KNNエンパワーメントコラム YouTube革命がはじまった
── 神田敏晶 ──

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情報の私有・共有・公有 ユーザーから見た著作権
KNN神田です。

●オーストラリアではじまった「FREE HUGSキャンペーン」
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これは「FREE HUGS」と書かれたボードを持った人が、「自由のために抱き合おう」という意味でおこなったキャンペーンであり、最初は誰も寄り付かなかったけれど、誰かが「ハグ(抱きあう)しあうことにより、他人相手でもあたたかい気持ちになりあえることの大事さを訴求している。

YouTube展開されるとそれは一気に広まり、海外でも同じ手法で展開されている。韓国やインドネシア、カナダと広まり、日本の渋谷でも毎週土曜日に自主開催されるところにまで普及している。

映像作品というよりも、キャンペーンやデモ活動などにもYouTubeというメディアが有効であることを証明しているようだ。しかも国境がなく、考えに賛同できる人が自由に勝手に始められるところに意味がある。大事なのは「タグ」による関連づけであったりする。


ビデオは、コマの連続したメディアなので、検索しづらいものであったが、このようなネット上のオンデマンド型の視聴においては、検索できるかどうかはとても重要だ。ビデオの内容をテキストで示す「タグ」は、今後ますます重要となるだろう。さらに、もっと詳細な「メタデータ」と呼ばれる、高度なタグであれば、関連するフレーム単位での検索や、製作者や出演者情報などとも連係させることが可能だ。

現在のメディア業界はいわば、「著作権保護」の名のもとに、ユーザーに不便を享受させているにすぎない。YouTubeに自己の権利が伴わない映像を勝手にアップロードすることは違法ではあるが、行過ぎた著作権管理は、視聴できるチャンスさえも奪ってしまい、メディアの価値をさげることに加担してしまうように感じる。

CPRM(Content Protection for Recordable Media) といういわれるコピーガードは、地上波デジタル放送のコピーをコピーワンス録画という、一度だけコピーできるという手法で保護している。しかし、HDMI端子をDVIに変換してPCのハイビジョン対応ディスプレイで視聴しようとしても映らないなど、さまざまな問題を生みだしている(DVDは再生できる)。

さらに、HDMI端子(HDMI:High Definition Multimedia Interface)で接続するのがあたりまえなHD環境も、すでにHDMI仕様1.3が発表され、次世代のHDMI 1.3の機器が登場するまで待たされることなっている。さらに、ビデオカメラではAVC-HD(Advanced Video Codec High Definition)という高圧縮技術のMPEG-4 AVC/H.264方式によるカメラなどが発売となったが、カメラ以外で再生できない製品というような「デジタル機器のジレンマ」に陥っている。

Webが2.0化することによって、OSレベルを超えてコンパチブルな環境を作ったのに対して、家電業界ではさらに混沌(カオス)化するHD(High Definition)環境を構築してしまった。PCは2年サイクルで進化するが、家電は本来10年単位の買い替えサイクルであった。しかし、家電へのデジタルの浸透と深化と共に、家電のサイクルも3〜5年で変化する時代をむかえつつある。混乱するのはいつも消費者である。

同様に、iPodなども音楽の著作権保護上の考えから、複数のiPodで同一PCの音楽を共有できなくされているが、iPod Shuffleのような2台目のiPodを所有する人や、複数のiPodで音楽を共有したい人にとっては不都合な環境をも生みだしている。

家電業界にも大きな変革期がおとずれているが、その前に、ユーザーを不在にした、行過ぎた著作権管理の問題に対しても考えなければならない。

●政府が内部告発やキャンペーンに利用

YouTubeが社会にもたらすバイラル(口コミ)効果の大きさには米国政府も着目しているようだ。米国政府の国家薬物取締政策局(ONDCP:Office of National Drug Control Policy)は麻薬撲滅キャンペーンのためのコマーシャルを作成し、Youtubeに投稿していた。

もちろんターゲットはYouTubeを見ている若者達だ。約3万件のPV(ページヴュー)数があるが、作品の評価はほとんどが一つ星程度と辛口だ。どうにも抽象的で意味がよくわからない作品になっており、インパクトに欠ける。YouTubeに登録さえすれば、多くの若者が視てくれるだろうという甘ささえも感じられる。

YouTubeを使うのであれば、YouTubeに合わせた映像作りも必要だということだ。もし、出来のいいコマーシャルであればどこで放映されていても、その作品を気に入ったユーザーが勝手にYouTubeに転載してくれるからだ。さらにそのパロディがアップされ、オリジナルと共に、バイラルで伝承されつづけるという無限のループが生まれる。

米国の政府機関がYouTubeを利用するのは初めての試みで、どこまでを効果と考えているかはわからない。結果的にどのような反響があり、今後も活用していくのかが気になるところだ。

日本では「バック・トゥ・ザ・フューチャー」などで知られるマイケル・J・フォックスのビデオも物議を醸している。それは、彼が難病治療のためのES細胞研究を支持する民主党候補への応援コマーシャルに出演したからだ。コマーシャルの中では、彼自身もパーキンソン病患者であり、体の震えを抑えることができない状態で訴求しているからだ。

すると、すかさず、共和党支持派(?)からの、反論する映像もYouTubeにアップロードされた。政治のコマーシャルでPR合戦を繰り返す米国の政治であるが、YouTubeであればコストは制作費だけでイデオロギーを主張することができる。また制作費も議員が直接カメラに向かってしゃべり、アップロードすれば限りなくゼロに近いコストでPRすることも可能だろう。

費用をかけただけの効果が出るのはテレビであり、費用をかけても効果が出ないのが、YouTubeの特性だ。YouTubeの価値感は「人に伝えたくなるかどうか」というポイントだけである。特に政治色の強いメッセージであれば、テレビのように空気とともに消え去るのではなく、リンクがリンクを生み、繰り返し視聴されるYouTubeのようなメディアをもっとうまく活用するべきではないだろうか。

公職選挙法でがんじがらめになっている候補者であるが、支持者がYouTubeなどで勝手に支持を表明し、理由を述べたとするとどこまでが違反になるのか? 議論されるべきであろう。日本も2007年の夏の参議院選挙では、動画共有サイトで勝敗が決まるのかもしれない。

半世紀前の1960年、ケネディとニクソンの第一回討論は、テレビで初めて放送された1対1のディベートであった。しかし、これからはYouTubeでn対nのディベートが繰り広げられようとしている。YouTubeはテレビの世界さえも一足先に「民主化」してしまったようだ。

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by G-Tools , 2006/11/06