おかだの光画部トーク[131]錯視
── 岡田陽一 ──

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数日前に世界的にバズっていたある写真。FacebookやTwitterを使っている人は、一度は目にしたのではないだろうか。

< http://swiked.tumblr.com/post/112073818575/guys-please-help-me-is-this-dress-white-and
>

あなたは、ドレスの色「白と金」か「黒と青」どっちに見えましたか?

実際のドレスの色は「黒と青」なのだが、
< https://flic.kr/p/r9RdjJ
>

実物がどっちかが問題なのではなく、「黒と青」のドレスが「白と金」に見えることで、世界中がバズっている。

実際にどう見ても「黒と青」だと思っている人の横で、同じ画面を見た家族や友人が「白と金」って言うと、「えっ? 何言ってるの?」ってびっくりするわけ。

人間の目(実際は脳)は、結構いい加減で、そのファジーなところがコンピューターとは違い凄いところ。

例えば、この文章を一瞬見ただけで意味を理解できるはず。




「こにんちわ。おげきんすでか? きょうはてともさむいすでね。はるはもすぐうやってまきすよ。」

でも、よく見ると、正しい日本語にはなっていない。つまり、人間の脳は、一文字ずつしっかりと読んで意味を理解しているのではなく、だいたいの形として認識し、過去の記憶と照らし合わせて、それが何なのかを理解している。本を素早く斜め読みできるのは、それくらいファジーな機能を持っているからだ。

色に話を戻せば、例えば、トンネル内のオレンジ色の照明の下で走っている白い車は、どう見てもオレンジ色に見えるが、トンネルに入る前に白い車だと認識しているので、脳内ではオレンジの照明の色を省いた状態で見ていて、白い車が走っていると理解する。

デジカメのセンサーや情報処理に最新のコンピューターが使われていても、オレンジ色の光を読み取ったら、それはオレンジ色。あらかじめトンネル内の照明下でホワイトバランスをセットしてはじめて、オレンジ色がキャンセルされる。

人間の脳は、そのファジーなところがとても高機能だが、それが故にけっこう騙されやすい。このドレスの件もそうだが、錯視の一種「色の恒常性」によるもの。

先ほどのトンネル内の照明の例では、前提条件としてオレンジ色の光が白い車に当たっていると脳が認識できているので、見た目オレンジ色でも、本来は白だと理解できるのだが、その前提がない場合は、脳は混乱する。

見たままで判断するか、それ以外に見えている情報を加えて判断するか、過去の経験から似た状況を想定して答えを出そうとする。

それで、人によって「黒と青」に見えたり「白と金」に見えたりする。わたしの場合「白と金」見えてしばらくすると「黒と青」そして、目をそらすとまた「白と金」というように、どちらかに見えるというよりは、ふらふら行ったり来たりして見える。

たぶん、わたしの脳は「実際に写真が撮影された時のホワイトバランスを知らないので、経験上、どちらもありうると」認識していてどちらにも見えるのかもしれない。

色に関しての錯視として有名なのが、「チェッカーシャドー錯視」。
< http://bcs.mit.edu/people/adelson.html
>

チェックの台のAとBがまったく同じ色(正確にはグレーなので色ではないが、同じ濃度)なのだが、脳は過去に経験して記憶している情報を優先し「Bは円柱の陰になっているのでAとは違う」と騙されてしまう。

「嘘だ。違うでしょ」と思う人は、この画像のAとBの部分をカラーピッカーで拾ってみるか、印刷してAとBを切り取って並べてみみれば同じだと驚くはずだ。

このような錯視を使った効果は、商品のパッケージやスーパーのディスプレイなどでも使われている。中でも「色の同化」はよく見られるので、言われると「なるほど!」と思う人も多いはず。

例えば、みかんを赤い色のネットに入れて売っていたり、枝豆やオクラを濃いグリーンのネットに入れて売っているのを目にしたことがあると思う。これは、実際の色をより鮮やかに、新鮮に見せるために目の錯覚を利用している。
< http://goo.gl/fQazEc
>

デザイナーやフォトグラファーは、感覚的に身についているセオリーなので、自然にやっていることだと思うが、そうでない人も、こういうことを理解していれば、洋服を選ぶ時のカラーコディネートなどにも応用できるし、逆に安易に騙されない脳になるかもしれない。

錯視にはもっとさまざまなものがあって、何故そう見えるのかがまだ解明されていないものも多いそうだ。それだけ、人間の脳はまだ未知の部分が多いのだろう。

< http://bit.ly/1Ea7kiC
>
この画像がグルグル動いて見えたり、

< http://bit.ly/1Ea7dU7
>
この画像が、中心から膨張して見えたり、

< http://bit.ly/1Ea7Aht
>
この画像が、うねうね動いて見えたりするから脳は不思議だ。

錯視についてもっと詳しく調べて見たい人はこちら、北岡明佳教授のページが面白い。
< http://www.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/
>


【岡田陽一/株式会社ふわっと 代表取締役 ディレクター+フォトグラファー】
< mailto:okada@fuwhat.com > <Twitter:http://twitter.com/okada41
>

2015年、マンスリーで開催中の「CSS Nite in KOBE」。3月のVol.7は20日(金)に開催。

[リモートワークでも「ちゃんとWeb」するコミュニケーション&ディレクション術〜オフィスを持たない制作会社が取り組む、満足度の高いプロジェクト管理]と題し、たにぐちまことさん(H2O Space.)に3時間お話いただきます。
< http://cssnite-kobe.jp/vol7/
>

また、前回紹介した、杉本真樹さんと立ち上げた「Apple User Group KOBE」のイベント、「第1回 AUGM in KOBE(アップルユーザーグループミーティング in 神戸)」を3月29日(日)に開催します。
< http://augkobe.com/entry-6.html
>

既に参加申込みも開始しています。アップル好き、Mac好き、iPhone好きのみなさん是非ご参加ください。来週アップルのイベントが開催された後のイベントなので、ゲストのITジャーナリスト林信行さんのキーノートで色々と興味深い話が聞けるかもしれませんよ。