《静かに面白い》
■再評価大百科[007]
時代劇を再評価する
吉田貴之
■クリエイター手抜きプロジェクト[637]
IoT Orange pico編
マイクロビットとシリアル通信
古籏一浩
■映画ザビエル[105]
溺れる夢を見る
カンクロー
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■再評価大百科[007]
時代劇を再評価する
吉田貴之
https://bn.dgcr.com/archives/20201207110300.html
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昭和から平成にかけて、年末年始といえばテレビで長編時代劇、という時代がありました。年末年始に限らず、ゴールデンタイムに時代劇が放送されていたのです。しかし、現在では新作として制作される時代劇はかなり少なくなっており、地上波や衛星放送での再放送や、インターネットを経由したオンデマンドでの視聴が中心になっています。そんな時代劇を再評価します。
◇時代劇とは
そもそも時代劇とは何でしょうか。実は明確な定義はないようです。「時代劇」ときいて、ぱっと頭に浮かぶのはちょんまげを結った侍の姿ですが、これはあながち間違いではなく、江戸時代を舞台にした時代劇が最も多く制作されているようです。昨今では昭和を舞台にしたドラマもちらほらみかけます。多くの若者にとって「昭和」はすでに学校で習う歴史の一部であり、「時代劇」の範疇に収まるものなのかもしれません。
◇時代劇の良いところ
ここでは前述の「江戸時代を舞台とした時代劇」に焦点を当てて、時代劇の良いところを挙げていこうと思います。時代劇の魅力はいろいろありますが、なによりも「シンプルなストーリー」が最大の魅力なのではないでしょうか。勧善懲悪を中心に据え、ライトな会話とちょっとしたコメディ、正義が勝つ結末、洗練された剣戟などなど、深く考えなくても楽しむことができるコンテンツであることが多いのです。驚きのどんでん返しとか複雑に入り組んだ脚本とか、そのあたりがまったくなくてもエンターテインメントとして愛されていました。
◇文化や風俗を学べる
大抵の時代劇には「時代考証」という手法が取り入れられており、言葉や衣装、道具、建築、文化などが題材としている時代にふさわしいかどうかをチェックしています。当然、現代のものとは大きく異なるのですが、繰り返し時代劇を見ることでそれらを自然と学ぶことができます。英語がわからない方でも、時代劇で使われる難しい言葉は理解できる、という場合も多いのではないでしょうか。
◇クオリティが高い
時代劇は人気コンテンツであったため、当時の有能なスタッフによって制作されています。監督や脚本家はいうまでもありませんが、カメラマンや照明スタッフ、衣装スタッフまで、いわゆる「一流の仕事」を垣間見ることができます。
◇映像や音声に味がある
当然ではありますが、昭和以前に作成されたテレビ番組や映画は、映像や音声の質が現代ほどよくありません。照明が暗かったり、マイクの数が少なかったり、フィルムで撮影したりしているからでしょう。しかし、時代物の作品を描くにはその映像や音声が「味」になっており、その時代の雰囲気を演出する一助となっています。
◇新作もおもしろい
黄金期に作られた時代劇のクオリティが高いのは前述したとおりですが、現代作られる新作の時代劇も数は少ないものの秀逸なものもあります。旧来の時代劇らしいシンプルなストーリーでは視聴者が満足しないので、良い脚本をつくったり見つけたりするのに苦労をしているのでは、と推量します。一方で、CG技術の向上や撮影用ドローンの利用が可能となったことで、表現の幅も広がっており、新作には新作の楽しみ方があるようにも思います。
【吉田貴之】info@nowebnolife.com
イディア:情報デザインと情報アーキテクチャ
https://www.idia.jp/
腕時計ポータルサイト:腕時計新聞
https://www.watchjournal.net/
兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。
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■クリエイター手抜きプロジェクト[637]
IoT Orange pico編
マイクロビットとシリアル通信
古籏一浩
https://bn.dgcr.com/archives/20201207110200.html
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今回は、Orange pico(Orangino)とマイクロビット(新旧どちらでもOK)を接続して、シリアル通信を使ってやりとりしてみます。が、その前にまずはパソコンとやりとりして、命令の動作を確認することにします。
Orange BASICでは、以下のように設定すると、画面とシリアル通信にデータが出力されます。
uart 1,3,115200
プログラム側でも、print命令だけで出力できるので便利です。ところが、場合によっては、画面に出力したくないこともあります。このようなときは、シリアルに出力するためのuartput命令が用意されています。
uartputの最初のパラメータは1で固定です。これはシリアル通信ポートの、チャンネル番号です。Oranginoは1つしかないので、チャンネル番号1を指定します。2番目のパラメーターは出力する文字列です。
以下のプログラムは、入力されたキーをシリアル通信で出力します。実行すると、ターミナルソフト側だけに入力された文字が出力されます。
10 uart 1,0,115200
20 k=inkey()
30 if k=0 then goto 20
40 uartput 1,chr$(k)
50 goto 20
シリアルからデータを入力する場合は、uartget()を使います。パラメーターにはチャンネル番号を指定しますが、Oranginoでは1つしかチャンネルがないのでuartget(1)とします。
シリアル通信からの入力がない場合、uartget()は-1を返します。以下のプログラムを実行すると、シリアルから入力された文字を画面に表示します。
10 uart 1,0,115200
20 k=uartget(1)
30 if k=-1 then goto 20
40 print chr$(k);
50 goto 20
なお、改行が反映されない場合は、以下のように、改行コードである13だったらprintとして改行するようにします。
10 uart 1,0,115200
20 k=uartget(1)
30 if k=-1 then goto 20
40 if k=13 then print
50 print chr$(k);
60 goto 20
シリアルからのデータが入力可能になったので、今度はマイクロビットからのデータを入力してみましょう。
まず、マイクロビット側でプログラムを作成します。マイクロビットにもシリアル通信ブロックがありますので、これを使います(高度なブロックの項目をクリックすると出てきます)。
とりあえず部屋の明るさを取得して、シリアル通信でOranginoにデータを送ってみましょう。
最初にシリアル通信の設定を行います。送信端子をP0に、受信端子をP1にします。なお、今回は送信端子しか使わないので、受信端子はP1でもP2でも構いません。通信速度は115200にします。このシリアル通信ブロックは、最初だけのブロック内にはめこみます。
次に、明るさのデータを送ります。「シリアル通信 文字列を書き出す」ブロックを使います。書き出す文字列のところに「明るさ」のブロックをはめこみます。このままだと、かなり高速にデータが送られるので、少し待ち時間を入れます。なお、高速にデータを受信したのであれば、待ち時間を入れる必要はありません。
マイクロビットのJavaScriptコードでは、以下のようになります。コードエディタにペーストしてから、ブロックエディタに切り替えると分かりやすいでしょう。
serial.redirect(
SerialPin.P0,
SerialPin.P1,
BaudRate.BaudRate115200
)
basic.forever(function () {
serial.writeString("" + input.lightLevel())
basic.pause(1000)
})
次に、Orangino側のBASICプログラムですが、こちら側は少し工夫する必要があります。というのも、マイクロビット側では明るさが65の場合、文字列として6と5が送信されるためです。
つまり、最初にデータが送られてくるのを待ち、データが送られてきたらデータがある限り受信する必要があります。
このような場合、以下のようなプログラムになります。データの受信が一旦完了したら、改行するようにしてあります。
10 uart 1,0,115200
20 k=uartget(1)
30 if k=-1 then goto 20
40 while k<>-1
50 print chr$(k);
60 k=uartget(1)
70 wend
80 print
90 goto 20
マイクロビットには多数のセンサーがあるので、これらの値をOranginoで読み込んで、グラフ表示するといったことが可能になるわけです。新しいマイクロビットなら標準でマイク入力もできるので、音量データを取り込んでOrangino側で表示してみるのもよいかもしれません。
Oranginoはマイクロビットよりも高機能ですから、工夫次第でいろいろできるはずです。冬休み・年末年始などに挑戦してみてはいかがでしょうか。
【古籏一浩】
openspc@alpha.ocn.ne.jp
http://www.openspc2.org/
先月、新しいマイクロビットが発売されました。これまではスピーカーは別途接続する必要がありましたが、本体だけで音が出せるようになりました。マイクも標準装備です。また、本体のメモリ容量が倍になっているので、これまでメモリの制約でできなかった複雑な処理ができそうです。連載でも取り上げているのでご覧下さい。
https://news.mynavi.jp/article/makeprogram-45/
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■映画ザビエル[105]
溺れる夢を見る
カンクロー
https://bn.dgcr.com/archives/20201207110100.html
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◎作品タイトル
シングルマン
◎作品情報
原題:A Single Man
公開年度:2009年
制作国・地域:アメリカ
上映時間:100分
監督:トム・フォード
出演:コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、ニコラス・ホルト、マシュー・グード
◎だいたいこんな話(作品概要)
1962年、キューバ危機下にあったロサンゼルス。大学教授のジョージは、長年暮らしを共にしてきた恋人のジムを交通事故で失ってから、生きる意味を見出せないまま日々を過ごしていた。
ある朝、とうとう人生を終わらせようと決意し、いつも通り授業を終えた後デスクを片付け、自宅に保管していたピストルに合う弾丸を購入した。棺の中で自らが着るスーツやワイシャツを並べ「ネクタイはウィンザーノットで」と遺書をしたためた。身近な人々に対して称賛や感謝を伝えながら、ジョージは粛々と自殺の準備を進めていくのだが。
原作は、1964年に発表されたクリストファー・イシャーウッドの同名小説。
◎わたくし的見解/ジョージの一番長い日
ここ数年、文章を読む機会が格段に増えたものの「文学」からは随分と遠ざかっているような感覚がある。私が今イメージしている「文学」はストーリーを読むものとは少し違って、強いて言えば「純文学」と呼ばれるものだろうか。「純文学」を定義するのも簡単ではないけれども、面白いストーリーがその条件ではない。だからと言って「純文学」=面白くない、という訳でもないのだが。
漠然としたイメージのまま語り続けて申し訳ないのだけれど、「純文学」や「純文学的なもの」が描いている世界はどこか閉鎖的な印象を受ける。閉鎖的とするとネガティブに捉えているかのようだが、そのつもりはなく良くも悪くも箱庭的だといつも感じるのだ。その世界に大きな広がりは感じないものの、掌握できる規模だからこそ起きている事柄だけでなく空気感のようなものまで、つぶさに受け取ることができる。
ところで、私が映画に心底求めているものはストーリーの面白さでも文学的な雰囲気でもない。もちろんストーリーは面白いに越したことはないし文学的なものも決して嫌いではないが、映像(&サウンド)表現だからこそ可能なものを見つけ出して、圧倒されたい。
しかし、そんな経験はそうそう出来ない。だから地道に、いつか巡り合えるようにアンテナを張り続けるほかない。また、なかなか圧倒される作品に出会えないからと言って、それ以外の映画がつまらないこととは全然違う。十二分に価値のあるもの、楽しめるものがいくらでも存在している。
ようやく本作の話に移る。結論から言えば、実に文学的な作品だ。先ほど述べたように極めて箱庭的だが、世界観は小さくても映像作品として大変に優れている。「文学」だなと強く感じさせるのに、文章で語るのではなく映像でしっかり物語を伝えてくる。
ファッションデザイナーとして名高いトム・フォードの初監督作品だが、初めてメガホンを取ったとは思えないほど、鑑賞者に少しのストレスも与えずにするすると物語が展開していく。自らが抱くイメージを他者と共有できる映像に昇華させる作業は、ファッションと共通している部分も多いだろうが、工程を同じにしても上手くいくはずはない。持ち合わせているビジュアルに対するセンスの高さを駆使しながら、そこに一切のこれみよがし感がないところが素晴らしい。
映画は、主人公がいつも見る夢から始まる。物語は回想シーンを含めつつも、自殺を決意した主人公ジョージの一日のみを描いている。ジョージが同性愛者であり、長年連れ添った恋人が男性であること以外には何の変哲もない、愛と喪失を丁寧に取り上げた作品。
その中でジョージは亡くなった恋人ジムへの思いを募らせながらも、日常で遭遇する若く引き締まった肉体や、ラテン系の美男子の甘いマスクに目を奪われるなど、人間味あふれる描写も多い。トム・フォード監督の2作目『ノクターナル・アニマルズ』を取り上げたときも述べたが、「お洒落」なだけではない。めまいを起こしそうなほど美意識で満たされた映画だが、ウディ・アレンが見せるような皮肉も効いていて静かに面白い。やはり文学的だからと言って、決してつまらないわけではないのだ。
【カンクロー】info@eigaxavier.com
映画ザビエル
http://www.eigaxavier.com/
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編集後記(12/07)
●バイデン+カマラ・ハリスがアメリカの大統領+副大統領になる趨勢らしいが、宮崎正弘さんが「似ているなあ」と書く。
「認知症があらわれているバイデンは、晩年に正常な判断が出来なかったルーズベルトに。ハリスは何も知らないで政権を引き継ぎ、核のボタンを押したトルーマンに酷似している。これから暗黒の4年が始まるのではないか」。
ところで日本でも、アホな動きがあるとか。オバマ誕生を“祝福”して福井県小浜(オバマ)市が騒いだように、今度は、大阪の梅田(バイデン)、沖縄の嘉間良(カマラ)が嬉しそうに騒ぎ始めているとの噂。ほんまかいな。(柴田)
●え、どこの梅田が? そんな話やニュース聞いたことないです。私の周りでは話題になってませんわ。
「バイデンさんが大統領ですね。ちなみに梅田はバイデンと読めなくもないですが、嬉しくないですか?」などとインタビューして、愛想の良い数人が「そうですね。嬉しいですね。これがきっかけで何かあれば」などと返答し、「梅田が盛り上がってる!」なんて話じゃないですよね?
関西ローカルの夕方番組が、ネタ作り(時間つぶし)で、テキトーに振った話題を、「盛り上がってる!」と受け取ってるってことはないですよね?
だって、「うめだ」ですもん。大阪人に「ばいでん」と読めますね! と言われましても、「はぁ、そうでっか」「令和時代にこういうネタ?」「こじつけ苦しいw」ですよ、ええ。(hammer.mule)