KNNエンパワーメントコラム 北京五輪で、世界は中国を起こしてしまった!
── 神田敏晶 ──

投稿:  著者:


KNN神田です。

北京オリンピックが終わった。毎日、起きている時間に世界のアスリートがくりひろげる祭典。時差が1時間なので、ほとんどリアルタイムに観戦できるのは、シドニー五輪以来である。

シドニーの時は、オーストラリアにいたので、日本のゲームが、全く放送されず、スタジアムに行くしかなく、サッカーを追いかけるだけで精一杯で他の競技は全然わからなかった。当時、柔ちゃんの金メダルも数日遅れで知ったほどだ。今回は北京に行かずに日本で観戦して正解であった。

モニター貸し出し中の全録レコーダーのSPIDERで全試合を記録しているが、
< http://www.ptp.co.jp/spiderzero/
>
完全に視聴時間のほうが足りない。もうすでに一週間前の試合は自動的に消えていってしまう…。保存シーンも、視聴しなければ保存するかどうかの判断ができないのがつらいところだ。おもしろいところだけ、自動で保存できないものか?



今年はテレビドガッチ(民放5社サイト)
< http://dogatch.jp/
>
が提供する
< http://www.gorin.jp/
>

のおかげで、ダイジェストシーンはパソコンで手軽に視聴できるようになった。しかし、NIKEの同じCMが延々と続くのがウザい…。NIKEの担当者も何本か別バージョンを用意すべきだった。

また、ブログにembedしたりして引用できればいいのだが…そんな都合のいいことはできない。ネットコンテンツとしては、テレビ番組コンテンツにはいろいろと課題が残る。おそらく、来月頃にはテレビと同様にこれらの映像は、空気の藻くずとして消え去ってしまうことだろう…。

テレビコンテンツの最大の弱点は、「検索視聴」に対応していない点だと断言したい!

ネットのない時代のテレビはそれでよかった。ビデオに保存しておいて、知人と貸し借りすればよかった。しかし、すでにネットで検索して消費行動を行いはじめた今日、今までの「広告」だけの世界から「販売促進」や「購買機会」の場まで、ネットはすでに提供している。

賢く買い物したい人(スマートコンスーマー)は、テレビショッピングで購入する前に「楽天市場」で調べて、テレビショッピングの7割程度で購入できることをすでに知ってしまっている。もっと時間をかけて検索すれば、さらに安いところを見つけることもできる。送料が無料であれば、電車や地下鉄でおでかけする費用さえ不要になってしまった。リアルな店舗での買い物は「移動欲求」や「ストレス発散」という別の目的になっているのかもしれない。

つまり、すでに僕たちは、「広告認知型購買行動」から「ネット検索型購買行動」を選択しはじめているからである。

例えば、その現象はすでにブログ等で皆さんが実感されているように、継続的な読者よりも、新規で検索で訪問する読者が必ずいることが証明している。ボクのブログの場合は、7割数以上が「東京拘置所」や「セグウェイ」などの特別なワーディングで検索されて訪問されている。

コンテンツとマッチングしていようがいまいが、コンスタントに訪問されている。しかも、ありがたいことに、アフィリエイトを定期的に踏んでくれているので、思わぬ「マイクロお小遣い」が発生している。これらはすべて検索によるものだ。月間約1万5000PVのうち、7割が検索エンジン経由なので、1万PVはボクの事を全く知らない人が検索でやってきていることとなる。

テレビもブログと同様に考えれば、生放送だけの視聴率では、実は半数以上、いやもっと多くの視聴者を捨ててしまっているのかもしれない。

SPIDERの機能でユニークだなぁと感じているのが、「みんなの感想」だ。この機能は、SPIDERのオーナーが気に入ったシーンなどをメモがわりに残しておくと、そのシーンの情報を他のSPIDERユーザーが共有し、その情報をもとに視聴できる。一週間以内ならばすべて録画されているから、そのようなことが実現できるのだ。いわば、テレビコンテンツのSNSのようなものだ。

オリンピックの「口パク」や花火の「CG」などもすぐに知ることができた。閉会式の「ジミーペイジ」やベッカムの出演シーンをダイジェストではなく、本編のそのシーンから再生される。それは一週間分の放送が取りためられているからこそ、可能になった新しいテレビの視聴スタイルだ。

今回のオリンピックでよかったのは、民放ダイジェストは日本のメダルシーンばかりが報道されるが、SPIDERの本編で、日本人の登場しない決勝戦を300倍スピードで黙視検索視聴できたところだ。目視なので大変だが、コマ送りがアナログゆえに機敏で、しかもブロックノイズが発生しない点がいい。情報としては、画質よりもスピードが命であることにとても賛同する。

当初、ハイビジョンでないともう見ることができないと考えていたが、現在ハイビジョンではこれほどまでに機敏に動いてくれるマシーンはないだろう。あくまでも画質よりも情報マシンとしてテレビを見た場合、画質は妥協できた。もちろん、今まで同様、HD保存するものはHDで別のマシーンで保存している。

この数週間、世界の超人たちのプレーをほとんど逃すことなく視聴できたことにとても感激できた。そして、ようやく今日から普通の生活に戻れる。しかし、問題はこれから発生していくことを、まだボクたちは真剣に考えていない…。

●崩壊への道のカウントダウン

1964年の東京オリンピックの頃の日本を想像してみてほしい。中国は、まさにその頃の日本の高度成長そっくりなのである。

今まで魚を主食としてきた日本に、西洋食が入り、肉を食するようになる。和式トイレが洋式トイレと変わる。東海道新幹線開通、ホテルの建築ラッシュ、そして1970年の万博開催、日本列島改造論、土地バブル、インフレ、オイルショックへと続いた。

日本の常識だけで動いていたのが、世界を知ることができ、そして必死に勤勉になってキャッチアップし続けたのが、現在のニッポンの姿である。マスメディアが重要な情報源として万人に、同じ情報を配信し、国民が一致した世論を形成してきた。

そして、それに今回の中国には、「ネット」という最大の人民のツールが加わっている。国家による統制など、あっという間になくなってしまうことだろう。13億もの人民が、贅沢への高度成長期へと、北京五輪を機に、一気に走りはじめたのである。

「食」の世界では、中国を筆頭に贅沢化がはじまり、一斉に世界的な高級食品需要が高まり、食品による戦国時代がすでに始まっている。石油も同様だ。ハイブリッドとかエコとか生易しいことを言っている間に、中国の人たちがマイカーを持ち始めた段階で、崩壊への道のカウントダウンがすでに始まっている。

さらにそこに投機マネーが流れることによって、儲ける人たちがいるから、さらに希少価値で高くなる。富裕層は石油が300円台に突入しても乗り続けるからだ。そして、恐るべき「超格差社会主義国家」が形成される。一割の富裕層としても、日本国民全員に等しい人たちがすべて億万長者だと考えられる国が2000km圏内に存在しているのだ。

これは日本の一般人にとっても脅威だ。老齢化する日本は、中国の富裕層にとっては、おいしい市場である。老人大国となった日本は、若手の労働力を海外に委ねるしかなくなり、コンビニや居酒屋でしかいなかった中国人たちが、一斉に、店舗に、ホテルに、タクシーに、主要な産業に流入してくる。そして、企業や法人、学校、さらに、官庁にまで登場し、日本語、北京語、英語、スペイン語が入り交じる国際国家へと進化する。

もしかすると、増えた移民を対象とする自治区も登場し、過疎に悩む自治体は、土地を貸与し収益に向けるかもしれない、華僑自治区とか、ポルトガル自治区、ヒスパニック自治区などが登場するかもしれない。

そこまでは考えすぎかもしれないが、眠れるライオンを、ついに世界は起こしてしまったことは事実だ。


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by G-Tools , 2008/08/25