KNNエンパワーメントコラム セカンドライフ人気の7つの理由
── 神田敏晶 ──

投稿:  著者:


Second Life: The Official GuideKNN神田です。

セカンドライフのセミナーを、どこで展開しても活況だ。ボクのBarTubeでも、毎週木曜日を「セカンドライフナイト」というテーマデーにしているが、純粋に3D仮想空間を楽しもうという人よりも、ここから何かのビジネスに展開できるか? という期待値に胸をふくらませる人が増えてきた。

そもそも、なぜ、今年になってからこのセカンドライフが俄然注目を集めてきたのか? 次の7つの理由があげられると思う。


1)インターネットの黎明期化 Massively Multiplayer Online(MMO)
2)仮想通貨の現実化 リアルマネートレード(RMT)
3)不動産自由売買化
4)3D世界のオープンソース化
5)ハイスペックワールド化
6)なんでも有料の世界化
7)アダルトワールド化の理由が挙げられる。

1●インターネットの黎明期化

セカンドライフは、まるで1994〜5年のインターネットのようだ。ブラウザのIEもネットスケープもなかった頃の、NCSA版のモザイクの頃のサイバースペースを思い出してほしい。Yahoo!が登場し、海外のユニークなウェブサイトを紹介しはじめた頃だ。灰色のページに青色のテキストリンク。それだけで世界のいろんな情報に、ユーザーはマウスでクリックするだけでアクセスできるというインターネットのユーザーインタフェースは、学術関係者の間で話題を呼び、商業利用の開始にいたるまで話題が盛り上がる。

そして10年後、もはやインターネットは誰もが利用するツールとなった。そして、そのインターネット上にMMOという数千、数万人が居住するようになることによって、これから何が起こるのだろうという期待でブレイクしはじめている。セカンドライフの現在は、モザイクブラウザで見ているインターネットの黎明期であり、ここから新しいインターネットの世界が広がりそうな期待を集めている。

2●仮想通貨の現実化 リアルマネートレード(RMT)

無料登録者も含めて、全世界で400万人に達したセカンドライフの居住者たち。一時高騰化したリンデンドルであるが、ここ最近は、1ドルあたりの交換料金は、270リンデンドルで落ち着いてきている。日本円では100円で120円というあたりか …ほぼリンデンドルの半額で計算するといい。購入も売買も時価である。

現実のドルに換金できることや、日本円による代替も可能となったということにより、やたら色めきはじめた。実際にトレードの開始は、2005年の10月から開始されているのだが、当時は居住者が10万人であった。しかし、1年かけて2006年10月19日に100万人を突破してからが、米国で話題となり、また、大手企業がセカンドライフ内に支店を開設するということがブームとなったことにより(それが株価にも影響を与えるということで)先週2月14日のバレンタインには、ついに400万人の居住者を迎えた。

そして、マスコミの扇動も関係しブレイクしているような世界になっている。しかし、実際にプレイしてみると、2か月以内にアクセスしている人は100万人弱であり、リアルタイムに存在している人も世界中で2万人程度しかいない。現在は期待値だけがもりあがっている状況といえよう。

3●不動産自由売買化

さらにヒートアップのポイントといえるのが、このハードディスクやCPUのチープ革命、そしてGoogleの無料化戦略の中で、無限のサイバースペースに有限の土地という、あまりにもファーストライフの不動産ビジネスを導入したことにある。

有限の土地なので、人口が増え、需要が増えると高騰するという土地バブルが発生している。しかも、造作物の建築基準などないので、いや自分で設定できるので、セカンドライフにおいては、土地さえ手にいれてしまえばなんでも自由というところがポイントだ。

ボクも実際にこれだけは見逃さないということで、400スクエアメートルの土地を手にいれた(約10万円)。すでに土地はオークションなどでないと買えない、転売しても原資は確保できるという状態だ。むしろ、運営維持費をセカンドライフを運営するリンデンラボに支払うためには、土地を持っているだけでなく、運用しなければ意味がない。そこで考えるのが土地の分譲や賃貸だ。まさにこれも、初期のインターネットのホスティングサービスである。

4●3D世界のオープンソース化

セカンドライフというと、常にアバターによる仮想空間のウロウロが注目されるが、ボクはとても苦手だ。アローキーで左右に動いたりというのがもどかしい。しかし、テレポートという瞬間移動で、いろんな土地の上の建造物や世界に居住する人たちとのチャットは楽しい。かなり英語の勉強にも役立つと思う。世界中のアバターの知人が増えてくる。もしかすると、どこかで遭遇するという楽しみも増える。

2007年1月8日、システムダウンなどが相次ぐリンデンラボが、あきらめたのか、新たな市場獲得に動いたのかはわからないが、まずは、ブラウザからオープンソース化すると発表した。これは世界中に大きな波紋を投げかけた。第二のインターネットといわれても、セカンドライフが牛耳っていては、インターネット上の一つのサービスでしかないのだが、このオープンソース化によってさらなる展開がなされる期待が沸いた。また、このリンデンラボ社自身が、反マイクロソフト連合による資金で構成されているといっても過言ではないからだ。

まずはCEOのフィリップ・ローズデール氏は、元リアルネットワークスのCTO(最高技術責任者)であり、長年にわたり、WindowsMediaと激戦を繰り返している。最初の投資家であるミッチ・ケイパー氏は、80年代に表計算ソフト「ロータス123」のロータス創業者であり、「エクセル」によって駆逐されたものである。さらに、投資家には、イーベイのCEOのピエール・オミダイア(元クラリス社、元ジェネラルマジック社)、アマゾンのジェフ・ベゾスらの名が並ぶ。こうなると、すでにセカンドライフのミッションには、反マイクロソフトだけでなく、対グーグル陣営という側面も見え隠れしてくるから興味がわく。

5●ハイスペックワールド化

セカンドライフの話題が、気軽に誰もがいつでもどこでも… といかないところが、情報不足に拍車をかける。なぜなら、サクサクとストレスなくセカンドライフの世界を体感するためには、コア2DuoのCPUに高度なグラフィックスカード、さらに光クラスのインターネット回線という3つのスペックが必要だ。

ボクは、さっそく最新レッツノートのW5のVistaでセカンドライフに望んだが、Vistaでの動作にはかなりの不安定さが残り、現在はXPに戻そうと計画中である。このように、今までのパソコンに満足していた人たちが、セカンドライフスペックを満たすPCが必要になるハイスペックワールドというひとつの目標を作ったことにも意味がでてきた。今までのPCで十分というWWWの世界に新風がふきはじめている。

6●なんでも有料の世界化

無限のサイバースペースでありながら、何でもお金がかかるというのがセカンドライフの特徴である。ウェブ2.0で、無料が有料を駆逐したかのように思われたが、実際の金額の約1/10程度でそこそこ遊べるというのであれば、誰もが新たなことにチャレンジしたくなる。1ファイルアップするのに5リンデンダラーかかるが、それで20リンデンダラー儲かるというようなことも実際に起こりあるからだ。

セカンドライフはいつでもどこでも、テレポートによって瞬間移動できたり、「フライ」というコマンドで空をとベたりして、物質的な移動には空気抵抗の全くない世界であるが、土地や物品の売買などには必ず通貨が適用される。それでも、金銭的にはリアルな現実よりも空気抵抗の多い設計がなされている。この、何でも有料の世界観があるからこそ、人はビジネス性を見出したり、新たな新規事業の萌芽を感じることができる。

7●アダルトワールド化

セカンドライフで人気の場所を検索してみると、上位にズラリと並ぶのはアダルトの世界だ。しかも、路上でフリーセックスするというようなところが並ぶ。教育的にどうのこうのという以前に、実際にはありえない街が再現されているところに、どうやら人は集まるようである。まじめなIBMのサイトには1000人近くの専業者がいるといわれているのに、いつも閑散としている。

ビデオにしても、インターネットにしても、常に文化の底辺を支えているのは、人間の煩悩のようだ。セカンドライフのアダルトライフは、現実のシミュレーションとしては現実以上に現実に近い。ボクも彼女を何人かセカンドライフ内に持つことができた。もちろんアバターによるエッチも経験済みだ。これはまた、妙な気分だが、現実的には一切何もやましいことはしていない。今後の仮想生活の中での倫理問題は浮上することだろう。

というような、セカンドライフの人気の7つの理由を考えてみた。

ビデオ投稿スタジオ BarTube < http://snbar.ameblo.jp/
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毎週金曜日22:00MXテレビ「BlogTV」出演中 < http://trj.weblogs.jp/blogtv/
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