アナログステージ[29]システムの新陳代謝・前編
── べちおサマンサ ──

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コンニチハ、14時です。前回書いたとおり、ワタクシ、技術提携しているベンダーさんの会社へ出向中です。従業員数は50人にも満たない、小さな会社ですが、とにかく技術の幅広さに驚くばかりです。しかーし! その技術力が、経営とイコールするかというと......そうではない。

今回は、デジクリの読者様にはあまり馴染みがない話かもしれませんが、製造業などをされているかたには、「そんなこと、当たり前のちゃんちゃんちき」という内容になってしまいますが、とりあえず、出向から半月の流れを。



●ロケーション管理の重要さ

まずこの会社にきて首を傾げたのが、注文を受けてから各サードベンダーさんへ、必要な部品の発注、納品の際の受入れ、製造部へのピッキング(部品などの仕分け)、所謂、資材のシステムがめちゃくちゃでした。また部品や材料のロケーション管理もされておらず、在庫として抱えているにも拘わらず、新規に発注をたてている、正直、ずさん管理。ただのムダ使い。

ここの会社では、主に制御システムのコントロール関係を製造しているところですが、ひとつの制御コントロールを組上げるのに必要な部品点数は、少ないもので30点から50点、多いものになると、200から300点以上もの部品を扱います。制御(FA)部品は、1個からの購入ができたりもしますが、細かい部品になると、100個や1000個単位での、ロット購入もあります。

1個や2個の、単発で購入できる部品は、その都度購入しているようなので問題はありませんが、ロットで購入している場合(メーカによって、最小販売ロットが強いられているときもある)は、使った後の数量をきちんと管理しておかなければ、「あ、まだ残っていたから大丈夫」と安心していても、実際組み立て始めてから、「○個足らない!」と騒ぐこともあります。

汎用品で、市場にもたくさん流通しているものなら問題ありませんが、受注生産品となると、発注かけてから1ヶ月......メーカが動いてくれるのを待っていたりすると、それこそ納品まで数ヶ月かかることも。受けた注文に納期の余裕があればいいのですが、なければ迷惑どころか、会社の信用問題にも繋がったりします。

で、ワタクシがこの会社へ来て一番初めに行ったのが、ロケーション管理を徹底することを求めました。在庫などを管理するDB(データベース)がなかったので、急遽、丸一日かけ、エクセルで間に合わせの管理ファイルを作成。

スチール棚ごとにロケーションナンバー(棚番)を割り振り、無造作に置かれた部品たちを、ひとつひとつ仕分けし、同時に部品ごとにパーツナンバーの割振りをしました。パーツナンバーを割振ることで、資材管理が容易になることと、パソコンでの在庫管理も楽になること。

こっちの棚にも、あっちの棚にも同じ部品がぞろぞろと出てきたときは、「なんじゃこりゃ...」と、ちょいと顔も引きつりつつも、なんとか1週間かけて仕分けと在庫管理のDBが終了。

棚ごとに出庫カードを作り、『何月何日に、誰が何を何個持ち出した』という記録をつけることを徹底。在庫管理だけではなく、棚卸作業の負担を軽くすることにも繋がります。次に、資材の動きを事務員さんが賄っていたので、事務員さんに1週間に1回、出庫カードをすべてチェックしてもらい、在庫データのマスターを修正をしてもらうようにしました。

本当なら、バーコード管理で自動的に在庫管理させたいのですが、まぁ、そのシステムは時間をみて追々作ろうかと。とにかく、いまはこの管理体制というか、環境に馴染んでもらうほうが先なので、慣れてくれば、ワタクシが口を出さなくても、自然と自分たちのやり方を見つけていくはず。

簡易的に作った管理ファイルも、パーツナンバーを入力すれば、仕入先・メーカ・メーカ型番・リードタイム・最小購入数・仕入れ単価・現在庫数など、その部品の情報が出てくるようにはしておいたので、サードベンダーへの発注は、ムダな買い物をしなくても済むようになる。

●大切なのは、頑張っている従業員さん

こうしてロケーション管理を徹底させることで、資材の動きがだいぶ......というより、見違えるようにスムーズになりました。慣れないことに戸惑っていた事務員さんも、動かし始めた2日目あたりから、「これ、ものすごい便利です!いままで、製造のほうから、『ナニを何個頼んでおいて!』と言われて、分からずそのまま注文していましたが、在庫も見えるし、伝票めくって単価調べていたのも、簡単に見ることができて」と、大変気に入ってもらえたご様子。よかった、よかった。

とりあえずは、ここまでの経緯を社長さんへ報告。もともと技術畑の社長さんなので、こういった仕組みは(経営とは別の意味で)好きみたいでしたが、時間に追われているうちに、取り残されてしまった感を悔やんでおりました。

経理などは市販のソフトなどで賄えたりできるが、専門分野の管理となると、その会社特有の管理システムを組まないといけない場合が多い。社内にDBを構築できたり、システムを管理できる人間がいればいいが、だいたいは、外注さんへ見積りをとり、返ってきた見積り金額にびっくりして、導入を諦めてしまうケースが殆ど。相場や内容を知っていれば、ツッコミも入れられるのだろうけど、チンプンカンプンの丸投げなので、ツッコミ入れる前に萎んでいる。

逆にワタクシなんかは、構築する内容によっての相場を知っているので、「普通はこんなもんですヨ。特別高いわけでもないですし、ぼられているわけでもないです」となるが、まったく知らない人は、5万円か、高くても10万円くらいだろう、いや、10万もしない......と思っている。これホント。

ここの会社だけではなく、(元)会社のベンダーさんの話を聞いている限り、似たような運営(システム)をされている。今回のロケーション管理を徹底させることができたのは、この会社が少人数だったから。それと、個人的に十数年のお付き合いがあり、社長さんを含め、従業員のみんなを知っていたから。これが100人や200人規模の会社や、少人数でも馴染みのない会社だと、たぶん無理。反発喰らって終わり。

どちらかといわなくても、ワタクシも技術屋なので、資材のような経営にかかわる動きは嫌いなんですが、それとこれは別。円滑に仕事をこなすうえで、最低必要な要素。客先に納期遅れなどの迷惑をかけることを回避し、ムダな買い物をしてデッドストックになるようなことも避け、「どんぶり勘定」に近かった見積り構成を見直し、しっかり利益として得る。

大きかれ小さかれ、会社としては当然のこと。会社がしっかりと儲けて、勤めている人たちを大切にしないとね。

※と、なんだかエラそうなことつらつらと書きましたが、経営コンサルで出向しているわけではございまぬ。技術指導で出向しているだけです。経営なんてまったく分かりません。センスもないです。
次回、「どんぶり勘定」が生み出していた悲劇の実態を。これは酷い。

【べちおサマンサ】pipelinehot@yokohama.email.ne.jp
FAプログラマであり、ナノテク業界の技術開発屋(出向中)
< http://www.ne.jp/asahi/calamel/jaco/
>
< http://twitter.com/bachiosamansa
> ←まったく役に立ちません

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