KNNエンパワーメントコラム 1個売るために30個試食させる時代
── 神田敏晶 ──

投稿:  著者:


KNN神田です。

MediaSaborに寄稿している、駒沢大学の山口浩准教授の「1個売るために5個試食させる話」を読んだ。
< http://mediasabor.jp/2009/03/15.html
>

コンテンツビジネス、特にネット上でのパッケージの発生しないビジネスには有効な手段だと思った。

いや、ボクの感覚では1個売るためには、30個ほど試食(笑)させる必要があると思う。新聞サイトなんて、紙を購読している人、せめて購読期間内は、データベース無料というような太っ腹な態度でいてほしい。



データベースを充実させておかないと、いつしかGoogleのキャッシュもどきを個人でせっせと貯めこんでいる人が、個人でデータを利用可能にして、アプリケーションにして、SPAMのごときバラまいてしまうのがオチだろう。

無限にコピーが可能なデジタルデータのビジネスの場合、枯渇的な戦略より、潤沢に与えてアディクトのような状態で、それなしの生活はありえないところにまで、シャブ漬けにする必要があるかと思う。

どこの新聞社や出版社でも、Wikipediaのようなことはできたはずだ。その前に、いつも「どうやって儲けるんだ?」という悪魔の呪文にいつも参入を拒まれてしまう。

ネットビジネスの禁句は、「どうやって儲けるんだ?」という言葉なのである。また、そこで「やってみなければ…」そこまではいい。そのあと「わからない」で逃げてしまうから了承されないジレンマにいつも悩まされる。

「やってみなければ、結果も得られない」が正解だ。机上の空論よりも、やらないで、Googleに奪われ、FaceBookに奪われ、Twitterに奪われスゴスゴ…というのがネットの世界だ。

まずは、コストがかからない状況での価格破壊者に、率先してなってみる必要がある。少なくとも、広報的インパクトは、トップランナーには与えられる。

iPhoneの産経新聞バージョンは、PCでも展開してもよかったはずだ。紙をやめられては困るという、後ろ向きマーケティングが問題だ。PCで読めるから紙はいらない、という人はいずれ紙をやめる人だ。むしろ、PCのユーザーが新聞をどう読むのかというノウハウをもとに先頭を走るべきだったのだ。

何年も前からサービスは展開しているのに、とてももったいない。新聞のテレビ欄で、ブルーレイが予約できたり、広告リンクでクーポンやアフィリエイトなども可能なはずなのだ。そのうち、GoogleやFacebookが始めてくれるから、ユーザーとしては騒いでも仕方がないのだけれども…。

デジタルコンテンツの分野は、1個売るために5個配る必要性は今後いろんな分野で、ますます登場するだろう。答えは、タバコ産業を見習い、配布コストが低ければ展開すべきだろう。たとえば、タバコのサンプルキャンペーンなどで、1箱を提供しているけれど、1箱なんてケチなことをせずに、2カートン(40箱)配布すべきだと、いつも思う。

なぜならば、1箱程度ならば、ブランドスイッチには、まったくならないからだ。嗜好品の場合は、最低1ヶ月間の経験期間が必要だ。1箱だと、その味は、単なる違和感だけで終わってしまう。しかし、毎日1箱吸って、1ヶ月もすれば、タバコの場合はブランドスイッチが可能となってくる。味覚が体内に蓄積され、基本的にアディクト化させられるからだ。

そんな、2カートン配布する費用って考えると…。実は、タバコの場合は大した事はない。タバコは、もはや社会的に滅びゆくプロダクトであり、喫煙者は高額納税者となりえるだろうから。

タバコの価格の63.1%は、税金の価格である。
< http://www.jti.co.jp/JTI/tobaccozei/
>

少なくともタバコ本来の売価は、36.9%であり、300円のタバコは、つまり110円である。原価はその○○分の1になるはずだ。販売店が10%の儲け。販売店の数は法律上増えないし、安売りもできない完璧なセキュリティ内でのビジネスだ。

広告・宣伝手法は、健康上の問題で制限されているが、マーケットは断固守られている。原価も限りなく30〜40円に限りなく近くなる。そのうち、健康上の問題で値段が1,000円にとかなると、利益はすごいことになる!

だから、40円で40箱配っても1,600円。1,000円になれば2箱で元に。300円としても1日1箱の人ならば6日間もあれば、元を取り返せる。

JTが法律によってタバコを専売していて、徴税の義務としてまかりとおっているから競争もなく、キャンペーンも予算消化するのみ。これがカートンごと配布キャンペーンにならない、参入障壁なのかもしれない。

タバコを禁止にすれば地下に潜られるし、かといって、医療負担を考えると、あまり普及させたくもないけど、税金だけは、欲しいという複雑な状態。

そうやって考えると、タスポの戦略は、CVSでの対面販売の強化のためだったのかもという見方もできる。いや、タスポを発行するのは社団法人・日本たばこ協会という、天下り先の仕事を発生させるためだけだったという意地悪な見方もできる。

未成年保護の立場だけならば、酒の自販機も当然同じことになってしまうはずだ。そこは、おいそれとアルコール業界が黙っていない。どちらも、アディクトマーケティングの展開が可能なはずだ。

最近では、ビールもティザー広告がさかんになってきた。いよいよ発売! なんて言われると、気になって仕方がない。エンドユーザーは、1日に3〜4,000件以上の広告をトータルで見せられているという。その中で目立つために、さらに低いコストで認知をはかるためには、ティザーで告知し、ネットで検索され、さらに印象づけたいという企業側の戦略も見え隠れしている。

そんな社会環境の中で、ブログマーケティングや、ブロガーのバイラル力をメディアにしたビジネスが盛んになり始めてきている…。すべての販売プロセスに、インターネットがからむ時代の売り方も再編されなければならないだろう。

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>
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by G-Tools , 2009/03/23