伊豆高原へいらっしゃい[4]ジャック・ラッセル・テリアは飼ってはいけない!
── 松林あつし ──

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突然ですが、皆さんは犬派ですか? 猫派ですか?

もちろん、動物は嫌いと言う方もいますね。しかし、人間が文明を築いた時から、犬と猫は最も身近な生き物として尊重されて来たことを考えると、彼らはほんと、うまく人間社会に順応して生きていると思います。まあ、その多くは人間が愛玩動物として作り変えて来た結果でもあるのですが……。

残念ながら、僕には猫アレルギーがあるので、猫には近づけません。しかし、犬は大丈夫なんです。ですので、ここ伊豆高原に引っ越しを考えた時から、犬を飼いたいなって思っていました。自然豊かで、人とすれ違うのも稀なこの地域では、多少の寂しさを紛らわせてくれる「友達」が必要だと感じていました。


そして、彼女がやって来ました。2006年4月2日、伊豆高原の名物である強風が吹き荒れる嵐の日でした。犬種は「ジャック・ラッセル・テリア」。月並みですが、名前は「チョコ」と名付けました。何か月も前から、ホームセンターのペットショップにいることは知っていたのですが、新居に必要な物を買おうと何回行っても、売れ残っているのです。見に行く度に「私を飼って!」とアピールしているように見えたので、ついつい買ってしまいました。

この犬種は、近年人気が出てきて知っている方も多いかと思いますが、日本に入って来たのは比較的最近のことで、「なんていう犬種ですか?」って尋ねられることもしばしばです。その名を有名にしたのは、映画「マスク」に登場してからではないでしょうか。人気の秘密は……なんといってもかわいい! 知的でスマートな顔立ち! 室内犬としても飼えるコンパクトな大きさ! などなど……散歩していても、すれ違う人に「かわいい!!」って言われることは当たり前……思えるぐらい見た目パーフェクトな犬なのです。(主観ですが)

しかし! 軽い気持ちで飼うと痛い目にあいますよ。実はこのJRT、「小さな大型犬」なのです。その特徴は運動能力と性格にあります。まず、自分のことを大型犬だと思っている。怖い物などないと思っている。動く物はすべて友達だと思っている。自分に破壊できない物はない、と思っている。散歩は人間を引き連れているのだ、と思っている……JRTはその可愛らしさとは裏腹に、そんな一面を持っているのです。

もちろん、幼いときからの飼育方針やしつけで行動パターンは色々分かれると思いますが、JRTを紹介しているサイトを見ると、ほとんど「活発で、陽気。運動能力に優れ、人なつっこい」などと書いてあります。しかし、実際は活発なんてもんじゃありません。

元々、この犬種は1800年ごろ、イギリスの「ジョン・ラッセル牧師」という人がワーキングテリアをハンティングに使用していたのが由来とされていますが、出所は諸説あり、実際はどこが発祥の地なのか不明なのです。しかし、ハンティング犬であったことは確かで、森の中をウサギやキツネを追って走り回っていたのでしょう。筋肉の付き方は、大型のドーベルマンやダルメシアンを思わせます。

実際、近所の「さくらの里」でお友達になった雑種の大型犬と戯れる時も、まったくひけを取らないのです。ダッシュで走り回る姿は爽快としか言いようがありません。運動能力だけならまだいいのですが、それに輪をかけて性格がやんちゃと来たら、手が付けられません。

しかし、実はその「やんちゃぶり」が良かったりします。トイレシーツを粉々にするのも、窓の木枠を食い散らかすのも、ウンチを踏み散らかすのも(以上は最初だけでしたが)、与えた人形を破壊するのも、クッションを食いちぎるのも、電化製品の電源コードを食いちぎるのも、服を食い破るのも、みな許せる可愛らしさなのです。

そんなうちの「チョコ」の特徴を紹介します……とにかく美人でかわいい(親ばか)、毛並みはショートのスムース、左耳だけが垂れている、時々訳の解らないことを口走る、無駄吠えしない、物は破壊するが人間には「あま噛み」でじゃれるだけ、犬見知りや人見知りがまったくない、夏でも日向ぼっこが大好き、郵便屋さんのバイクが大好き……という感じの犬です。

< http://www.nexyzbb.ne.jp/%7Epeppy_atsushi/digi_cre/07_12_06 >

あと一つ、何故僕に犬が必要だったかと言うと、健康的な生活を送るため、という側面もあったのです。これはフリーランスという仕事のスタンスに関係があります。こちらに引っ越す前、埼玉でマンション住まいだった頃は、この業種にありがちな不摂生な生活をしていました……夜遅くまでだらだらと仕事をし、朝は昼近くに起きる……そういう暮らしを続けた結果、重度の不眠症、自律神経失調症になってしまいました。

不眠による寝不足でどんなに眠くても、毎晩ほとんど眠れない……そんな状況が長く続いたことで、規則正しい生活リズムの重要性を痛感しました。幸い今では不眠症は治りましたが、やはりこちらに引っ越してきて、いつまたリズムが狂うのかと心配でもありました。

それでチョコを飼う決心をしたのです。

毎朝決まった時間にご飯をやらなければならない。決まった時間に散歩をしなければならない。必然的に生活のリズムは決まってきます。チョコはサラリーマンではない僕が、規則正しい生活を送るための「体内時計監視役」でもあるのです。

こんなチョコですが、いま二歳半。まだまだやんちゃ盛りですが、いつかは年老いて介護も必要になるでしょう。大型犬の場合は体重が人間ほどもあるので、介護も人の介護と同じぐらい大変だ、と聞きます。幸いチョコは小型犬なのでそこまで手はかからないと思いますが、最期の時まで信頼関係を保ち良い家族として暮らして行きたいですね。

最後になりましたが、表題の「ジャック・ラッセル・テリアは飼ってはいけない!」は、チョコを飼うときに参考にさせていただいた、小倉智昭さんの著書「飼ってはいけない!」を題材にしています。小倉さんへのオマージュと捉えていただければ幸いです(芸能界では、小倉智昭さん、糸井重里さんがジャック・ラッセル・テリアフリークとして有名です)

みなさんも、是非「飼ってはいけない」ジャック・ラッセル・テリアを飼って、めまぐるしくも楽しいドッグライフをエンジョイされてはいかがでしょうか。

[まつばやし・あつし]mail@atsushi-m.com
イラストレーター・CGクリエイター
< http://www.atsushi-m.com/
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