未来のカメラとしてのiPhone
── 福間晴耕 ──

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一応、建築写真の仕事もしている身として、時々写真のトレンドというか手法を調べているのだが、技術にしろ手法にせよ動きがますます速くなっていることに驚かされる。


ることに驚かされる。

以前流行ったHDRや、本城直季氏の作品で有名なフェイクミニチュアフォトなどがわかりやすいが、斬新な表現手段が出ると直ぐに、Flickrなどの写真共有サイトで同じ表現を使った作品がフォロワーによって大量に発表され、それからしばらくすると、すぐにそれを自動的に作るツールが出てくるのだ。

写真が出始めたときや、蓄音機が出たときのインパクトも相当なものだったと思うが、今はそれを遙かに超えて誰もが制作者側の手法を使える時代になっているのを痛感する。

その中でもiPhone用のカメラアプリが面白い。顔自動認識機能を持つものや、
< http://www.moongift.jp/2009/05/picture_me/
>

微速度撮影機能を提供するもの、
< http://touchlab.jp/2009/07/iphone-timelapse/
>

料理の写真を美味しそうに変換するもの、
トイカメラ風の写真が撮れるものなど、
< http://touchlab.jp/2008/10/iphone-toydigi-260/
>

およそ思いつきそうな機能は、一通りあるようだ。

しかも最近ではiPhoneのカメラの構造上、再現は難しいと思われたレンズのボケ足さえ擬似的にではあるが再現できるものまで出て来ている。

こうしたことが可能なのも、iPhoneのカメラがソフトから制御でき、かつネットワークとも繋がっていることによる。

実は最近のデジカメも実際はほとんどソフトによって動いている。シャッターや露出のコントロールはもちろん、それ以前のCCDからどうやってデーターを取り出し、圧縮しそれを画像にするかといったフィルムに当たる部分さえ、大部分はソフトによって決まるのだ。

だが、普通のカメラはこうしたプログラムがいじれないため、ユーザーがコントロールするのは難しい。もちろんデーターをRAWなどの形で取り出して現像ソフトでいじることでだいぶ自由度は増すものの、カメラ本体を制御することは無理だろう。実はこうした機能をすべてコントロールできる、オープンソースのカメラも存在するのだが、これはこれで敷居が高い。

iPhoneの場合、ソフトのアクセスに対する敷居はそれなりに高くても、ユーザー数が多く(iTunes Storeで販売できるなどの特典により)参入意欲を高めていることにより、こうしたツールを作る人を増やすことに成功している。

iPhoneのカメラ機能はまだそれほど高くはないものの、案外次世代のカメラの方向性を形作るきっかけになるのではないだろうか。

                 ■

ここまで書いたことは、じつは5年前にBlogに掲載したものだが、時代は更に先に行っている。

アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した「シュガーマン 奇跡に愛された男」では、当時の雰囲気を出すためにカットによって"Super8"という8ミリカメラを使って撮影を行っていたのだが、途中資金難でiPhoneアプリの8ミリカメラシミュレータを使って撮ったところ、品質は本物の8ミリとほとんど違いはなかったという。

しかも、iPhoneのカメラもアプリもまだ進歩が続いている。今では360度フルパノラマ映像も撮影できるし、
< http://www.appbank.net/2014/08/20/iphone-application/877855.php
>

オプションパーツをつければサーモグラフィ映像でさえ安価で撮影できる。
< http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1410/01/news011.html
>

問題は制作者側である。もはや人の作風をまねたものでは、こうしたツール相手に生き残ることはできそうもない。かといって、オリジナリティーを生かしたり新しい表現方法を見つけるというのは、口で言うほど簡単なことではないからだ。

こうしたアプリや携帯画像はどう写真の仕事を変えていくのだろう。興味深くもあり、恐ろしくもある。

【福間晴耕/デザイナー】
フリーランスのCG及びテクニカルライター/フォトグラファー/Webデザイナー
< http://fukuma.way-nifty.com/
>

HOBBY:Computerによるアニメーションと絵描き、写真(主にモノクローム)を撮ることと見ること(あと暗室作業も好きです)。おいしい酒(主に日本酒)を飲みおいしい食事をすること。もう仕事ではなくなったのでインテリアを見たりするのも好きかもしれない。