[3174] 愛の真空パック

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《12月25日渋谷区IT邸オープンハウス開催》

■買物王子の家づくり[19]
 完成に向けてラストスパート
 石原 強

■ショート・ストーリーのKUNI[108]
 知り合いかも
 ヤマシタクニコ

■デジアナ逆十字固め...[121]
 愛の真空パック
 上原ゼンジ



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■買物王子の家づくり[19]
完成に向けてラストスパート

石原 強
< https://bn.dgcr.com/archives/20111215140300.html
>
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月末の完成に向けて、工事が急ピッチで進んでいます。工事の進捗が気になるので、週末はもちろん、平日も仕事前に現場に立ち寄って確認します。先週末は日曜日も返上での作業がおこなわれていました。見に行くたびに中の様子が変化して驚きます。

●足繁く現場に通う

大工さんの作業の邪魔にならないように中を見て回ります。家の中は、雨に影響されないので、着々と進みます。断熱材が入った後は、ベニヤが打ち付けられて壁ができました。同時にガスや水道の配管、電気配線も隠されました。それぞれ設置する位置に穴があけられて、配線が接続できるようになっています。

現場で打ち合わせしていたフルヤさんに声をかけられました。「ちょうど電気屋さんが来ているので、リビングのスポットライトの位置を決めてください」。図面と現場を見比べながら取り付け位置を確認。「上下左右、位置は変更できますよ」と言われたけど、イメージ通りだったので、図面どおりでOKしました。

大工さんにスケジュールを聞く「ここまでくると、もう一息だよ。クロス屋さんのスケジュールも決まっているから、今週は日曜日も仕事して壁のボードを貼ってしまうよ」とのこと。ベニヤの上に石膏ボードを貼り、その上に壁紙が貼られるのです。

二階から三階に上がるスチール階段も取り付けられました。デザインは指定したとおり、シンプルでカッコいい。階段がつくと家らしさが増します。これに木製の踏み板をとりつけて、壁と同じ白で塗装して仕上げてもらいます。
< https://bn.dgcr.com/archives/2011/12/15/images/01 >

床のフローリングもどんどん貼られていきます。一昨日搬入されたばかりなのに、二階と三階はもう終わっていました。無塗装のフローリングだったので、大工さんに「フローリングは自分で塗装するんだって? 頑張ってね」と冷やかされます。
< https://bn.dgcr.com/archives/2011/12/15/images/02 >

フルヤさんと、建具の仕上げについても打ち合わせます。扉にはメラミン化粧板を貼って仕上げます。その色を壁紙にあわせて決めます。同じ白でも微妙なバリエーションがあるので、複数のサンプルを比較しながら一番マッチする「白」を指定します。
< https://bn.dgcr.com/archives/2011/12/15/images/03 >

把手はカタログから選びます。通常の凹んでいるものはなんとなく和室を思わせます。家の形と合わせるイメージで、四角い棒が張り付いているような凸状の形が気に入りました。それなのにメーカーに問い合わせると納品まで一か月かかるとのこと。せっかく選んだのに残念ながら選び直しです。

●思うようにいかないこともある

工事中に指定したエアコンの隠蔽配管は、玄関の天井を下げても収まらないことが判明。フルヤさんからいくつか案をいただいたが、どれも配管を隠すために梁が出てしまいます。エアコンの設置場所を壁際まで移動して、通常のダクト穴で外に配管することにしました。

指定の行き違いもありました。玄関ドアの仕様が思ったのと違っています。特注は出来なかったので、既成の色で黒いものを指定した。製品の色が2色のものが運び込まれていた。すぐにフルヤさんに連絡して変更して欲しいとお願いしました。

一階寝室のドアの位置は、大工さんが勘違いしたようです。位置が図面と異なっていました。フルヤさんがチェックして修正を依頼してもらいました。車庫の上のダウンライトの設置位置もちょっとずれていたみたいです。修正されていました。

配管のために下げる予定だった、天井の高さをどうするから相談しました。結論としては、そのままにしました。玄関、ダイニング、リビングと徐々に天井を高くして、より空間の広がりを感じるように演出します。

外壁工事は、天候に左右されます。サイディングが搬入された翌日から一日おきに雨が降ってしまったので、工事が中断してしまいました。予定通りに進まず、スケジュールに遅れが出ています。この遅れが取り戻せるのか心配になります。

ベランダを支えるアングルが納品されました。南側の壁に4本張り出して取り付けられます。鉄工所の職人さんにも「これは丈夫だよ」とお墨付きです。
< https://bn.dgcr.com/archives/2011/12/15/images/04 >

最後になった外階段も無事設置されました。これで、足場や梯子を使わなくても玄関から家に入れるようになりました。
< https://bn.dgcr.com/archives/2011/12/15/images/05 >

●重要だけど面倒な手続き

引き渡しを前にして、様々な手続きがあります。家づくりは楽しいけれど、書類の多い手続きは面倒です。でも完了のためには重要なことです。最後までしっかりやらなければなりません。

支払いのためにローンの手続きを進めます。横浜銀行に伝えて日程調整します。年度末なので登記ができるぎりぎりです。実行とともに登記をする必要があります。登記をする法務局の営業が29日までなので、融資の実行は28日が最終になるそうです。これに間に合うように手続きを進めなければなりません。

不動産の登記には、大きく分けて二種類あります。家や土地の「大きさや場所など(表題部)」「その所有権が誰にあるか(権利部)」を届け出て、登記簿に記載してもらうのです。まずは、土地家屋調査士に「表題登記」を依頼します。これが終わってないとローンの手続きができません。

登記の前に家が完成していなければならないので、建築確認の「検査済証」が必要です。実際は、「ほぼ完成」で証明が取得できるようです。この検査が来週になります。ここまでに申請に必要な書類を渡さなければなりません。

申請には、住民票も必要です。現在の住所でも申請できるようですが、新住所で訂正する必要があるので、少々フライングして新築の建物がある場所に住民票を移してしまいます。スケジュールを逆算したら、週明けすぐに手続きしないと間に合いません。

あわてて新宿区で転出証明をとって、渋谷区役所に向かいます。引っ越しは8年ぶりですし、家族も増えているので戸惑う事も多いです。住民票を移すと、印鑑証明も移動します。引っ越しでは子供の医療証や子供手当の登録も移します。渋谷区役所で半日がかりです。

オオハラさんに紹介いただいた、土地家屋調査士事務所に申請代行の依頼書とともに、住民票と印鑑証明を送付しました。

ローンの手続きの前に、火災保険の申し込みも必要です。35年分をまとめて支払ってしまうことが多いようです。銀行から紹介してもらった代理店から火災保険の案内ももらいました。同時にインターネットの見積サイトからも資料を取り寄せましたが、条件が良かったので決めました。

家の完成まであとわずかになりました。最後まで気を抜かずに、やり切らなければなりません。今月は、仕事の年末進行と平行して、さらに慌ただしい毎日が続きそうです。

【いしはら・つよし】tsuyoshi@muddler.jp
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12月25日のクリスマスに我が家のオープンハウスをやります。Boo-Hoo-Wooさんのサイトに案内があります。家づくりに興味のある方は、是非申し込みください。
< http://boo-hoo-woo.com/housing/events/openhouse/
>

このコラムを読んで、単純に中を覗いてみたいという方は、私宛にメールでご連絡ください。アクセスをご連絡しますので、当日、来ていただければご案内します。

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■ショート・ストーリーのKUNI[108]
知り合いかも

ヤマシタクニコ
< https://bn.dgcr.com/archives/20111215140200.html
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─昼下がり、米山敏男が寝ころんでテレビを見ていると妻が玄関からばたばたとやって来た。
「あなた。お客様ですわ」
「客? だれだ」

─と言う間もなく、もうその客は前にいた。男がふたり。ひとりは頭に青いリボンをつけている。その男があいさつする。
「突然おじゃまして恐縮です。いえ、ひょっとしてこちらの方、町田洋介さんはお知り合いかもと思いまして」

─男の横にはちょっとてれくさそうに、いかにも好青年という感じの男がいる。
町田洋介。町田洋介。敏男は首をひねった。

「いや...記憶がないんですが」
「それはしかたありません。初対面ということもありますので」
「なんだ、そうなのか。ははは」

「申し遅れましたが、私は青いリボン社からまいりました。当社はひと言で言えば、お友達つくりを手助けしている会社でございます」
「青いリボン社なんて知らないが」
「知ってても知らなくても、今はみんな会員になってるそうよ。別に会員登録料もいらないみたいだし。だれかが勝手に手続きしてくれたんじゃないの」
─妻が説明した。

「ふうん」
「で、あなたと町田洋介さんは初対面でも、共通のお友達がいるんですって。ということは知り合いかも? ということになるそうよ」
「ああ、そうなのか。なるほど、友達の友達はみな友達だと、水前寺清子も歌ってたな」
「友達よ泣くんじゃないと森田健作も言ってますわ」

─町田洋介もほっとしたように笑った。青いリボンの男はにこやかに書類を取
りだした。
「おふたりには共通の友人が三人おられます。亀山五郎さん、向山真一さん、吉田晴彦さんです」
「まあ、三人も共通の友人が。すごいじゃない。ねえ、あなた」

「亀山五郎。亀山五郎。亀山五郎。うーん。三回言っても思い出せないが、もう一回言ってみようか。亀山五郎。かめごろ。やっぱり思い出せない。だれだろう」
「私どものデータによりますと、亀山さんと米山さんは同じ職場におられたことがあります。今から13年前の5月から6月にかけて」

「あー、ということはモフモフ商事にいたころか。たった13年前に、一か月も同じ職場にいたのに、なんと忘れっぽいんだ。どうも失礼しました。では町田さんもモフモフ商事にお勤めですか。モフモフ商事も変わったでしょうな」
「いえ、私は亀山五郎さんのその次の次の職場であるカオス印刷会社で知り合っているそうです。隣の部署にいたそうですが、正直あまり記憶が...」
「そうですか。いや、気にすることはありません。記憶になくてもきっと友人に違いありませんよ、ねえ」

─青いリボンの男がうなずき
「まったくそうでございます。こまかいことを気にしていたらお友達はできません」
「で、次の......向山真一さんですか。その人と私はどういう友達になるんでしょう」
「あなた、覚えてらっしゃらないの」
「覚えてないんだよなあ」

「向山さんは米山さんと同じ小学校の同級生でした。ひばり小学校の1年3組。そして、その向山さんは、なんとこちらの町田さんが6年前まで住んでいたマンションの一階にあるコンビニの」
「店長ですか! 知ってます、あの人かあ」
「いえ、客の一人でした」
「知ってるわけないじゃないですか、そんなの」
「いや、そんなことはないでしょう。時々顔を合わせていたはずですから。ねえ」

─青いリボンの男はうなずき
「さようでございます。世の中、何が縁となるかわかりません。真のお友達はどこにいるかわからないのです」
「そうよ、町田さん。遠慮しなくていいのよ」
「はあ」

「じゃあ吉田晴彦さんは。申し訳ないが、この人も記憶がない」
「吉田さんは米山さんが去年、そこの駅前のショッピングセンターでボーイスカウトが赤い羽根共同募金をしていたときに100円を出して羽根をもらった、あの」
「ああ、あのときの箱を持っていた男の子! 吉田さんは子どもだったのか。いやしかし、覚えていない。どんな子だったかなあ」

「いえ、吉田さんはその元締め、もとい、ボーイスカウトの団長でしたが、その場にはいませんでした」
「道理で覚えていないはずだ! わっははは」
「何だか感動してしまいましたわ」
「でも、ぼくは...ぼくはそのショッピングセンターには行ったこともないし、赤い羽根も買ってません。ぼくにはアリバイが」
「町田さん、うちの夫と友達になるのがいやなんですか」
「いえ、まままさか」

「吉田晴彦さんはその募金の日、隣町の歯医者に行って親知らずを抜いてきました。そのとき、歯医者の前を通りかかったのが、なんと町田さんでした」
「無関係じゃないですか!」
「いやいや、これもりっぱなご縁でございます」
「世の中不思議な縁に満ちているものですわねえ」
「まるで神秘だ。そんなときに前を通りかかるなんて偶然とは思えない」
「偶然です!」

「私どもはこういった不思議な縁をお友達つくりに役立てていただくべく、全世界から情報を集め、日夜活動しております。昨今、お友達の数もやはり少ないよりは多いほうが社会的信用も増すというものでございます。米山さまは現在、お友達登録が23人ですが、ご年齢に比してやや少ないかと思われます」

「え、普通はどれくらいなんですか」
「ご職業にもよりますが、数百人〜数千人。万単位の方も珍しくありません」
「えっ」
「あなた、もっとお友達をつくらなくっちゃ」
「いや、これ以上増えると名前を覚えられないし」
「いいじゃないの、覚えなくても」
「歩いててもそこらじゅう友達だらけということになるじゃないか」

「いいじゃないの。友達だらけでも。友達の頭を踏んでいけば、向こう岸に着くわ」
「意味がわからないよ」
─そのとき、青いリボンの男の携帯が鳴った。

「もしもし...はい、私です。ただいま米山邸ですが...ええ? ...ええ? ...そうですか...はあ...」
─携帯をポケットにしまうと男は言った。
「申し訳ありませんが、今日のことはなかったことにしてください」
「ええっ?!」

─青いリボンの男はゴホンと咳払いをひとつして
「当社の運営する会では、実名登録が基本でございます。ハンドルは認めておりません。ですので、たまにそうでない方がおられるとデータがむちゃくちゃになります。たいへん困ります」
「はあ」

「失礼ながら、米山敏男というのはハンドルですね」
「ぎくっ」
「本当の名前はチャーリー・トッドマン」
「な、なぜそれを!」
「チャーリーですって?! まじ!」

「青いリボンの会をみくびらないでください。先ほどからのお話はあなたが米山敏男さんという前提でしておりましたが、こうなっては意味がありません」
「全然似合ってないわ。そんな名前」
「ぼぼぼくの立場はどうなるんです」
─妻はぼうぜん、町田洋介はうろたえた。

「私が知るわけないじゃないですか。とりあえず本部に戻りまして、米山敏男に関するデータは抹消させていただきます。失礼っ」
─男は憮然として出て行った。町田洋介はそそくさと身の回りをかたづけ
「あの、ぼくもこれで失礼します。結局何のつながりもなかったようですし。これは、あの、手みやげとして持ってきましたので、よかったら」

「これは私の好物のかまぼこセット『かまぼこちゃんセット』だ。なんで知っている」
「米山さん、じゃなかったチャーリーさんの買い物履歴はだれでも見ることができますから」

─町田洋介は安物そうなかまぼこのセットを置いて帰っていき、あとには夫婦だけが残った。部屋の中は何と言えばいいのか何とも言いようのない空気が充満していた。

【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
< http://midtan.net/
>
< http://yamashitakuniko.posterous.com/
>

多くの人が感じているように、今年は濃い一年だった。あれも今年だったのか、これも今年だったのかと信じられない気がする。(何かに)ふりまわされそうな中で必死でもがいていたような。ツイッターは情報収集の手段としてはすぐれていると実感できた。

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■デジアナ逆十字固め...[121]
愛の真空パック

上原ゼンジ
< https://bn.dgcr.com/archives/20111215140100.html
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PHOTOGRAPHER HALさんの写真展「Flesh Love」(ギャラリー冬青)を観てきた。同シリーズは、今年の5月にニコンサロンで行われたものも観たが、ニコンサロンでは大判プリントだったのに対し、今回はコンパクトなサイズにプリントして展示を行なっている。同じシリーズでも、サイズの大小で与えるイメージ変わってくるのでなかなか面白い。

「Flesh Love」の撮影はカップルを布団の圧縮袋に入れて空気を抜き、食品の真空パックのようにした状態で行われる。ヌードの場合もあるし、派手な衣装に身を包んでいる場合もある。被写体はある時点から息を留めているので、2〜3回シャッターを切ったら、すぐに袋を開けて解放する、というかなり緊張感のある撮影現場になるとのこと。

この写真の面白いところは、撮影前に服装やポーズなどの打ち合わせはするものの、圧縮することによって変なふうに体が歪み、想定外の状況になってしまうということだ。やっぱり絵コンテを書いてそれをなぞるような写真よりも、偶然の面白さが加わった方が、写真は魅力的になる。またストロボ光がビニールで反射する様子がチープでポップで艶かしい。

同シリーズは写真集にもなっているが、iPad版が出来たということで、帰ってから早速ダウンロードしてみた。このiPad版もなかなかいいです。いい理由はiPadの光沢感のある液晶画面に、作品がマッチしているということ。ビニールのテカリ感は紙に再現するよりも、iPadで観るほうがよりリアルな感じになる。

それに紙は光らないけど、iPadは光るということも大きい。今後ディスプレイの輝度がさらに上がったり、広色域化したり、解像度が上がったりすることを考えれば、ディスプレイで鑑賞した方が面白い写真というのも増えてくるんだろうなと思わせられた。また、この撮影のメイキング映像なども含まれているのでおすすめです。

今回はちょうどHALさんにも会って説明していただけたので、より面白く観ることができた。在廊予定は冬青社のサイトにアップされるので、できたらご本人の説明を聞きながら鑑賞することをおすすめします。

PHOTOGRAPHER HAL「Flesh Love」
会期:12月2日(金)〜12月24日(土)11:00〜19:00 日月祝休
会場:ギャラリー冬青(東京都中野区中央5-18-20 TEL.03-3380-7123)
< http://www.tosei-sha.jp/TOSEI-NEW-HP/html/EXHIBITIONS/j_exhibitions.html
>

◇Photographer's File #9(デジカメWatch/HARUKI)
< http://dc.watch.impress.co.jp/docs/culture/photographer/20111202_495506.html
>

●被災地域のストリートビューが公開

Googleにより、東日本大震災の被災地域のストリートビューが公開された。これはストリートビュー撮影車を使って被災地域を回り、震災の前と後の様子をパノラマ写真によりアーカイブ化し、公開するという試みだ。

◇未来へのキオク
< http://www.miraikioku.com/streetview/
>

私は被災地を訪れていないので、写真や動画でしか被災地の状況に触れていないわけだが、あらためてGoogle Mapでパソコンを操作しながら現地の状況に接してみると、あまりに規模の大きな災害だったことにに驚かされる。

初めにストリートビューで現地のパノラマ写真にアクセスした時は、一見普通の風景にも見えた。しかし、元々家やビルがあった場所に何もなくなり、瓦礫ばかりが積み重ねられている状況に気づくと愕然とさせられた。

そしてその光景が360°つながっているのだから、平面の写真とはまるで臨場感が違う。またすでに道路は開通して車も写っていたりするので日常感もあるのだが、それがかえって恐ろしさを増幅させる。

通常報道写真というのは、撮影者が意図を持って四角いフレームに収めるわけだが、撮影者が自分のイメージに合わせて切り取った非日常的な光景よりも、ストリートビュー車によりオートマティックに撮影されたパノラマ写真の方が、よりリアルに感じさせられる。

震災直後には、海外からたくさんのカメラマンが訪れて震災地の写真を撮っていった。そして、それらの写真が掲載された海外のWEBサイトでは、日本のメディアではあまり見かけないような報道写真が見られた。たぶんあの時期の日本には、世界中の著名報道カメラマン達が集結していたのだろう。

それらの写真を見て、クオリティーの高さにびっくりするとともに、何か違和感を覚えていた。報道カメラマンとしては当たり前のことだと思うが、その場の光を生かし、構図がバッチリ決まった写真はどこかウソ臭く、逆にリアリティーが損なわれているように見えたのだ。

もちろん360°のパノラマ写真によって一瞬を切り取るスチル写真が駆逐されるとは思わないが、閲覧する側が能動的に見たい場所を選び、拡大できる機能というのは非常に魅力的だ。また、とりあえずムービーやパノラマで撮影しておき、後から瞬間や部分を切り取るという手法は一般的になっていくんだろうなと思わせられたのだった。

●尾仲浩二「海町」展

尾仲浩二さんの写真展「海町」がギャラリー街道で開催される。これは尾仲さんが20年前から撮影してきた三陸地方の写真をセレクトした展示。キャビネサイズの写真をは一点10,000円で販売し、売り上げの50%を今回の震災で親をなくした子供たちへの一時金、奨学金「あしなが東日本大地震・津波遺児募金」へ寄付されるとのこと。

会期:12月17日(土)・18(日)・23(金)・24(土)・25日(日)
11:00〜19:00
会場:ギャラリー街道(東京都杉並区成田東5-23-2 いわとうアパートメント2F TEL.080-4404-5232)
< http://www.kaido-onaka.com/
>

●「第15回写真家達によるチャリティー写真展」への参加

私もチャリティー写真展に参加させていただく。こちらは225名の写真家のオリジナル作品を展示、即売するもの。やはり一点一万円で販売されるが、その場で持ち帰りとなるので、興味のある方は早めのご来場をお勧めします。
< http://www.stbears.com/pvj/
>

「第15回写真家達によるチャリティー写真展」
12月16日(金)〜18日(日)10:00〜19:00
富士フイルムフォトサロン・東京(六本木ミッドタウン)
< http://www.fujifilm.co.jp/photosalon/tokyo/s12/111216012.html
>

「写真家達によるチャリティー写真展15 Part.2」
会期延長で、12月21日(水)〜25日(日)10:00〜19:00
フレームマン・ギンザ・ショールーム(東京都中央区銀座5-1 銀座ファイブ2F)
< http://www.frameman.co.jp/ginzasalon.html
>

【うえはらぜんじ】zenji@maminka.com < http://twitter.com/Zenji_Uehara
>
上原ゼンジのWEBサイト
< http://www.zenji.info/
>
Soratama - 宙玉レンズの専門サイト
< http://www.soratama.org/
>
上原ゼンジ写真実験室のFacebookページ
< https://www.facebook.com/zenlabo
>

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■編集後記(12/15)

・伊藤礼「自転車ぎこぎこ」を読む(平凡社、2009)。もってまわった文体が気になったが、そのうち気にならないどころか、なかなか味わい深いと思うようになったのはなぜだ。伊藤先生は60歳過ぎまで肝臓病持ちの半病人だった。医学の進歩で肝臓病から解放されたが、体力は虚弱だった。68歳の時、自宅から勤務先の大学まで12キロを初めて自転車で走ってみたところ、2キロもいかぬうちに音を上げ、筋肉と関節と尻の苦痛で半死半生、形相が変わったボロボロの姿でたどり着いたという。そんな人が10年後の今では一日50キロくらい問題なく走っている。どうすればこんなステキな自転車老人になれたのか、どんな努力や紆余曲折があったのかを知りたくて、先生の自転車エッセイ二冊目に手をのばしたのだ。苦痛なく自転車に乗れるようになるには、多少の足腰の筋肉と尻の皮の厚さが必要だ、そのためにはとにかく走って肉体を鍛錬しなければならぬと、自転車に距離計をセットし、自宅から東西南北5キロの地点を設定し走りまくった。また、16キロ離れた歯科医まで一年間、35回も自転車で通い1,120キロを走破した。先生の自転車術は歯科医通いによって磨かれたのであった。とにかく走る。それしかないようだ。もう走るのをあきらめかけていたわたしだが、こういう体験記を読むと、よしやってみようと思うのであった。先生みたいな自転車があればなあ(しかも高価なのが7台も......)。肝心の自転車紀行はとてもおもしろい。これ自転車文学っていうのか。(柴田)
< http://heibonshatoday.blogspot.com/2009/12/blog-post_03.html
>
今日の平凡社 伊藤礼「自転車ぎこぎこ」
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4582834604/dgcrcom-22/
>
→アマゾンで見る(レビュー4件)

・申請された人のことが思い出せなくてうなっていた。知らない人と繋がるわけにはいかないと気構えていたのに、まわりに「考え過ぎ」と言われ、使い方によるのかもなぁと思ったことが。告知メインなら友達多い方がいいわけだし、断るのって勇気いるし。あとでわかったが、思い出せない人は誰にでも友達申請する人だった。/あるビルに、阪急電鉄の歩みコーナーがあった。写真入りの歴史年表がパネル展示されている。梅田の阪急百貨店は改築中。壊された歴史的建造物の写真を見ては、友人らと、こういうのを壊すなんてもったいない! と憤っていたり、昔の阪急百貨店のまわりには、なーんにもなくてだだっ広くて、よくこんな場所にこれだけ大きな百貨店を作ったなぁと思ったり。友人らは宝塚歌劇ファンで、ファン歴の一番長い友人が、コンコース写真に、柱にある宝塚歌劇の広告(というのだろうか)の一部を見つけた。「こういうのが資料写真として残っているのは嬉しいよね。」と。大きさにして切手程度。さすがだ、まさかこんな場所のチェックまで。しかし私もなかなかだと思ったぜ。「これ○○ちゃん、ちゃうん?」顔は判別がつかないものの、このスタイルとポーズはきっとそうだ。作品やポスターを見たことないのに断言。もう一人の友人が「このポスターって『○○○』じゃないかな」と。すぐさまiPhoneで検索。と、まったく同じ画像が出てきた。8年前のだよ。覚えているあなたって凄い。これ、横尾忠則さんのデザインかなぁ。(hammer.mule)
< http://kageki.hankyu.co.jp/revue/04/05snow/
>
作品「青い鳥を捜して」「タカラヅカ・ドリーム・キングダム」
< http://kageki.hankyu.co.jp/revue/04/05snow/poster.html
>
ポスターはこれ。轟悠さん
< http://rockintakarazuka.blog.shinobi.jp/Category/6/
>
装置も横尾忠則だった
< http://morningmanga.com/blog/zuccazuca/1320075416
>
< http://morningmanga.com/blog/zuccazuca/1320075459
>
なぜか阪急電鉄と小林一三に詳しくなる宝塚ファンたち