KNNエンパワーメントコラム 新聞はこのままではMOTTAINAI
── 神田敏晶 ──

投稿:  著者:


KNN神田です。

ここに来て、長年購読している新聞の購読をついにやめようと考えはじめている…。ニュースがいらない訳ではない。ニュースソースの量が圧倒的に増えているからだ。新聞だけに時間をさくことができなくなってきたらからでもある。

朝刊で約30ページ、夕刊で約10ページ。目黒区ではそれに匹敵するほどのチラシが挟み込まれている。チラシはそのままゴミ箱にズボッと投げ込まれる。最終的には毎日約50〜100ページもの紙資源が、ボクの家から排出されていることとなる。


スーパーがレジ袋を有料にするということよりも、地球温暖化防止には、こちらの方をなんとかしたほうがきっといいことだろうと思う。

可処分所得と同様に、時間にも「可処分時間」がある。調査などでは15分単位でしか統計されていないが、GTDやLifeHacksや、ケータイビジネスのニーズで考えると5分ほどの「ニッチな時間」の使われ方の方が気になる。実際にニッチな時間は増えているそうだ。
< http://www.nhk.or.jp/bunken/new/new_06021001.html
>
2005年国民生活時間調査報告書

 GTD:David Allen の著書「Getting Things Done (邦題=仕事を成し遂げ
 る技術)」の略称、およびその方法論。
 LifeHack:ライフハック 効率よく仕事をこなし、高い生産性を上げ、人
 生のクオリティを高めるための工夫
              (以上「はてなダイアリー」より:編集部注)

新聞は、そんな「ニッチな時間」の消費メディアとはちがい、テレビと同じように、従来そのために費やされていた時間をインターネットにますます食われている。

テレビは、ネットでも新聞でも「ながら見」ができるので、相性が良い。しかし、新聞はネットと「ながら見」は、相性が悪過ぎる。テレビはPush型の情報であり、ネットや新聞はPull型情報だから「同期」させることができないのだ。むしろ「非同期」で互いを補完するメディアにする必要があるだろう。

新聞を読んでいていて、最近では昨日の夜のネットニュースや他のサイトで読んだことが、翌朝の新聞の大半であることに改めて気づいた。ボクの購読紙は日経であるが、WBS(ワールドビジネスサテライト)で見たことなどなどが重複し、それを朝刊で確認しているのである。なんとなく、ナイターの結果をスポーツ紙で確認する作業に似ているのかもしれない(ボクは野球がよくわからないので、違うのかもしれないが…)。

こうなると、新聞でもマス的な情報、いやテレビで補完できるような情報は数ページあればいいのかと考えるようになってきた。そして、記者より専門的なビジネスブロガーが、当事者の立場で等身大で語りはじめてきたところにニュースソースの重要性が見えはじめてきている。これは新聞社のコンテンツとしては、活用すべき価値のある情報かと思う。

毎朝、ボクの合計4台のHDRは各新聞の一面のレビューをおこなうテレビ番組を予約録画しているから、何紙分ものニュースとしての情報は、無料のテレビ番組の一部として「ながら」で「聞いて」いるのである。そしてテレビのニュースは「見る」のではなく、気になった言葉があれば、そこだけHDRで再生して視聴するという見方をしている。コマーシャルは当然、15秒スキップボタンを4回ほど押して、時間を圧縮している。

本当はテレビの記事もそのまま、Newsingやdiggに「it!(投稿)」したいのだが残念ながら、テレビニュースには「URL」もなければ「タグ」もない。さらに「Permalink」も「メタデータ」もない(メタデータは一般には公開されていない)。これでは誰もがテレビを参照しにくい。

唯一、EPG(電子番組ガイド)が残っているだけだ。しかしながら、EPGは番組表という、番組の容器の単なるデータであって、コンテンツを表すものではない。実は、テレビにはコンテクスト(文脈)に直接リンクしたり参照する術が全くないのである。これは本当にもったいない話だ。

物質や資源にはよく「MOTTAINAI」という言葉が使われるが、TV番組ほど、膨大な時間と人力とコストがかけられて作られた作品が、「生」で見た人だけのしかも調査に協力している人だけの「視聴率」だけでしか評価されないのは、本当に「MOTTAINAI」。

ユーザーがコントリビューターとして、ブログやニュース、コラムといったバズマーケティングに参加することによって、話題となる番組の録画率や再生率が増えるというビジネスの機会を、完全に失ってしまっている。番組宣伝の起爆剤となる可能性を秘めているYouTubeに対しては全否定。しかしながら、水面下では状況を見ながら、民放連加盟各社で一気に「動画共有」できる市場への色気を見せている。ユーザーの利便性という、民間企業であれば考える思考パターンが完全に欠如している。

新聞も同様だ。産経新聞の「IZA< http://www.iza.ne.jp/
>」や佐賀新聞の「ひびの< http://www.saga-s.co.jp/
>」などが先進的に「情報共有」を意識したつくりになってきているが、大半の新聞は、人々がせっかくブログにとりあげ、丁寧にリンクを貼っているにもかかわらず、その元記事となる情報を完全に削除してしまう。削除するくらいなら、ネットに上げるなと言いたい!

それがデータベースで情報を売るために記事を削除しているのだとすると、とんでもない話だ。データベースは有料で新聞を購読している人には、無料にすべきだろう。朝刊に本日のみ有効のパスワードを印刷しておけばいいことだと思う。データベースの利用料を購読者にも求めるのもおかしな話だ。運用費用は、購読していない人たちから徴収すべきだ。購読している人がいるからこそ、広告も成り立つビジネスモデルなのである。

そして、新聞の情報量はすでに、もうおなかがいっぱいなのである。情報の質や情報のロングテール化に対して、ニッチな情報やコミュニティによるフィルタリング、ソーシャルブックマーク機能など新聞が見い出せるビジネスモデルはまだまだたくさんあるはずだ。

ボクが新聞で読んでいるのは特集記事やコラム、書籍や雑誌の広告などである。ここから世論の兆しや動向を読み取るのに重宝している。反対に、株式欄は現在は株をやっていないことと、昨日の株情報なので、あのページには全く魅力を感じない。常にネットで自分の関心銘柄を表示させておけば十分に意味を果たすだろう。

また、テレビ欄やラジオ欄もネットやHDR機器のほうが便利なので不要である。さらに、ゴルフはしないので、ゴルフ広告や健康食品とも縁のない生活だからそれらの広告もまったくいらない。ペットも飼わないし、結婚紹介所もいらない。マンションの購入予定もない。ましてや求人欄も読まないから、新聞を実際に消費しているパートは1/5以下なのである。しかし、月額4,383円×12か月で5万2,596円も払っている。これは、プレイステーション3の60GBが毎年買える価格だ。しかもその価値の4/5はボクは捨てているのである。

さらに、出張で数日留守にする時、配達所に「不配」の連絡し忘れると、マンションの郵便受けは、さも泥棒にでもはいってくださいとでもいうような状態におちいってしまう。

今まで、新聞を読む「意味」のひとつに、新聞を読んでいないと「社会人として失格」というイメージがあった。しかし、今やIT産業のことなどは新聞一紙でキャッチアップできるようなものではない。むしろ、「日経IT新聞」という別に業界新聞を作ってほしいくらいである。

世界のブログ、メディア、マーケティング、そして日本のブログ、メディア、マーケティング。統計データ、新製品、新サービス、吸収合併、投資案件などいろんな情報が求められている。

ネットでフローな情報を、そして新聞でストックな情報を。それが、またブログやネットでディスカッションされるのが理想だ。そしてまた紙面に反映される。ブログをたくさん読まなくても、編集者や記者が選んだブログをアナログな新聞で読むというスタイルも考えたいほどだ。

ウェブサイトのNewyorktimes.comなどはレイアウトそのものが新聞に近似してきている。有料会員にはコラムを購読させ、記事は無料で読める。

新聞がこのまま広告やチラシを包み、家庭に届けるための「包装紙型ビジネスモデル」に甘んじていると、せっかくのネットと融合させることによるビジネスチャンスがなくなってしまうことだろう。

新聞はこのままではMOTTAINAI

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star業界人なら必読
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YouTube革命 テレビ業界を震撼させる「動画共有」ビジネスのゆくえ クチコミの技術 広告に頼らない共感型マーケティング ウェブ人間論 次世代ウェブ  グーグルの次のモデル ウェブを進化させる人たち




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YouTube革命 テレビ業界を震撼させる「動画共有」ビジネスのゆくえ
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ソフトバンククリエイティブ 2006-12-16
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star既得権益の危機
starYoutubeについて、一通り分かります
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star内容が薄い
starYouTubeの「ヤバさ」より「すごさ」を説いた画期的なビジネス書

ウェブ人間論 ネットvs.リアルの衝突―誰がウェブ2.0を制するか グーグル・アマゾン化する社会 次世代ウェブ  グーグルの次のモデル テレビCM崩壊 マス広告の終焉と動き始めたマーケティング2.0

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Web2.0でビジネスが変わる
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star「Web進化論」は頭のいい人達だけの世界って感じだったけど
starユーザサイドからみたWeb2.0の世界
star読みやすくはありますが
starWen2.0との共通点をみる
star面白い

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する  文春新書 (501) Web2.0 BOOK グーグル・アマゾン化する社会 テレビCM崩壊 マス広告の終焉と動き始めたマーケティング2.0

by G-Tools , 2007/04/16