以前「別荘地は住みやすくいいですよ」という感じの事を書きました。もちろん住むからにはすべてが良いことばかりではありません。今回は別荘地ならではの「マイナス面」を取り上げてみたいと思います。
最近よく耳にする言葉で「IT格差」というのがあります。日本語で言えば情報格差になるのでしょうか。バブル崩壊後の大不況から抜け出すために政府が行った「荒療治」が、今至るところで「格差」を生んでいます。情報格差もその一つだと思うのです。
ところで、みなさんの地域には地デジは来ていますか? 今さかんに政府の公報が「2011年7月24日にアナログ放送は終了します」ってCM流していますね。あと三年半です。なのにここ伊豆高原では、未だ地デジ電波は受信できないのです。それどころか、2011年までにどうやってこの地域に地デジの電波を引っ張ってくるか、という計画すらありません。そういう地域は全国に沢山あるのではないでしょうか。
最近よく耳にする言葉で「IT格差」というのがあります。日本語で言えば情報格差になるのでしょうか。バブル崩壊後の大不況から抜け出すために政府が行った「荒療治」が、今至るところで「格差」を生んでいます。情報格差もその一つだと思うのです。
ところで、みなさんの地域には地デジは来ていますか? 今さかんに政府の公報が「2011年7月24日にアナログ放送は終了します」ってCM流していますね。あと三年半です。なのにここ伊豆高原では、未だ地デジ電波は受信できないのです。それどころか、2011年までにどうやってこの地域に地デジの電波を引っ張ってくるか、という計画すらありません。そういう地域は全国に沢山あるのではないでしょうか。
社団法人デジタル放送推進協会(Dpa)のサイトに「地デジ放送開始時期」< http://www.dpa.or.jp/chideji/schedule/index.html
> というページがあります。これを見ると2006年12月の時点で、全世帯の84%が視聴可能となっています。それなら、今現在では90%以上の世帯は見られるぐらいになっているはずです。しかし、本当にそうでしょうか。肌で感じる視聴可能地域はもっともっと少ないような気がします。
ここ伊豆高原もまったくと言って良いほど受信はできません。地デジの電波を発信するためには「基地局」が必要です。またどこまで電波が届くかという問題もあるので、その局の出力も重要になってきます。
関東地域で最大の出力基地は、なんと言っても東京タワーですね。しかし、東京タワーの出力ですらここ伊豆半島にはなかなか届きません。そうなると、地元の小さな送信所に頼ることになりますが「静岡県の放送エリア」
< http://www.tokai-bt.soumu.go.jp/housou/digital/area/index.html
>
を見ても「東伊豆」あたりは、ぽっかりと空白地域になっているのです。
これは、単に開局の順番待ち、というだけではなさそうです。ここ伊東市は他の多くの地自体と同じく、多額の借金(300億円)があります。財政難なのです。通信網における国と自治体の出資率などはわかりませんが、予算の都合上、通信事業は大きく後回しにされているのではないでしょうか。
これは冒頭に述べました通り、格差社会における「ひずみ」ではないでしょうか。「いや、2011年までにはアナログ放送はなくなるのだから、それまでにはなんとかしてくるはずだ」と、未開局地域の人は思っているはずです。何せ、電波が来なければ、2011年以降テレビは見られなくなってしまうわけですから……。しかし、「本当にそうなるのか?」という疑問が多々あるのです。
伊東市に限って言えば……
●今現在ほとんどの地域で地デジを受信できない。
●中継局の開局予定がはっきり決まっていない。
●電波の届かない空白地域に対する対応策がまったくない。
●空白地域になる可能性をどこも説明しない。
などが上げられます。
では、最終的に電波が届かなかった場合の対処方法として、どんな方策が可能なのでしょうか。総務省の「放送受信相談センター」
< http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/whatsnew/digital-broad/
>
に電話で聞いた内容を元に、可能性をまとめてみました。
●ケーブルテレビの地デジサービスを利用する。
●自治体などで中継局を設置できないか模索する。
●BS用パラボラアンテナで衛星から受信するシステムも検討されているので、それに期待する。
●2011年までにはなんらかの方策が打ち出されるはずなので、それに期待する。
……う〜ん、結局「こうなります」という決定事項は何一つないんですね。決定しているのは「アナログ放送は終わりにします」という事だけです。それで、もしデジタルに移行できない地域があったら「テレビ見れなくなるけど、ごめんなさいね」って事なんでしょうか。
対処の可能性に上げられる「ケーブルテレビ」ですが、このあたりのCATV会社は静岡のローカル放送をメインで扱っています。静岡県だからあたりまえだ、と思うかもしれませんが、伊東市の地域イメージとして小田原〜熱海の延長、という印象があり、逆に静岡市は遠くて行く機会のない場所、という感覚なのです。
ですから、多くの世帯で東京と同じチャンネルを視聴しています(テレビガイドも静岡版と東京版、両方が売られています)。しかし、もし地デジ受信をCATVに頼ることになると、急にローカルテレビを見なければならなくなり、かなりの戸惑いがあります。さらに高い視聴料金と6万円もの初期費用が必要なのです。
最も期待したいのは、BSアンテナでの地デジ受信です。しかし、この方式が可能だとすれば、今、設置計画が進行中の全国の中継局は必要ないような気がします。中継局設置が進んでいるという事は、この可能性は低いと見た方が良いのかも知れません。
どこかの中継局からの「おこぼれ電波」を拾うという方法を試すのも一つの手だと思います。しかし、そのためには映るか映らないかわからないけど、UHFアンテナを買ってみる、という賭をしなければなりません。ちょっと勇気がいりますね。
しかし、近所には明らかに地デジ受信用に設置したと思われる、UHFアンテナを付けたお宅が集まっている地域があるのです。アナログ用VHFアンテナは付いていないので、これは地デジ用と考えて間違いないと思うのですが、そのアンテナの向いている向きが「新島」なのです。
つまり、これは新島のおこぼれ電波を拾っているという事ではないでしょうか。なるほど、この一角は分譲地内でもスカッと海が見渡せる「一等地」です。「海を一望」する物件にはこのようなメリットもあったんですね(その分高いのですが)。
そうか! 島からの電波を受信するという手があったか、という事で調べたところ、伊豆高原に一番近い中継局は「初島」であることがわかりました。しかし、ここは初島だけのための局なので、出力が弱く、しかも伊豆高原からは死角になっており受信は難しい状況です。新島からは受信可能な地域もあるようですが、うちからは島が見えないのでこれも難しいでしょう。
先ほどの「放送受信相談センター」に、今後の開局予定を聞いたところ、今年中に「大島」と伊豆の「チョウチンダケ」という所に中継局ができるようです。大島はうちから良く見えるので期待大ですが、ここも出力は小さいようです。チョウチンダケは地図に名前がなく、どこにある山なのかわかりません。
伊東市全体をカバーするための局なら大室山が最適だと思うのですが、そうではないという事は、別の地域向けの施設かもしれません(大室山には今現在、低いアンテナが数本あるだけです。つまり、美観を損なう建造物は建てられない可能性があります)。
このように、東京など都心部では早くから当たり前になっているデジタル環境が、地方によっては10年前のまま何も変わっていない、という現状があるのです。これはテレビ放送に限った事ではなく、ネット環境も同じです。国とNTTが推し進める光ケーブルもここ伊東市にはまったく関係のない話で、予定すらない状況です。
さらに絞り込んで、伊豆高原の別荘地はどうかというと……ほとんど人が別荘として使用しているので、観光の季節しか人口が増えない、定住している人も住民票までは伊東市に移していない場合が多い、つまり住民税を払っていない(僕は払っていますが)、別荘地は基本的に管理会社の管轄となるので、市や行政が関与しづらい……などの観点から、さらなる「IT取り残され地区」になる可能性があります。
市の財政が切迫している中で、このような環境が拍車をかけてしまうという事を最近知りました(膨大な赤字を抱えているのに、伊東市役所のなんと立派な事でしょう……財政管理に失敗した自治体にありがちな愚例ですね)。
こんな環境を一発大逆転できる方策はないものでしょうか。例えばBSを使うのもその一例ですが、静止衛星からの電波で日本全土を網羅するとか、一時期計画だけが話題になった「高高度飛行船」を発信基地にするとか……これならば、中継局や新たな回線も必要なく、IT過疎地が生まれる事もないと思うのですが。色々技術的予算的問題があるのでしょうね。
「本当はより良い方策があるのだけれど、もう社団法人やプロジェクトを立ち上げてしまったので、今更後には引き返せない。天下り先も減ってしまう」等の理由で一昔前の技術にしがみついている……なんて事がないことを祈ります。そして一刻も早いIT格差の是正を!
【まつばやし・あつし】pine2656@art.email.ne.jp
イラストレーター・CGクリエーター
< http://www.atsushi-m.com/
>
> というページがあります。これを見ると2006年12月の時点で、全世帯の84%が視聴可能となっています。それなら、今現在では90%以上の世帯は見られるぐらいになっているはずです。しかし、本当にそうでしょうか。肌で感じる視聴可能地域はもっともっと少ないような気がします。
ここ伊豆高原もまったくと言って良いほど受信はできません。地デジの電波を発信するためには「基地局」が必要です。またどこまで電波が届くかという問題もあるので、その局の出力も重要になってきます。
関東地域で最大の出力基地は、なんと言っても東京タワーですね。しかし、東京タワーの出力ですらここ伊豆半島にはなかなか届きません。そうなると、地元の小さな送信所に頼ることになりますが「静岡県の放送エリア」
< http://www.tokai-bt.soumu.go.jp/housou/digital/area/index.html
>
を見ても「東伊豆」あたりは、ぽっかりと空白地域になっているのです。
これは、単に開局の順番待ち、というだけではなさそうです。ここ伊東市は他の多くの地自体と同じく、多額の借金(300億円)があります。財政難なのです。通信網における国と自治体の出資率などはわかりませんが、予算の都合上、通信事業は大きく後回しにされているのではないでしょうか。
これは冒頭に述べました通り、格差社会における「ひずみ」ではないでしょうか。「いや、2011年までにはアナログ放送はなくなるのだから、それまでにはなんとかしてくるはずだ」と、未開局地域の人は思っているはずです。何せ、電波が来なければ、2011年以降テレビは見られなくなってしまうわけですから……。しかし、「本当にそうなるのか?」という疑問が多々あるのです。
伊東市に限って言えば……
●今現在ほとんどの地域で地デジを受信できない。
●中継局の開局予定がはっきり決まっていない。
●電波の届かない空白地域に対する対応策がまったくない。
●空白地域になる可能性をどこも説明しない。
などが上げられます。
では、最終的に電波が届かなかった場合の対処方法として、どんな方策が可能なのでしょうか。総務省の「放送受信相談センター」
< http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/whatsnew/digital-broad/
>
に電話で聞いた内容を元に、可能性をまとめてみました。
●ケーブルテレビの地デジサービスを利用する。
●自治体などで中継局を設置できないか模索する。
●BS用パラボラアンテナで衛星から受信するシステムも検討されているので、それに期待する。
●2011年までにはなんらかの方策が打ち出されるはずなので、それに期待する。
……う〜ん、結局「こうなります」という決定事項は何一つないんですね。決定しているのは「アナログ放送は終わりにします」という事だけです。それで、もしデジタルに移行できない地域があったら「テレビ見れなくなるけど、ごめんなさいね」って事なんでしょうか。
対処の可能性に上げられる「ケーブルテレビ」ですが、このあたりのCATV会社は静岡のローカル放送をメインで扱っています。静岡県だからあたりまえだ、と思うかもしれませんが、伊東市の地域イメージとして小田原〜熱海の延長、という印象があり、逆に静岡市は遠くて行く機会のない場所、という感覚なのです。
ですから、多くの世帯で東京と同じチャンネルを視聴しています(テレビガイドも静岡版と東京版、両方が売られています)。しかし、もし地デジ受信をCATVに頼ることになると、急にローカルテレビを見なければならなくなり、かなりの戸惑いがあります。さらに高い視聴料金と6万円もの初期費用が必要なのです。
最も期待したいのは、BSアンテナでの地デジ受信です。しかし、この方式が可能だとすれば、今、設置計画が進行中の全国の中継局は必要ないような気がします。中継局設置が進んでいるという事は、この可能性は低いと見た方が良いのかも知れません。
どこかの中継局からの「おこぼれ電波」を拾うという方法を試すのも一つの手だと思います。しかし、そのためには映るか映らないかわからないけど、UHFアンテナを買ってみる、という賭をしなければなりません。ちょっと勇気がいりますね。
しかし、近所には明らかに地デジ受信用に設置したと思われる、UHFアンテナを付けたお宅が集まっている地域があるのです。アナログ用VHFアンテナは付いていないので、これは地デジ用と考えて間違いないと思うのですが、そのアンテナの向いている向きが「新島」なのです。
つまり、これは新島のおこぼれ電波を拾っているという事ではないでしょうか。なるほど、この一角は分譲地内でもスカッと海が見渡せる「一等地」です。「海を一望」する物件にはこのようなメリットもあったんですね(その分高いのですが)。
そうか! 島からの電波を受信するという手があったか、という事で調べたところ、伊豆高原に一番近い中継局は「初島」であることがわかりました。しかし、ここは初島だけのための局なので、出力が弱く、しかも伊豆高原からは死角になっており受信は難しい状況です。新島からは受信可能な地域もあるようですが、うちからは島が見えないのでこれも難しいでしょう。
先ほどの「放送受信相談センター」に、今後の開局予定を聞いたところ、今年中に「大島」と伊豆の「チョウチンダケ」という所に中継局ができるようです。大島はうちから良く見えるので期待大ですが、ここも出力は小さいようです。チョウチンダケは地図に名前がなく、どこにある山なのかわかりません。
伊東市全体をカバーするための局なら大室山が最適だと思うのですが、そうではないという事は、別の地域向けの施設かもしれません(大室山には今現在、低いアンテナが数本あるだけです。つまり、美観を損なう建造物は建てられない可能性があります)。
このように、東京など都心部では早くから当たり前になっているデジタル環境が、地方によっては10年前のまま何も変わっていない、という現状があるのです。これはテレビ放送に限った事ではなく、ネット環境も同じです。国とNTTが推し進める光ケーブルもここ伊東市にはまったく関係のない話で、予定すらない状況です。
さらに絞り込んで、伊豆高原の別荘地はどうかというと……ほとんど人が別荘として使用しているので、観光の季節しか人口が増えない、定住している人も住民票までは伊東市に移していない場合が多い、つまり住民税を払っていない(僕は払っていますが)、別荘地は基本的に管理会社の管轄となるので、市や行政が関与しづらい……などの観点から、さらなる「IT取り残され地区」になる可能性があります。
市の財政が切迫している中で、このような環境が拍車をかけてしまうという事を最近知りました(膨大な赤字を抱えているのに、伊東市役所のなんと立派な事でしょう……財政管理に失敗した自治体にありがちな愚例ですね)。
こんな環境を一発大逆転できる方策はないものでしょうか。例えばBSを使うのもその一例ですが、静止衛星からの電波で日本全土を網羅するとか、一時期計画だけが話題になった「高高度飛行船」を発信基地にするとか……これならば、中継局や新たな回線も必要なく、IT過疎地が生まれる事もないと思うのですが。色々技術的予算的問題があるのでしょうね。
「本当はより良い方策があるのだけれど、もう社団法人やプロジェクトを立ち上げてしまったので、今更後には引き返せない。天下り先も減ってしまう」等の理由で一昔前の技術にしがみついている……なんて事がないことを祈ります。そして一刻も早いIT格差の是正を!
【まつばやし・あつし】pine2656@art.email.ne.jp
イラストレーター・CGクリエーター
< http://www.atsushi-m.com/
>
- 2011年、メディア再編 地デジでテレビはどう変わるのか (アスキー新書 017) (アスキー新書 17)
- 西 正
- アスキー 2007-07-10
- おすすめ平均
- 「新」メディア進化論とあわせて読むのがお勧め
- 偏ることなく地上デジタルを論じている
- 何より分かり易い
- 知りたいことが書いてある
- テレビ側の人
by G-Tools , 2008/02/14