アンビエントメディアの夜明け[17]Appleのサイトを見るだけで欲しくなる理由
── 川井拓也 ──

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ゴールデンウィークも終わり、強烈な「サザエさん症候群」の方も多いと思いますがいかがお過ごしでしょうか?

この連休中にAppleの新製品を買ってしまった人も多いと思います。iPad2? iPhone4ホワイト? iMac? 出費の額は違えど、すでに持っているにもかかわらず、新しいものが出るたびに欲しがらせるAppleマジックも、最近は神がかり的なものを感じます。今日はそのマジックのひとつについて言及したいと思います。

「アップルのサイトの文章はすべて未来形の語り口でコピーライティングされている。あれにやられるのだ。」

これは私がtwitterでつぶやき多くRTされたつぶやきです。Appleのサイトは英語版も日本語版も同じであり、同じ文脈で統一されています。その文章はサブリミナル的な魔力を持っており、webを訪れたユーザーがまだApple製品を持っていないにもかかわらず、持っていたらどんな素晴らしいことが起こるか?ということを語りかけてきます。主要な製品の書き出しでそれを検証してみましょう。



●iPadが33%も薄く、最大15%も軽くなりました。手に取れば、その違いが分かるはず。そしてそのまま手放せなくなるはずです。(iPad2)

●かつて誰もが「未来の電話」としてイメージしていたものを、iPhone4 がごくあたりまえのものにします。画面をタップするだけで、出張先から自宅にいる子どもたちに手を振ったり、国境を越えて笑顔をかわしたり、仲のいい友だちがあなたの話で大笑いするのを見たり。(iPhone4)

●ますます小さくスリムになった新しいApple TV。あなたをもっと楽しませるために生まれ変わりました。一世代前のモデルに比べ80パーセントも小さくなって、電源も内蔵。ワイドスクリーンテレビの横に置いても、キャビネットに並んだAV機器の間に置いても、すっきりフィットします。(AppleTV)

●フラッシュストレージの長所を活かしたiPod、iPhone、iPadを持っている人なら、その信頼性、スピード、効率の良さをすでに実感しているはず。MacBook Airのような極めてコンパクトなノートブックにフラッシュストレージを採用した理由もおわかりいただけるでしょう。(MacBookAir)

どのコピーにも共通するのが自信たっぷりな物言い。そして、もうユーザーがその製品を使っている、触れているという前提でその性能の素晴らしさを共に確認していこうとする文章なのです。なんてことはない文章に見えますが、これと同じ文体を使うメーカーはほとんどありません。

今のAppleは10年前のAppleとは違い、間違いなくすべての人にとって最先端企業であると認識されていますが、その実力があってはじめて説得力を持つ文体と言えます。このコピーを読んでいるだけで、ユーザーは「そうだ、この素晴らしい製品を私が使わない手はない!」と妙な確信を持ってしまい、あとで嫁に「あんた! 持ってるになんでまた買うのよ!」と怒られることになるわけです。

筆者が注目するのは、もちろんiPad2。アンビエントメディアとしてのiPadの有効性についてはかねてからこの連載で言及していますが、それはiPad2になっても同じ。ちょっとしょぼいという噂のカメラも、しばらく使えば飽きるはず。なによりiPadの最大の問題点は、それを使う時間が一日の中で意外に短くなってしまう人が多いということにあります。

ならば、能動的に使う時間は少なくとも、会社でパソコンの横にiPadをたてかけてアンビエントに情報を表示させて元を取るのも悪くありません。今回のiPad2の純正カバーであるSmartCoverは日本では「風呂のフタと完全に一致!」として発表日から話題になっていましたが、本体が発売されてすぐにリリースされたアプリに「SmartTub」があります。

これは文字通りiPad2を風呂にするというアンビエントアプリ。SmartCoverの青と組合わせることで最高の効果があります。そんなことのためにiPad2を買ったのではない! と怒るあなたも会社のOLちゃんに「このアヒル可愛い!」と言われること間違いなし。まずはお試しあれ。

< http://kuracyan.net/archives/10907
>
フロ桶アプリ ステキ過ぎる。 ーSmartTub

【川井拓也 / Takuya Kawai】
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