新連載・伊豆高原へいらっしゃい 超アマチュア・ベランダ天文家
── 松林あつし ──

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こんにちは。イラストレーター・CGクリエーターの松林あつしです。今週より隔週木曜日にコラムという形でお目にかかります。よろしくお願いします。

僕が伊豆高原へ引っ越してきて、一年半が過ぎました。自然が豊かで適度に生活環境も整っているので、落ち着いて作品制作ができます。都会に比べて刺激が少ないのが玉にキズですが……

仕事内容はというと、埼玉に住んでいたときからほとんど変わっていません。毎月定期の雑誌カバーイラストや携帯関連のデザインを仕上げ、その間を単発の仕事で埋める……週一度、専門学校で教鞭を取り、リフレッシュを図る……好きなCGやイラストを手がけ、楽しい毎日のはずですが……なんか足りない。


僕らにとっての仕事は、どこか趣味とかぶっているところがあります。時々、「自分は趣味で仕事をしてるんだ」という話を耳にするのも、そういう心理的背景があるためだと思います。しかし、僕にとって仕事は必ずしも趣味とはイコールにならない……仕事だけではどこか満たされないところがあり、それで、イラストやデザイン系とはまったく無関係な趣味を持てないかと漠然と考えていました。

もちろん、たまに旅行も行くし、映画も見ます。だからといって、それが趣味です……とは言い難く、実のところ、今まで何一つ趣味と呼べる物はなかったのです(グーダラな性格ですからね……)。

本来、趣味とは興味のあるものに対し、自然発生的に形成されて行くものだとは思いますが、僕の場合、強引に「趣味」を見つける必要がありました。興味を持てるもので、長続きするもの……色々頭でシミュレーションした結果、「天体観測」に行き着いたのです。(暗い?)

宇宙や天体観測には、子供の頃から興味がありました。しかし、それを実現させるためには、それを可能にする生活環境と、かなりのお金が必要です。「趣味とはお金と手間をかけてやるもの」と誰か言ってましたね……(誰だっけ)天体観測とはまさにそういう類のものなのです。

なので、都会では環境的になかなか難しいし(東京で観測をしている方もたくさんいますが)、若い頃は自由になるお金もほとんどないので、かなり敷居の高い趣味だったのです。

それが、気がつけば年齢も四十半ば。ある程度生活に余裕もでき、自然に恵まれた伊豆高原へと移住も完了しました。条件は整った! とばかりに、必要最低限の機材を購入し、観測の第一歩を踏み出たのです。2006年12月のことです。

必要最低限の機材とは次のようなものです。

1)天体望遠鏡:
安くて倍率だけを詠った「おもちゃ」はだめです。少なくとも信頼のおけるブランドの、アポクロマートレンズ搭載の80mm口径屈折望遠鏡はほしい所です。(使い勝手の面から反射望遠鏡は選びませんでした)

ビクセン GP2赤道儀 GP2-A102M(N) GP2-A102M-N2)赤道儀:
望遠鏡を星の方向へ正確に向かせるための必需品です。できれば極軸望遠鏡(北極星を探すための望遠鏡)が付いているのがベストです。高価なものになると、これだけで80万円以上しますが、観測の機軸をなすアイテムなので、予算をケチってはいけない部分です。(僕はこの部分をケチって、後悔しています)

3)自動追尾装置(2軸モータードライブ):
地球の自転に合わせて望遠鏡を自動で動かしてくれます。これにより、長時間の露出撮影が可能です。(赤道儀とセットになっていることが多い)

SWAROVSKI テレスコープアイピース 20×SW 20XSW4)アイピース(接眼レンズ):
これがなければ望遠鏡は用を成しません。2〜3種類の倍率の違うレンズがほしいところです。

5)三脚:
重たい望遠鏡を支えるため、しっかりしたものが必要です。

6)デジタル一眼レフ:
コンパクトデジカメでも、アダプターを用いれば撮影は可能ですが、バルブ撮影や写真のクオリティを考えると、やはり一眼は必要でしょう。しかし、デジタル一眼のファインダーは非常に暗いので、わずかな光の天体を捉えてピントを合わせるのは至難の業です(今まで一眼レフは構造上、リアルタイムの画像を液晶に表示できませんでした。液晶画面を見ながらのピント合わせはできなかったのです)。しかし、近年「ライブビュー」搭載のカメラが少しづつですが出てきました。これがあれば明るい液晶モニタで星像を確認しながら撮影できるので、是非ほしいところです。

7)画像処理ソフト:
Photoshopでもデジタル加工はできますが、何十枚もの天体写真をコンポジットするためには、registaxなどの天体写真に特化したシェアウェアの方が良いかもしれません。

以上が「最低限」の機材です。実は、天体観測機材は上を見ればキリがありません。僕が持っている機材すべてを足したものよりもはるかに高価な望遠鏡(単体)を何本も使い分けながら、観測をしている方も沢山います。ホームページを見れば、「おいおい、いったい何千万円かけてるんだ?」という機材をお持ちのアマチュア観測者もいます。そこまでやると、今度は「趣味なのに、金をかけるにも程がある」と言われそうです。(誰に?)

なので、僕は今持っている機材を軸に、できる範囲での観測を続けて行こうと思っています。まだまだ、知識も技術も未熟で、これまでに成功した観測対象は、月、土星、木星、M42(オリオン大星雲)ぐらいです。それも、かなりのぼけぼけ写真で……興味がありましたら、僕のホームページをご覧ください。

今の時点で、僕は「超アマチュア・ベランダ天文家」です。ベランダからしか観測していないので、天球の半分しか見られません。しかし、今後は遠征デビューも必要でしょう。重たい機材を運ぶためには、慢性の腰痛とも闘わなければなりませんし、観測に向いた地点を探す必要もあります。

いつの日か、「夜空のページ」でも作って自慢の作品を公表できたらいいな、って思います(今ホームページで公表している写真は、お世辞にも「自慢の」とは言えませんから……)。

宇宙についての考え方も書きたかったのですが、紙面上今回はこれにて……
次回もよろしくお願いします。

[まつばやし・あつし]mail@atsushi-m.com
イラストレーター・CGクリエーター
< http://www.atsushi-m.com/
>