《テツ、全開。》
■ローマでMANGA[152]
イタリアmanga出版界のさかんな「発掘」
Midori
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鉄路で堪能する渡りのロマン
GrowHair
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■ローマでMANGA[152]
イタリアmanga出版界のさかんな「発掘」
Midori
https://bn.dgcr.com/archives/20200305110200.html
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ローマ在、マンガ学校で講師をしているMidoriです。私の周辺のマンガ事情を通して、特にmangaとの融合、イタリア人のmangaとの関わりなどを柱におしゃべりして行きます。
●発掘前夜
ここ数年、mangaの出版傾向に特殊なものが見えている。
「発掘」だ。
とりあえず、大急ぎでイタリアにおけるmanga出版の歴史を。
イタリア(他のヨーロッパでも同じだと思う)でのmangaの出会いは、70年代初頭の永井豪・ダイナミックプロのロボット系アニメに端を発する。その後、怒涛のように日本のアニメが放映になり、多分、「キャンディ・キャンディ」(いがらしゆみこ)と、「ベルサイユのバラ」(池田理代子)あたりから「アニメの後ろにmangaがある」という発見があってからだ。
80年代の終わり頃、講談社と仕事をしているときに、ミラノの大手出版社から「アニメ・manga(アニメのフィルムから画像を取ってページにレイアウトして印刷)したいのでその版権」についての打診があったのを思い出した。そのへんがmanga出版(厳密には違うけど)の始まりの始まりだと思う。
その後、次から次へとmangaが翻訳出版されたわけだが、80年代終わりから90年の初めにかけては、主にアニメになったタイトルばかりが選ばれた。自然に集英社系が多くなった。それも少年mangaが多かった。だから、この頃mangaというとデカ目でアクションという固定観念が生まれて、いまだにそれを払拭しきれていない。
正確な年は覚えていないけど、アニメになっていないmangaも発行されるようになった。アニメからmangaへ移り、mangaの面白さが浸透して行った、ということになる。なぜなら、アニメという大きな広報力があるものの力を借りなくても、十分に販売に繋がると確信できたということだから。
谷口ジローさんの「歩く人(講談社)」がマーベルイタリアから出版(たぶん1993年)されるに至って、イタリアのmanga翻訳出版が成熟してきたと言える。デカ目じゃないし、アクションものでもない。中年男性がひたすら郊外の自宅のまわりを散歩する話。
少年mangaがイタリアで出版されて、それまで30歳から40歳が主な読者層だったマンガ界に少年が読者層に入った。尤も、manga読者とマンガ読者の溝ができて、互いに理解できない世界だった。
谷口さんの作品が出るようになって、manga読者にマンガ読者が流れてきた。少年と大人の溝は残ったままだったが、「解剖学を無視しためちゃくちゃな絵にはちゃめちゃなストーリー」と、mangaを敬遠していたマンガ読者をmangaに近づけることになった。
●いよいよ「発掘」
考古学的発掘はイタリアがmangaを発見する前に、日本で出版されたmangaだ。70年代、60年代のmangaがイタリアで出版されるようになった。
本格的な発掘作業が始まったのは2000年になってからだが、90年代の終わりにハザードという、小さくちょっと毛色の変わった出版社が手塚治虫の「ブッダ」、「アドルフに告ぐ」を出した。その後も順調に手塚mangaを出している。
2000年代の始めに、カブキ・パブリシングというこれまた小さな出版社が青山剛昌の「コナン」と手塚治虫の「どろろ」を出し始めたが、会社自体がうまくいかなくて倒産、出版権は他の出版社に移った。
2000年中程にHIKARIエディツィオー二社が誕生し、手塚治虫の「グリンゴ」、「ロストワールド」、「メトロポリス」、「七色いんこ」、「シュマリ」、「ネクストワールド」、「人間昆虫記」、 楳図かずおの「漂流教室」を出版。
「ロストワールド」、「メトロポリス」なんてまさに発掘ですよね。「ロスト…」は1948年、「メトロ…」は1949年出版だから。この選択は「手塚発掘」ということになる。
「こんな昔にこんな表現でmangaがあったなんて!」という驚きなのか、シンプルに作品として面白いとイタリアの読者に受け入れられているのか、興味があるところ。
http://www.001edizioni.com/
そしてJーPOP社が出てくる。フランスマンガを出版していた会社の一部と、mangaを出していた会社が合併してできた。できた当時の2006年は、フランスマンガを出していた「EDエディツィオー二」の名も掲げていた。
JーPOP社としてmanga専門出版社にし、かつ「EDエディツィオー二」が持っていた版権を吸収したのは間違いなく成功だった。コミックスフェアで見る限り、回が進むにつれてスタンドが大きくなって行ったし、責任者の態度がえらそうになって行った。2020年2月現在、総出版タイトル数は2500を超える。
世界中で人気のある「ポケモン」や「東京ゴール」、「ゼルダ」などの売れ筋を抱えているからこそ、冒険もできる。伊藤潤二や駕籠真太郎を出版しているのだから勇気があるよね。(ちなみに個人的にはお二人の作品、好きです)
「発掘」タイトルとして、萩尾望都「ポーの一族」、「トーマの心臓」、「風と木の詩」。竹宮恵子「地球(テラ)へ…」、水木しげる「墓場の鬼太郎」、石ノ森章太郎「サイボーグ009」「リュウ」、永井豪の「手天童子」のタイトルが目に止まる。これらのタイトルを出版時にリアルタイムで読んでいた者としてはくすぐったい。60年代から70年代の作品群だ。
そしてここでも手塚治虫。手塚全集を企画出版しHAZARD社と被る「火の鳥」も出している。その辺の版権問題はどんな風に解決したんだろう。
全集だからあまり有名でない青年漫画の短編も網羅している。やっぱり手塚治虫はmangaの神様なんだと改めて思う。
https://www.j-pop.it/
このような発掘、個人的にはmangaが大衆娯楽として光り輝いた時期(ネオレアリズムとして輝いたイタリア映画界の1940年から50年代の感じに似てるかな)の良い作品がここでも脚光を浴びることが嬉しい。
mangaに対するイタリアの読者の感想が変わるだろうか、萩尾望都と竹宮恵子を読んで、我々がそうであったように「少女manga」に対する考えが変わるだろうか。一応、「少女manga」なんだって分かるだろうか。
●WEBユーロマンガ
発掘とは話が違うけど、WEBマンガが大分広がって来ているように思う。日本では携帯でmangaを読む人がかなり多いと思う。だからmanga雑誌の売り上げが落ちてるんだよね。
携帯で読むデジタルmangaは、短編でシチュエーションが単純なものが多い。言葉で多くを説明したり。
つまり、mangaの神様が作りあげ、後続の多くのmanga家や編集者が作り上げてきたmangaと言語が違ってきている。
韓国発のWentoonでは、「伝統的」manga手法も交えた「文学的」作品も多く発表されていて、今後のマンガ/mangaのあり方の大きな指針の一つになっていくのではないかと思う。
ちなみに、かつての教え子であり、現在、私と一緒に教壇に立つディアナも、このWEBTOONで仕事をしている(報酬が発生する)。作画を担当。
以下がそのURL、ただ、今のところ彼女の手が入った回は、まだ発信されていないそうだ。要注目。
https://www.webtoons.com/en/horror/gremoryland/list?title_no=1893&page=1
【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】
どちら様も、どこでも、コロナコロナ。イタリアも日本もあまり変わりがないと思う。マスメディアは増えていく感染者と死亡の数字を上げて、ヒステリックに不安を煽る。27度で菌が死ぬからお茶やお湯を飲むといい、というデマもSNSで広がっている。ちょっと考えれば、体温より低い温度で死ぬウィルスなら、感染して発病
するわけがないと、わかると思うのだけど。
ローマっ子は鷹揚なのか、東洋人の顔して歩いていても嫌がられたりしたことはない。
栄養のある美味しいもの食べて、十分に睡眠をとって抗体をしっかり保持していれば、仮に感染しても死ぬまでは行かない、ということで、マスクもせず美味しいもの食べてます。
[注・親ばかリンク]息子のバンドPSYCOLYT
MangaBox 縦スクロールマンガ 「私の小さな家」
https://www-indies.mangabox.me/episode/58232/
主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
http://midoroma.blog87.fc2.com/
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■ Otaku ワールドへようこそ![326]
鉄路で堪能する渡りのロマン
GrowHair
https://bn.dgcr.com/archives/20200305110100.html
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『俺は渡り鳥』を歌ったのは石原裕次郎だが、渡りにはロマンがある。俺はどこにも根を下ろさない。向こうにいた俺とここにいる俺は別の俺だ。俺が何であるかはおまえが決めてくれ。船乗りは港みなとに女あり。
鉄道の軌道にも「渡り線」というのがある。相異なる二路線の間を接続するための軌道を称していう。列車は渡り線を通り抜けることによって、姿かたちが変わるわけではないけれど、JRから私鉄へ、ある路線から別の路線へ、快速列車から各駅停車へと、アイデンティティが塗り替わる。
渡り線は黄泉(よみ)の国。この世ではないところを渡っていく。冷や冷やスースーする不安定感がたまらなくよい。中央線から青梅線に直通する下り電車が立川駅の先で経由する渡り線は、次の西立川駅のすぐ手前で青梅線に合流するまで丸々一駅分あり、人んちの庭先みたいな異世界を通り抜けていく。
高崎線や東北本線から武蔵野線に入るための渡り線は、大宮駅を出るといきなり始まる。並行して走る高崎線や京浜東北線の線路の威光とは対照的に、軌道に草が生えていたりして、見るからにみすぼらしい。
線路の継ぎ目を車輪が通過するときの、ダダンダダンというリズミカルな響きがクラシックだ。渡り線だけが坂をずんずん下ってトンネルに進入し、抜けたときには並行路線がいなくなっていて、ここはどこだ? ってなる。
通常、人々から存在が認識されていない、秘密の抜け道。
今回は、拝島駅の北側に設けられた、八高線から五日市線への渡り線を取り上
げたい。
●八高線が青梅線を踏み越えて五日市線ホームへ入線
2015年5月17日(土)、デザフェスからの帰り、国際展示場駅から中野駅へ戻るのに、大崎、大宮、川越、高麗川、拝島、立川と軽く遠回りした。高麗川発の八王子方面行の八高線は、ほとんどが八王子まで行く中、21:27高麗川発の電車は途中の拝島止まりなのがちょっと珍しいな、とは思っていた。
この電車が終点拝島駅に入線しようとしているとき、私は天井を突き破って飛び上がりそうになるくらいぶったまげた。通常の八王子行は、いちばん左側の5番線に到着する。ところがこの電車は右へ右へと進んでいき、いちばん右側の1番線に到着したのだ。
そのホームは、通常、五日市線用のものだ。八高線と五日市線とは車体の色が異なるので、同じ電車を五日市線として運用することは考えられない。
このホームへ入線するのに、青梅線の上下線と平面交差する。この電車が渡っていく間、青梅線は通ることができないのである。主に埼玉県を走る八高線の分際で、東京都内しか走らない青梅線の運行を邪魔するとは、身のほど知らずもはなはだしい。
この電車は、乗客全員が降車した後、回送電車として立川方向へ引き上げていった。
「配線略図.net」のウェブサイトで拝島駅の配線図を見たら、納得がいった。八高線のホームからでは、留置線に直接入る経路が存在しないのだ。
https://www.haisenryakuzu.net/documents/jr/east/ome/
さて、ここでひとつ、疑問がある。拝島止まりの八高線はこの電車よりも後に、さらにもう一本あるのだ。それもやはり1番線に入るのだろうか。たいていの情報はネットで検索すれば出てくる便利なご時世にあっても、この情報は細かすぎて、どうしても出てこない。
新型コロナウィルスの感染が拡大しているこの折、不要不急の外出はなるべく控えるようにとのお触れが政府から出ている。そうは言っても、乗ってみないことには獲得しようがない情報なのだから、行って見てくるしかないよね?
●あ、そういうこともあるのか
2015年に私が乗った電車は、これ。
21:27 高麗川(始発)- 22:00 拝島、八高線拝島行。
この電車は、今も走っている。その後に、もう一本あるのは、これ。こっちのは川越始発で、川越線から直通してくる。
22:41 高麗川 - 23:08 拝島、八高線拝島行。
私の予想だと、この電車も同じく 1 番線に到着する。だって、条件が同じなのだから。この電車だって、切り返すことなく、車庫に引き上げたいであろう。この後、八王子行がもう一本あるので、5番線に一晩居座っているわけにはいかない。
次のような乗車計画を組んだ。2月29日(土)に実行しよう。
19:55 新宿 - 20:54 川越、埼京線川越行
20:59 川越 - 21:23 高麗川、川越線高麗川行
21:27 高麗川(始発) - 22:00 拝島、八高線拝島行
22:27 拝島 - 22:42 金子、八高線・川越線川越行
22:54 金子 - 23:08 拝島、川越線・八高線拝島行
23:18 拝島 - 23:30 立川、青梅線立川行
23:41 立川 - 0:13 中野、中央線各駅停車東京行
ここで、八高線を往復する際、金子駅で乗り換えていることに注目されたい。八高線は単線であって、2 本の電車がすれ違うのは、次の東飯能駅においてである。東飯能駅の配線図を見ると、1面2線の島式ホームなので、同じホームの向かい側に停車している電車にさっと乗り換えればよい。
https://www.haisenryakuzu.net/documents/jr/east/hachiko/
しかし、それでは具合が悪い。不正乗車の現場を目撃されてしまうのだ。目立つ格好をしているとごまかしがきかない。かといって、改札口を出て、すぐ入って戻ってきたのでは間に合わない可能性が高い。一駅手前で乗り換えるしかないのだ。
漫画喫茶で寝落ちしてしまった。乗ろうとしていた電車が新宿駅を発車して、頭の上を通過していく音が聞こえた。いきなり、頓挫。
しかたがない。中央線回りで行こう。結局、こうなった。
20:07 新宿 - 20:35 立川、中央線中央特快高尾行
20:39 立川 (始発) - 20:51 拝島、青梅線青梅行
21:24 拝島 - 21:31 箱根ヶ崎、八高線川越行
21:47 箱根ヶ崎 - 22:00 拝島、八高線拝島行
22:27 拝島 - 22:42 金子、八高線川越行
22:54 金子 - 23:08 拝島、八高線拝島行
23:18 拝島 - 23:30 立川、青梅線立川行
23:41 立川 - 0:13 中野、中央線各駅停車東京行
さて、早いほうの拝島止まりは、以前と同じく、青梅線の上下線を踏み越えて、1番線に到着した。
拝島駅で改札口を出て、外に掲げられている時刻表を眺めてみると、発車する電車が何番線から出るかの情報が獲得できる。拝島始発の八高線高麗川方面行はけっこう出ていて、1番線から出る電車が平日には4本、土休日には2本あることが分かった。
壁に掲げられた時刻表を眺めている私の後ろ姿が、後で、twitterに動画で上がっていた。
金子駅は2面2線の相対式ホームである。無人駅だが、ちゃんと真面目にSuicaをタッチした。出たところにはガラス張りの待合室がある。誰もいなかったが、暖房が効いていた。
先頭車両の最前部にへばりついて、目の周辺を両手で覆って車内からの反射光をさえぎり、前方に目を凝らしていると、信号機で敗北が明らかになった。黄色赤赤赤赤。さっきと違う。5番線到着であった。なんと、1番線には五日市線武蔵五日市行の電車が停車していた。それじゃ、無理だわさ。
ほぼ確実と思われることであっても、実地に確認に行くと、意外にも当たっていなかったりする。馬には乗ってみよ人には添うてみよ。
●気を利かせすぎてかえって不便なNAVITIME
「えきから時刻表」(ekikara.jp)が2019年3月29日(金)をもってサービスをすべて終了してしまったので、仕方なくNAVITIMEに乗り換えたが、どうも感触がよくない。気を利かせたつもりでわざわざやってくれることが見当外れで、ちっともありがたくないのだ。
例えば「電車時刻表」の機能を使って一本の列車の運行スケジュールを追うとき、ユーザーは、その列車について、各停車駅での発車時刻ではなく、到着時刻を知りたいだろう、と勝手に憶測してくれたようである。
例えば、まず高円寺駅の電車時刻表へ行き、[八王子 / 大月方面]の[平日]を選択すると、平日に高円寺駅に停車する下り電車の時刻と行き先の一覧表が表示される。例えば、[8:00]の快速高尾行を選択すると、その電車が停車する各駅の時刻が表示される。ところが、先頭行の東京駅についてだけ[7:40 発]と発車時刻が表示される以外、ほとんどの駅で到着時刻が表示される。
高円寺駅についても同様で、[高円寺8:00着]と表示される。この電車は、新宿駅を8:00に発車する特急あずさ5号松本行に三鷹駅で追い越されるため、この駅に3分間停車する。そういうときは、[三鷹8:12着 / 8:15発]と到着時刻と発車時刻とが両方とも表示される。
それでいいじゃないか、と思うかもしれない。ところが問題がある。到着時刻として表示されている時刻が、正しくは発車時刻なのではないかという疑いがある。
この時刻表を真に受けると、土・休日、八王子21:07発の八高線・川越線 川越行と、高麗川21:27発の八高線拝島行とは、金子駅と東飯能駅との間で正面衝突する。
(土・休日) 八高線・川越線 八王子発川越行
八王子 21:07発
...
金子 21:37着
金子 21:39発
東飯能 21:45着
...
(土・休日)八高線 高麗川発拝島行
高麗川 21:27発
東飯能 21:33着
金子 21:42着
...
NAVITIME の表示画面をキャプチャしておいた。
https://photos.app.goo.gl/Nt8YCTd4HVcZcvEx8
例えば、21:40という時刻についてみれば、両列車とも両駅間にいることになる。ところが、八高線は単線なので、すれ違えないのだ。
私は悩みに悩んだ。ひょっとして駅間に信号所があったっけ? 東飯能 - 金子間の電車前面からの展望動画をYouTubeで見つけて見てみたけれど、そんなものはない。
金子 - 東飯能間は6分で行けるはずだが、拝島行は9分もかかっている。これはおかしい。21:42とは到着時刻ではなく実は発車時刻であって、21:39には金子駅に到着しているのではあるまいか。これはどうやら正解っぽい。平日の時刻表を見ると、同じ列車が「金子 21:38着」と表示されている。
このウソ表示にトラップされて、見破るまでに七転八倒した人は、全国に1万人くらいいるのではあるまいか。
不満は他にもある。過去をちょん切るのはやめてほしい。例えば、市ヶ谷駅で中央線[新宿 / 八王子方面]を選択して、そこから、平日の22:20の電車を選択すると、この電車はあたかも御茶ノ水駅が始発駅だったかのように表示される。しかし、お茶の水駅始発の下り電車は存在しない。
実は、総武線錦糸町方面から直通してきた電車なのだが、表示上、過去がちょん切られているのである。
市ヶ谷駅から乗る電車の過去の長い履歴の情報は必要ないだろうと、勝手に気を利かせてくれたのだと思う。困る。
早朝と深夜には、東京駅始発の中央線で、快速軌道から緩行軌道へと渡ってくるやつが混ざるのだ。この表示だと、黄色い電車が来るのか、赤い電車が来るのか、分からないではないか。
まあ、よくよく見れば、区別がつくようにはなっている。しかし、紙の時刻表だったら、直通列車については「前の掲載ページ」という欄があって、ここに至る経路が逆にたどれるようになっている(※)。そういうボタンを用意しておけばいい話ではないか。
※40年ほど前だと、ここによく誤植があった。臨時列車が走ったりして、直通列車の掲載ページが後ろへ送られるとき、「前の掲載ページ」をなおしておくのをよく忘れるのだ。今はそれが起きなくなっていて、誤植を見つけるのはいよいよ困難を極める。デジクリから出た2冊の本にもそれぞれ誤植があった。「森進一」が「森新一」になっていた。もうひとつは忘れた。
あと、列車番号を表示してほしい。数字の最後に何もついていないか、Dがついているか、Mやその他のアルファベットがついているかによって、それぞれ、機関車に牽引された客車、気動車、電車の区別が分かるのだ。これは重要な情報なので、隠さないでほしい。
●限りなきロマン
ロマンあふれる渡り線は他にもいろいろあるが、紙幅の都合上、メモ書きのように軽く触れるだけにしておきたい。
東海道本線から大阪環状線に入るための渡り線は、大胆にも、大阪駅をバイパスしちゃう。京都方面から来た東海道本線は、新大阪駅の先で淀川を渡り、大阪駅にて大阪環状線と出会うけれど、すぐに離れていき、再び淀川を渡って、神戸方面へ抜ける。束の間の逢瀬の前後に立体交差の渡り線を設けるスペースなど、ないのだ。知らんけど。
で、大阪駅などなきがごとく、渡り線はグランフロント大阪の脇を抜けて、福島駅あたりで合流する。特急列車しか通さず、新大阪駅の次に停車するのは、西九条駅あるいは天王寺駅である。大阪駅から関西空港に行きたい人は、関空快速で我慢してください。
三島駅で、JR東海道本線から伊豆箱根鉄道駿豆線に入る渡り線は、なんと!ホームの途中から生えている。車体がかすらないよう、ホームが湾曲して逃げている。東京駅から直通する特急踊り子号が毎日運行している。見に行くついでに、修善寺あたりを観光してくるのもよかろう。
渡り線を3回渡って4路線を走り抜けるスーパー渡り鳥がいる。その名は「スペーシア八王子日光号」。八王子 - 東武日光間を走る。中央本線、武蔵野線、東北本線と来て、最後は栗橋駅で東武鉄道日光線に入り、JRともおさらばする。
そのまま東北本線を進めば、宇都宮駅から日光線に入って、日光駅に至ることができるのに、わざわざ東武線に渡って東武日光駅に至る、JR敗北宣言のような屈辱の列車である。
今年走る予定は、4月25日(土)、26日(日)の1往復ずつしかない。一般の観光客よりも、渡り線マニアでにぎわいそうな予感がする。それを狙って走らせるのか?!
まあしかし。ブツ切りにしてよいのであれば、それぞれの渡り線を通過する旅客列車は毎日運行している。
レア感あるやつのひとつに、中央本線 - 青梅線の渡り線を逆走する列車がある。「鎌倉あじさい号」。青梅線から南武線に渡るのだが、左側から中央本線に渡る通常のコースでは南武線まで届かないのである。
中央線から青梅線に直通する快速青梅行が8:55と9:24に立川を発車するが、この2本の合間を縫って、9:15~9:20ごろ丸々一駅分、逆走する強引なねじ込み感がよい。今年の運行予定は、6月6日(土)から21日(日)までの土日6回だけである。
府中本町駅を発車すると、次に停車するのは横浜駅という、この世のものとは思えない列車がある。間に駅なんかないんだから、そうならざるをえない。通常は貨物列車を通す軌道を、旅客列車が走るのである。ただし、ごくたまーにしか走らない。
先ほどの「鎌倉あじさい号」もそれだ。他には「ホリデー快速鎌倉」というのもあり、今のところ私はそれくらいしか発見できていない。いずれも全車指定席で、予約には苛烈な戦いが予想される。
もし、リクエストしていいなら、強く希望したいのがある。中央東線と西線を直通し、塩尻駅をバイパスしてデルタ線の短絡辺を通す列車。
いやいや、塩尻駅をバイパスできないでしょ、というのであれば、停車させてもいいけど、方向転換して乗り入れるのではなく、いったんバックして短絡線を通すようにすれば、東線と西線とで進行方向が揃う。こういうのを走らせてくれるなら、何を措いても乗りに行きたい。俺は渡り線。
【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。
http://www.growhair-jk.com/
《 生まれつき? 》
保育園の幼児が10人ぐらいでお散歩している途中で、脇を列車が通過するのを眺めているとき、ぴょんぴょん飛び跳ねて大興奮するのはだいたい1人か2人ぐらいで、残りはあまり関心を示さず冷静。
ひょっとして遺伝子レベルで何か違いがあるのだろうか。テツ遺伝子は、女装遺伝子と連動性があるような気がする。女装者ってなんであんなに鉄ヲタが多いんだろう。
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編集後記(03/05)
●偏屈BOOK案内:溝口敦 鈴木智彦「教養としてのヤクザ」
ヤクザ分野では著名な二人である。「鈴木は野中をうろつき走り回る猪であり、現場感覚に図抜けたセンスを持つ。溝口は大空に浮かぶトンビであり、鳥瞰図的に関係性を見ることに慣れている。両者が相まってまずまずの本に仕上がったのではないか」と後書きで溝口が書く。弥次喜多が真面目に語り合う。
この対談では、暴力団=ヤクザという認識のように思えて違和感がある。何十年も前は暴力団とヤクザは別物だった。わたしは犯罪社会学ゼミにいたから、かつての裏社会方面はわりと詳しい。でもこの対談では、ヤクザという言葉に「任侠」のイメージは薄い。そして「半グレ」と呼ばれる凶悪な勢力が出現。
いまテレビでは「ヤクザ」という言葉が、放送禁止になってしまったようだ。鈴木が文芸春秋から「ヤクザと原発」を出したとき、フジテレビに出演したら、映像で書影は出すが「ヤクザ」という言葉は言えないから、ナレーションはつけられないと言われた。マスコミはその代わりに、警察が使い始めた「暴力団」という呼び方をするようになった。マスコミが先頭立って言葉狩りかよ。
「ヤクザ」という言葉は江戸時代からある。ヤクザという存在を認めている人たちが使う表現なのだろう。しかし、放送禁止用語とは一般的に、差別されている人々に対する蔑称などが対象だ。「ヤクザ」を禁止する基準って何なんだ。マスコミは警察に支配されている。それは記者クラブ制度のせいである。
新聞やテレビの暴力団担当の記者は、実際は暴力団を取締まる警察の担当で、その警察から情報をもらって書いている。記者は暴力団に接しないから、警察の情報に頼るしかなく、結果的に警察に牛耳られている。警察もそれを望んでいる。だからマスコミは警察の発表通りに書き写すだけだ。発表段階でもう文章になっている。いくつかあるプレスリリースから取捨選択するだけなのだ。
世間一般の人たちは、筆者の話を聞いていたら「ヤクザとして生きていくのがそんなに厳しいなら、暴力団なんか解散して、半グレになって特殊詐欺だの、覚醒剤だのやって生きていけばいいじゃん」っていうと思う。だがそうはならない。暴力団の看板を一度背負ってしまうと、警察に登録されてしまっているから、今さら半グレにはなれないという現実的な問題がある。
ヤクザ、暴力団は、犯罪という闇に足を置きつつ、半分だけ社会に認められている存在だった。対して半グレは凶悪事件をあまり手がけず、詐欺などの経済犯罪を専門にしながら、とにかく世間に隠れて犯罪をしのぎとするアングラの存在である。半グレはシノギ以外の分野では法的に堅気であり、そのため暴対法も暴排条例も適用されない。警察はまだその実態を掴んではいないようだ。
彼らの犯罪による被害額の一部が、統計により明らかにされているだけだ。たとえば2018年、彼らによる特殊詐欺被害額は356億8000万円に及ぶ。彼らはそれ以外にも金のインゴット密輸、ビットコインの販売やマイニング、危険ドラッグの製造と販売、そして2003年頃のオレオレ詐欺などの特殊詐欺の考案も。一方で、男伊達を売る「半社会的」存在だったヤクザの消滅が近い。(柴田)
溝口敦 鈴木智彦「教養としてのヤクザ」2019 小学館新書
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4098253569/dgcrcom-22/
●漫画アプリ、漫画サイトにはお世話になってますわ。毎日数話分が無料で読めるのだ。とはいえ、続きが気になるとか、手元に置きたいからと単行本を買う人も多い。すごい時代だな。友達と貸し借りする世界って終わっていたのね。
アプリからの通知などは切っていて、「毎日」を意識せず、気が向いた時に読むようにしている。振り回されてしまうから。連載途中で脱落する漫画もあって、贅沢な環境だなぁと(笑)。
違うアプリで同じ漫画があっても、公開されている話数が違うとか、進み方が違うとか、いろいろ。同じ小説のコミカライズなのに違う漫画家さんが描いていたり、規制の処理の仕方が違ったり(エロ・グロ)。(hammer.mule)