KNNエンパワーメントコラム 著作物の "Money For Nothing"
── 神田敏晶 ──

投稿:  著者:


YouTubeが音声情報をデータベースに照会し、コンテンツを識別する方法以外に、登録された動画の要素を識別する「YouTube VideoID」のベータテストを開始した。
< http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/10/16/17188.html
>

これらのサービスに欠かせないのが、オリジナルなデータの入手である。方法は二つしかない。権利者側がデータを提供するか、データをなんらかの方法でYouTube側が用意するかである。

一番簡単な方法は、権利者側がベータテスターとして「YouTube VideoID」に参加表明し、データを提供し、自社の管理するコンテンツを掲載させないようにするということ。しかし、考え方によっては、著作権侵害されているサービスに協力すれば、侵害されなくなるというのも変な話である。


……かといって、YouTube自身のサービスに対して、Viaomのように1億ドルの訴訟を起こすのも大変な話であり、話が法廷にいけば、さらに解決に時間がかかるということも懸念される。

「著作物の権利」に対しての侵害かどうかについては、今後も議論が絶えることがないだろう。しかし、「著作権侵害」という「権利」が本当に重要なのかどうかという点を、ここでは、一度よく考えたほうがよいのかもしれないとボクは思う。

実は権利者の大半が、権利を主張する根底の最大の理由は、「利益を害される」という大前提が存在しているからであることだ。反対に利益が害されなく、「利益に貢献する」のであれば「著作権侵害」は本当に「侵害」にあてはまるのだろうか?

http://www.StarWars.com/」や「http://www.StarTrek.com/」にとって、子供たちが映画やドラマの真似をして遊ぶということは、多岐のビジネスを生んでくれる「市場開拓行為」でもある。キャラクターの販売や、ライセンス製品、テーマパーク、イベント、キャンペーンなどといろんな利益に対して貢献してくれる市場を形成している。従来は子供たちや、大きくなった子供たちの遊びはそこで終ってしまうのだが、現在はネットによって、それらが大きく拡大し、コミケと同等のように二次創作市場を形成しはじめている。


StarTrekファンが作った
StarWreck
< http://www-us.starwreck.com/
>
フィンランドの学校で7年間かけて作った作品
1時間40分の作品はDVD化され、ユニバーサル映画が販売する。

StarWars mashupサービス
< http://mashup.starwars.com/
>
SWのシーンを作ってオリジナルなストーリーを作成できる。

ネット上にも、オリジナルに敬意を表す二次創作作品が多数アップロードされているが、StarWarsやStarTrekらの権利者は、それらを規制するのではなく、むしろ歓迎しているようだ。幾多もの参加型の映像コンテストを開催し、グリーティングビデオとして、知人に作品を送れるようにしたりとCGMマーケットに対して積極的である(StarTrekはViacom傘下のCBS Paramountが権利者)。従来の枠が決まったマスメディアだけの露出ではなく、無限の枠がとれるメディアとしてのコミュニティに注目しているからだ。

YouTubeに対して、訴訟をおこしているViaomは、JoostやSecondLifeなどで傘下企業のコンテンツを提供している。権利侵害というよりも、コンペティターに対しての政治的な戦略と言い換えたほうがいいだろう。

特に、SecondLifeという限られたコアなユーザーが属するコミュニティに対しては、傘下のMTVがテレビ放映の前日にSecondlife内でTV放映バージョンを放映するという画期的な番組宣伝を開始している。

ネット上にTV放映より先に放映するのは、ブログなどで話題になることにより、TV放映の視聴率にも影響を与えるかもしれない。日本のテレビ番組も早くそのようなアプローチにチャレンジしてもらいたいものだ。

MXテレビでは昨年、YouTubeに「BlogTV」の本篇をアップロードしたという既成事実があるので、番組アップロードは自主規制による規制で、テレビ局は、自らのビジネスチャンスをとりそこなっているとしかいいようがないのではないだろうか?

さらに同じく傘下のCBSの「CSI:NewYork」もSecondLife上の科学捜査班と共にSecondLife内でも捜査を進行するというメディアミックスが行われる。
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テレビ番組はまだまだ時間がかかるとしても、同じ著作権侵害でも、音楽のこのようなバージョンはどうだろうか?

Dire Straits Money For Nothing
< http://jp.youtube.com/watch?v=RPGlqSURRww
>

YouTubeにアップロードされた動画で、顔もなければ、歌もない。ギターのヘッド側からの固定カメラで、ギターを弾きまくる。しかもかなりの腕前! マーク・ノップラーの枯れたサウンドを見事に再現。バックの音は、打ち込みだけでも見事である。ほかには、ヴァンヘイレンのプレイも、教則本のDVDを見るよりもはるかに参考になったりする。これで、曲ごとのギター教則TABデータや、ギター用のカラオケのデータ販売などもあればいいだろう。そして、一番大事な要素は、iTunesStoreなどでの著作権利者への利益の還元ではないだろうか?

< http://phobos.apple.com/WebObjects/MZStore.woa/wa/viewAlbum?playlistId=5522351&s=143441&i=5522349
>

もちろん、教則本やデータ販売も間接的に著作権者への利益につながる。権利侵害となる映像以外に、二次創作という新たなクリエイションが、一次創作者(著作権者)の利益を生むこともあるのではないだろうか?

YouTube/Google陣営もAmazon.comやAppleStoreのように、テレビやCDコンテンツを販売することによって、より直接的に著作権利者にむけてベネフィットを提供する方向性を考える方向性は残っている。何も控え目な広告だけがユーザーベネフィットではない。

< http://www.google.com/products
>
もGoogle CheckOutのようなシステムもあるが、「社会 2 google」で完結しているところが問題だ。

Amazonでは、自分のブログに書籍の表紙をエンベッドできるのと同じように、YouTubeでも、映画やTV、音楽のイントロだけでもエンベッドできる機能を、無限のメディアを使ってアピールしたほうが得策だと思う。もしくは、コンテンツが関連する他社サイトにもトラフィックを分散することのほうが、社会的な意味にもつながる。

他社のインフラとの相互接続性を築くことによって、「社会 2 Google 2 社会」となり、Googleがすべての客を奪うのではなくGoogleが客を連れてくるという現象を講じる必要があるだろう。今の進化のままでは、Googleは単に「品格のあるMicrosoft」にすぎないからだ。

著作権ビジネスが、供給者側の論理だけでなく、ユーザーの論理と共に、著作物自身が成長できる歩み寄り方がもっと模索されたうえで著作権侵害を議論すべきだと思う。

ビデオ投稿スタジオ BarTube < http://snbar.ameblo.jp
>
毎週木曜日23:00 MXテレビ「BlogTV」出演中
< http://www.technorati.jp/blogtv/
>
「NetSurfin2.0」毎週放送中!デジハリ大学放送部
< http://blog.dhpodcast.com/
>

KandaNewsNetwork,Inc. < http://www.knn.com/
>
CEO Toshi Kanda mailto:kanda@knn.com
#502 1-4-8 Komaba Meguro Tokyo Japan,153-0041
TEL 090-7889-3604 FAX 020-4622-7170
< http://mixi.jp/show_friend.pl?id=550
>
Mobile 81-90-7889-3604 Phone81-3-5458-6226

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