こう(笑)。つづく。


【さいとう・ひろし】
saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[124]
おかしな英語、伝わらない英語

関口浩之
https://bn.dgcr.com/archives/20200227110100.html
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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

新型コロナウイルスの関係で、自分が主催する2件のイベントの中止手続きしたり、出演が決まっていた5件のセミナーのキャンセル調整したり、慌ただしい毎日です。

そんな中、3/1(日)大阪開催予定の『第40回リクリセミナー Webデザイントレンド in 大阪 2020』も開催中止になりましたが、主催者と登壇者で協議し、「動画配信版」を後日、実施することになりました。
https://recreators.doorkeeper.jp/events/100638

このセミナーの主催者と登壇者は、合計で10名ですが、住んでいる場所はまちまちです。グループメッセンジャーを使って、セミナー開催の是非、代替案はあるか、スケジュールなどの決定を、忙しい本業の隙間時間に、みんなで意見を出し合いました。

迅速に方針が決り、直ちに実行に移すことができたのは、主催者がしっかりと旗振り役をやっていたこと、そして、登壇者全員が自分事と捉えて動いていたからだと感じました。

すでに申し込みいただいた約130名の方々に返金対応して、動画版セミナーを新たに募集開始するのですが、皆さん、動画撮影に情熱を燃やしているので、どんなイベントになるか、楽しみです。

さて、今日のもじもじトークは、『おかしな英語、伝わらない英語』をお送りします。

●新国立競技場のおかしな英語。これでいいのだろうか?

新国立競技場(オリンピックスタジアム)の案内版の英語が「なんかおかしい」と、Twitterで話題になりました。この看板です。
http://bit.ly/mojimoji124a

HELLO, OUR STUDIUM. という英語表現、なんか違和感ありますよね。「ようこそ、新しい競技場へ」と表現するのであれば、Welcome to our new stadium. が自然な表現ですよね。

この英文は、Hello, my friends. って感じで、スタジアムに対して呼びかけているように感じます。ネットでいろいろと調べてみたら、「来場者へようこそ」のメッセージではなくて、イベントタイトルの一部の表記のようです。

ニューズウィークジャパンに記事として掲載されていますので、詳しくはこちらを。
https://www.newsweekjapan.jp/rochelle_k/2019/12/hello-our-stadium.php

この看板が使われるシチュエーション(どこで使われて、誰に対するメッセージなのか)を考えることができるなら、この場面で、この英文は使用しないと思います。

二枚目の写真の「情報の庭」を Joho no Niwa と英文表記したサインボードも、おかしなことです。

英語圏のネイティブの人が、Joho no Niwaを読んでも、何があるのかわかりません。日本語のローマ字読みを表記するのではなく、Event Spaceなのか Informationなのか、その場所が何であるのかの情報が書かれていることが、この場面では重要ではないでしょうか。

三枚目の写真は、さらに意味不明です。calm down, cool downという英語は、「頼むから、落ち着いてくれ!」というニュアンスに感じます。調べてみると、このスペースは、「障害がある人の利用を想定した、大勢の中から視線を遮り気持ちを落ち着かせるスペース」のようです。

●なんで、こうなるの!?

毎日通勤で使っている東京メトロ東西線ですが、新型車両には、扉の上にモニターが付いて、行き先案内や運行状況もお知らせしてくれ流ので、とても便利です。

先日、日本人の僕も、「ギョッ」となった英語が表示されたので、思わず、iPhoneを取り出して写真を撮ってしまいました。こちらをご覧ください。

http://bit.ly/mojimoji124b

Lineという単語が、Linとeとが改行で、分かれてしまうのは、ありえないでしょ。一つの英単語が二つに別れて改行されるということは、一つの漢字の偏(へん)と旁(つくり)が改行されていると同じぐらい、ビックリすることだと思います。しかも、全角等幅なので、読みづらいし。

それから、二つ目と三つ目の写真ですが、「文字が小さすぎて読めない」です。しかも、3〜5秒ぐらいで次ページに切り替わるので、同じ画面が戻ってくるまでに1分ぐらいかかります。

視力2.0で動体視力が高い人でないと、役に立っていないのでは思いました。これだけの情報量を表示する場合は、ポスターにして目の届く高さで表示するのが親切だと思いました。

僕の矯正視力は0.8ですが、日本語も英語も小さい文字は読めませんでした。

限られた液晶画面のスペースで、天井に釣り下がられている高い位置のサインボードの表示情報として、何を表示したら乗り間違いが起きないか、現地と同じ環境で事前に試験とかをやってないのだろうかと疑ってしまいます。

●米国で一番人気の絵文字はこれらしい!?

なんの番組だったか忘れてしまったのですが、数日前、絵文字に関する面白い調査結果が流れていたので、反射的にiPhoneをテレビに向けて撮影しました。

絵文字や顔文字は、最近、海外でも人気がでてきたらしいです。欧米で、一番人気の顔文字はこれだそうです。ジャーン!
http://bit.ly/mojimoji124c

日本では、 ^_^ や (^ ^) などが一般的によく使われる顔文字ですが、海外では、この顔文字が人気のようです。

カタカナの「ツ」が、海外の方には、スマイリーフェイス(ニコちゃんマーク)に見えるようです。

そして、海外では有名なボディランゲージとして、肩をすくめて手のひらを上にするポーズ(shruggie)がありますよね。それに似ているのです。

僕は中学生の頃、アメリカ西海岸に憧れて、1980年代の学生時代に西海岸にホームステイし、社会人になって二年間、アメリカに滞在していましたが、このマーク、当時、すごく目にしたのを記憶しています。

ちなみに、肩をすくめて手のひらを上にするポーズは、「さあ」「どうでもい
いけど」「関係ないし」など、幅広い意味で使われていますよね。

文化が異なると、同じマークを見ても印象が変わる場合があります。仕事で英文を公の場で使うときは、ネイティブの方がいる翻訳エージェントさん等に、費用を払ってチェックしてもらうことをおすすめします。予算がない場合は、知り合い(または知り合いの知り合い)のネイティブさんに見てもらうことをおすすめします。

では、二週間後にまたお会いしましょう。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
関口浩之(フォントおじさん)

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https://mobile.twitter.com/hirogatejp

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現 ソフトバンク・テクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この20年間、数々の新規事業プロジェクトに従事。

現在、フォントメーカー13社と業務提携したWebフォントサービス「FONTPLUS」のエバンジェリストとして、日本全国を飛び回っている。

日刊デジタルクリエイターズ、マイナビ IT Search+、Web担当者Forum、Schoo等のオンラインメディアや各種雑誌にて、文字やフォントの寄稿や講演に多数出演。CSS Niteベスト・セッション2017にて「ベスト10セッション」「ベスト・キャラ」を受賞。2018年も「ベスト10セッション」を受賞。フォントとデザインをテーマとした「FONTPLUS DAYセミナー」を主宰。趣味は天体写真とオーディオとテニス。

フォントおじさんが誕生するまで
https://html5experts.jp/shumpei-shiraishi/24207/

Webフォントってなに? 遅くないの? SEOにはどうなの?
「フォントおじさん」こと関口さんに聞いた。
https://webtan.impress.co.jp/e/2019/04/04/32138/


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編集後記(02/27)

●偏屈BOOK案内:倉山満「大間違いの太平洋戦争」

この本は近代史における日本とイギリスの関係を記したものである。日本とアメリカではない。なぜ日本は道を誤ったのか、その羅針盤をイギリスとしたからである。といった前書きでは何を言ってるのかわからない。このあとも、突飛で愉快な記述がどんどん出てくる。いままで習った日本史とは、結果は同じでも、原因や経過が大きく違う。なにしろ「片手間に戦う日本」なんて言う。

日本はソ連を警戒して満州国を緩衝地帯として確保したはずなのに、足元をうろちょろする支那を叩け、支那を支援するイギリスはけしからん、英米一体で日本に敵対している、とエスカレートするうちにアメリカと戦うことになった。ソ連の片手間の、中国の片手間の、イギリスの片手間にアメリカと戦った、ということだという。年表と地図を示しながら、歴史的事実を客観的に述べる。

アメリカは封鎖でもない、経済制裁でもない、及び腰な「禁輸」をしかけてきた。お呼びでないのに、単に挑発がしたいから。のってしまった日本もおかしい。石油をストップされくらいで、もはや日米開戦だなんて、軽はずみにもほどがある。インドネシアにあるオランダの石油さえ確保しておけば、大東亜戦争は不要だった。喧嘩を売ってきたアメリカが悪く、挑発に乗った日本がバカだった。

米英ソはそれぞれ大国だったが、単独で日本に喧嘩を売れる国はなかったので同盟を結んだ。日本は独中、ソ中のつながりを切るため日独伊と三国同盟を、ソ連とは中立条約を結ぶ。あの戦争は「太平洋戦争」ではなく、本質は「日英戦争」。海軍中枢の反対を押し切って山本五十六が計画、実行した真珠湾攻撃は天下の愚策。ハワイを攻める理由がない。叩いただけで占領せず帰ってくる。

アメリカを怒らせただけ。ハワイ攻撃では航空機を使って、戦艦を爆撃して沈めている。飛行機で船は沈められるという実験結果を作った。どうやって対米戦争を終わらせるつもりなのか、出口戦略がまったくない。なぜイギリスとちゃんと交渉しなかったのか。最も重要な相手は誰かを見誤ったことが最大の間違い。大東亜戦争は支那事変の延長の日英戦であった。……そうだったのか。

戦争の勝敗は戦争目的を達成できたかどうかで決まる。日本の大問題は、大東亜戦争の戦争目的を二回も変えてしまったことだ。最初は自存自衛、途中から大東亜共栄圏建設と東亜の民族解放になり、最後は国体護持である。日本はオランダだけを攻めればよかったのだ。そこにイギリスが介入してきても、蹴散らして終了。それなのに、なぜアメリカに喧嘩を売る必要があったのか。

敗戦後は「太平洋戦争への道」史観が幅を利かせた。対アメリカである。そこに陥穽があると筆者は指摘する。戦前日本の誤りは、日英同盟を切り、ソ連の謀略に嵌まったことに始まる。イギリスとの関係悪化は絶望的な展開と末路をたどった。対米関係を軸とする「太平洋戦争」より先に、日英関係と日英戦争こそ検証し反省すべきではないか。だから「大間違いの太平洋戦争」なのだ。

明治40年(1907)から昭和16年(1941)を一気に駆け抜けて、面白いのなんの。しかも我々が学校で上っ面を撫でたのとは、結果以外が全然違う。「歴史に学ぶ大きな意義は、同じ失敗をしないことです。問題設定を間違えては、絶対に正解にたどり着けません」。中学社会科教師にならなくてよかった……(柴田)

倉山満「大間違いの太平洋戦争」2014 ベストセラーズ
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4584135878/dgcrcom-22/


●真夜中に警報音で目が覚めた。玄関ドアを通して、廊下から聞こえてくる。ドアを開けたら、はっきりと「(ウィーン、ウィーン)火事です。火事です。○○階で火災が発生しました。落ち着いて避難してください。」と繰り返し流れる音声が聞こえた。

上層階で、うちからは離れている。コンクリのマンションだし、スプリンクラーもあるので、延焼はないだろう。煙が発生しても上に流れる。

オール電化で、火の元はほとんどない。夜中だから日差しによるものでもない。卓上カセットコンロか、タバコの火の始末か、ろうそくか、漏電か、趣味で半田ごてを使ったとか、そういうものしか思いつかない。

誤作動なんじゃないの? とベランダから上を見上げると、白い煙が見えた。そこで初めて本当に火事だと認識し、迷ったが、避難することにした。服を着替え、買い物バッグにお財布と充電器を入れた。(hammer.mule)