つはモノどもがユメのあと[12]mono11:持ち歩かないまま持ち腐れ ─「CASIO QV-30 / Canon PowerShot S20」/Rey.Hori

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フィルムの時代からいつまで経っても写真が上達せず、しかもセキララに白状すれば「良い写真」の基準がイマイチよく判っていない筆者なのだが、今回のモノは今次の発掘で見つけたデジタルカメラを採り上げる。

Wikipediaなどをひもといてみると、デジカメ自体は1970年代後半に発明されており、商品としても80年代後半辺りには発売されていたようだ。だが、パソコンの個人ユーザ向け、つまりパソコンの手軽な周辺機器としての日本国内でのブレイクはもう少し時代を下って、95年3月発売のCASIO QV-10であることは、異論も少ないのではないだろうか。

少々脱線。実はそのQV-10発売の一年前、94年2月にAppleからQuickTake 100というデジカメが発売されていた。筆者はこれをよく覚えているが、双眼鏡風のデザインは今見てもインパクトがある。もし買っていたら、確実に本稿で取り上げるべきモノになっていただろう。

パソコンへの画像取り込みのための周辺機器に、ハンディなデジカメをいち早く位置付け、自社から(OEMだけど)発売するあたりが実にAppleっぽいのだが、残念なことにこれには液晶ディスプレイがなかった(光学式ファインダだからこその双眼鏡型だった、とも言えるかも)。



その後大ヒットする後継機もないまま、Appleはデジカメからは撤退する。撮ったその場で撮影画像を確認できるところが、少なくともパーソナルユースなデジカメのキモなのに、そこをハズシてしまった。後知恵で言えばそういうことなのだろう。

脱線もとい。QuickTake 100に照らして言うなら、リーズナブルな値段で小さな筐体に液晶ディスプレイまで搭載し、現在のコンパクトデジカメの基本形を定義してしまったところがQV-10の素晴らしいところだ。光学式ファインダを省いた割り切りもスゴい(ただし電池の保ちが悪かったので、液晶をオフにして撮影するために光学式ファインダのあるほうが良かった、という声あり)。

筆者は某集まりで先輩同業者の持つQV-10を見て俄然欲しくなった。この時はまだそれを仕事に使おうなどという大それた思いはなくて、単に画像でメモを取るように写真が撮れ、DPE屋さんを経由せずに直接コンピュータに画像が取り込める、ということにあこがれたのだ。そして手に入れたのがQV-10の上位機種である今回のモノ、QV-30だ。この時に筆者は後に繰り返す間違いをやらかす。

< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono11.html >
< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono11.html#p2 >

QV-30は96年3月の発売で定価は69,500円だが、筆者の購入は少し後で多分5万円台で手に入れたと思う。QV-10に対して望遠レンズとワイドレンズの切り替え機能や、レンズ部分だけ角度が変えられる機構が追加されていたが、解像度は同じ320×240pxで、本体メモリに画像を記録する仕様だった。筐体は一回り大きい。解像度上、高解像度のグラフィック用途への利用にはいささかの無理があることは説明不要だろう。

せっかく買ったQV-30だが、あまりこれといった活躍の記憶を残すこともなく、次の機種にその座を譲ることになる。実感として買い値のモトは取れていないのだが、ともあれ二台目のデジカメに筆者が手を出したのは、高解像度化競争真っ只中の2001年頃。機種はCanon PowerShot S20、今回のもう一つのモノだ。

< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono11.html#p3 >
< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono11.html#p4 >

PowerShot S20は2000年3月発売で定価は99,800円だが、これまた発売からしばらく経ってから買ったので、6万円台ぐらいだった気がする(もっと値崩れしてたかも)。最新機種じゃなくていいから予算内で最高解像度の製品にしよっと、という態度であまりマジメに機種選定をしていない。ズームレンズ装備で、記録メディアがCompactFlashだったことを除けば、現在のデジカメに比べて見た目や装備されている物にあまり違和感はない。液晶と光学式ファインダを両方搭載していて、最高解像度は2048×1536pxだ。単純計算だが、QV-30から4年間で解像度40倍超というのは凄まじい。

本機発売直後の2000年5月に発売された同社の初代IXY DIGITALが1600×1200px、74,800円だったので、既にIXYとPowerShotの住み分けがなんとなく見て取れる。筆者はこのS20を何度かは仕事の参考写真撮影(写真画像そのものを何かに使うわけではなく、モデリングの参考のための撮影)に使ったが、これまた記憶に残ったり愛着を生むような活躍をすることもなく、やがて持ち出さなくなった。またしても買い値のモトが取れていない感満点である。

これら二機種が大して持ち歩かないままに持ち腐れてしまったのは、どうやら大きさと重さの要素が大きい......ということに思い当たったのはウカツなことに三台目のデジカメ、Canon IXY DIGITAL 10(以下IXY 10)を買った2008年春のことだ。筆者の場合、十分に小さくて軽いカメラじゃないとすぐに持ち出さなくなる、という単純な結論なのだからもう少し前に気付くべきだろうと我ながら思う。機能的なスペックの小差に惑わされずに、QV-30ではなくてQV-10を、PowerShot S20ではなくて初代IXY DIGITALを選ぶべきだったのかもしれない。

< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono11.html#p5 >

ただ、ここには時代とテクノロジも大きく影を落としている。解像度を見ると、QV-30はともかく、2000年のS20が2048×1536pxに対して2007年発売のIXY 10が3072×2304pxというのは、素晴らしい進歩ではあるが隔世の感というほどのものではない(その意味では、QV-30からS20への解像度の伸びのほうを驚くべきなのだが、そのどちらも持ち腐れてしまった以上ここがポイントではない、ということ)。

このCanon同士の両機種の差で驚くべきは、記録メディアの容量ともう一つ、バッテリーだ。QV-30は単三乾電池4本で作動する。S20とIXY 10は充電池だが、S20はニッケル水素(Ni-MH)、IXY 10はリチウムイオン電池で、両者の体積と重さの差は、同じカメラというハードウェアを動かすものとは思えない。しかも厳密に測定したわけではないが、IXY 10の電池のほうがずっと長持ちする。本体サイズの縮小を電池の体積にだけ求めるのは無理があるが、設計の自由度などに大きく貢献していることは間違いないだろう。

< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono11.html#p6 >

以前デジクリの別の記事※に書いたが、IXY 10はほとんど苦もなく持ち歩き、あれこれ撮りまくり、それが新しい絵のシリーズ誕生に結びついて、新しい仕事につながったりした。作品に直接使う写真素材のクオリティを上げるべく、より高解像度でRAWデータを書き出せる高級コンデジやデジイチも気になってはいるものの、いつまで経っても上達しない写真のウデと、QV-30とS20の残した苦い教訓が筆者の物欲にブレーキをかけている2010年なのだ。

※「運動不足同志諸君に告ぐ」
< http://bn.dgcr.com/archives/20080902140800.html >

【Rey.Hori/イラストレータ】 reyhori@yk.rim.or.jp

IXY 10のデザインは本当に気に入っています。カメラにお詳しい読者の皆様、デザインはともかくとして、IXY 10に近い大きさで、マクロ撮影に強く、RAWデータを書き出せるカメラをご存じでしたら是非アドバイス下さいませ。動画なんて撮れなくていいんで(Canon PowerShot S90を気にしてはおります)。

3DCGイラストとFlashオーサリング/スクリプティングを中心にご打診をお待ちしています。サイト:< http://www.yk.rim.or.jp/%7Ereyhori/ >