KNNエンパワーメントコラム なぜAmazonでは1円で本が売れるのか?/神田敏晶

投稿:  著者:  読了時間:8分(本文:約3,900文字)


KNN神田です。

世の中には不思議なことがいくつかある。Amazonで書籍を購入しようとすると、中古品でたまに「1円+340円(配送料)」という書籍と出会うことがある。本がたったの1円で売られているのだ。どういったビジネスなのだろうか?

自分の書籍もこのとおりだ……。

YouTube革命
< http://www.amazon.co.jp/gp/offer-listing/4797339039/dgcrcom-22/ >
Web2.0でビジネスが変わる
< http://www.amazon.co.jp/gp/offer-listing/4797335939/dgcrcom-22/ >
ウェブ3.0型社会
< http://www.amazon.co.jp/gp/offer-listing/4479791922/dgcrcom-22/ >

読者としては、送料込みの341円で書籍が読めるというのは非常に経済的である。書籍は新品に限るという人でなければ、抵抗がないかもしれない。また、ボクのように、お風呂の中が一番の読書スペースというタイプの人にとっては、中古品のほうが、ジャブジャブ濡れた手でも読書を続けることができる。



著者のはしくれとしては、自分の書籍が中古で流通しても一銭のメリットもない。しかし、一冊の本が流通し、一人でも多くのアイボールに触れてもらえるというのも著者冥利につきる、と考えたい。しかし、購入された本が、もう不要だからと売り出されているという事実も、同時に認識せざるをえない。

さて、Amazonで実際に購入したところ、1円といえども、リアルな青森県の古書店から、セロテープで宛名が貼られ、ガムテープで梱包された本が送られてきた。1円といえども、その作業は3分くらいはかかるだろう。時給800円の人が、3分かかると、40円の労働コストが発生する。一冊の本を送る度に、39円の赤字! が出て古書店の経営はホントに大丈夫なのか?

そして、こういう疑問を抱いたまま、棺桶にははいれないので、青森の古書店さんに直接、電話をして質問してみた。いつもの通り取材電話は、Skype経由なので、取材コストはほんの数円だ。

聞くは一時の恥!

なんと、こういうカラクリがあったのだ。

【1】神田→Amazonに本代1円+送料340円で注文

【2】Amazon→出品者(青森の林語堂さん)から手数料100円、本代から15%のマージンを抜く。
この場合、Amazonの利益は100円、本代1円は15%のマージンがとれない。
※14円以下の本代の場合Amazonは、15%のマージンがとれないこととなる。なるほど、Amazonは送料から100円儲けているわけだ。
※本代0円では販売できない。
※1円だとリストの上位に表示される。

【3】341円−100円=残りの241円が青森の古書店さんに後日渡される。

【4】冊子小包(現在ゆうメール)大量割引で100〜160円(※400gまで)
< http://www.post.japanpost.jp/fee/simulator/kokunai/you_mail/special_1.html#01 >
クロネコメール便なら80円〜
< http://www.kuronekoyamato.co.jp/mail/mail.html >

【5】出品者(林語堂さん)の利益は、
241円−160円=最低81円となります。

なるほど! 利益は1円でなく、送料の努力で、最低でも81円は確保できるというわけだ。林語堂さんは、一冊あたりは、それほどの利益にはならないが、たくさんの古本を扱っていると、そこそこの利益になるという。

クロネコメール便で送れば、161円と利益が増えるのですが、以前到着しなかったという事故があって、冊子小包(現在ゆうメール)を利用しているとのこと。80円の利益確保のためにトラブルが発生したほうが、時間的に高くつくということだ。(あくまでも青森県の古書店さんのご意見)
青森の林語堂さん、仕組みを教えていただきありがとうございました。
Amazon Primeでも、この分野(中古商品)の送料も無料になるところまでの、エスクローサービスが欲しいところだ。

かつて、アメリカで、Amazonを利用した時に、住宅や保険などの本が1ドルで販売されていて、それを購入すると、住宅会社や保険の営業マンがスっ飛んでくる(笑)という、モーレツな見込み顧客名簿収集のビジネスモデルがありましたが、送料の中に利益をインクルードするというビジネスモデルと確信できて、少しホッとして購入することができる。

ということで、「Amazonで1円で本が売れるのは、配送料に、手数料と送料と出品者の利益がインクルードされているから」という答えで、一件落着……かな…?

しかし、しかしだ。なんだか、腑に落ちない。この納得できないボクの理由をさがしてみた……。やはり、「配送料」と明記されている金額340円から、100円手数料を取っているのは、Amazon側の詭弁のような気がする。「配送および手数料」と明記すべきではないのか?

配送料340円とすることによって、Amazonの利益100円と、出品者の利益は経営努力にまかせる部分は良いと思うが、なんだか配送料がごまかされている気がしてなならない。

Amazon側が配送料340円と謳っているのは、「不当表示」にあたるのではないかということで、今度は、
「不当表示」
< http://www.houko.com/00/01/S37/134.HTM >
に抵触するのでは? と、公正取引委員会に「いいんかい?」と質問してみる。

公正取引委員会 景品表示監視室
03-3581-5471(代表)
< http://www.jftc.go.jp/ >

ついでに、以前から気になっていた、マクドナルドのクオーターパウンダーの写真と現物があまりにもサイズがちがうことも……。あんなのがくるかと思うと、かなりちがってたと……。

こちらも、公正表示に抵触する恐れはあるらしい!!!!
おおお!!

どちらかというと、アマゾンよりもマクドナルドの方が、抵触するおそれがあるような気がします、と電話の景品表示監視室のTさんのあくまでも個人的なご意見。正式には、申告書を出していただけないと組織としては動けない、という。消費者センターの苦情相談とちがって、正式に国の組織が動くということなのだから。公正取引委員会は内閣府の外局にあたる。行政委員会である。

公正取引委員会の組織図
< http://www.jftc.go.jp/profile/annai.html >

公正取引委員会では、年間1,800件の申告があり、排除命令件数が56件ということなので、確率的には、1/32倍。いや、確率の話ではないが……。
< http://ja.wikipedia.org/w/index.php?oldid=23414373 >

つまり、申告書が出されると、公正取引委員会は書類を調査するという業務が発生する。それを、公取が動き出したという表現もできてしまうではないか!

企業はこんな、公正取引委員会に申告書を出すだけ(無料で匿名制度もあり)というテロ行為(?)によって、「公正取引委員会が(調査に)動きだした」といわれかねないし、広報部に「おいこらワレ! この申告書を公取に出されてもええんかなぁ?」というユスリもありえる。コワイコワイ。

「最後に情報提供ありがとうございました」と公正取引委員会さんに言われる。なんでも聞いてみるもんだ。

ちなみに、「景品表示法」にこうある。
< http://ja.wikipedia.org/w/index.php?oldid=23414373 >
優良誤認(4条1項1号)商品・サービスの内容が、事実と相違して、(1)実際よりも優良であると誤認させる、(2)他社の商品・サービスよりも優良であると誤認させる、ことを規制する。

ちなみに、申告書のフォーマットは自由。ウェブサイトでフォームを作って、誰もが、簡単に申告書ができるサービスをつくってみるのもありかも。消費者保護の立場から。しかし、これは公文書となるので、ネットではなく、郵便で送る必要がある。

送り先はこちら
〒100-8987 東京都千代田区霞が関1-1-1 公正取引委員会 景品表示監視室
03-3581-5471(代表)

※取材はすべてジャーナリストという立場でヒアリングしているので、バイアスがかかっている可能性もあります。

KandaNewsNetwork,Inc.< http://www.knn.com/ >
〒251-0037 神奈川県藤沢市鵠沼海岸7-10-12 グランドソレーユ105
KandaNewsNetwork,Inc. 代表取締役 神田敏晶
Mobile 81-90-7889-3604 Phone81-3-5458-6226

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by G-Tools , 2009/02/16