伊豆高原へいらっしゃい[13]伊豆高原での生活・その後/松林あつし

投稿:  著者:  読了時間:8分(本文:約3,700文字)


僕が伊豆高原へ移住してから丸二年が経ちました。ここに移り住むまでのいきさつは以前書いた通りですが、二年間住んでみての感想をお伝えしたいと思います。もちろん良いことばかりではありませんが、あれやこれや含めて、田舎で暮らすってどうなの? という疑問にもお答えできればと思います。

そもそも、なぜ伊豆高原に移り住んだのかと言えば、海を見ながらのんびり仕事をしたいと思ったからなのですが、当初の希望は叶えられないまま、「移り住む」という大前提だけが先走り、どんどん計画を進めてしまい今に至る、というのが正直なところです。

ただ、狭いマンションで一生過ごすという未来は想像できなかったので、どの道どこかには移り住んでいたでしょう。この地への移住はそんな「マンションを出たい願望」を叶えるための口実だったのかも知れません。

そして、マンションを出るのであれば、できるだけ環境の良い所へ行きたい…そう考えたあげく、候補地にしたのが伊豆高原なのです。


では、実際二年間住んでみてどうだったのか……点数を付ければ、80点というところでしょうか。静かで空気がきれいで、海も山も近い。車でちょっと走ればホタルの生息するわさび園の清流があり、犬の散歩をしても、車の往来をほとんど気にしなくて済む……しかし、田舎とは言っても、ここ別荘地は、緑と坂道のやたら多い「住宅地」なので、適度な利便性もあります。その上で住んでいる人たちはご老人が多く、のんびりとした空気が漂っています。

マンション暮らしの時も、毎日部屋にこもって仕事をしていましたが、日曜日などは朝早くから奇声を上げながら廊下を走り回るガ、おっと、お子様方や、人の家のドアの前で長々と井戸端会議をされる奥様方の騒音に悩まされたり、駐車場に車を入れようとした時、出ようとする車のこわおもてのおっちゃんとトラブルになって怒鳴られたり、上階の人の飛び跳ねる音が気になったり……といった窮屈で殺伐とした環境はここにはありません。何せ、外で誰かの話し声が聞こえると「おや、誰だろう」って珍しがるほど、人通りがないのです。

最も良く聞こえる音は……今の時期であれば、ウグイスの鳴き声や風の音です(結構リフォームをするお家が多いので、建築音は時々聞こえますが)。しかし、だからと言って物寂しいというイメージはありません。ほんの20mも離れたご近所には誰か住んでいます。実際、うちも年末には忘年会、春先にはバーベキューなどごちそうになってますし(今度はうちで何か催さなければなりませんね)。

しかし、ご近所さんは年配の方が多いと言いましたが、そのため、僕のような「若者」(ここでは40代は若者です)が別荘地に住んで、仕事は何をしているんだろう……と思われているはずです……たぶん。なので、最近は積極的に「イラストを描いています」って言うことにしています。CGと言っても理解してもらえないと思いますし……(これはマンション住まいの時も同じだったのですが……「あそこのお宅のご主人はいつも昼間家にいて、何してるのかしら」と言われていたはずです……たぶん)。

それに「うちは夫婦共働きで、イラストを描いたりデザインをしたりしています」ってはっきり言わなければ、町内会の役員にされそうです。

ここだからこそ持てる、広めの庭も日々の生活に潤いを与えてくれます……と言えば聞こえはいいのですが、ほったらかしにするとすぐ雑草の餌食となり、見るも無惨な庭になってしまいます。庭の整備は大変でしたが、それも楽しみのひとつ……二年かけて全体に芝生とレンガを敷き詰め、雑草を生えにくくしました。これから色々な植物を植えて、目指すは「イングリッシュガーデン」といきますかどうか……。

良いことばかりではなく、マイナスの20点は、と言いますと、まず、「ちょっと無理してでも、海の見渡せる家を探せば良かったな?」と後悔したことが一つです。うちからも微かに海と大島が望めますが、その程度なら、逆に森に囲まれた場所の方が良いかも知れません。分譲地内でも地価の高いところ、低いところがあります。おおむね海が一望できる平坦地はかなり高く、逆に景色が悪い上に斜面であったり、水の流れる通路だったりする土地はかなりお安いようです。

僕のような職業の場合、将来への不安があり、銀行の貸付額も低く抑えられますが、無理をすればもう少し予算アップできたかも知れません。しかし、小市民である僕は安全な範囲での予算しか組みませんでした。さんざん探しましたが、予算内で海の見渡せる物件はなかったのです。

それと、温泉。伊豆といえば温泉を連想されるかも知れません。実際ほとんどの別荘地には、温泉のパイプが水道管のように張り巡らしてあります。うちも家の前まで温泉が来ていますが「温泉権利」を取得しなければ使えません。その権利料、約150万円。それプラス配管工事に150万円。計300万円なければ温泉を引けないのです。

しかし、中古物件を見れば「温泉権利付き」というのが結構あります。この権利付き物件は、やはり権利なし物件より多少高いのですが、それでも後で温泉権利を買うより遙かにお得だそうです。……しまった。

自然も良いことばかりではありません。まず、風がやたら強い! 昨年、伊東市は台風の直撃を受けました。その強烈な風は、今まで経験したことがないほどのものでした。ツツジの生け垣は倒れるし、隣の竹林の竹も折れて何本もうちの庭に覆い被さって来ました。台風に限らず冬でも強風は吹き荒れます。

次に湿度がやたら高い! 梅雨の時期や夏場など、換気をしているつもりでも、気を抜けばクローゼットの中にカビが生えますし、歩道は分厚いコケで覆われます。洗濯乾燥機は必需品です。

数年に一度、伊豆半島東方沖地震(群発地震)に見舞われる! 2006年の春がそうでした。地震が発生し始めると、一日に何度も揺れを感じますし、一昨年の最大震度は6弱でした。

しかし、地震、噴火はそれほど脅威には思っていません。伊豆に住むことを考えていた時、「伊豆半島の地盤地図」というのを取り寄せて確認しましたが、伊豆高原あたりは火山岩の岩盤でできており、斜面が多いとはいえ、地盤は強固だと思います。

ついでに火山ですが、すぐ後ろにそびえる休火山の大室山が噴火したのは、はるか4500年も前です。その後活動していないことを考えると、生きている間に噴火する可能性は極めて低く、それより、富士山の噴火の可能性の方が遙かに高いだろうと考えました。

そして静岡と言えば、東海大地震……いつ起きても不思議ではないと言われて久しいのですが、これも伊東市の直下で起きるとは考えにくく、楽観的に捉えています(富士、駿河湾周辺にお住まいの方には申し訳ないのですが、僕の住む伊豆高原を前提に考えた場合の、勝手な判断ですのでご容赦ください)。それでも、どんな被害がでるか予測はできないので、防災には気を遣わなければなりませんが(実際、地区の防災員になってしまいました、というより、されてしまいました)。

どこでもそうですが、防災以外に「防犯」にも気を配らなければなりません。そして別荘地は特に空き巣が多いのです。「別荘を持つ=お金持ち」というイメージがある上に、多くのお宅は数か月に一度しかオーナーが来ない、となれば空き巣にとっては格好の「獲物」と言えるのかも知れません。近所の家も電化製品一式、取り扱い説明書に至るまで全部盗まれたそうです。こわ! どろぼうさん! だからと言って来ないでね。ちゃんと定住者がパトロールしてますから……。

以上が、住んでみてのマイナス20ポイントでしょうか……しかし、僕にとっての最大のマイナスポイントは、夏になるとこの辺一帯、「クモ天国」になることですね。クモは僕の天敵です。うちの庭には一匹たりと巣を張らせないぞ!

最後に、別荘地に移り住もうと思っている方に、恐れ多くも助言ですが……その地の環境や物件、土地だけに目を奪われず、管理母体をしっかりリサーチすることをお勧めします。

分譲別荘地は、どこかの会社が管理をしているはずです。しかし、時々管理の行き届いていいない地域があります。道路の補修ができていない所や、排水溝が埋まっているような所はちゃんと管理ができていない可能性がありますし、道路や水道管の管理が自治体なのか、管理会社なのかによって補修の頻度も違ってきます。管理会社が何度も変わってしまうこともあります。

実際、僕の住む地域もそうなのですが、補修をどこがするかでもめた上、宙ぶらりんになってしまうケースもあるようです。そうなるとどんなに環境の良い所でも、将来不安で住めなくなります。

まあ、どこに住んでも満足度100%のパラダイスはない訳で、自分にとって生活する上で大事なのは何なのかということだと思います。しかし、永住場所として選んだ地ですから、満足度が最低60%ぐらいはあってほしいですね。みなさんの「安住の地」はどこでしょうか?

【まつばやし・あつし】pine2656@art.email.ne.jp
イラストレーター・CGクリエーター
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