[4642] 筑後川昇開橋の撮影に行く◇圧倒的存在感の書体ラグランパンチ

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《わーい、機関車になった気分だ。》

■わが逃走[224]
 昇開橋を見る の巻
 齋藤 浩

■もじもじトーク[92]
 新・まちもじ特集 その2 〜圧倒的存在感、ラグランパンチ〜
 関口浩之




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■わが逃走[224]
昇開橋を見る の巻

齋藤 浩
http://bn.dgcr.com/archives/20180920110200.html
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某社PR誌の撮影で久留米に行くことになった。午前中ロケハン、午後撮影という段取りなので、カメラマンとは前日夕方に合流することにした。

しかし、せっかくの九州行きである。

東京での仕事をとっとと終わらせ、一足早く現地入りして、前々から見てみたかったあの物件を訪れてみた。

筑後川昇開橋である。

1935年(昭和10年)、国鉄佐賀線筑後川橋梁(鉄道橋)として竣工。当時東洋一と謳われた技術の結晶ともいうべき可動橋は、半世紀以上の現役生活を経て1987年(昭和62年)に佐賀線廃止とともにその役割を終えた。

しかし地元の熱意により撤去を免れ、動態保存が決定。周囲は遊歩道として整備されている。

2003年(平成15年)、重要文化財指定。

筑後川昇開橋は、その名のとおり、大型船舶の通過を可能とするため、橋の中央部分がエレベーターのように昇降する。

橋の両側はワーレントラス構造、中央寄りが高さ30mのタワーになっており、それらを結ぶ24.2mの部分が可動桁となっている。

ホテルに荷物を預け、西鉄久留米駅から急行に乗車。16分で柳川に着く。

柳川駅からバスで20分ほどの大川橋停留場で下車し、川に向かうと、トラス構造の赤いタワーが見えてきた。

ここから土手沿いに歩く。徐々に近づく赤い鉄塔。当日は時折雨のぱらつく曇り空だったが、かえってその威容が引き立つ印象。

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ここを佐賀線が走っていた。わーい、機関車になった気分だ。現役時代をイメージしてみる。

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蒸気船と蒸気機関車が立体的にクロスするなんざ、想像しただけでシビレルぜ。川に架かる鉄の塊がせり上がって、その下を黒煙を吐きながら鉄の塊が通過し、さらに鉄の塊が降りてきて線路を一本につなぎ、そこを重たい貨車を引きながら煙を吐く鉄の塊が川を越える。

川の中央に一筋の白い波と黒い煙、それと直角に交差するもうひとつの黒煙。

なんとドラマチック!
音を聞きたい!!
残り香をかぎたい!!!!!

制御室のある中央部分までやってきた。ここに管理人さんが常駐している。

「どっから来たの?」
「東京から」
「遠くから来たねー。橋上げようか?」
「え?」

言うや否や、ガコーンという音とともにギアが回転し、その後はことのほか静
かに上がってゆく。

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可動の仕組みは、通常のエレベーターと同じワイヤー式で、カウンターウェイトは福岡県側が28t、佐賀県側が20t。制御室は福岡県側にある。

ワイヤー巻き取り装置が片側にしかないため、可動桁は微妙に(約10センチ)福岡県側に傾いている。

写真は佐賀県側カウンターウェイト。

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現役時代は大型船舶の通行を優先し、通常は可動桁は上がった状態で、列車通過時のみ橋が降りてきたとのこと。現在は遊歩道の一部となった関係で、歩行者を優先しているようだ。

佐賀県側から。可動桁上昇中。

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再び福岡県側へ。

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というわけで、『筑後川昇開橋』のご紹介でした。

バスは柳川からも佐賀からも出ているので、近代化遺産としては比較的アクセスしやすい部類に入ると思います。柳川観光とあわせて、ちょいと足を伸ばしてみてみるのも良いかと思われます。

トラス好き、構造美好きとしては至福のひとときでした。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[92]
新・まちもじ特集 その2 〜圧倒的存在感、ラグランパンチ〜

関口浩之
http://bn.dgcr.com/archives/20180920110100.html
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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

秋らしい季節になりましたね。暑がり屋にとっては過ごしやすい季節ですが、僕はまだまだ、汗をかきかきしながら、毎日を過ごすフォントおじさんです。

前回に引き続き、「新・まちもじ特集 その2」をお送りします。

●中吊り広告が面白い

突然ですが、みなさん、電車の中吊り広告、好きですか? 僕は中吊り広告が大好きなんです。電車に乗った時の楽しみのひとつです。

電車に乗ってるほとんどの人が、スマホと格闘していると思います。僕は「スマホ、時々、中吊り広告」って感じです。

雑誌や週刊誌の中刷り広告の見出しから、短時間で最新情報が入手できます。また、書籍の広告に目が止まって、衝動買いすることもあります。

そして、広告をじっくり眺めると、この写真にこのフォント使うのおかしいじゃんとか、この文字の組み方は美しくないじゃんとか、このキャッチコピーだめじゃんとか、いろいろ発見があります。

あれっ、ダメ出しばっかりでした。中吊りは広告目的なので、美しいデザインというよりも、ごちゃごちゃ感のある目立つデザインが多いようです。

中吊り広告の作例がたくさん掲載されているウェブページを見つけました。
https://www.fujisan.co.jp/nakazuri/

でも、このページのテキストリンクをクリックしたら、最新号の雑誌購入ページに……。おぉ、広告ページでした。でも、中刷り広告を眺めるのは、楽しい。

●中吊り広告でラグランパンチ

先日、溜池山王駅から市ヶ谷駅まで、南北線を利用しました。

すると、目に飛び込んできた中刷り広告が、こちらです。ジャーン!
http://bit.ly/2xBSdPE

中吊り広告では、あまり見かけないフォントです。そうです。僕が大好きな「ラグランパンチ」です。

アニメ「キルラキル」や「重版出来」で使用されている、圧倒的存在感のある力強い書体です。

僕はセミナーのプレゼンテーションの表紙で使うこともあります。でも、ビジネスのプレゼンテーションでは使用しません。「こいつ、なに遊んでるのか」と怒られる可能性がありますので。

ラグランパンチは、白地に黒文字、または、黒地に赤文字で表現することが多いようです。圧倒的存在感を出すために、コントラスト比の高い構成でデザインする傾向がある書体なのです。

ところが、今回、下地が薄いベージュで、文字がグレーのようなグリーンでした。しかも、文字の濃淡を三段階で、順番に切り替えて文字を組んでいました。

本来、圧倒的存在感のあるラグランパンチが、ちょっと爽やかなイメージになっていませんか!

この書体、テレビテロップでよく見かけますが、電車の中吊り広告で、ラグランパンチが使用されているのは、僕は初めて見たような気がします。しかも、爽やかなラグランパンチ……。感動しました。

夕方のラッシュ時間帯に電車に乗ったので、撮影するのに、すごく勇気がいりました。

ラグランパンチが好きな人は、僕の周りに結構いるんです。知人が、Webフォントを活用して「キルラジェネレータ」を公開しています。
http://bit.ly/2MLp2PL

ためしに、「ナウで ヤングな 圧倒的存在感のある おじさん」と三行入力して送信ボタンを押してみてください。ラグランパンチで表示されます。いろいろ、試してみてください。

文字好きでなくても、まあまあ、楽しいでしょ。

●いろんなところに出没するフォントおじさん

最近、みんなから「関口さんって、ほんと、いろんなところに出没しますね」と言われます。褒められているのかなぁ(謎)

Facebookの過去5年間の投稿をみると、全国いたるところでセミナーに出演して、イベント記事を投稿していました。

年間30本ぐらい、セミナーに登壇しているので、計算上、5年間で約150回、セミナーや懇親会の写真を投稿しています。飲み会の写真が多いなぁ。

そんな写真が多いけど、ちゃんと仕事しています(笑) 考えてみれば、自分が登壇している時、自撮りはしないので、登壇している写真は多くないのです。

僕が登壇している時の写真を、誰かが毎回アップしてくれれば、仕事している感が、もっとアピールできるんですけどね。

年間30本のうち、都内のセミナーや自分が主催しているセミナーが半分ぐらいあるので、出張回数は年間で15回ぐらいだと思います。あれっ、思ったほど多くないじゃん。年間15回でも十分に多いよ、という声も聞こえてきますが……。

●フォントおじさん、秋の巡業始まる

ここ数か月、出張は抑え気味でした。暑かったからかもしれません……。実はそうではなかったんです。セミナーが本業じゃないので、日頃の業務が溜まりに溜まって、身動きがとれなかったんです。

しかーし、今週からいろんなところに出没します。年末まで東京開催のセミナーを含めて15か所以上のセミナーに出演します。フォントおじさん、がんばる。

向こう二週間で、登壇するセミナーの告知をさせてください。

・第36回リクリセミナー「フォントのホント リターンズ with FONTPLUS DAY」
〜フォントワークス 藤田重信さんをお迎えして〜
https://recreators.doorkeeper.jp/events/77289

三連休の初日9月22日(土)は、筑紫シリーズの書体デザイナー藤田重信さんと、大阪でフォントのお話をします。大好きな藤田さんをお招きして、大阪でWeb系セミナーに出演いただくのは初めてかもしれません。

大阪DTPの勉強部屋では、何度か、藤田さんとご一緒しましたが、そのときの参加者はDTPの方や、グラフィックデザイナーの方が中心でした。

今回、藤田さんが、WebデザイナーやWeb系エンジニアの方々と交流すると、化学反応が起きて、新しい発想の書体が誕生するかもしれませんね。

・Webデザインシンキングセミナー in 広島:YATのblog
https://yatblog.connpass.com/event/96728/

その次の日、9月23日(日)は広島です。YATのBlog主催「デザインシンキングセミナー」に出演します。「Webクリエイターボックス」のManaさん、そしてYATさんとセッションご一緒するの、すごく楽しみです。

みなさん、広島に遊びに来てね。でも遠いですよね。申込はまだまだ絶賛受付中です。会場は広島大学東千田キャンパス隣接の「いいオフィス広島」です。

あれっ、まちもじ特集のはずが、フォントおじさんがんばるの内容も多くなってしまいました。すみません。

では、二週間後に、またお会いしましょう。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
フォントおじさん
https://event.fontplus.jp/about/hiroyuki_sekiguchi.html

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現 ソフトバンク・テクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この20年間、数々の新規事業プロジェクトに従事。

現在、フォントメーカー13社と業務提携したWebフォントサービス「FONTPLUS」のエバンジェリストとして日本全国を飛び回っている。

日刊デジタルクリエイターズ、マイナビ IT Search+、オトナンサー等のWebメディアにて、文字に関する記事を連載中。CSS Niteベスト・セッション2017にて「ベスト10セッション」「ベスト・キャラ」を受賞。フォントとデザインをテーマとした「FONTPLUS DAYセミナー」を主宰。

フォントおじさんが誕生するまで
https://html5experts.jp/shumpei-shiraishi/24207/


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編集後記(09/20)

●行きつけのGEOの棚に、ずっと前から背のタイトル出しではなく、パッケージ出しをしているのが「エスター」であった。店のお薦めの作品なのか。正面を向く意志が強そうな少女の顔。髪と首にリボンを巻いている。タイトル下に「この娘、どこかが変だ。」とある。ポートレートとしては、光のあて具合が異様で効果的だ。このDVDを見るのは8年ぶりだが、内容はほぼ記憶通りだ。

三番目の子を死産して落ち込むケイトに、夫のジョンは養子をもらおうと提案し受け入れられる。そういう神経は理解できないが、アメリカってそういう国なのか。息子のダニエルと娘マックス(難聴で補聴器をつけ手話で会話する)の中間に、孤児院からもらってきた(まさにそんな感じ)9歳の少女・エスターを入れる。身元もろくに調べないで、印象だけで受け入れる無警戒ぶりだ。

その後、エスターがいた孤児院のシスターが様子見に訪問する。彼女は、養子に行った先の負傷事故や犯罪、火災の現場に必ずエスターがいたと判明した、それ以前のエスターの行状についてはロシアに問い合わせ中だ、警戒するようにと伝える。ケイトはショックを受けるが、それでもジョンは全然気にしない。シスターは帰路でエスターに襲われ、鈍器で撲殺される。まあ容赦ないこと!

この夫婦はキッチンでベタベタするバカ。「さっさとやろう」といって事に及ぼうとしたところをエスターに見られる。翌日、ケイトは性教育をしようとエスターに話しかけると「ファックでしょ」と返される。不気味さを感じたケイトはジョンに「分析医に診せよう」と持ちかけるが、笑って取り合わない。エスターの怪しさ、危険さを一切感じない、すべてにいい加減なマザコン男だ。

この物語の中で一番救いがたい人物。エスターに誘惑されて、さすがに取り合わないが、最後に惨殺されても、むしろスカッとするほどの不実な男だった。エスターはケイトに腕を引っ張られたことを利用し、自分で自分の腕を折り、ケイトのせいにする。口封じのためダニエルを焼き殺そうとし、重傷で入院した彼を枕で窒息死させる。さいわい医師の適切な処理で彼は蘇生する。

9歳の少女というエスターの、外見からは想像もできないような悪意と実行力の謎は? ケイトはネットや電話で必死に情報を求める。その結果、エスターは見た目が子供のまま成長が止まってしまう、ハイランダー症候群という病気であった。エスターは32歳の大人だ。感覚は成熟した女なのに、見かけは子供なので、一人の女性として見て欲しいという思いが、奇行や暴力に現れるのか。

そう考えると気の毒なエスターと思い、ません! なにしろやることなすことえげつない。幼いマックス(超かわいい!)を脅してアシスタントにしながら、車の事故で殺そうとする異常者なのだ。最後は、孤軍奮闘して精神異常とまで仕立てあげられたケイトとの、壮絶な死闘である。エスターは沼に沈んで死ぬ。

一度見たからだいたいのストーリーは憶えていたが、それでも没入して先が気になる面白い映画である。注意:家族と一緒では見ないように。露骨な性表現がある。当時12歳の少女イザベル・ファーマンの、エスター演技がじつにみごとであったが、見終わった後、全然スカッとしない類いの映画だった。(柴田)

「エスター」2009年 アメリカ 原題は『Orphan』(孤児)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00FIWN2UA/dgcrcom-22/


●齋藤さんの写真好きだ。/ラグランパンチは、チラシやポスターで使えないと思っていた。漢字だけ、平仮名やカタカナだけの短いものならいいのだが、混じると一瞬で判読できないから。車内刷りならいける! なるほど!

/XSを予約した理由に、来年消費税が上がるかもとか、トランプ政権が中国関税引き上げで、Appleに国内生産を迫っているとか、アメリカの景気が良くて円安進むかもとか、そういうのもある。

ハードディスクやメモリ、パソコンが安くなっていったように、スマホも安くなってきている。けれどiPhoneの価格は良くて横ばいかもと予想。

Apple WatchやMacを使っているからiPhoneが選択肢に上がるけれど、そうでなければAndroid機を使っているかもしれない。型落ちでも十分使えるし、今の進化ペースなら最新機種を追わなくてもいいかも、とか。今はApple Watchの進化の方が楽しみ。 (hammer.mule)