[3111] 「第一回全国統一HTML5実力テスト」を受験して思う

投稿:  著者:  読了時間:25分(本文:約12,300文字)


《何でJavaScript APIとの絡みが必要なん?》

■明日もデザインで食べていこう![21]
 「第一回全国統一HTML5実力テスト」を受験して思う
 秋葉秀樹

■クリエイター手抜きプロジェクト[288]Adobe InDesign CS3/CS4/CS5編
 文字のサイズやフォントをランダムに設定する
 古籏一浩

■アナログステージ[番外編]
 日に千両が舞い落ちる世界に魅了され──其の弐(前編)
 べちおサマンサ

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■明日もデザインで食べていこう![21]
「第一回全国統一HTML5実力テスト」を受験して思う

秋葉秀樹
< http://bn.dgcr.com/archives/20110912140300.html >
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カヤックさんのWebサービスで、HTML5関連の自己スキルが試せるテストが公開されています。

< http://jsdo.it/event/html5cat/2011/summer/ >

これはエンジニア向けのJavaScriptコース、そしてデザイナー向けのHTML/CSSコースの二つの科目(?)があり、それぞれ好きな方を選べるし、両方受験することもできます。

まあ、内容はもちろんここでは書けないけど、結構難しいことから、割と誰でも知ってそうなことまで幅広いので、自分のスキルを試すということで、やってみてはいかがでしょう?

高い点数だったら、みんなに自慢しちゃおう、ということでTwitterのアカウントでログインして受験してみるのもよいでしょう。逆に点数が低いからといって、一方的に公開されるわけではありませんのでご安心を。

ちなみに僕はJavaScriptは専門外なので、HTML / CSSコースだけ受験。惜しくも93点。一問間違えてしまいました。。よく考えたら分かることを、、、悔やんでしまいます。

HTML5がテーマとなる試験なので、セマンティックな考え方を理解しておいた方がよいですし、CSS3の知識も必要になってきますし、JavaScript APIとの絡みも理解が必要になってきます。

と、書くと、「何でJavaScript APIとの絡みが必要なん?」って思うかもしれません。しかし、これは僕としては当たり前のことと思い、苦手だけど勉強中です(オライリーから出ているJavaScriptのパターン本を読んで、確かに面白いですが、これは僕がやる分野じゃないな、と思っています)。

プロジェクトって、制作に関わる人すべてが同じゴールを見ないとチグハグなものが出来上がってくるのに、この日本ってのはフロントに関わる大事な作業をする人が、ディレクターからの指示だけで動いているという現状があまりにも多く、ヒドい場合には途中で大幅な仕様変更などがあって、何故そうなったかも理解出来ず、苦しむことがあります。

「上が言ってるからそれは当たり前」とか「徹夜してでもやるべき」とか、そんなことを言う人もいるけど、もの作りの本質からは確実にずれている気がします。

ただ、大きなプロジェクトになれば(何十人、何百人のエンジニアが動くプロジェクト)になると、さすがにそうも行かないケースもあるので、一概には言えませんが。

少なくとも数人体制で制作にかかる場合、もっとフロント制作に関わる人(フロントエンドエンジニアやデザイナー)も会議に参加させて、その人のことをちゃんと信用していこうよ。フロントに関してはその人の意見が一番知識があるし、的を得ているはずなのに、何故違う人が仕様を決められるのか? は問題として認識しておくべきかな? と。

理想的な話ばかりしてるけど、制作者はすべてコミュニケーション能力がないとダメ。上記のように、フロントエンドの人やデザインの人などは、信用されている以上、プロジェクト全体のゴールを見据えて話が出来て提案も出来ないと、ただの言いなりにしかなれない存在なんです、悲しいかな。

だから僕らの立場を5年先、10年先でももっと価値のあるものにし、言いなりにならずに「この人にお願いしたい」と言われたいので、今が訓練の時期だと思うわけです。

話は戻るけど、デザイナーの知識にとって「何でJavaScript APIとの絡みが必要なん?」という答えは、自分が作ったUIと密接に関わるからです。自分がUIを設計する以上、最後はプログラムによってどのように動くかなんて知っていて当然、その挙動が予測できるようにならないといけません。

少なくとも、スクリプトを書けなくても、何が出来るか? ここを最初に設計、定義しておかないと後々困る、という部分だけは押さえておきましょう。これが今後、複雑な仕様になって広大なHTML5の技術に対する、僕らデザイナーの向き合い方だと考えて勉強しています。

こう考えると、色んなスキルが必要となってくるので、ひと独りでこのスキルを理解出来る人なんていないんじゃないかと思ってきます。JavaScriptエンジニアと言っても、今までDOM操作が得意だったエンジニアだけでなく、描画アプリをcanvasやSVGなどを使って作ることを得意とするエンジニアやAjaxやWebSocketなどの通信系が得意なエンジニアとか、エンジニアのなかでもいろいろ幅広く分野が分かれていくものと予感しています。これはあくまでディレクターとしての一つの意見ですが。

デザイナーもそうです。ビジュアルを担当するデザイナーから、ユーザの指や目の動きを考えたり使いやすい設計を考えるデザイナーなど、デザイナーといってもWebに関わらず、プロダクトやエディトリアルデザインの世界でもいっぱいいます。

どれがWebの世界で一番重要かだなんて、順位をつけられるわけがありません。見た目も機能性も、すべてにおいてクオリティを保たないと、それをクオリティとは言わないからです。

さ、そんなわけで、コレからも勉強、勉強、と。
お互いいい仕事をしたいですね!

【あきば・ひでき】
hidetaro7@gmail.com
< http://www.akibahideki.com/blog/ >

テクニカルディレクター・デザイナー。DTP黎明期からグラフィックデザインを学び、東京都営団地下鉄など交通広告を多数手がける。同時に音楽活動も活発に行い、西日本半全国ツアーなどを展開、某専門学校のテーマソングを作詞作曲、編曲から楽器全てを演奏してレコーディングするなど、マルチなクリエイティブ活動も。最近では東京と大阪の教育施設などで講師業をも務める。
HTML CSS JavaScript Flash ActionScript 3DCG Movie DTP GraphicDesign...多種スキルを持つ。Web標準技術だけに執着せず、全てのメディアで説得力のある表現にチカラを注ぎたい、そんな仕事をしたい。

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■クリエイター手抜きプロジェクト[288]Adobe InDesign CS3/CS4/CS5編
文字のサイズやフォントをランダムに設定する

古籏一浩
< http://bn.dgcr.com/archives/20110912140200.html >
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今回のスクリプトは、前回同様、選択されたテキストフレーム内の文字のサイズやフォントを、ランダムに設定するものです。IllustratorとInDesignはスクリプトのプロパティが非常によく似ていますが、やはり同じスクリプトでは動作しません。

最初のスクリプトは、選択されたテキストフレーム内の文字を上下左右にずらします。ちなみに、このスクリプトに関してはIllustratorでもInDesignでも動作します。


var dx = 20; // 左右のずれ
var dy = 10; // 上下のずれ
var selObj = app.activeDocument.selection;
for(var i=0; i<selObj.length; i++){
for(var j=0; j<selObj[i].characters.length; j++){
var x = Math.random() * dx - dx/2;
var y = Math.random() * dy - dy/2;
selObj[i].characters[j].baselineShift = y;
selObj[i].characters[j].tracking = x;
}
}


次は、さらに文字を回転、文字サイズも変更するものです。InDesignで文字を回転する場合は、characterRotationプロパティに回転角度を入れる必要があります。ここはIllustratorとは異なっています。


var dx = 20; // 左右のずれ
var dy = 10; // 上下のずれ
var rot = 30; // 最大30度
var size = 6; // 最大6pt差
var selObj = app.activeDocument.selection;
for(var i=0; i<selObj.length; i++){
for(var j=0; j<selObj[i].characters.length; j++){
var x = Math.random() * dx - dx/2;
var y = Math.random() * dy - dy/2;
var r = Math.random() * rot - rot/2;
var s = Math.random() * size - size/2;
selObj[i].characters[j].baselineShift = y;
selObj[i].characters[j].tracking = x;
selObj[i].characters[j].characterRotation = r;
var csize = selObj[i].characters[j].pointSize;
selObj[i].characters[j].pointSize = csize + s;
}
}


最後のスクリプトは、さらにフォントも変更するものです。
fontList=[] の []内に、文字に適用したいフォント名を指定します。
他のフォントにしたい場合はフォント名を変更してください。もちろん追加することもできます。フォント名は、Illustratorとは異なり日本語フォント名で指定します。


var fontList = [
"小塚ゴシック Pro", // 小塚ゴシックPro
"小塚明朝 Pro", // 小塚明朝Pro
"ヒラギノ角ゴ Pro" // ヒラギノ角ゴシックW6
];
var dx = 20; // 左右のずれ
var dy = 10; // 上下のずれ
var rot = 30; // 最大30度
var size = 6; // 最大6pt差
var selObj = app.activeDocument.selection;
for(var i=0; i<selObj.length; i++){
for(var j=0; j<selObj[i].characters.length; j++){
var x = Math.random() * dx - dx/2;
var y = Math.random() * dy - dy/2;
var r = Math.random() * rot - rot/2;
var s = Math.random() * size - size/2;
var n = Math.floor(Math.random() * fontList.length);
selObj[i].characters[j].baselineShift = y;
selObj[i].characters[j].tracking = x;
selObj[i].characters[j].characterRotation = r;
var csize = selObj[i].characters[j].pointSize;
selObj[i].characters[j].pointSize = csize + s;
selObj[i].characters[j].appliedFont = app.fonts.item(fontList[n]);
}
}


【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
< http://www.openspc2.org/ >

先週のデジクリ。齋藤浩さんの、わが逃走[91]の水戸黄門。確かに昔の方が(第5部あたりまで、かな)バリエーションが多く、まったく予定調和でないことも多く楽しめます。今見ても面白いです。黄門様が占い師になって、それを実現するため、屋根裏で弥七があたふたするようなのもあったり。なぜか、農作業を楽しむ黄門様とか。

それから、フィルムじゃなくてもSONYのハイビジョンカメラHDR-FX1あたりだと空気感が表現できます。でも、XF300とか最近の高性能なカメラになると、空気の存在感がなくなってしまい、のっぺらしか感じにはなります。

Panasonicのハンディカムもそうですが。NHKの大河ドラマ龍馬伝で使ったようなカメラなら別でしょうけど、今のは空気感をうまく映すのは難しいかなと思います。

デジタルリマスターの水戸黄門案には賛成。銭形平次や大岡越前などもデジタルリマスターして放送してもいいかもしれませんね。そう言えばロケ地が美しい(?)と言えば初期の戦隊モノも結構いいところ(ダムとか)撮影していた気が。

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・毎度おなじみASCII.jpの連載
「第6回 PhoneGapでMapKitを使って地図アプリを開発」
< http://ascii.jp/elem/000/000/632/632694/ >

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・ハイビジョン映像素材集
< http://www.openspc2.org/HDTV/ >

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■アナログステージ[番外編]
日に千両が舞い落ちる世界に魅了され──其の弐(前編)

べちおサマンサ
< http://bn.dgcr.com/archives/20110912140100.html >
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──「アレアレそこだよ、旦那さん、いいよう」と叫んでのけぞり、大きく息を吸う。声はだすんじゃねぇ、もらすんだ(さくらん:安野モヨコ)──

前回は、吉原遊郭の世界に染まるきっかけと、その周辺を綴りました。今回は、吉原遊郭で栄えた独自の文化を、ワタクシなりに解釈したものを纏めるか、遊郭の華と謂える、花魁を取り上げるかを迷った挙句、花魁の生き様について書き残すことにいたしました。

日に千両が舞い落ちる世界に魅了され──其の壱
< http://bn.dgcr.com/archives/20110701140100.html >

●散る花があれば、舞う華もある

先に、吉原遊郭のに精通されているかたは、「なに野暮ったいことを書いているんだ」と嘲笑されるかもしれないが、ご存知ないかたに、この先を面白く読んでいただくためにも、遊女の呼称について少しご説明したします。また、読みかたが特殊なものもあるので、「(お節介)」つきで。

ひとことで「花魁」といっても、文献によって解釈が異なっていたり、読み進めていくうちに、「花魁って結局なに?」と混乱してしまうかもしれません。花魁という呼び方の、もともとの由来は、禿(かむろ:後述参照)が姉女郎のことを「おいらんちの姉ぇさん」と呼んでいたことからだ、と伝えられております。

ほかにも、遊女の最高位を「花魁(太夫)」と解釈しているところもありますが、遊女の呼び名は、その時代によって変わっており、江戸幕末頃には、遊女の殆どを花魁と呼ぶようになり、遊女=花魁という解釈をしているところもあります。妓楼では最高ランクの花魁のことを「お職」と呼び、ほかの花魁とは別に格付けをしておりました。

元吉原時代には、太夫・格子・端と三つのランクが引かれており、最高位である「太夫」と、その下にいる「格子」が、花魁というカテゴリに置かれておりました。明暦の大火後、新吉原に移ってからは、太夫・格子・散茶・局・切見世と五つのランクになり、「太夫」というランクが消滅してからは、中ランクであった散茶が最高位となり、昼三(ちゅうさん)・附回(つけまわし)・座敷持へと派生していった。

また、Wikipediaの「花魁」で記述されているように、呼出しという位が、本来、花魁と呼ばれていた説もありますが、ここでは混乱しないように、自分の部屋以外に、自分専用の座敷や、新造、禿の面倒をみていた上級遊女の総称を「花魁」と呼んでおります。

ほか、遊郭の呼びかたも、廓(くるわ)、傾城(けいせい)と多種あり、べつに傾城=太夫のことを指すケースもあったりして、どうにもこうにも、ややこしくなってしまう。ここでは吉原遊郭内のことは、廓で統一します。

余談になりますが、まだ太夫が存在していたころの吉原では、吉原遊郭で名実(?)ともトップに君臨していた太夫を、高尾太夫(各々の源氏名が付くのではなく、高尾という名前が世襲されてきた)と呼び、嶋原遊郭の吉野太夫とともに、遊郭のシンボル(遊女の憧れ)として存在しておりました。

ちなみに、数年前まで、狂い咲きの艶道を道中していた小梅太夫は、芸人であり、花魁とはまったく関係ないことはご周知のとおりでございます。

●禿から新造、そして遊女になるまで

幼いころに、身売りで吉原に売られた幼女は、妓楼(お店)に仕えるとともに、姉女郎である花魁に面倒をみられ、廓内のしきたりや芸を学ぶ10歳前後の子どもを禿と呼んだ。禿の諸説もいろいろとあるようなのですが、まだアソコに毛も生えていない、禿つるの子どもを当てた説が本当のところでしょう。

禿の中でも、「引込(ひつこみ)禿」という、将来の花魁を約束されたような禿もおり、引込禿は、茶道や華道、書道などの教養や、三味線、琴、和歌などを徹底して教え込まれ、エリートコースを歩むのです。

花魁に仕えながら、遊女としての自覚(というよりも、廓での生き方)を持ち、15歳くらいになると禿を卒業し、新造として本格的な遊女の道を歩み始めることになります。ここでも、振袖新造と留袖新造と分かれるのですが、客を取らずに花魁の元に仕え、新造出しを迎えるのが振袖新造と呼ばれます。

10歳以上で吉原に身売りされ、禿の経験をしてこなかったものは、留袖新造としてデビューし、振袖新造とは違い、客を取って妓楼に勤めるようになる。花魁としての道は遠く、引込禿のようなある意味、将来を約束された道とは違い、出世コースから外れてしまった遊女が殆どであった。

新造出しを終え、晴れて遊女としてデビューするまでの期間を「突出し」といい、この期間は、花魁のアシスタントを勤め、売れっ子の花魁であれば、「廻し(他のお客を同時に掛け持ちする)」は当たり前で、名代(ピンチヒッター)として、花魁の手助けをしたり、花魁が戻るまで酒宴を盛り上げて場繋ぎをしたりと、なかなか多忙の様子。

しかし、振袖新造は客を取ることができないので、当然、名代であろうが、客は新造とヤることはできない。新造だけではなく、一度決めた遊女以外に、他の見世で別の遊女と関係を持つことはご法度とされていた。ほか、遊郭には様々な暗黙のルールがあり、これを破った客は、とても怖ーい私刑が待っているのだ。

突出しが終わると、いよいよ一人前の遊女としてデビューを果たす。10歳のころから順当に廓生活をしていれば、当然(?)のことながら、まだ「男性」を知らない体。禿の頃から見慣れている光景とはいえ、いざ自分が「ソコ」で稼ぐようになる不安は計り知れないものがあったろう。

そんな不安を取り除くかのように、妓楼側は、遊郭のことをよく知り、馴染みも深い年配の上客を、初体験の相手として迎え入れておりました。

●手練手管という魔法

2007年に映画化もされた、安野モヨコ原作の漫画『さくらん』で、とても印象的に残っているシーンがある。映画でも、同様のシーンがあるのだが、「世で生きていく」ということを再認識させられた場面だ。

まだ禿のきよ葉(禿時代の源氏名は、とめき)が、姉女郎の粧ひに抱く嫉妬と、自分が遊女として生きていくことへの不安を隠し切れず、足ぬけ(遊郭から脱走すること)を繰り返していた。女郎として生きていくことを拒むきよ葉に、粧ひがきよ葉の心に入り込む。

「お前のような田舎ごぼうには無理。逆立ちしたって無理。花魁などもってのほか......」
「なにが無理じゃ、バカにするな! 粧ひなんぞ目ではないわ! 引込になって、新造から振りそで、花魁街道まっしぐらじゃ!」

無我で喋るきよ葉。自分が喋らされていたことにも気がつかないところで、粧ひはこう続ける......

「女郎はな、思ったとおりのことを、客に言わせることができるんじゃ。それを、手練手管と言うんじゃ」

粧ひの言葉に、自分の未来を見たのかは分からないが、現実社会でも同様に、上司や仲間、家族の一言で起点となる場面は多々ある。潜在しているもの、客が思うこと(して欲しいこと)など、洞察力にも長けていないと務まらなかったのだ。

花魁として華を咲かせている裏で、先述のように、禿や新造など、妹女郎の面倒をすべて見ていた花魁の出費は大変なものだった。いまの社会で例えると、ノルマ(歩合制)のようなスタイルだったため、客が付かなければ、妹女郎の面倒はもとより、自分の食生活すらままならないものがあった。

収入源は客の懐のみ。いかにして客に気持ちよく金を遣わせられるかが、遊女としての力量にもなっている。しかし、花魁だからといって、指を咥えてても連日大盛業! というこはなく、遊び終えた客を大門まで見送り、「時間が過ぎていくのは罪。もっとあなたと一緒に居たい...」と謂わんばかりに、名残惜しそうな態度をしたり、馴染みの客に手紙を出したりと、「繋ぎ」はマメにしていたようです。現在でもありますねぇ...... 

「えー、もう帰っちゃうの? 終電までまだあるしぃー......。また今度ゆっくり遊びにきてくれる? 約束だよ? あ、私の携番と携アド教えてあげる♪べちおさんだけだよ、誰にも内緒だよ♪」

「○○だけだよ...」といいつつ、同僚や部下も知っていたりするオチがあるんですけどね、アハハ...。でも、、シャツの裾をキュッと引っ張られながら、上目遣いでアヒル口で言われたら、ワタクシはノックアウト確定です。手練手管と分かりつつ、楽しく遊ぶ、それが粋ってもんだ。

◎あとがき

今回は、花魁の前編として、花魁(遊女)になるまでのことを綴りました。内容を纏めるにあたって、いろいろな文献を読んだり既出の漫画、映画などを見たりして思うのは、とにかく読み方や、その背景が微妙に違うところです。なにが正しいのか、どれが本当のことなのか、いまとなっては知る由もありませんが、どれも正しく、本当のことだったとおもいます。

外の世界とは別の、吉原独自の規律を守り、それを守って「遊ぶ」。そこに、どれが正しいことだったんだろう? と疑問に感じるのは野暮かなって。次回は、花魁としての生き様(本当はここがメインで書きたいところなんですけど)を綴ります。

【べちおサマンサ】pipelinehot@yokohama.email.ne.jp
< http://oiran.posterous.com/ > ←番外編コラムのアーカイブ
< http://bachio.posterous.com/ > ←本家
< http://twitter.com/bachiosamansa > ←フォローしても役に立ちません

○このコラムの趣旨:中学生のころから、江戸時代の文化には興味は持っていた/吉原遊郭といっても、エロ要素はなし。エロ産業としての文化に魅了されたのではなく、「粋と張り」を信条にし、当時のファンションリーダー的な存在でもあった花魁(遊女たち)の生き様に魅了された/オイラは歴史に強いわけでもないので、識者の方が読んだら、オマエは何も分かってない! って怒られそうですけど、「ふーん、こんな見方もあるんだ」くらいでお願いします。

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■編集後記(9/12)

・昨日の自転車散歩で出会ったふたつの珍物件。一つ目は、蕨市の三学院(金亀山極楽寺)の庭にずらっと並べ立てかけてあった(乾燥させていた?)大量の卒塔婆。もしやと思い近づいて観察すれば、ピンポ〜ン、これはまぎれもなく卒塔婆プリンタによる印刷だった。一番下の施主名以外はすべて同じだ。施主名は手書きで、そこそこ上手である。わが生家の菩提寺では、いままで何度も卒塔婆を書いてもらったが、あきれるほど下手な字でありがたみがない。わたしが書こうかと思うくらい。金満で有名なんだからプリンタぐらい買ったらどうだ。三学院の大門に掲げられたイベント(仏事:卒塔婆もそのためのものらしい)案内の横断幕も文字の揃い具合からプリンタ出力に間違いない。マイナーなフォントだ。父母の葬儀のときにあちこちで見た大きな文字も、みんなプリンタ出力だった。嗚呼、味のある手書きの筆文字を見たい。二つ目は、家電量販店で見た「羽根なし」扇風機だ。これがあの有名なダイソンのエアマルチプライアーであるのか。画期的な構造と美しいデザインで、2010年度グッドデザイン大賞を獲得したあれか。しかし9,800円とは安過ぎる。3万円以上するのではなかったか。もちろん、すぐにニセモノであるとわかってましたよ。本物と比べて性能にどんな違いがあるのか知らないが、見た目はそっくり。といっても本物は見たことがないけど。全体に安っぽい仕上げのRJ-FA9000GW。もちろん中国製。まったく恥知らずな模倣大国だが、そんな商品を販売する日本の会社もどうかと思う。ネット上にはダイソンではない、まがいものの羽根なし扇風機が山のようにあった。情けない。(柴田)

・卒塔婆プリンター開発の人の話を聞いたことがある。卒塔婆書きって数量が多く、大変らしいですよ。プリンター大好評らしいとか。/ひさびさのオフ。実は前日の昼まで大型修正指示が入るものと思っていてヒヤヒヤしていたが、週明けになったので大手を振っての宝塚観劇。友人と行くことになっていたので、徹夜明けでもとは思っていたが、頭の中に仕事がたくさん残っているのと、そうでないのとでは気持ちが全然違う。今年に入ってから数回ドタキャンしたりした。ドタキャンすることを思うと、なかなか予定は組めない。家に呼びたい人たちがいるけど、呼ぶ側がドタキャンって厳しすぎる......。なのでつい、融通をきかせてくれる人や、メールの返事を待ってくれるような人と会うことになる。最近は友人に会っても、「今日は早く帰るから」と最初に告げることが多かったので、それを言わなくて済むだけでも気持ちが軽い。あ、普段から22時頃には解散するんだけどね。彼女や他の友人らと会う時は、OL時代の常識を思い出す。当たり前のように使ってしまう業界用語だったり、ちょっと早い単語を使ってしまうと、きちんと質問してくれて、ああ、これはクライアントの前では使わない方がいいな、とズレを正せたりする。1年後ぐらいに同じ単語を使うと広げてくれるので、これは世に浸透したんだなぁと思ったり。もちろん試すために会っているわけではなくて、気楽に話ができるところがいいの。美味しいとんかつ屋さんの話をしてて、頷いているくせに、違う話に持っていこうとするから、「聞いてないな? 興味ないやろ?」と言ったら、爆笑しながら「うん」との返答。「何も考えずに話してるやろ?」とお互い突っ込んだりする。/普段走るのを嫌がる友人が、改札でダッシュし、前の人の忘れた切符を渡しに行ったりするのを見たりすると、ええ人やな〜と思う。多くもらいすぎたお釣りを返したり。彼女の甥が拾ったコインを交番に届けようとしていて、彼女が「えらいなぁ」と言ったら、甥は彼女が交番に届けているのを見たことがあるから、同じようにしたと言ったそうな。(hammer.mule)