KNNエンパワーメントコラム ボスは14歳、デジタルネイティブ─次代を変える若者たちの肖像
── 神田敏晶 ──

投稿:  著者:


デジタルネイティブ―次代を変える若者たちの肖像 (生活人新書)NHKスペシャル「デジタルネイティブ」が書籍化された。

NHKスペシャル「デジタルネイティブ」
< http://www.nhk.or.jp/digitalnative/
>
デジタルネイティブ─次代を変える若者たちの肖像(生活人新書)
< http://www.amazon.co.jp/dp/4140882786/dgcrcom-22/
>

三村忠史さんも倉又俊夫さんも存じあげているだけに、非常に関心の高い番組だった。ここでは、なんとなく「デジタルネイティブ」というジェネレーションが存在しているというところを、まずは伝えられれば成功なのかなというニュアンスを持って、番組を見させてもらった。本当は、シリーズで追いかけ、彼らの変化がいろんな場所で、さらに新たな変化を起こしているという、月一本の特番スタイルでやらねばならない規模のテーマなのだと思う。

この本を読んで、NHKスペシャル「デジタルネイティブ」をより深く理解し、番組の側面情報を知ることができた。番組は有料オンデマンドで視聴できると思うが、この本を先に読んでからテレビを見たほうが「デジタルネイティブ」という概念の理解は深まると思う。近い将来、NHKもYouTubeのようなプラットフォームで再放送を視聴させたいと思うだろう。本当はしたくても、法規制の問題なのかもしれない。



日本人の悪いクセだが、リアルネイティブな人たちは、何でも勉強という学習ツールのスタイルを使って理解しようとする。試験で答えられる、上司に説明できるフォーマットに落とし込んでしまう。それは知っただけであって、本当に理解したことにはならない。

そんなことよりも、むしろ「デジタルネイティブ」の行動をコピーし、それによる自己の変化をアナライズすべきなのだ。違和感や非日常性が、何なのか?どういった意味を持つのかをを皮膚感覚でとらえた上で、勉強に重ねる必要がある。

ボスは14歳という、現在15歳のアンシュール・サマー君が、今回の主人公である。彼とはYouTubeのファン同士になった。このテレビ番組を見て、すぐに彼のYouTubeビデオのサブスクライバーになったからだ。速攻で彼もボクのサブスクライバーになっていた。

きっかけは、テレビ番組である。しかし、ネットはリアルにそれらの関係性を結びつけてくれる。ボクにとっても、テレビは仮想(バーチャル)であり、ネットは現実(リアル)なのだ。アクセスのできないテレビはきわめて仮想的で、自由にアクセスできるネットは、リアリティーに満ちている。

いつの日かボクは、アンシュール君とリアルで会ってみたい。彼はその価値をあまり気にしないと思うが…。

「ボスが14歳とは、信じられなかった」とアンシュール君に雇われた30代のデザイナーは言う。「まさか、自分が14歳の子供にダメだしを出されていたとは……」と。そう、今ままでの概念だと非常にショックな事なのである。14歳の子供は、ただバタバタ走り回るだけで、何も社会のことを経験していないガキだった。少なくとも今までは……。

しかし、この本でも記述されているが、「デジタルネイティブ」は、本は5000時間しか読んでいないが、ゲームやネットには1万時間以上も費やしている。彼らの、情報に対してのアプローチは、今までとまったく違った効率の良いスタイルに仕上がっている。経験とヒマと小遣いの少なさが、彼らをさらにネット上でのビヘイビアをスマートにし、スキルを日々向上させている。

14歳ともなれば、ネット経験でいえば、30代以上の反射神経やネット上での経験値を持っている。すべて、最初から最新のものからスタートしているからさらに洗練されている。ダイヤルアップの頃の話は、第二次世界大戦の歴史の話と同列である。そんな環境の中で、同世代と常に情報をシェアしているからだ。

彼らにとって、ニンテンドーDSは、ゲームではない。ゲームという枠組みを超えて、人生のメンター(仕事や人生に関する効果的なアドバイザー)なっていることだろう。人生のうちで、一番接触しているメディアなのかもしれない。

また、家庭や学校というリアルな社会で生きながら、ゲームの対戦で、ネット上の誰かと常につながっている輻輳したマルチな人生を歩んでいる。目に見えていること以外に、進行しているものを感知する能力を持っているのだ。

これは、ウォークマンやiPodで、好きな音楽をただ受動的に聞いている世代とは、感覚が違う。「デジタルネイティブ」は、そんな意味では、人類2.0であり、ニュータイプなのだ。

ボクたちの古びたCPUのプアなネット経験を捨て、彼らのネイティブなネット行動を学ぶのだ。メディアの体験が違うだけなのだから「ベンジャミン・バトン」化すればいいのだ。

会社とは事務所があって、机をならべて、上司がいて……という概念も変わる。「デジタルネイティブ」が立ち上げたベンチャーならばどこでも、オフィスのない会社、会ったことのない社員というのが、これからの主流になることだろう。それでコミュニケーションが成り立つのか? と思われるだろうが、成り立つのである。

ボクたちオトナには、そういったいわば「デジタルネイティブ」という“一種のスキル”が足りない世代になるのだろう。そう、スキルは身につければいい、もしくはスキルのある人にまかせればいいのである。

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