デジタルちゃいろ[16]原始人と知恵の実
── browneyes ──

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●写真のワークショップに参加してみた

春先に、山谷を撮り続けている写真家の新納翔氏とひょんなことから知り合ったのだが、ちょうど1テーマを数回で完結するライトな単発ワークショップ計画中という話だったので勢いで参加させて戴いた。

先月で第一弾は終了し、今月は第二弾が開始ということで、繁忙やら何やらで今回は残念ながら見送ろうと思ってたのだが、つべこべ言わずにいいから来いや! というありがたいお声がけも戴いたので、日曜日に第二弾その1にも参加してきました。

□新納翔 website
└< http://j.mp/LtP8CS
>

取り敢えず今回は、第一弾参加を通じて感じたあれこれなど。技術指導寄りというよりは、自分だけでは思い至れずにいた「考え方」を得るよい機会になったので、その辺りを中心に書いていきますね。




●WEBだけで完結させない

デジカメやトイカメラ、はたまたiPhoneなどもあいまって、写真人口はどんどん増えてます。講師の新納氏はフィルム手焼きもデジタルもどちらもやる方なのですが、ワークショップのコンセプトはまさにこの、誰もが写真を撮って、ネット上ではカジュアル、そして積極的に発表するようになったデジタルな時代でありネットの時代、そこで留まらないで敢えてその先のステップに行ってみようよ、というもの。

海外でも実際、ウェブ→電子写真集で完結してる成功例めいた事例も既にあったり、そのスジの人(古くからの写真家とか写真評論業界? なんてのが明確にあるのか、定義されてるのかわかりませんが)以外の見る側の写真の見方も多様になってはいる。

ワタシ如きであってもオンライン限定の活動であれば、第一線には遠く及ばないものの、海外を中心に多少の評価なりリアクションなりもらって、作品を雑誌にちょっと掲載していただいたり、メールインタビューを受けたりなどはあるので、そういったアプローチにフォーカスする、というのも間違った道とは思えなかったり、というのは多少あります。

銀塩・デジ論争同様、新興写真好きが故に出来る発想なのかもしれないけど、それはそれで今後のあり方の可能性としてはゼロとも言えないのかなー、と。

そんなこんなで、今後もずっとプリントが写真をやっていく上での最終形態であり続けるかどうかは、個人的にはわからないのですが、現時点での主流の最終形態のひとつはやはりプリントであろうな、というのは常々思っていたし、デジタルデータとしてのみ存在する自分の作品が、紙というものの上で像を結んだ時にどう見えるのかは、機会があったらやってみたいという思いもずっと持っていたので、まさに好機でありました。

●任意の人に見せるという緊張感

という感じで、この第一弾のワークショップについては、写真の技術そのものについてはすっ飛ばし、とにかく実際に「アウトプット」をしてみる、でした。

プリント自体ももちろんアウトプットだけど、ウェブにポイっと掲載するような、不特定多数への投げっぱなしジャーマンではなく、任意の人(たち)の前で作品を見せ、説明をし、フィードバックをもらう、というのもアウトプット。

集まってのワークショップは実質計3回(撮影・撮影・講評)でしたが、ワークショップ実施前までに、Facebookグループ上でもメンバーが写真をアップしては、ワークショップ生+新納氏含む数名のプロ写真家さんによるプチ(時折ガチ)講評なども行われてました。

普段ほいほいと色々なウェブサービスに写真をアップしてますが、オンラインとはいえ、ワークショップの場(の延長線上)に写真を出す、という段から早々に緊張しました。なんというか、アウェイのフィールドで「何故これを選んだ?」からはじまり、辛口とは限らないものの、普段は問われない各種ツッコミに唸ってみたり、考えさせられたり。

先に書いた通りで、オンライン中心のアプローチだけ、というのも否定しない派ではあるものの、単純に好きな所に好きなように掲載だけして「見たかったら見てね、お好きにどうぞ!」というあまりに無責任な掲載スタイルというのは、確かにこういう「出すことへの緊張感」を得にくいものなのだな、というのが今回の大きな気づきかもしれません。

カジュアルなだけに覚悟しきらず、甘いセレクションで何でも出せてしまう。基本「見る相手」の想定という概念が曖昧なので、今までとことん自分だけの(その時々の)フィーリング依存だったのだなぁ、と実感しました。オンラインは出した後も、フィードバックは基本、好意的なリアクション。逆に興味がなければ無反応でスルー。要するに、他者から緊張感を得る体験は圧倒的に少ない。

出すにあたってのこの感覚の違いが体感出来たのは、ワークショップそのもの以前のフェーズではあったものの、今後オンラインで写真を出していくにあたっても自分自身の意識の中で多少締まりが出てきそうな気がします。

●アウトプットへ

撮影会の後のセレクション〜プリントについては基本、各自作業。お題は、最低サイズと最低枚数、あとは紙の選定も自分なりにすること、のみ。ワタシはプリンタの入手は当面しないつもりでいるので、オンラインでいちおう納得できそうなラボを探してお願いしました。枚数がそれなりにあったので、お財布的に紙に拘る余裕がありませんでしたが、今回はとにかく出力したものを手にする、という心づもりで。

本職的にも通常の写真の現像的にも、Photoshopによるデジタルデータの扱いはそれなりに知識も経験もあると自負していたものの、それでもまだまだプリント前提のデータの扱いについてはヌケがあったコトに気づかされて愕然としたり(出稿前だったのでよい勉強になりました)、あまり時間がなかったので事前に色校する余裕もなく、覚悟を決めて一発えいや! で。

意図してたのよりほんの心持ち暗い仕上がりかな? という気もしましたが、仕上がりは概ね問題なし。今回は六つ切りでプリントしてもらったので、手にした自分の写真にもう少し感慨を持つかと思ってたものの、思ってたより緊張感が持続しすぎてたせいか、それどころではありませんでした(笑)。

講評当日。「紙の選択で如何に印象が変化するか」を見たり、別の写真家さんの写真も交えつつ、各ワークショップ生の写真を見続けました。長丁場! こんなに沢山写真ばかりを見るという機会もそうそうありませんね、最後は皆、かなりぐったり(笑)。

若干多めの枚数縛りというのも、要するに自分だけの目で選んだベストのみではなく、人の意見や何かを聞いた後、広めに持ってきた中からその場でベストを決めて行こうという趣旨。下記は当日の様子。

□日雇い労働者の街、山谷の現状。写真集作成プロジェクト(新納翔)ワークショップ開催 - READYFOR?
└< http://j.mp/KwlsSk
>
 一枚目と三枚目がちょうどワタシの写真の講評中です!

※新納氏、今クラウド・ファンディングによる写真集制作の支援者公募もしてますので、気になる方は是非。

ワタシは以前FBグループに写真を出した際に貰った厳し目の意見などから、今回もめいっぱい叩かれる覚悟でいたのに、意外によい評価を戴いてしまったが故に舞い上がってしまい、その場での絞込みセレクションを自分らしくないものにしてしまったのが未だに心残り。そこで崩れちゃったら、それまでの作業は一体何だったんだ......。

□Toyosu絞込みセレクションではなくプリントして当日持っていった全作品
└< http://j.mp/KvUxrz
>

●知恵の実

配偶者に言わせると、ワークショップ第一弾終了後、しばらくぼんやりして見えていたようで、まさかあれしきのコトで抜け殻......? と自分が情けなくも思いましたが、色々な意味で自分の中では予想外に色々なコトを考える大きな機会となっていたようです。

なんというか、まだ消化しきれてる気がしないので、うまく言えないのですが、平たく乱暴に言うと、原始人が知恵の実食べちゃって知恵熱出してる......的な感じですかね。

どんな形になるのかは定まってないですが、今後も......というか、これから更に写真と深く関わっていきたいとは思ってます。自分らしく、ね。これまではホントに手放しで撮るのが楽しくてただ撮ってた。それから何がどう変化する|させる|させたいのか、その辺も含めてカメラと、カメラの結んだ像と共に語っていきたいと思ってます。

......そして修行はまだ続く。

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■今回のどこかの国の音楽

□Gunga Sain Dhol Party
└<
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すっかり麻痺してしまって、この動画が一般の人にどの程度のどん引き度合いなのかよくわからないのですが、この太鼓はパキスタンのSufi音楽につきもののDholといいます。彼らはこの太鼓に合わせてスーフィーダンス(トルコの旋回舞踊みたいな優雅なものではなくもっと怪しげw)をし、皆で陶酔の境地に至り、神に近づくのです。

個人的には映画音楽よりイマドキ音楽よりこの辺りが最もストライクゾーンな訳ですが、このGunga SainというDholプレイヤーはつい最近偶然知り、パワフルだしイケメンだし、いいじゃない、と動画や情報を掘り下げて行ったら、この方(3人いますが、一番大柄で長髪がGunga Sain氏)、なんと生まれつき聾唖で振動のみでDholを操るDhol叩きなのだそうです。

パキスタン国内に留まらず、主にヨーロッパや北米などにも公演に招かれて行ってるようです。日本にも来てくれたらいいのに......と思いつつ、この動画(より更に怪しい動画)のように、現地で見る熱には代え難いものがあるんだろうな、そもそも女子じゃ現地のこういう場にすら入れませんが......。

フランスの番組で彼のドキュメンタリーが作られていたようで、音声はウルドゥ、字幕フレンチで詳細を知るにはハードル高すぎるのですが、パキスタン国内の聾唖者を取り巻く事情なども含めて垣間見ることが出来ます。

□Gunga Sain The Documentary Part 1 - YouTube (〜Part3まで)
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【browneyes】 dc@browneyes.in

日常スナップ撮り続けてます。アパレル屋→本屋→キャスティング屋→ウェブ屋(←いまここ)しつつなんでも屋。
□立ち寄り先一覧 < http://start.io/browneyes
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□デジタルちゃいろ:今回のどこかの国の音楽プレイリストまとめ
└< http://j.mp/xA0gHF
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ワークショップ第二弾その1からの帰宅直後から、肩をぶっ壊してしまったようです。珍しく三脚まで背負って歩いてたので疲労? 実は左肩、右肩と、それぞれ半年〜一年スパンで痛めて、去年の春くらいでやっと治ったばかり。もう痛いのはイヤだ。というか、第二弾その2でカメラを一日じゅう振り回せるのかが気がかり。

実は前回、ワタシ自分の歳を偽った文を書いてしまって、気づいてたのに訂正しないまま記事にしてしまった。昭和に社会人はやってませんでした、ごめんなさい! ごめんとか言った所で困るのはワタシだけ......か。