DTPデータ解体新書──それでPDF入稿ってどのくらい流行っているの?
── 笹川純一 ──

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吉田印刷所のDTPサポート情報blogのページで「PDF入稿の割合はどのくらいですか?」というアンケートを9月に行いました。

PDF入稿は数年前よりAdobeやベンダーより推奨されている入稿方式で、PDF入稿のセミナーなども各地で活発に行われていますが、実際のDTPの現場ではどのような割合で利用されているのかをお答え頂きました。結果は以下の通りでした。

■PDF入稿の割合はどのくらいですか? ...投票数:250票

  ●多い(70〜100%)    ... 32.4%
  ●少ない(〜30%)    ... 30.0%
  ●なし          ... 24.8%
  ●半分くらい(40〜60%) ... 12.8%

グラフ:
< http://blog.ddc.co.jp/img/blog/mail/images/20091019-pdf-01 >



 ◇1位は「多い(70〜100%)」という方が約32%でした。

1/3の方が、PDFでのワークフローに移行しているという結果が出ました。ただ、これをもってPDF入稿が進んできていると考えるのはちょっと難しそうです。2位の「少ない(〜30%)」、3位の「なし」の割合を合わせると、約53%とわずかですが過半数を超えますので、DTPの現場で積極的にPDFが利用されているとは言いがたい感じなのではないかと思います。

ただ、印刷物として数が圧倒的に多い通常のプロセスカラー4色(CMYK)の印刷であれば、今はPDF入稿でほとんど問題ないのではないかと思います。RIPも相当古くなければ、運用側の出力の手順をしっかり決めていけば、多くは問題なく出力できるとは思います(吉田印刷所でも出力のコアがCPSIという、いわゆるPostScript系がコアで使用している時代からPDFの出力を行ってきました)。

吉田印刷所では、もちろんPDFの入稿は自信を持ってOKと言えるのですが、おつきあいのある印刷会社様でも出力のオペレーターの方や工務(工程管理)の方と綿密な打ち合わせをすることで、PDF入稿ができるようになるかもしれません。そういったワークフローの見直しも、今後PDF入稿をしていくためには必要なのではないかなと思います。

 ◇2位は「少ない(〜30%)」という方が30%でした。
 ◇3位は「なし」という方が約25%でした。

2位の「少ない(〜30%)」と回答頂いた方は、全部が全部PDF入稿に移行しないで、例えば定型の定期物だけPDF入稿に移行して取り組んでいるとか、そういった感じなのではないかと考えられます。すべてをPDFのワークフローに移行するには多くの検証の時間が掛かりますから、部分的な導入はアリだと思います。

また、「なし」と回答頂いた方は、1/4の割合でいるということになりました。比較的先進的な取り組みを行っている人たちが多いとされる、ネットでのアンケートではありますが、出力環境の移行は1/4は行っていないという結果になりました。

ワークフローとして、データを出力する側の会社・印刷する側の会社でデータの間違いなどを修正することが前提になっている場合は、PDFで入稿するとちょっと修正がしづらい、もしくは修正できないことがあるので、PDF入稿は促進していきづらいかもしれませんね。

 ◇4位は「半分くらい(40〜60%)」が約13%になりました。

PDF入稿へ半分くらいの移行がされていれば、データを渡すときの注意点などの知識が社内で蓄積されてきていることだと思いますので、その知識を応用できればさらなるPDF入稿への移行が促進されていくのではないかと考えられます。実際、PDFのエラーはエラーが100あったら、原因が100あるわけではなく、数個〜10数個のエラーに収束すると考えています。そういう風に考えられるようになれば、問題の解決策もパターン化できるので、この回答をした方々は遅かれ早かれ、「多い(70〜100%)」という方向に向かっていくのではないでしょうか。

PDF入稿のメリットは、吉田印刷所のDTPサポート情報ブログでも掲載していますが、これらのメリットを享受する(コスト削減・時間短縮・作業の簡易化など)には基本的に「戻らない」ワークフローが必要になると考えています。PDFワークフローでの印刷は、システムを入れればすぐに始められるものではありません。各工程に携わっている人たちの、PDFワークフローへの理解がなければ、PDF入稿はオペレーターにとって負担が増えるだけのものになってしまうでしょう。

コスト削減・時間短縮・作業の簡易化などは常に求められていることかと思いますが、フロー全体を最適化すること(全体最適化)で、その有用性が発揮されます。PDF入稿・PDFワークフローを導入しようと考えられている方は、単にプリプレスのデータの受け渡しがPDFになるだけと考えるのでなく、全体のワークフローを見直す良い機会と捉えてみてはいかがでしょうか。

※今回のアンケートにもDTP駆け込み寺の和尚様・読者様、デジタルクリエイターズの発行者様・読者様にご協力を頂きました。また、弊社ページをご覧頂き、アンケートにお答え頂いた方々にも御礼申し上げます。ありがとうございました。
【アンケート概要】
アンケート期間:2009年9月10日〜2009年9月30日
アンケート対象:主として「DTPサポート情報blog」閲覧者
アンケート方法:以下のページのウェブサービスによる回答(無記名回答)
< http://blog.ddc.co.jp/mt/dtp/archives/20090805/220700.html
>

【笹川純一】sasagawa@ddc.co.jp < http://www.ddc.co.jp/
>

DTPデータ入稿を手がけている、新潟の印刷会社の人。先日、新潟から軽自動車に乗って、名古屋のDTPの勉強部屋にお邪魔しました(笑)。

12月8日に開催されるDTP Boosterは「制作者のための出力できるPDF」をTrueflowの方が講演されるということで出席予定です〜。出力できるデータ作りってのは大事。みなさんもぜひ。
< http://www.dtp-booster.com/vol09/
>

私自身としては、11月20日に(社)日本印刷学会のプリプレス研究会主催の研究例会「いまさら聞けない!! プリプレスの基礎知識と課題」でPDFの基本的なところからのお話を講師としてさせて頂く予定です。
< http://www.jspst.org/event/091120.html
>

●今週金曜日のDTP Bootsterもよろしく♪(濱村)