さて、土地は決まった。ローンも済んだ。昨年末はそこまでの段取りをこなすことで精一杯でした。土地探しの間は無我夢中だったので、建てる家のイメージまで頭が回りませんせんでした。土地が決まったことで、やっと次のステップに進めることになりました。年明けから、本格的に家づくりをスタートしました。
●やっぱり建築家と組んで家を建ててみたい
家づくりは「Boo-Hoo-Woo.com」と進めていくことにしました。都心の狭小住宅の経験も豊富で、デザインにこだわりがある。オカザキさん、ミヤケさんとも家に対する感覚が合って話し易い。前々回の広さが足りなくてあきらめたプランも気に入っていたので、この土地でもきっといい家をデザインしてもらえると期待して決めました。
予算やスケジュールが厳しいと聞いていたので、建築家に設計を依頼するか迷ったけれど、これを逃したら次の機会はないかもしれない。オカザキさんの「この条件なら大丈夫でしょう」という言葉もあって、チャレンジすることにしました。
建てる家の前提条件として、まず打ち合わせたのが、家のボリュームです。土地の条件では床面積は30坪くらいとれるが、予算を抑えるために必要最低限の25坪にちょっと加えた26坪で検討することにしました。「無闇に広くしないで余裕があったほうが、吹き抜けとかある贅沢な空間が作れる」というオカザキさんのアドバイス。構造は一般的な木造の3階建てとしました。
スケジュールとしては、来年の4月には次男の保育園入園、妻の育休開けの復職が待っているので、遅くとも来年3月が期限です。引っ越しをしてから時間の余裕も欲しいので、できれば年内12月には入居したいと依頼しました。
具体的な要望としては、エアコンが嫌いだから、日当りと風通しが自然を活かした空調がいい。リビングは、ソファーなどを置かずに床に座るようなスタイルにしたい。ダイニングは食事だけでなく2人の息子の勉強を見たり生活の中心になる。キッチンは妻のスペースとして家の中心に。かわりに僕のワークスペースも欲しい。クルマは持たないので駐車場はなくてもよいが、自転車は最大4台置きたい。南側に布団を干すスペースは必須。
今もモノが多いしさらに増えるので、収納するウォークインクローゼットや、玄関脇に収納があるといい。すべて片付けるのではなく、好きなこだわりモノは飾ったり隠したりをバランスよくしたい。特に折々に買い求めたイスはうまく居場所をつくりたい。家にあるモノで、趣味とかこだわりを知ってもらおうと、持ち物を写真に撮って簡単な資料を作成した。
建築家の選定は、Boo-Hoo-Woo.comにおまかせしました。複数の案を見てみたい、自分に合った人に設計をしてもらいたい。というお願いをして、3人の建築家に提案していただけることになった。どんな提案がでてくるのかワクワクします。プレゼンの度、どんな建築家に出会えるのかとドキドキしていました。
●土地のパワーを取り込む、斬新なデザイン
一番手はTさん。シャープなデザインの作品が、雑誌「カーサ・ブルータス」の住宅特集にも紹介されている、これからの活躍が期待される若い建築家です。
開口一番に「プランを考える前に土地を見に行きました。イシハラさんがなんでこの土地を選んだのかわかりました。とても気持ちのいい家ができると思いました」この土地の形状で悩んだ末の決定だったので、こう言ってもらえてホッとしました。
プランの特徴は、2階です。北側にキッチン。階段2段分のステップをあがってダイニング、さらに2段分上がってリビングとなっています。部屋を壁ではなく高さの変化で区切っている、細長い一室空間です。
「この土地の持ち味を生かすには、外と一体感を持たせたかった。ステップ状の空間は、家の南側にある土手のような地形と連続性を持たせて、土地のパワーを家の中に取り込めるようにという発想からデザインした」という。
この考え方がうまく生活のイメージに落とし込まれています。2階は壁がないので、どこにいても他の人の様子が見られます。扉も廊下もないので広々と空間を使えます。キッチンはアイランド形で、シンクの天板がダイニングまでつながってダイニングテーブルとなっている。キッチンは立って作業するけど、ダイニングはステップがついているので、床に座っているとちょうどいい。
「リビングで寝転んでいる人と、キッチンで立って料理をしている人の目線が、ちょうど合う。常に家族の気配を感じながら、それぞれの場所で自由なことができるんです」と、のびのびした床座の生活がイメージできます。
リビングには3階に上がる階段があり、屋根まで吹き抜けになっています。隅にワークスペースを設けられています。「ここでは階段の2段目を延長してテーブルとして使います。スペースを無駄にしないようにして、家のインテリアの一部としてとけ込むようにした」と細かな配慮が見えます。
3階の子供部屋には少し広いテラスもついています。屋上がなくても眺めが良さそうです。「布団もたっぷり干せそうだね」と妻が喜んでいます。「3階は将来的には収納を設けて兄弟2人の部屋として分割できるようにする」参考案もありました。
床や天井高の違い、空間の拡がりといったイメージは、平面図の他に立面図、それに模型を見ながら説明していただきました。模型は具体的に完成のイメージがわきやすい。外観も直線的でシンプルな形が良いです。
Tさんの提案は、長細い土地の特徴を建築に見事に取り込んだプランでした。
●2階玄関の家は意外なほど合理的なプラン
2人目は1週間後。Fさんは夫婦で建築家です。事務所の設立は、2006年と最近でしたが、それまでの実績は十分。どの家も一見派手さはないですが、細かく計算されたデザインや、ユニークな素材使いなど隅々にこだわりがあって素敵です。
提案のプランは、家の正面に階段があって2階が玄関になっているのが特徴。「こういうデザインは、どうしても嫌だという人もいるかもしれない」とちょっと遠慮がち。
確かに最初は、2階から入るということに違和感がありました。でも家族の集まるリビングを通って、プライベートな個室に入るという動線は合理的に見えます。階段も面倒かなと思ったったけど、マンションやアパートに住んでいれば階段は普通だし、道路より上に建つ戸建てなら玄関まで階段を上がるのは珍しくない。
「いますぐ使わない駐車場を確保しながら、そのスペースを無駄にしないように考えた。可動式の扉をつければ、屋外の収納や作業スペースとして使うこともできる」万一、家を貸したり、売ったりという場合、駐車場の有る無しで価格も変わってしまいます。家を資産として見た時に、駐車場をなくすのは不安でしたがこれなら大丈夫です。しかも2階が張り出していて屋根になるので、自転車を置いても雨ざらしにならないのもいい。屋外の作業スペースというも嬉しい。
正面からの見た目もすっきりしています。家の顔となる玄関が駐車場の後ろに隠れてしまうこともありません。むしろ2階への階段が家の個性として感じられて、懸念どころか最大の魅力にさえ思えてきました。
「いかにも斜線で切れました。というような外観にしたくなかったので」と細長い箱を重ねたようなデザイン。垂直水平なラインで斜線制限を巧みに避けています。屋根が水平な陸屋根はデザイン住宅の基本だし、すっきりした見た目がセンスいい。
北側の玄関を入ると、2階はダイニング、真ん中にキッチン、さらにその奥に進むとリビングです。「リビング吹き抜けは2階分あるので、天井まで5m近くあって、他にない、この家の個性になると思います」大きな窓もあって気持ちよさそう。床に寝転んで高い天井を見上げたら、どんな気分になるんだろう。
ダイニングには1階に下りる階段と3階に上がる階段を設けています。3階は、階段を上ったところにワークスペース、両側に2部屋とれるようになっています。「部屋の扉は必要になった時に取り付ければいいと思います」
1階に下りると広くとられた水回り、その南側に寝室、その外には小さな庭もあって、プライベートでほっとする空間です。全体として間取りに無理がなく、懸念事項が見当たりありません。
Fさんの提案は、合理的で日常生活をイメージしやすいプランでした。
●奇抜さと緻密さを合わせ持った、現代の忍者屋敷
最後は、ユニークな作品でメディア掲載も多いNさん。実績を見ると家のデザインはもちろんカッコいい、家具も一緒にセンスよくデザインされていて、その一体感がさらに素晴らしい。
「3階建ての高さで、あえて2階建ての建物を作ります。」天井は4mを超える高さです。約10mに等間隔に柱が立ってチューブ状の構造となっています。「そこに造作家具の延長で人の居場所、モノの居場所を作ります。」バスやトイレ、階段を家具のように仕立てて、必要な場所に配置する。その上部に床材を貼って上下の空間を作り出し、居住空間として使うという。
2階をそれぞれ2層、合計4層にして使う大胆なプラン。いろんな高さの床が存在する。トータルの床面積は広い、空間もダイナミックだ。「どこに居ても空間の広がりを感じます。同時に家族それぞれが居心地のよさを感じる住宅を作ります」
一般的な間取りの概念が通用しない。「模型で確認してみてください。そうしないとわからないから」模型も他の人より大きい1/50。こまかく作り込まれていて、壁を外して構造と配置された造作家具を見ることもできます。実際にうちにあるイスまでミニチュアサイズに作られていて感激しました。
「モノが多いということで、収納はたっぷり用意した。」1階の床半分を占める大きさの箱、その中が収納になっているのです。模型を見ても、どこから入るのかわからない。他にも、どうやって上るのかわからない場所もある「そこはハシゴ、それか、ちょっと離れたこっちの床からジャンプ、ちょっと危ないかな」なんだか忍者屋敷みたいで、ワクワクする。
奇抜なデザインに見えるけど、それを成り立たせるための緻密さを合わせ持っています。模型を様々な方向から眺めたり覗き込んだりすると、Nさんの提案する、家全体を見通せてリラックスできるる場所、逆に隠れることができる、籠って集中できるような場所など、様々な役割を持った「居場所」が絶妙なバランスで配置されているのがわかります。
「考え方に賛同して欲しい、あとは要望にあわせてプランを修正していく」なかなかにおもしろいけど、大胆な案だけにプランのすりあわせに時間がかかりそうだ。でも時間を惜しまないなら、きっといいものになる感じる魅力がある。家を建築家と作る醍醐味も得られるに違いない。
Nさんの提案は大胆かつ緻密、建築家のこだわり満載のプランでした。
●どれも捨てがたい、全部建てたいけれど...
こんな制限のある土地なのに、三者三様の案が出てくるというのは正直、予想をしていませんでした。できるだけ床面積をとってコストパフォーマンス良く建てる工務店のサンプルプランとは、考え方から違います。やはり専門家が、オリジナルで考えるのはレベルが違います。
しかも、プランに対して懸念点をこちらが出すと、その場でプランを修正して見せてくれたり、的確なアドバイスをしてくれた。問題が解決すると安心するし、もっとこんなことできないの? と話が盛り上がります。毎回打ち合わせが楽しくて時間が経つのがあっという間でした。
すべての提案が出そろった段階で、どれが一つに絞らなければなりません。しかし、どの案にも魅力があって捨てがたい。できることなら全ての家を建ててみたい。3案を見比べて、夫婦で悩んだ末、2人目の建築家フルヤさん、TORQUE一級建築士事務所 < http://www.torque2006.com/
> の案に決定しました。
決めたポイントは、家に住んでいる家族の生活が明確にイメージできたことです。他の2人のプランは、建築としての魅力があり家自体に満足しそう、ユニークな家として雑誌に紹介されるかもしれない。そこに住む家族としてセンス良く見えるかもしれない。
それに比べるとフルヤさんの案はオーソドックスな間取りで、もっとも建築家っぽくないプランかもしれません。しかし無理のない間取りで、プランの完成度が高い。大きな修正無しで進められれば、スケジュールの不安も少ない。心配した予算も抑えられています。
フルヤさんの年齢は僕の3歳年上で、ほぼ同年代なので感覚も合いそうです。うちの長男カケルと同じくらいの息子さんもいるということで、生活面でもつっこんだ相談ができそう。提案でお会いして、もっとも親近感を持ちました。
家に持ち帰った模型や図面をじっくり見ていたら、完成されていると思ったプランでも気になるところが出てきました。質問のメールをBoo-Hoo-Woo.comミヤケさん宛に送ります。すぐに返信があり、「早速、フルヤさんお伝えしました。これから調整してより良い家にしていきましょう」これからが家づくりの本番です。
【いしはら・つよし】tsuyoshi@muddler.jp
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GWも家づくりのため、毎日のようにショールームを巡っていました。そしたら「パパは最近家のことばっかりだよね」と息子に言われてちょっと反省。最終日は代々木公園で一緒にサイクリングして楽しみました。これも大事。