KNN神田です。
ロードショーで見る機会がなかったマイケル・ムーア監督の「シッコ(SICKO)」をレンタルDVDで見た。
< http://sicko.gyao.jp/
>
「見る機会」というよりも、以前ほどムーア作品に対して、興味を抱かなかったからという方が本当の理由だ。「華氏911」では突撃取材がどこにもなく、ちょっと食傷気味になっていたからだ。社会全体のこの映画の評価に反して、ボクにとっては、この映画は、いい気づきを与えてくれる映画となった。

< http://sicko.gyao.jp/
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「見る機会」というよりも、以前ほどムーア作品に対して、興味を抱かなかったからという方が本当の理由だ。「華氏911」では突撃取材がどこにもなく、ちょっと食傷気味になっていたからだ。社会全体のこの映画の評価に反して、ボクにとっては、この映画は、いい気づきを与えてくれる映画となった。
アメリカの医療問題についてだから、日本では当然、受けも悪かったのだろう。しかし、これを「社会保険庁問題」に置き換えてくれていれば、もっとヒットしたかもしれない。日本では、社会保険庁問題や食品偽装、政治について、この手法でのドキュメンタリーもそろそろありな気がしてきた。公開する方法もYouTubeという手段がある。
この映画は、マイケル・ムーアのサイトで
< http://www.michaelmoore.com/
>
医療問題を抱える人たちからの情報を広く募集したので、監督の次回作ではそれに便乗し、日本でも同じテーマのショートムービーを作り、プロモーション映画として公開するなどの「ウィキノミクス的」な、グローバルな行動が十分に可能だ。
今まで、マイケル・ムーアは、どれもユニークな作品を作ってきている。ドキュメンタリーの手法だけれども、どれも立派な作品化がほどこされている点に注目したい。淡々としたドキュメンタリータッチだが、どの作品からも真実味が真実以上に醸しだされている。ある意味それが見えすぎて、いやという人も多いが…。
しかし、映像でいろんな証拠を目の前につきつけられると、その分野の知識がない場合、すっかりと彼の色に染められていくのがよくわかる。
「ロジャー&ミー」の敵(親がわり?)のGMは、トヨタに抜かれるのが時間の問題となり、「ボウリング・フォー・コロンバイン」の敵方であった全米ライフル協会のチャールトン・ヘストンは今年他界し、「華氏911」のブッシュ大統領はこの秋、なんなく満期で任期を終えることとなった。問題を提示できるが、映画だけでは何も解決できないのがとても残念である。
「シッコ(SICKO)」は、保険業界と医療業界との関係、そして、それにからむ政治家やロビイストなどによって、結局はアメリカの国民全体が、彼らの食い物にされているという構図をあらわにする。一方、それらの保険業界は空前の売上を誇り、株主たちは巨額の富を得るという手法も暴く。
1993年のヒラリー・クリントン氏の「国民皆保険制度」が、結局、政治家生命を維持するための献金によって頓挫したことや、ニクソン大統領の計画なども過去のフーテージや資料によって露見する。
マイケル・ムーア監督は、隣国のカナダの医療制度、そしてイギリスの医療制度、最後はかつての宿敵キューバの医療制度でアメリカ人が涙するという巧みな演出で、アメリカの制度を強烈に批判する。キューバで囚われの身となっている、911実行犯のアルカイダのほうが医療制度的に優遇されているという。
映画では、カナダ医療制度の父とされるトミー・ダグラス加首相の名前が登場する。「24」のキーファー・サザーランドの祖父にあたるトミー・ダグラスは、100いくつもの法案を通し、カナダの医療制度を完全無料にし、老齢年金制度を作り、自動車保険制度も作ったといわれる。政治家で国は変わるのである。ムーア監督は、アメリカに呼びたかったという。
最初からクライマックスに想定されていたと思うが、話は映画らしく大きく、バカバカしいほどの展開を見せる。キューバの米軍基地に、アルカイダの実行犯が収容され、病院で無料診療されている情報を知り、911の災害救助の際の二次被害者を連れてキューバにわたり、ボートに星条旗を立てて、メガホンを持ち、叫んだ言葉が「せめてアルカイダの人たちと同等の医療を、この911の立役者の人たちに!」だった。マイケル・ムーア監督ならではの痛快であり、最大の皮肉であった。
911の救済ボランティアが治療費が支払えず病気で苦しみ、アルカイダが収容所内で無料で治療を受けている。これは事実である。しかし、わざわざそこに911の被害者を連れていき、収容所で治療しませんか? とは交渉していないはずだ。
日本でもそうだろう。東京拘置所では、松本智津夫が風邪をひいても医務室で無料で治療を受けることができる。しかし、銀行の貸し渋りで倒産した元社長がホームレスとなり、風邪をこじらせて肺炎をかかえていても、金と保険証がなければ治療さえ受けられない。
ドキュメンタリーではなく、作品だからこのチャレンジは許されるのだ。これがドキュメンタリーだとしたら、まったくの「ヤラセ」になってしまう。
ラストのクレジットには、キューバのロケーションサービスなどの名前が並ぶ。キューバ側は、映画への撮影協力が、自国のイメージアップにつながることをよく理解している(現在のキューバは観光地でもある)。
アメリカで120ドルもする薬が、キューバではたったの5セントで手に入る事実。思わず、泣き崩れるアメリカ人。今まで信じてきたアメリカの自由は何だったのか? というシーンだ。そんなアメリカの国民感情を、ムーア監督はうまく「引用」しているのだ。
アメリカ人からすると、キューバは、日本人が感じる朝鮮国にあたるだろう。何を考えているのかわからない。貧困で危険な国…。それが、実は、今の日本の医療制度よりも数段いいサービスだったらどうだろう? 教育が進んでいたらどうだろう? 少なくとも、日本の社会保険庁のずさんさと比較するまでもない。自国が進んでいるという概念は、そろそろ捨てなければならない。
日本の制度をさらに言及すると、大手のサラ金業者の生命保険料の受け取り金では、自殺率が2割に達していることが大問題である。魂を担保に金を借りるという悪魔業界でも、最近は聴かない地獄の交渉によって自殺が1万295件発生し、77.3億円が生命保険会社からサラ金業者に支払われている。
通常の69歳までの死亡原因のうち自殺は9%であるが、サラ金の借り手の自殺率はなんと2倍の19.8%である。まさに、悪魔以上の命の担保をサラ金業者が握っている。いや、悪いのはサラ金業者でなく、それを認めてきた法律なのだ。
マイケル・ムーアだったら、日本ではどんな映画を作るのだろうか? 伊丹十三監督なき今、誰かがこの問題についても、圧倒的な映像資料を武器に物議を醸しださねばならない時だ。
少なくとも、いつでもネタを提供できるように、カメラはまわしておきたいとこの映画を見て強く感じた。
しかし、ボクは米国型の医療制度については、今までは民間委託のいい事例だと考えていた。この映画をきっかけに、世界の医療制度や税金問題を新たに調べ、「映像作品化」することによるアプローチもありかなと思い始めた。
1999年4月26日(月)の「関西インターネットプレス」で、「めざせ! 国民健康キャッシュバック10万円キャンペーン!」というコラムを書いている。
< http://archive.mag2.com/0000000122/19990426151000000.html
>
もう、9年も前の話だ。なんて人生はこんな早いんだ。日刊デジクリもすでに11年目を迎えているではないか!
以下、自分の文章を引用(自分の文章をサイトで検索してコピーペーストすると、たとえ自分の著作物であっても引用している気分になる)すると、
「アメリカでは国民健康保険に価するものがなく、火災保険や生命保険同様に、個別に健康保険をかけています。もちろん病気になった時の医療費用のためです。病気にならない人は保険をかける必要がありません。高騰化する医療費に対して、アメリカ国民は、どう対処したか? 保険金をアップする? 医者に行くのを我慢する? ちがいます。健康になるように努力したのです。(中略)ジョギングを欠かさない、フィットネスクラブで汗を流す、TVショッピングで変なマシンを買う、ビタミン剤や健康関連の薬を買う、有機農法の野菜を買う、健康に関するセミナーに参加する、書籍&雑誌を購入する…など。ありとあらゆる手法を駆使して「健康」を買うのです」
また、2003年3月05月12日(月)今から5年前の「関西インターネットプレス」では、
< http://knnarchive.jugem.jp/?day=20030512
>
「まさに高齢化社会を迎え、生命保険よりも医療保険が重視されてきている時代である。死んでから家族が路頭に迷うのは世帯主が50代前半くらいまでで、その後は死んでからよりも、生きている間に迷惑をかけるほうが問題なのかもしれない。しかし、健康保険でサポートしていない「差額ベッド代金」「所得保障」がどれだけ重要かはわからない。
たとえば、よくTVのCMでやっている一泊二日の入院から1日あたり5,000円保証してもらったとしても一週間入院しても、たったの35,000円にしかならない。これならばお見舞い金を包んで来ていただけるような知人が増える努力に日頃からおつきあいするほうに投資(?)したほうがボクは良いと思う。(中略)今や、日本では、保険には入っているのが当たり前の風潮があるが、病気や大病しなかった場合については、あまり「保険」をかけていないようだ。健康を害してからの保険よりも、体に良いこと、守ることに保険と同等の金額をかける方法もひとつの選択ではないだろうか? その方が健康関連分野の消費も伸びるはずだ。もちろん、医者に行かなければ、保険料が下がる仕組みだ」
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この映画は、マイケル・ムーアのサイトで
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今まで、マイケル・ムーアは、どれもユニークな作品を作ってきている。ドキュメンタリーの手法だけれども、どれも立派な作品化がほどこされている点に注目したい。淡々としたドキュメンタリータッチだが、どの作品からも真実味が真実以上に醸しだされている。ある意味それが見えすぎて、いやという人も多いが…。
しかし、映像でいろんな証拠を目の前につきつけられると、その分野の知識がない場合、すっかりと彼の色に染められていくのがよくわかる。

「シッコ(SICKO)」は、保険業界と医療業界との関係、そして、それにからむ政治家やロビイストなどによって、結局はアメリカの国民全体が、彼らの食い物にされているという構図をあらわにする。一方、それらの保険業界は空前の売上を誇り、株主たちは巨額の富を得るという手法も暴く。
1993年のヒラリー・クリントン氏の「国民皆保険制度」が、結局、政治家生命を維持するための献金によって頓挫したことや、ニクソン大統領の計画なども過去のフーテージや資料によって露見する。
マイケル・ムーア監督は、隣国のカナダの医療制度、そしてイギリスの医療制度、最後はかつての宿敵キューバの医療制度でアメリカ人が涙するという巧みな演出で、アメリカの制度を強烈に批判する。キューバで囚われの身となっている、911実行犯のアルカイダのほうが医療制度的に優遇されているという。

最初からクライマックスに想定されていたと思うが、話は映画らしく大きく、バカバカしいほどの展開を見せる。キューバの米軍基地に、アルカイダの実行犯が収容され、病院で無料診療されている情報を知り、911の災害救助の際の二次被害者を連れてキューバにわたり、ボートに星条旗を立てて、メガホンを持ち、叫んだ言葉が「せめてアルカイダの人たちと同等の医療を、この911の立役者の人たちに!」だった。マイケル・ムーア監督ならではの痛快であり、最大の皮肉であった。
911の救済ボランティアが治療費が支払えず病気で苦しみ、アルカイダが収容所内で無料で治療を受けている。これは事実である。しかし、わざわざそこに911の被害者を連れていき、収容所で治療しませんか? とは交渉していないはずだ。
日本でもそうだろう。東京拘置所では、松本智津夫が風邪をひいても医務室で無料で治療を受けることができる。しかし、銀行の貸し渋りで倒産した元社長がホームレスとなり、風邪をこじらせて肺炎をかかえていても、金と保険証がなければ治療さえ受けられない。
ドキュメンタリーではなく、作品だからこのチャレンジは許されるのだ。これがドキュメンタリーだとしたら、まったくの「ヤラセ」になってしまう。
ラストのクレジットには、キューバのロケーションサービスなどの名前が並ぶ。キューバ側は、映画への撮影協力が、自国のイメージアップにつながることをよく理解している(現在のキューバは観光地でもある)。
アメリカで120ドルもする薬が、キューバではたったの5セントで手に入る事実。思わず、泣き崩れるアメリカ人。今まで信じてきたアメリカの自由は何だったのか? というシーンだ。そんなアメリカの国民感情を、ムーア監督はうまく「引用」しているのだ。
アメリカ人からすると、キューバは、日本人が感じる朝鮮国にあたるだろう。何を考えているのかわからない。貧困で危険な国…。それが、実は、今の日本の医療制度よりも数段いいサービスだったらどうだろう? 教育が進んでいたらどうだろう? 少なくとも、日本の社会保険庁のずさんさと比較するまでもない。自国が進んでいるという概念は、そろそろ捨てなければならない。
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マイケル・ムーアだったら、日本ではどんな映画を作るのだろうか? 伊丹十三監督なき今、誰かがこの問題についても、圧倒的な映像資料を武器に物議を醸しださねばならない時だ。
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1999年4月26日(月)の「関西インターネットプレス」で、「めざせ! 国民健康キャッシュバック10万円キャンペーン!」というコラムを書いている。
< http://archive.mag2.com/0000000122/19990426151000000.html
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「アメリカでは国民健康保険に価するものがなく、火災保険や生命保険同様に、個別に健康保険をかけています。もちろん病気になった時の医療費用のためです。病気にならない人は保険をかける必要がありません。高騰化する医療費に対して、アメリカ国民は、どう対処したか? 保険金をアップする? 医者に行くのを我慢する? ちがいます。健康になるように努力したのです。(中略)ジョギングを欠かさない、フィットネスクラブで汗を流す、TVショッピングで変なマシンを買う、ビタミン剤や健康関連の薬を買う、有機農法の野菜を買う、健康に関するセミナーに参加する、書籍&雑誌を購入する…など。ありとあらゆる手法を駆使して「健康」を買うのです」
また、2003年3月05月12日(月)今から5年前の「関西インターネットプレス」では、
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「まさに高齢化社会を迎え、生命保険よりも医療保険が重視されてきている時代である。死んでから家族が路頭に迷うのは世帯主が50代前半くらいまでで、その後は死んでからよりも、生きている間に迷惑をかけるほうが問題なのかもしれない。しかし、健康保険でサポートしていない「差額ベッド代金」「所得保障」がどれだけ重要かはわからない。
たとえば、よくTVのCMでやっている一泊二日の入院から1日あたり5,000円保証してもらったとしても一週間入院しても、たったの35,000円にしかならない。これならばお見舞い金を包んで来ていただけるような知人が増える努力に日頃からおつきあいするほうに投資(?)したほうがボクは良いと思う。(中略)今や、日本では、保険には入っているのが当たり前の風潮があるが、病気や大病しなかった場合については、あまり「保険」をかけていないようだ。健康を害してからの保険よりも、体に良いこと、守ることに保険と同等の金額をかける方法もひとつの選択ではないだろうか? その方が健康関連分野の消費も伸びるはずだ。もちろん、医者に行かなければ、保険料が下がる仕組みだ」
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