そんなわけで、一人暮らしを始めたとき最初に買ったグラスがDURALEXのグラスだった。しかし、強化ガラス製なのに何年か使っていると一個また一個と割れていく。何のことはない結局それは偽物だったのだ。
しかも、たちが悪いことにグラスの底にFranceと書いてある(本物はDURALEXのロゴ有り)。その偽DURALEXがとうとう割れてなくなってしまったので、ようやく本物のDURALEXを買ってきた。今度はパチもんをつかまないよう、ググって本物を売ってそうな所から買ったのは言うまでもない(日本ではF.O.B COOPが正式に取り扱っている)。
使ってみると、たかがグラスでもはっきりと使い勝手が違うのには驚いた。だいたいガラスのコップは、最初はきれいでも使っていると表面に微細な傷が付くのか、だんだんと薄汚れてきたりするのだが、これは強度が違うのか洗っても表面がつるつるでいつまでも水を弾く感じが良い。
それにしても、たかがコップでもパチものがあったり、使い勝手にはっきりと違いがあるのには驚かされる。コップの使い勝手などどれも同じかと思うかも知れないが、実はこれが違っていたのだ。
まあ半分は気のせいかもしれないので割り引いて聞いて欲しいが、率直なところ以前よりも汚れにくく、洗いやすく、そして透明度が高い気がしてならない。
なんでも、ガラスの表面は目に見えないものの、グリフィスフロー(Griffith flow)と呼ばれる微細な傷があり、これがガラスが割れる原因になっているという。
さらに、ガラスコップの大半は金型にガラスを吹き込んで製造するが、当然、金型の精度が高ければ高いほど表面がなめらかになる。この表面にある微細な傷の量が、こうした違いの原因なのかも知れない。
そう言えば、どうも安いガラス製品はこの金型をけちっているのか、以前100円ショップで買ってきたコップなどは、最初から微妙に曇っていて、磨いても磨いてもきれいにならなかった。これも最初から金型自体の表面が荒れていて、最初から細かい傷があると思えばよく分かる。
ブランドものと言っても、DURALEXはカフェなどを想定した日常品で、値段など知れている。それでこれだけ使い勝手が違うなら、これくらいはちゃんとしたものを買うべきだろう。
その後、長年使っていて気づいたが、このコップは見た目もきれいだし、何より強化ガラス製で割れにくく、表面も傷が付きにくいという良いとこづくしのコップではあるのだが、一つ重大な問題があることに気がついた。
それは、ある日突然、爆発するように割れてしまうのだ。これは「DURALEX 爆発」でググると直ぐに出てくるので、けっこう有名な話らしい。
これはDURALEXの全面強化ガラス特有の問題で、要はガラス全体にテンションをかけて、ちょうど膨らんだ風船のように強度を持たせているので(正確に言うとちょっと違うが)、割れる時には一気にそのテンションが放出されて、全体が爆発するように粉々になってしまうのである。
このことは知識としては知っていたものの、まあ落として割るよりいいかと思っていたのだが、問題はある日突然何もしてなくても爆発する点にある。多分、少しづつ見えない傷が表面に付いてきて、ある日それがテンションに耐え切れなくなって割れるのだろうが、正直言って、何もしてない時に割れるのは心臓に悪い。
そんなわけで、長年愛用してきたが、今回でDURALEXを使うのは止めることにした。後から知ったことだが、ガラスは水に濡らしてそのまま拭かずに乾かすと、ガラス内部のナトリウムイオンが溶け出して表面を少しづつ侵食していくらしい。
これがいわゆる「ガラスの水やけ」と呼ばれる現象で、ガラスの表面に出来る洗っても落ちない白く濁った汚れは、これが原因になっているそうだ。
振り返ってみれば、自分のグラスの使い方は洗ったまま拭かないでシンクに積み重ねて放置しているという、最もガラスが傷つきやすい状態を繰り返していたわけで、これではさすがのDURALEXでも長くは持たなかったのは仕方がなかったのかもしれない。
確かに今使っている普通のガラスコップも、あっという間に表面が傷だらけになっているので、今後はもう少し使い方に気をつけようと思っている。
【福間晴耕/デザイナー】
フリーランスのCG及びテクニカルライター/フォトグラファー/Webデザイナー
http://fukuma.way-nifty.com/
HOBBY:Computerによるアニメーションと絵描き、写真(主にモノクローム)を撮ることと見ること(あと暗室作業も好きです)。おいしい酒(主に日本酒)を飲みおいしい食事をすること。もう仕事ではなくなったので、インテリアを見たりするのも好きかもしれない。