KNNエンパワーメントコラム 北朝鮮"飛翔体"におけるテレビ報道
── 神田敏晶 ──

投稿:  著者:


KNN神田です。

日本が大きく翻弄された、北朝鮮の"飛翔体"騒動がようやく終わった。発射の300秒後には日本の上空という、日本の報道史上、秒を争う初の報道の試みが行われたのだ。報道の条件はどこのテレビ局も同じ。しかし、結果はテレビ局によって大きく変わった。

一番の特徴が2009年04月04日(土)の「誤探知」ニュース報道時の対応だ。SPIDER ZEROで今回のテレビ報道を全チャンネル視聴してみた。

●4月4日(土)第一報 報道速報ランキング
(あくまでも速報時間でのランキング)



【NHK】
2009年04月04日(土)12時16分57秒
(日本テレビより40秒も早かった)
横尾泰輔氏スタジオ報道開始、バラエティー生活百科の時間帯番組変更
自治体映像ライブ
政治部 山口太一氏の解説中
2009年04月04日(土)12時21分32秒
ニューステロップで誤探知情報のニュースがはいる。
2009年04月04日(土)12時21分33秒に誤探知報道
特徴:同じ情報を正確に何度も繰り返す。横尾泰輔氏、山口太一氏ともに落ち着いている。沈着冷静スタジオの混乱も非常に少ない。

【テレビ朝日】相棒傑作選
2009年04月04日(土)12時17分16秒
ANNテロップ
2009年04月04日(土)12時18分01秒
スタジオ報道・山口豊氏、防衛省ライブ映像、秋田新谷演習場ライブ映像、秋田港ライブ映像
2009年04月04日(土)12時23分15秒
ANNテロップ 誤探知報道 
2009年04月04日(土)12時25分01秒
スタジオ報道 誤探知
特徴:報道後すぐにドラマに戻る。誤探知はテロップのみ。ドラマを優先した報道体制となってしまった。誤探知スタジオ報道は一番遅かった。スタジオ報道するならする。しないならしないの徹底ぶりが必須だろう。

【TBS】「王様のブランチ」タカ&トシロケVTR中
2009年04月04日(土)12時17分17秒
JNNテロップ
2009年04月04日(土)12時18分45秒
「王様のブランチ」谷原章介 優香が報道
2009年04月04日(土)12時18分54秒
スタジオ報道・向井政生氏、首相官邸ライブ映像・河村建夫氏、防衛省ライブ
映像・佐古忠彦氏
2009年04月04日(土)12時23分15秒
JNN誤探知報道テロップ スタジオ報道
特徴:「王様のブランチ」の長時間のライブ慣れした、谷原章介・優香のつなぎがスムーズ。報道後に放送されたVTR続きのタカ&トシはまったく空気感が変わってしまった。ネタを変えてもよかった。「新たな情報が入り次第、お送りします」でロケVTRを見せられるのは、チャンネルスイッチを生み視聴率が下がってしまうだろう。スタジオでコメントを谷原氏がまとめることもできただろう。

【フジテレビ】「GOGOサタ」放送中
2009年04月04日(土)12時17分25秒
FNNテロップ
2009年04月04日(土)12時17分35秒
スタジオ報道・須田哲夫氏長野翼氏、官邸危機管理センターライブ映像、秋田県八峰町ライブ映像、軍事評論家・岡部いさく氏 かなり興奮気味
2009年04月04日(土)12時21分43秒
誤探知報道 
官邸映像ライブ・長谷川智子氏、秋田北浦漁港ライブ、防衛省映像ライブ・石井梨奈恵氏、秋田新谷演習場、岩手岩手山演習場
2009年04月04日(土)12時36分58秒
ドキュメント映像放送
特徴:かなり充実した段取りと中継のつなぎ、適度にスタジオの緊張感も伝わってくる。ドキュメント映像も用意。誤探知と判明してからも、その情報によっての混乱がなかったことが中継によって伝わった。須田氏と長野氏のコンビがとても安定しており、息もあい、過不足なく情報を伝えた。軍事評論家ももう一人くらいいてもよかった。

【NHK教育】「出社が楽しい経済学」放送継続
2009年04月04日(土)12時17分31秒
テロップのみ
2009年04月04日(土)12時22分26秒
誤探知テロップのみ
特徴:テロップのみ。アラート音もなし。アラート音がないので、ながら視聴ならニュースに気づかない可能性あり。NHKがあるので、教育はそのまま放送中というスタンス。これはこれで視聴者の選択としてありかもしれない。

【テレビ東京】「ゴルフの真髄」放送中
2009年04月04日(土)12時17分35秒
TXNテロップ
2009年04月04日(土)12時22分22秒
TXNテロップ 誤探知報道
特徴:テロップのみ。アラート音あり。昼間に録画の多いテレビ東京らしい報道スタイル。テロップのみは、中途半端な報道をしても仕方がないので賢明。ニュースに興味のない人向けという路線はあり。

【日本テレビ】「メレンゲの気持ち」大沢あかねトーク中
2009年04月04日(土)12時17分37秒
テロップ
2009年04月04日(土)12時17分47秒
スタジオ報道池内千香子氏
池内千香子氏やや緊張の色。結局、緊張はとれなかった。
2009年04月04日(土)12時17分47秒
防衛省からのライブ
2009年04月04日(土)12時18分56秒
山見穣太郎氏
2009年04月04日(土)12時22分20秒
誤探知報道
特徴:防衛省でのライブ映像で、ガムをかみながら、笑いながらケータイを見ている記者の映像がとても気になった。カメラマンが位置をかえるべきだったが、防衛省の記者がそんなかんじということもニュースのひとつだと感じた。突然のコマーシャル入りも気になる。事前にわかっていながらも、スタッフの困惑ぶりがこちらにまで伝わる。ディレクターの判断ミスが多かった。スタジオのノイズもそのままのりつづけたまま、突然「メレンゲの気持ち」のVTRに戻ってしまうという失態ぶり。

土曜日の報道では、フジテレビがダントツですばらしかった。当然ながら、NHKも安定していたと思う。そして、翌日の本当の発射報道である…。そこには各社、前日の報道の反省の色もあるが裏目にでてしまうケースもあった。まさにライブ報道の世界は過酷な現場だと思った。

●2009年04月05日(日)の発射報道

【NHK】
2009年04月05日(日)11時32分22秒
NHKの報道では、秋田、岩手、東京、埼玉を四分割にしたマルチスクリーンで各地の情報を同時に生で送る。

2009年04月05日(日)11時35分23秒
スタジオサブの音声で「添付ファイルを開いて!」の指示が聞こえる。エムネットの情報が、紙のスキャンデータを添付ファイルで送ってくるからだ。「東1発」の手書き文字が書かれているだけだ。放送で添付ファイルが送られてもスタジオでは判断に困ることだろう。

そして、当日、NHKの登坂淳一氏は、自分でカフボリュームを下げて、口を開けずに「それをどかしてもらえないと、文字がよめません…」と伝えていた。おそらく、紙ではなく、PCのディスプレィをデュアルモードで出力していたのだろう。そして、表情を変えずに、ディスプレイを読む。さすが、職人技だと思った。「日本海の、日本の東に…」というくだりは、さすがの登坂氏も緊張が隠せなかった様子だ。

【フジテレビ】
2009年04月05日(日)11時33分30秒
昨日と同様、須田哲夫氏と長野翼氏のコンビ。たんたんと段取りよく伝える。非常に安定。秋田からの防災放送をそのまま流す。これは特にリアリティのある報道シーンだ。エムネットのメールをそのまま放送。別添添付ファイルも画面でそのまま開きそのまま報道。小細工なしで、直球でPC画面を再撮で放送する。一番、伝わる。しかし、これは今後、国民の希望者にサービスされたら誰もが知りえる情報となってしまう。

報道フロアのノイズも適度な緊張感が伝わる。エムネットの送信メールを随時報道する。エムネット側も、報道を意識した言葉づかいが今後は必要だ。軍事評論家の岡部いさく氏も落ち着いた様子を取り戻し安定してみることができた。

【TBS】
2009年04月05日(日)11時33分31秒
JNN 長峰由紀氏。「オートアップいって!」専門用語がフロアに飛び交う。そして突然のCM挿入段取りがうまくいかないようだ。イーエムネットの情報はパソコンの画面をそのまま映し出すなどによって変化を見せる工夫がなされる。また、日下部氏が解説者となり会話形式でスムーズにつなぐ。話し相手が緊急報道の場合は、いたほうが安定するだろう。一人が話している間に、キャスターにサブから指示がきちんと出せるというメリットがある。

【NHK教育】
2009年04月05日(日)11時33分37秒
テロップのみ

【日本テレビ】
2009年04月05日(日)11時33分41秒
サブの「やっぱり(スタジオ)戻ろう。ごめん!」。山本舞衣子氏は、サブスタジオの指示に翻弄されていた。キャスターは、自分が喋るべき原稿がないと、繰り返して報道するしかない。フロアーディレクターが真横で指示をだすがうまく伝わらない。キャスターは、どうしていいかわからない時はただ情報を繰り返すしかないのである。それに比べるとコメンテーターは、自分のコメントを言えるから時間の調整がつきやすい。日本テレビはコメンテーターを用意しておくべきだった。いったんスタジオからCMで逃げ、その間に段取りが確認されてからは、落ち着いてきた。ただ、サブの音声も声が流れていることを一度は認識し、言葉づかいに注意をすべきだろう。

【テレビ朝日】
2009年04月05日(日)11時33分43秒
今回の報道の速報では一番出遅れたが、内容は一番内濃い。それはサンデープロジェクトに、生に強い田原総一朗はじめ、麻生側近閣僚だった中川昭一氏、民主党前原誠司らが生出演中だったからだ。ニュース速報の報道をそのまま番組で解説される。しかも、中川氏の登板が他局とはちがった速報となった。惜しむらくは、11時45分で報道が終わってしまったところだろう。

【テレビ東京】
2009年04月05日(日)11時34分56秒
テロップのみ。

ざっと、全ニュースを視聴するだけでもまる一日かかってしまった…。今後の緊急報道スタイルで注意すべき点がいくつか考えられた報道であった。

・各地の現場のライブ映像
・キャスターと解説者のセット
・専門家などのゲスト
・ドキュメンタリーなどの用意
・サブの指示の出しかた
・報道フロアのノイズ
・報道フロアの役割分担など

今回はあくまでも、発表があってからの緊急報道だ。政府以上に国民や世論に影響を与えるテレビ局メディアこそが、緊急報道の正しいありかたを研鑽を高めなければならないのではないだろうか。

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by G-Tools , 2009/04/06