買物王子の家づくり[13]費用絞りの知恵絞り
── 石原 強 ──

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スケジュール優先で着工したものの、さらに費用を圧縮する必要があります。どれも欲しいものだけど、限られる予算の中では削っていかなければなりません。同じ機能でもグレードを落としたりメーカーを変えたりすることで、費用を抑える方法を考えます。ここは、経験ある工務店や周りの知恵を借りるのが一番です。



●予算にあわせたフローリング材を選ぶ

今回の打ち合わせは、フルヤさんの事務所で実施。ちょっと狭いけど、サンプルやカタログなどが揃っていて、その場で確認できるのが便利です。費用を落とすところを、ひととおり確認します。

まずは、こだわりのフローリングが対象です。当初は1平米あたり10,000円程度で見積もっていました。これを半額程度におさえたい。面積が広いから、単価を下げると効果が大きい。少しの違いでも10倍になるので影響が大きい。

まずは、木の種類を変更する。当初はナラという木のフローリングを考えていました。これをパイン材など外国産の針葉樹にかえると金額が安いのです。でも見た目に影響します。パイン材は一定間隔に現れる「節」があって、あまり好みではない。節の少ないすっきりした印象のものを選びたい。

次に形状。最近は従来のフローリングの75mmより大きい「幅広」のモノもはやっています。木目もはっきりして見た目がカッコいい。当初は、幅広を使いたいと思っていましたが、床暖房対応のものは、ほとんどなくて値段も高い。部屋が狭いとかえって木目がうるさく感じることもあるとみたいなので、通常の75mm幅に変更しました。

金額から素材やメーカーを選んで、サンプルを並べてもらいました。ちょうど金額におさまるナラ材の無垢フローリングが見つかりました。選んだメーカーは、ニッシンイクスです。
< http://www.nissin-ex.co.jp/
>

なぜ金額が安いのかと聞くと、仕上げが「無塗装」ということ。フローリング材は表面に塗装して、汚れに強く見た目をきれいにしています。しかし無塗装では、木そのままなので、水もしみ込むし、すぐに汚れが付いてしまいます。使う前に表面にワックスで塗装をしなければなりません。入居前に家中の床に四つん這いになってワックスを塗込む作業は、腰が痛くなりそうです。

●リーズナブルでもセンスがよい洗面台

水回りの洗面ボウルや水栓も、リーズナブルなものに変更したい。でも毎日使うものだから、デザインにこだわると、やっぱり外国製のものに軍配があがる。

デザインにこだわった家づくりの本に、サンワカンパニー という会社が紹介されていました。ものは試しと南青山のショールームに家族で訪問。メーカーのショールームとはちょっと趣が違います。床もコンクリートむき出しで、素っ気ないのですが、シンプルな商品を引き立てています。
< http://www.sanwacompany.co.jp/
>

実物をみながら1階と2階の水栓、洗面ボウルを選びました。いくつか候補を出して、フルヤさんに図面に入れてもらって検討します。水栓はデザインにこだわるドイツの高級水洗機器メーカー「グローエ」を選びます。それでも予想よりも安い。見積の7割くらいに抑えることができました。

ほかにも、洗面台の上に設置するミラーやタオルかけのようなインテリア、タイルとかウッドデッキなどの建材など、様々な商品が並んでいます。どれもシンプルで好みです。

ほかにも予算カットに使えるものがあるかもしれないと、帰りに受付で商品のカタログをオーダーします。すると、カタログと一緒に商品が3%オフになる見積依頼シートをもらった。いいものが少しでも安く手に入るのはありがたい。

●シンプルで丈夫なユニットバスに変更

減額のアイデアとしてオオハラさんから提案いただいたのが、ハーフユニットをユニットバスに変更することです。デザインは自由にできなくなってしまうけれど、壁のタイル張りや照明などの工事費用が削減できる。10万円以上の差が見込めるという。納得できるものなら選びたい。

紹介されたのは、「タカラスタンダード」ホーローを得意とするメーカーです。横浜にあるショールームを家族で見学に行きました。
< http://www.takara-standard.co.jp/
>

まず、担当の方に説明を聞きます。ホーローとは、金属板の表面にガラス質のうわ薬を塗って高温で焼き付けたもの。水や湿気、熱にも強いから丈夫で長持ち、キズがつきにくくて掃除もしやすいということです。

「では実際に試してみましょう。」キッチンの油汚れが付いた想定で、ホーローの板に油性マジックで書きます。そのままでも雑巾で拭くとさっときれいになる。そこにおもむろにバーナーを取り出し、キッチンを想定して「炎を当てて煤もついて居る状態を作ります。」それでも拭くとさっと落ちる。これは思ったよりスゴイ。お風呂ならシャワーで流す程度で十分きれになるということです。

ガラスの表面ということでヒビが入ったりしないのか? こちらは重たい鉄の玉をホーローの板に落とす実験です。ガラスなら確実に割れるだろうし、金属でも凹んでしまうだろう。「音が大きいですよ」と言われて、やってみると、部屋中にガチャン! と大きな音が響く。おそるおそる見てみると何事もない。確かに丈夫です。

耐震システムバスと銘打って耐震性も売りにしています。普通は見せない床下の土台が展示されていました。土台は金属のフレーム組まれていて、浴室の重さを分散して支える構造になっているということです。見た目にもしっかりしているし、先日の大震災震でもほとんど被害がなかったそうです。

浴槽の形は、他のメーカーと同様に二種類あります。四角く深いタイプと丸みのある半身浴タイプ。両方とも入ってみましたが、足が伸ばせるのは、やっぱり半身浴タイプです。これは悪くなさそう。

ユニットバスは、なぜか洗い場の蛇口の下に、洗面器を置くカウンターがついています。これが「下側の掃除が面倒」と妻に不評です。デザイン的にもイマイチなので外せないのかと聞いたけど、どうやらダメみたい。

ショールームに飾ってあるもユニットバスは、なんとなく昭和の匂いがする。子供の頃みた懐かしい感じ。こう書くとノスタルジックだけど、理由は壁が花模様だったりするからだろう。こんな所は、とにかくシンプルに徹するに限る。無地の白があるので、それを選ぶ。浴槽も壁もすべて真っ白にしました。

デザインは部分的に気に入らないところもあるけれど、予算の都合で真っ先に外した浴室暖房乾燥機は標準装備です。お風呂にはキッチンほどのこだわりもないし、人に見せるところでもない。金額を抑えられるなら良いと決めました。

●庭の柵をなくしてオープンな家づくり

自宅近くにあるオペラシティアートギャラリーで「家の外の都市の中の家」という展覧会がありました。第12回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展の帰国展で、日本の都市と住宅がテーマになっています。
< http://www.operacity.jp/ag/exh132/j/information.html
>

住宅では有名な3人の建築家の手がけた住宅が1/2スケールで再現されています。中でも西沢立衛さんの「森山邸」は、集合住宅なのに、部屋が敷地内でバラバラに配置されているというユニークなものです。白い箱がランダムに並んでいるような感じ。敷地の境界が塀などで仕切られておらず、各部屋の間は路地になっていて、近所の人が敷地の中を行き来することもあるといいます。

展示を見た後、西沢さんの対談にも参加しました。キーワードとなっているのは「近隣に開かれた住宅」。都市の住宅においても他人の視線を遮断するのではなく、ゆるやかなつながりをつくるような住宅にしたいということでした。

「住宅はもっとオープンでいい」というメッセージに触発されて、ふと考えてみた。庭の柵ってもしかしたらなくても大丈夫かもしれない。南側は細い路地で人の行き来は少ないだろうし、さらに向こうの道路との間には緑があります。柵がなければ、その緑が借景となって本来より広い庭として見えるかもしれません。

フルヤさんにも相談して、庭の柵を作るのは一旦止めることにしました。まずは予算をほかにまわして様子をみようと思いました。入居後に不都合があったら、つけてもらえればいい。庭づくりも住みながらゆっくり取り組むことにしました。

他にも床暖房、外壁、壁紙、タイル、キッチンの仕様詰め、など細かく決めていかなければならないことが山盛りあります。細かいものの積み重ねでも、気がつくと大きく費用が増えることになるので、もっともっと情報と知恵を集める必要がありそうです。

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現在、ちょっとスケジュール遅れながら基礎工事中です。もう家を建て始めているのに、近所に新しい土地が出たりすると気になってしまう。この価格なら買うかな? どんな家が建つかな? と考えて、うちのほうがいいなと思ったり、もっと早く出てくれていたら、考えたかもなあなんて思ったり、複雑な気持ち。