KNNエンパワーメントコラム ロングテール化する映像業界
── 神田敏晶 ──

投稿:  著者:


KNN神田です。

音楽産業や出版産業では、すでにニッチがマスを凌駕する「ロングテール理論」が理解されてきている。

パッケージコストや輸送のコストが最小限で、カタログやデータベースが無限大にあった場合、ベストセラーやベストヒットだけが売り上げを占めるのではなく、通常の店頭では並べられることがない、その他大勢が、実は売り上げの多数を占めるという現象が「ロングテール理論」である。

テレビやマスメディアにおいても、同様なことが「YouTube革命」によって起こりつつある。


テレビのチャンネルが有限であり、限られた放送局しか、放送できなかった今までのテレビの場合、レコード屋さんや有名書店の棚と同じようにベストセラーだけが中心に「放送」されていた。

しかし、無数のチャネルを持つ、「YouTube」などのような動画サイトが登場することにより、動画コンテンツの流通量は無限大に拡大している。だが、しょせん動画共有サイトにあるのは、素人映像や、著作権を無視したアングラ映像ばかりだと現在は考えられている。「動画共有サイトはテレビ局を脅かす」とボクがいくら叫んでも信じてもらえないのが実情だ。

しかしだ。映画は100年、テレビは50年の時を経て、ようやく今のフォーマットや媒体に対して収まりのいいコンテンツとして成長してきた。動画共有のプラットフォームフォーマットは、やっと2年の歴史を経たばかりである。

また、おじいさん、おばあさんから、子供、主婦までを対象にしているテレビでは、わかりやすいことが一番重要であるが、「YouTube」の場合、ターゲットを絞ることができるので、テレビのような、くどい説明はまったく不要である。

いくらニッチなテーマでも、誰かが検索して視聴する機会も持つだろう。もしくは、常に興味をひくコンテンツを生産できる能力さえあれば、莫大なページビューを稼ぐことも可能である。

ロングテール市場においては、ヒット製品よりもニッチ製品の方に価値は傾きだす。ニッチ製品を選択できる人のほうが、ヒット製品を選択する人よりもセンスが高いと考えられているからだ。情報検索が高度化し、商品選択肢が増えてきた時、人は誰もが選んでいるヒット製品よりも、人とちがった良きニッチ製品を探しだすことのほうに、より「快感」を感じることだろう。

そして、その「快感」は自分で保持しているよりも、人に伝達したときの方がさらに「快感を共有」できる。面白い映像を知人に教え、それをまた、知人が誰かに教える。すでにこの連鎖のフォーマットは「YouTube」において完成されている。

映像にもロングテールの論理が働いている。ヘッドの部分には、生産と流通コストが嵩むのでプロだけの世界である。ヘッド経済においては、一軍プレイヤーしか生き残れない。二軍の選手が活躍することはできないのだ。しかしだ。ヘッドからボディ、ボディからテールにかけては、生産と流通のコストが低い場合、いろんな人たちに参入できるチャンスが与えられている。ボディ経済やテール経済においては、貨幣経済の「現金化」そのものよりも、「評判化」や「噂化」の方にも価値がおかれる。

経済的な目的で作られるものではなく、コンテンツには、趣味や理想、思い、熱意、情熱などがこめられ、それが評価されるのだ。また規制がなく、会議を重ねる必要もないので、喜怒哀楽をもっとストレートにダイレクトに伝えることができるはずだ。

動画共有サイトの現在は、ちょっと変わった映像が人気を博しているが、今後は、このメディアに適した映像が開発されるだろう。その瞬間にボクは立ち会いたい思いでいっぱいだ。約10年間もテールの映像の世界で自分を表現してきたから、少しはその権利があるかもしれない。もしかすると、すぐにその波に乗れるのかもしれない。

現在のテレビは、ロングテールのヘッド経済で作られたものである。たまたま視聴している人たちの、さらにその一部の人たちによる購買活動によってのみ業界はすべて支えられている。録画しない限り、時空の藻屑として消え去ってしまう、はかないコンテンツでもある。

テレビというメディアザウルスのながーいロングテールの尻尾の先に、明るい未来がそろそろ見えてきた!

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