買物王子のモノ語り[5]話題の「マインドマップ」を体験してみました
── 石原 強 ──

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最近、「マインドマップ」という不思議な絵のようなものが気になっていました。お仕事のできる人が使っているとビジネス雑誌でも紹介されていて、さくさくと仕事がはかどったり、どんどん発想がひろがったりするらしい。気になりながらも「なんだか怪しいなあ」としばらく横目で見ていました。そんなある日、本屋さんで、マインドマップの解説本を手に取ってぱらぱらと見ていたら、以前から知った顔があってビックリしました。

松岡克政さんという、元デザイナーで現在は経営コンサルタント。ものづくりからビジネスに興味を持って、勤務していた日立製作所を退職、中小企業診断士の資格をとって独立しというちょっと変わった経歴の人。資格取得の勉強中にマインドマップに出会い、公認のインストラクターになったのだそうです。先日、オフィスに遊びに行った時「きっと役に立つよ」とマインドマップを薦められたのを思い出しました。



仕事の関係でタイミングが合わなかったことが一番ですが、講座の受講料も個人にはちょっとお高いので様子を見ていました。それでも、関連本を読んでもピンとこないし、実際にやってみなければ役に立つのか立たないのかもわかりません。講師も気心しれた相手なら、いろいろ聞いてみることも気軽にできそうです。時間が短くて、価格もリーズナブルに済むものを選んで、11月21日に行われた「戦略」+「マインドマップ」という講座に参加してきました。

講座は二部構成。まず基本的なマインドマップの書き方の講義を受けてから、それを戦略立案に応用するというものです。周りを見回すと、参加者は11人とこじんまりしていて、堅いテーマのためか平均年齢も役職も高そうな人が集まっていました。ちょっと場違いかなと思ったけれど、講師がうまく皆を盛り上げて進めるので、終始和気あいあいとした雰囲気でした。

まずは、マインドマップとはそもそも何なのか概要の説明です。イギリス人のトニー・ブザン氏が考案した手法で、脳の中で展開する思考をそのまま紙に描き出すことにより、発想力、理解力、記憶力など、考える力を高めるということです。これまで頭の使い方を解説した書籍がないということに興味を持ったのがきっかけで研究を始め、歴史上の天才と言われる人達のメモ、ノートに共通した特徴も参考にしながら導きだした手法なのだそうです。

概要の後はいよいよ実践です。「自分のハッピーなこと」というテーマからマインドマップを描いていきます。紙のど真ん中にゴールをイメージするイラストを描きます。次に、そこからブランチと呼ぶ「枝」を伸ばしてそこに言葉を埋めていきます。その後は、連想ゲームのように、外側に向かって描きます。なめらかにきれいに描くということも重要で、それによってより脳が刺激されるのだそうです。マインドマップの手法は明快で、思ったほど難しいものではありませんでした。

最近は日常的にPCを使って作業をするし、テキストを中心にすることが多いので、ペンを使ってカラフルに絵や文字を描く事自体が新鮮です。最初はなんとなく書いているうちに、だんだん夢中になって、時間があっという間に過ぎていきます。普段、発想が出ないと頭を抱えているのとは大違い。制限時間の5分なんて一瞬で終ってしまうので、もっと書くための時間が欲しいという思いにかられます。これは参加者全員に共通した感想のようでした。

第二部は、このマインドマップを使って「戦略」を学ぶという講義です。講師の古杉和美さんは、中小企業の経営戦略を専門とするコンサルタント。なんだか難しそうですが、「子供の運動会を観に行くために、仕事をどう進めるか」「どうやって出世するか」といった身近な話題から考えてみる課題でした。マインドマップの手法を使って書いてみると、思ったより多様な回答があることに気がつきます。

自分でマインドマップを描くだけでなく、お互いに描いたものを見せて話をする時間も必ずありました。思っていることを整理するのに役立つことが実感できるし、他の人の描いたものを見ると新しい発見がありました。普段は、年齢や立場、経験の差があるとうまくコミュニケーションできないこともありますが、共通した手法を使うことで、同じように考えるところ、違うところがはっきりと見えて、他人を早く理解できるように感じます。

普段、セミナーなどの講義を聞いているとすぐに眠くなってしまうのですが、寝る暇もないどころか、かなり楽しんで取り組むことができました。短時間でもひとつずつクリアしていく達成感があり、とても充実した時間を過せました。

終了後は、習慣になるように、毎日描くようにということでした。しかし、講座の中だと緊張感もあって、うまく進みますが、自分一人で集中力を高めるためには慣れも必要みたいです。思うように進まないこともしばしばあります。何事も形から入る私としては、まず色数の多いペンを手に入れたい。講座では6色のペンが配られましたが、きれいに描こうとすると、すぐに色が足りなくなってしまいます。しかも色は多いほうが、より発想も広がるということです。

早速、東急ハンズに新しいペンを探しに行きました。豊富に揃ったデザイン用品売り場で見つけたのは「スタビロ」というドイツのメーカーのペンです。細い五角形でオレンジと白のストライプの軸が特徴で、色のバリエーションは25色です。全色がコンパクトに収まるケースは職人の道具入れみたいで、持ち運びに便利。しかも、人前で広げたくなるようなスマートなデザイン、これを持ち歩いていたら上達も早そうです。

日頃から新しい企画立案などで、発想が重視される仕事に就いている人には、マインドマップはひとつのテクニックとして活かせそうです。発想は抜群という人にも、その発想を紙に落として整理したり、他人へのプレゼンテーションの場面で役立つということでした。「発想も情報整理もプレゼンも全て自信がある」という人は稀だと思うので、このテクニックは誰もが知っていて損はなさそうです。覚えて短期間ですが、私自身も役立つことがありました。

ただし、仕事中に他の人と違うことをするのにためらいのある人は使いにくいということです。他の人が肯定的に見てくれるとは限らないからです。オフィスで描いていたら、「何を遊んでいるんだ」と言われたという話も聞きました。逆に、仕事場では、できるだけ他人と違った発想をペンと紙を使って表現するデザイナーやクリエイターこそ、マインドマップに最もマッチした人種であり、このテクニックを用いることで、さらに自身の可能性を広げられるかもしれません。

・マインドマップ公式サイト(ブザン・ワールドワイド・ジャパン)
< http://www.mindmap.ne.jp/
>
公認インストラクターもいろんな人がいるので、チェックしてみてください。

・松岡克政さんのサイト「MATSUKATSU.com」
< http://www.matsukatsu.com/
>
講座は東京だけでなく大阪でも講座があるようなので興味のある方は是非。

・スタビロ ポイント88 ファイバーチップペン
< http://www.stabilo.jp/products/point88.html
>
発売からの30年以上のロングセラー

【いしはら・つよし】tsuyoshi@muddler.jp
手を使うのは刺激になって気分がいい。クリエイティブの仕事に関わっていたにも関わらず、そんな感覚を忘れかけていました。これから先、仕事の企画書もこのコラムもスラスラ書けるようになるといいんだけどな。
・ウェブアナ < http://www.muddler.jp/
>