はじめまして。伊敷政英(いしきまさひで)と申します。
このたび、ロービジョンの子供たちにも使いやすくて、学校へ持っていきたくなるようなノートKIMINOTE(きみのて)を作るプロジェクトを始めました。今回はこのプロジェクトについてご紹介いたします。
このたび、ロービジョンの子供たちにも使いやすくて、学校へ持っていきたくなるようなノートKIMINOTE(きみのて)を作るプロジェクトを始めました。今回はこのプロジェクトについてご紹介いたします。
●ことの発端
ある日、小学校一年生のロービジョンの女の子のお母さんから、「ねえ、ロービジョン向けのノートでかわいいやつってないの?」と聞かれました。市販されているノートの罫線はよく見えなくて、ロービジョン者向けのノートを薦めてみたけれど、「かわいくない。学校に持っていきたくない」とのこと。
みんなと違うノートを持っていくだけでも、彼女にとってはイヤなことなんだろうな。同じロービジョンとして気持ちはよくわかる。そして、それがかわいくないとしたら……。
既存のロービジョン者向けノートがかわいいかどうかはともかく、バリエーションが圧倒的に少ない。選択肢がとても限られている。
これが本質的な課題と感じて、それなら学校へ持っていきたくなるような、かわいい・かっこいいノートを作って、ノートの選択肢を増やそうと決めました。
●ロービジョンとは
メガネやコンタクトレンズで矯正しても十分な視力を得られず、日常生活や学校・職場などで不便を感じる状態を「ロービジョン」と呼んでいます。
「視覚障害」というと、まったく目が見えない全盲を想像する方が多いのですが、実は日本の視覚障害者の6割以上は、少し視力があるロービジョンといわれています。
私自身もロービジョンです。現在の視力は、右目はコンタクトレンズで矯正して0.02、左目は光がわかる程度なので、ほとんど使っていません。普段、外を歩くときは白杖(はくじょう)を持っています。
またパソコンやタブレットなどは、画面を拡大したり、色を反転する機能を利用して操作しています。このテキストも、Windowsの「拡大鏡」というソフトを使って書いています。
・ロービジョンの人の見え方
ロービジョンの人の見え方には個人差がとても大きく、また一人のロービジョン者でも、天気や時間、室内の照明などによって見え方が変化します。代表的な見え方としては、以下の4つがあります。
像がぼやける
まぶしい、暗い
視野が狭い
視野の一部が欠けている(中心が見えない、など)
・ロービジョンの子供たちは、こんな道具を使ってノートをとっている
ロービジョンの子供たちは、視力や見え方に応じて、様々な工夫をして学校や自宅でノートを取っています。代表的なものをご紹介します。
ルーペ:視力や見え方に応じて、倍率やLEDライトの有無、グリップの種類を選んでつかっています。
拡大読書器:ルーペではよく見えないときや、細かい作業を行いたいときなどには拡大読書器を使っています。書見台の上に本や書類を置くと、その上にあるモニター(写真は14インチの家庭用テレビです)に文字が拡大表示されます。写真のように色を反転したり、まっすぐ一行読めるように、余分なところを隠す機能などもあります。僕自身、現在この拡大読書器を使っています。
書見台つきの机:ロービジョンの場合、目を近づけて本やノートを見ます。すると姿勢が悪くなるので、このような天板が傾く机を使います。僕も小学生のころはこの机を使っていました。
●ロービジョンの子供のノートについて
このような工夫をしても、次のような不便があります。
不便1 :ノートの罫線が見えずにはみ出したり、曲がってしまう
不便2 :ロービジョン者向けに罫線の太いノートはありますが、シンプルな大学ノートのようなデザインのものしかなく、小学生の子供たちにも使ってもらえるような、かわいい・かっこいいデザインのノートはありません。
そこで、罫線が見やすくてデザインもかわいい・かっこいい、学校へ持っていきたくなるようなノート「KIMINOTE(きみのて)」を作りたいと考えました。
●「KIMINOTE(きみのて)」制作プロジェクト
KIMINOTE制作プロジェクトでは、ロービジョンの子供たちにも見やすいような、太い罫線と十分な大きさのマス目のノートをデザインします。また表紙にも、かわいいイラストやきれいな写真を載せます。
そして完成したKIMINOTEを、全国の盲学校や弱視学級へ届けます。子供たちや保護者の皆さん、先生方からいただいたフィードバックをもとに、さらに改善を続けていきます。
●選択肢を増やしたい
東急ハンズやロフトに行けば、文房具だけを扱うフロアがあって、どのノートを使うか迷うくらいの選択肢があります。その「どれにしようかな」がとても楽しかったりする。
でも一方で、ロービジョンの子供たちが使えるノートはほんの1、2種類。この「選択肢の幅の差」を何とかしたい。
選べることは豊かなこと。ロービジョンの子供たちに、ノートの選択肢を増やしたい。そして将来、自らの手で世界を広げ、選択肢を増やしていけるようになってほしい。
ノートを開く、世界を開く、KIMINOTEで。
KIMINOTE制作プロジェクトの詳細や最新情報は、以下のページでご覧いただけます。
< https://readyfor.jp/projects/kiminote
>
趣旨にご賛同いただき、 KIMINOTE制作プロジェクトへのご協力をお願いいたします。
【伊敷政英(いしきまさひで)】
1977年東京生まれ。大学卒業後、ITコンサル会社勤務を経て、2010年8月よりフリーのウェブアクセシビリティコンサルタントとして活動中。自らもロービジョン。
Cocktailz(カクテルズ)
http://cocktailz.jp/
Twitter : @cocktailzjp
Facebook : Masahide Ishiki
ある日、小学校一年生のロービジョンの女の子のお母さんから、「ねえ、ロービジョン向けのノートでかわいいやつってないの?」と聞かれました。市販されているノートの罫線はよく見えなくて、ロービジョン者向けのノートを薦めてみたけれど、「かわいくない。学校に持っていきたくない」とのこと。
みんなと違うノートを持っていくだけでも、彼女にとってはイヤなことなんだろうな。同じロービジョンとして気持ちはよくわかる。そして、それがかわいくないとしたら……。
既存のロービジョン者向けノートがかわいいかどうかはともかく、バリエーションが圧倒的に少ない。選択肢がとても限られている。
これが本質的な課題と感じて、それなら学校へ持っていきたくなるような、かわいい・かっこいいノートを作って、ノートの選択肢を増やそうと決めました。
●ロービジョンとは
メガネやコンタクトレンズで矯正しても十分な視力を得られず、日常生活や学校・職場などで不便を感じる状態を「ロービジョン」と呼んでいます。
「視覚障害」というと、まったく目が見えない全盲を想像する方が多いのですが、実は日本の視覚障害者の6割以上は、少し視力があるロービジョンといわれています。
私自身もロービジョンです。現在の視力は、右目はコンタクトレンズで矯正して0.02、左目は光がわかる程度なので、ほとんど使っていません。普段、外を歩くときは白杖(はくじょう)を持っています。
またパソコンやタブレットなどは、画面を拡大したり、色を反転する機能を利用して操作しています。このテキストも、Windowsの「拡大鏡」というソフトを使って書いています。
・ロービジョンの人の見え方
ロービジョンの人の見え方には個人差がとても大きく、また一人のロービジョン者でも、天気や時間、室内の照明などによって見え方が変化します。代表的な見え方としては、以下の4つがあります。
像がぼやける
まぶしい、暗い
視野が狭い
視野の一部が欠けている(中心が見えない、など)
・ロービジョンの子供たちは、こんな道具を使ってノートをとっている
ロービジョンの子供たちは、視力や見え方に応じて、様々な工夫をして学校や自宅でノートを取っています。代表的なものをご紹介します。
ルーペ:視力や見え方に応じて、倍率やLEDライトの有無、グリップの種類を選んでつかっています。
拡大読書器:ルーペではよく見えないときや、細かい作業を行いたいときなどには拡大読書器を使っています。書見台の上に本や書類を置くと、その上にあるモニター(写真は14インチの家庭用テレビです)に文字が拡大表示されます。写真のように色を反転したり、まっすぐ一行読めるように、余分なところを隠す機能などもあります。僕自身、現在この拡大読書器を使っています。
書見台つきの机:ロービジョンの場合、目を近づけて本やノートを見ます。すると姿勢が悪くなるので、このような天板が傾く机を使います。僕も小学生のころはこの机を使っていました。
●ロービジョンの子供のノートについて
このような工夫をしても、次のような不便があります。
不便1 :ノートの罫線が見えずにはみ出したり、曲がってしまう
不便2 :ロービジョン者向けに罫線の太いノートはありますが、シンプルな大学ノートのようなデザインのものしかなく、小学生の子供たちにも使ってもらえるような、かわいい・かっこいいデザインのノートはありません。
そこで、罫線が見やすくてデザインもかわいい・かっこいい、学校へ持っていきたくなるようなノート「KIMINOTE(きみのて)」を作りたいと考えました。
●「KIMINOTE(きみのて)」制作プロジェクト
KIMINOTE制作プロジェクトでは、ロービジョンの子供たちにも見やすいような、太い罫線と十分な大きさのマス目のノートをデザインします。また表紙にも、かわいいイラストやきれいな写真を載せます。
そして完成したKIMINOTEを、全国の盲学校や弱視学級へ届けます。子供たちや保護者の皆さん、先生方からいただいたフィードバックをもとに、さらに改善を続けていきます。
●選択肢を増やしたい
東急ハンズやロフトに行けば、文房具だけを扱うフロアがあって、どのノートを使うか迷うくらいの選択肢があります。その「どれにしようかな」がとても楽しかったりする。
でも一方で、ロービジョンの子供たちが使えるノートはほんの1、2種類。この「選択肢の幅の差」を何とかしたい。
選べることは豊かなこと。ロービジョンの子供たちに、ノートの選択肢を増やしたい。そして将来、自らの手で世界を広げ、選択肢を増やしていけるようになってほしい。
ノートを開く、世界を開く、KIMINOTEで。
KIMINOTE制作プロジェクトの詳細や最新情報は、以下のページでご覧いただけます。
< https://readyfor.jp/projects/kiminote
>
趣旨にご賛同いただき、 KIMINOTE制作プロジェクトへのご協力をお願いいたします。
【伊敷政英(いしきまさひで)】
1977年東京生まれ。大学卒業後、ITコンサル会社勤務を経て、2010年8月よりフリーのウェブアクセシビリティコンサルタントとして活動中。自らもロービジョン。
Cocktailz(カクテルズ)
http://cocktailz.jp/
Twitter : @cocktailzjp
Facebook : Masahide Ishiki