[5101] 作品に過程の記憶は宿るのか?/おそ松さん“3期”の歩き方

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《待ってたよ!》

■羽化の作法[115]現在編
 作品に過程の記憶は宿るのか?
 武 盾一郎

■LIFE is 日々一歩(128)[アニメ]
 おそ松さん“3期”の歩き方
 森 和恵
 



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■羽化の作法[115]現在編
作品に過程の記憶は宿るのか?

武 盾一郎
https://bn.dgcr.com/archives/20201013110200.html

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「線画(ドローイング)」の面白さに、「過程」ってのがあります。

例えば、「円の線画」を表現したいとします。まずは丸い形になるように、紙に鉛筆か何かで線を引こうとしますよね。またはフリーハンドではなくて、コンパスを使うのアリですよね。

結果として紙に丸い線が描かれていればいいのならば、パソコンを使ってイラストレーターかなんかのソフトで円を描いてプリントアウトしても良いでしょう。また、メディアが紙でなくてもよいならば、パソコンの画面上に円が描かれた線画の画像でも良いですよね。

もしホログラムみたいに空中に円を投影したければ、そういう装置を使っても良いかも知れませんね。

それから、誰かに「円の線画」を発注しても、結果としては「円の線画」を表現したことになります。「円の線画」を表現するといっても、このように様々あります。

それでですね、線画(ドローイング)の「面白さ」はそことはちょっと違うところにあります。

鉛筆でもペンでも良いのですが、筆記用具を持って紙に線を引いていく時の、紙に触れた時の感触、墨やインクならばその仄かな匂い、紙の上にペンを移動させている時のちょっとざらざらとした抵抗感、擦れる音の質感、ペンが紙の上を移動した後ろに線が痕跡として残ってゆく様の不思議さ。

そういった一瞬一瞬のたびに湧き上がっている視覚、聴覚、触覚、嗅覚などの質感の面白さや不思議さにこそ、描画の楽しさがあるのです。

前者は「円の線画」というゴールを設定したらあとは自由に考えるやり方です。
後者は「円の線画」を描くことに限定されるのですが、結果よりも行為そのものに目的があり、「円の線画」は経緯の集積として現れます。

一般的に「円の線画」を描く場合、いかに綺麗な「円の線画」を描くかが課題になります。仕上りの「結果」に重点が置かれているわけです。

まあ、当然と言えば当然なのですが、今回私が注目したいのは「結果」ではなくて「過程」の方なんですね。

絵画は時間芸術ではありませんが、そこには永い時間が封じ込められています。一枚の「線画」には描かれた時間が線として積み重なっていて、その時間の旅はたった一瞬で見渡せます。

そして画面からは静かに時間が染み出してきて、音楽を感じさせてくれるのです。そんな「線画」を描きたいわけです。そしてそれを私は「線譜」と名付けているわけなんです。

とは言うものの、通常仕上がった絵画作品から制作過程の息遣いを感じるのは難しいものです。そもそも制作過程のクオリアを共鳴させようとするコンセプトで、絵を描く人はそんなに多くはないでしょう。

絵で伝えたいのは基本、描かれた「内容」や「意味」ですから。

むしろ「書道」の方が書いている瞬間の感覚質感を表現しているのでしょうね。なので「書道」って私からしたら「線画」なんです。

例えば、ジャクソン・ポロックはドリッピング、ポーリングで絵の具を垂らしたりして描いてます。

文脈的には「絵の具そのものを見せた」と語られていますが、垂らした絵の具が堆積した様が結果としてキャンバスにあるという「過程が表現された絵画」でもあるわけで、私的にはとっても「線画」なんですね。

The Case for Jackson Pollock | The Art Assignment | PBS Digital Studios


「線画」は描いている「過程」の感覚質感の集積である。

もちろん「結果」も重要ですが、「線を描く瞬間瞬間に立ち現れるクオリアと存分に戯れる」ことは「マインドフルネス」的です。

●まったく同様の複製品は過程の記憶を持つのか?

さてここで、ちょっとした疑問が湧いてきます。

線を引く過程を存分に味わいながら描いた線画があるとします。
例えばこんな線画だったとしましょう。私の描いた描きかけの線譜です。



そして、この絵と全く同じ複製品を作るとします。
紙のとペンの素材を原子レベルまでスキャンし、物質的に全く同じに再現できる3Dプリンターで「ウィ〜ン」と出力されたとします。

この場合、原画作品とプリントされた複製品の二つの作品に違いはあるでしょうか?
「結果」として並べられた作品は物質としては同じです。違うのは「過程」です。

原画はペンを紙に滑らせている一瞬一瞬の感触とか、バランスを見ながら次にどう描くか考えている瞬間の思考などが、線という痕跡となって積み重なっていきます。
複製品はプリンターから「ウィ〜ン」って、端っこから順々に形成されていきます。

「過程の記憶」と「作品に籠められた魂」と言う概念を軸に、4パターンを記すとこうです。

1:複製品にも過程の記憶が入り「同じ」になる

複製された作品にも描いた過程で味わっていた一瞬一瞬のペンを動かす感触の記憶が畳み込まれている。つまりは同じ物質状態なら複製品にも「作品に籠められた魂」が入るんですよ。

2:原画にも複製品にも過程の記憶なんて入ってないので「同じ」

過程におけるクオリアは描き手の中にあるわけで、そもそも原画に過程の記憶なんて畳み込まれてるわけがない。そして、物質として同じなら同じでしょう。
「入魂の作」とは言うけれど、それは魂が入ってるのではなくてそのように解釈して楽しんでいるだけなんですよ。

3:原画には過程の記憶があり、複製品には過程の記憶はないので、オリジナルと複製品は「違う」

やっぱり人間が作らなければ作品に魂は入らないんですよ。いくら物質として同じにしたとしても、魂は原画に宿り、複製品は抜け殻なんです。

4:過程の記憶なんて存在しないが、事実として製作工程が違うので「違う」

作品に「過程の記憶」や「魂」なんて入ってはない。作品に魂が宿ると捉えて楽しむのはいいけれど。事実として、製作工程が違うからオリジナルと複製品は違う。それだけのこと。

なんだかどれでも当てはまりそうな感じがしてしまいますが、あなたはどう思われますか?(つづく)


【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/断酒278日目】

《ギャラリー13月世大使館》
『10月31日(土)13〜18時 開廊します!』
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10月御予約開廊日は10/31(一般開廊日)に先駆け、新作物語絵を御高覧いただけます。ご予約承っておりますので、ツイッターDMにてお気軽にご連絡ください!

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・ガブリエルガブリエラ
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■LIFE is 日々一歩(128)[アニメ]
おそ松さん“3期”の歩き方

森 和恵
https://bn.dgcr.com/archives/20201013110100.html

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こんにちは、森和恵です。ケガもようやく治って、朗らかな気分です!

今夜からいよいよ3期スタートする、おそ松さん“3期”ネタでお届けします。
さて、まずは本編を始める前に近況から。

昨夜はYouTubeライブ放送の日でした。ウェブページのコーディングを学べる無料の動画コンテンツとして、2年ほどコツコツ続けています。



18回目でスマホ対応(レスポンシブウェブデザイン)までたどり着きました。この後に、CSSグリッドレイアウトを経て、年内にはようやくシリーズが完結しそうです。

ではさっそく、おそ松さん“3期”について語りましょう。

●3年ぶりのTVシリーズ、次はどう出るか?!

クズでバカな六つ子がわちゃわちゃと楽しい『おそ松さん』。2015年に1期、2017年に2期が放送された後、2019年に映画化もされました。

https://osomatsusan.com/


わたしは、5年前に1期のPVをみてからビビッとファンになり、ずーっと推しつづけています。2期が始まったときも楽しみすぎて、コラム書いたりしましたね。

▼LIFE is 日々一歩(62)[アニメ]おそ松さん第2期の歩き方
https://bn.dgcr.com/archives/20171031110100.html


1期は社会的な大ヒットとなりましたが、2期はファンサービスに特化した通好みの内容だったため、クリーンヒット止まりだったと業界では言われているようです(いや、ファンとしては2期も最高に面白かったよ! ディープな松を楽しみたいなら断然2期がおすすめ)

一発屋で終わらないために、息の長い作品にするために、この3期にかかる期待は大きいのかなと思われます。……いちファンからみて、業界から聞こえてくる話です。

(……冷ややかな意見が聞こえてこようが、ファンが楽しみじゃないわけがないじゃない! 3期のPV映像が出たときに、どれだけ嬉しかったか。待ってたよ!)



今期の発表では、キャラクターデザインが安彦英二さんにバトンタッチされて、絵柄が変わった六つ子の絵に動揺したりしました。

発表後、次々にアップされるキービジュアルやグッズの絵を見たり、動いている姿を見て、変化に馴れてきました! ……というか、スッキリとコミカルな新しい六つ子に出会わせてくれてありがとう! と、むしろ感謝に変わってきました。

前のキャラクターデザイナー浅野直之さんのイラストは、雰囲気があって素敵で、これぞ六つ子! という体で、依然として部屋の一番よいポジションに飾ったままですが、3期の六つ子も徐々に愛せそうです。

こんな感じで、3期への不安は楽しみへと変わりました。

新しいことにチャレンジしつつも、相変わらずの作風はキープされていました。「帰ってきた六つ子」です。

まだ1話を見る前ですが、今期は「シンプルな構造のギャグアニメ色」と「新キャラクターを交えたシリアスなストーリー」の二本立てになるんじゃないかな、と勝手に予想したりしています。

まぁ、期待を裏切るのが『おそ松さん』なのですが。

●コロナ禍で、ネットよりになった番組宣伝

アニメ番組全般でいえますが、コロナ禍となったご時世で、リアルにファンが集まってのイベントができにくくなりました。

おそ松さんも同じで、放送前のファンイベントは配信となり、グッズの販売会も通販が中心となっています。

https://osomatsusan.com/news/


地方民としては東京だから参加ができない……と涙することもなく、お金さえ積めば参加できるので、寂しくも、ある意味ありがたい状況です。

今回は、無料のネット配信を積極的に行なっていて、ニコニコ生放送の前作振り返り配信、YouTubeでの声優さん達のロングインタビュー動画公開なども行われました。



また、おそ松さん公式Twitterの動きも活発で、「#松野家6つ子救出完了」「#おかえりニートたち」「#また笑おう」など、ハッシュタグを使ったSNS上のイベントも盛んに行われています。

https://twitter.com/osomatsu_PR


リアルイベントができない分、ネットでバズって盛り上げよう! という作戦のようです。

新作をつくる忙しいさなかに、ちゃんとプロモーションのことも考えて良質なコンテンツ作りをし、タイミング良くネットに仕掛けていく……というお手並みは鮮やかでした。

「気を逃さずに、ユーザーが見たい情報を出していく」というのは、超有効な手段だと思います。わたしも、見習おうと思います。

●システマチックにやり過ぎないで!

一方、古参のファンとして「これは……」ということもありました。

まずは、先日、毎日新聞に掲載された応援広告です。これは、oshitai-オシタイ-というクラウドファンディングのサービスを使ったものです。

https://www.oshitai.jp/projects/osomatsusan01


次が、おそ松さん公式ファンクラブの結成です。これは、ファンクラブ運営・企画・制作をする株式会社アクセルエンターメディアのサービスを使ったものです。

https://osomatsusan-fc.com/


便利なサービスが提供するシステムにのって、いろんな企画があるのは楽しみなのですが、悩んだあげく、わたしはこのふたつに乗っかることができませんでした。

なんというか……システマチックすぎて、松のカラーじゃない気分がしたからでした。

直接、公式がお布施をする振込口座を準備してくれて、「良い作品作るから、カンパして!」と言ってくれたほうが、まだスッキリした気分で払えるなぁと思ったのです。

おそ松さんらしく、ニヤッとさせてくれる「毒」が欲しかったのかもしれません。「も~。六つ子はしょうがないな」と言わされて、スッとお財布を開くような。

ほんと、個人的で勝手なお願いですが、システマチックにやり過ぎないで欲しいなと願います。

ということで、今回はここまで。

嗚呼。今回のコラムは、ワクワクと楽しい時間でした。

最後に、3期のお祝い絵をシェアします。おそ松さんのキャラクターは、造形がシンプルなので、絵が下手でもファンアートが描けるのも大好きな所のひとつです。



ではまた、次回お目にかかりましょう!
(^^)


【 森和恵 r360studio ウェブ系インストラクター 】
mail: r360studio@gmail.com
YouTube:https://youtube.com/r360studio

サイト:https://r360studio.com/



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編集後記(10/13)

●偏屈BOOK案内:斗鬼正一 監修「ニッポンじゃアリエナイ世界の国」SBクリエイティブ 2020
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4815605416/dgcrcom-22/


長いタイトルのソフトカバー単行本。表紙のビジュアルはヘタなマンガ。装幀はこの種の本に共通する派手な色使いで、目立つけどじつに安っぽい。本文も同様で品がない。内容はそこそこ面白いが、蔵書にするほどでもない読み捨てタイプの本。マイナー系の出版社が発明したスタイルらしいが、この頃は大手も進出している……5094でこう書いた。また出ました。今度は完全お子様向け。

「『アリエナイ!』が『なるほど!』に変わる! 世界の国のことが楽しく学べる児童書ができました!」と銘打った本で、フルカラー192ページ、見出しも本文もすべてルビ付き。一か国につき4ページ。「アリエナイところ」と「その理由」が各見開きで。文章量はそこそこある。国の簡単なデータもある。派手な色使いのヘタヘタ・イラスト、ヘタな書き文字がナントモ。

最初の国は中国。「ハゲがほめられ尊敬される!」「髪の毛がうすいことは頭を使っているあかし!」それぞれ見開きで計4ページ。「そうだったのか!」と涙する少年のイラスト。他に「なるほどね〜」「それマジ!?」「アリエナイ!」バージョンもある。とにかく挿絵も書き文字も、すべて超絶ヘタヘタである。本文はそこそこに面白い。ひっぱってきたケーススタディがナイス、かなり興味深い。

東南アジアでひときわ小さい国・シンガポールは、東京23区くらいしかない。街を清潔に保つため、とてもルールがきびしい。道に唾を吐いたら最大で8万円の罰金、ガムをかむことを禁止、持ち込みも禁止。ほかにも、夜の10時半から朝の7時まで飲酒禁止。指定された所以外でのタバコ禁止。野生の鳥にエサやり禁止。違反者は罰金。なぜここまで厳しくする必要があるのか。

シンガポールには、中国系の人を中心に、東南アジア系、インド系などいろいろな民族が住んでいる。宗教も生活習慣も文化も違う。色々な人が好き勝手に自分のルールで暮らしてよいとなったら、街はぐちゃぐちゃになって、治安も悪化してしまう。シンガポール政府は、色々な人が住んでも、街が清潔で治安が守られるように、ここまで厳しいルールを作っているのだ。

選挙に行かなきゃお金を取られる、というのがブラジル。仕事や病気などきちんとした理由がないのに投票に行かなかった人は、日本円にして約1,100円の罰金があり、これを3回繰り返すと、身分証やパスポートをつくってもらえなくなったり、銀行でお金を借りられなくなったりする。なぜ、そこまできびしく投票させようとするのか。

ブラジルには日本以上にさまざま人が住んでいる。アマゾンの奥地に住む人もブラジルの国民の一員だ。全員で国のことを考えるため、ブラジルでは選挙を義務にしているのだ。お金がなくて投票に行けない人のため、投票所まで無料の送迎バスを出している。投票画面には候補者の顔写真がついており、文盲でも投票できる。これで投票率約80%と高い数字を保つ(日本は約50%)。こんな具合に約40か国の事情を、興味深いアプローチで語る。絵はヘタだが、テキストはうまい。(柴田)


●森さんの期ごとのアニメおすすめを楽しみにしているのだが、今期はなかった……。少しだけマンガを読んだ『憂国のモリアーティ』を見るつもり。ホームズに出てくるモリアーティ教授がモデル。今日から。

/NFCタグシール使ってみたいの続き。約10年前、交通系ICカードをかざして遊ぶゲームをさせてもらったことがある。かざすだけでどうしてと思ってたけれど、なんとなくわかったよ(←今頃?)。

交通系ICカードをキーにするコインロッカーもあるよね。区別できるもんね。

サンワサプライのサイトには、高齢者向けに使って欲しいというページがあった。家族の電話番号を登録したNFCタグシールを、キーホルダーに貼っておけば、外出時にだって、スマホをかざすだけで電話かけられるよって。

NFCタグシールを買って、オートメーション利用したタイマーは作るっ。「洗濯機の終了時間」は、欲しかったもののひとつ。洗濯機のそばに貼っておけば、いつでも起動できるっ!(hammer.mule)

憂国のモリアーティ
https://moriarty-anime.com/


NFCで電話連絡、見守り。高齢者だからこそNFCを!
https://direct.sanwa.co.jp/contents/sp/nfc/nfc_care.html


サンワサプライ NFCタグ
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00GXSGL5G/dgcrcom-22/