デジクリの原稿に何を書こうかと思って考えてみて、この記事が掲載される日は、東日本大震災から5年目にあたることに気がついた。
喉元過ぎれば熱さを忘れるではないが、震災後に揃え防災製品がまだ使えるか確認したり、非常時の連絡手段や避難経路を再確認しても悪くない。
この前ちょっと防災について話す機会があったのだが、多くの人が震災後に準備した防災の備えも、今ではすっかり忘れて何もしていないようだった。
そう思って自分の過去ログを調べてみるとタイムリーな事に2015年01月23日のデジクリの記事で、ちゃんと防災用品についての記事を書いているではないか。
https://bn.dgcr.com/archives/20150123140000.html
そんな訳で今更付け足すことはなく、その時の記事を貼っておけばいいのだが、それではページが埋まらないので、それを補足するものはないか調べてみた。
先ずは以前に紹介した防災製品だが、さすがに一年前とくらべても真新しいものはない。ただし、東京都から配布された「東京防災」という本が非常に役に立つので、それをお勧めに追加したい。
この本はいくつかの書店で販売されている他に、オンライン版であれば無料で読むことが出来る。詳しくはリンク先を参照してほしい。
http://www.bousai.metro.tokyo.jp/1002147/index.html
そして、日常の注意では以前にBlogに書いていたのを思い出したので、この機会に紹介しよう。
ひとつ目は、最新の住宅は多くの物が電化されているので、停電があると電気製品以外も軒並み止まってしまうという問題だ。特に厄介なのは、停電が終わっても多くの電気製品のタイマーが初期化されてしまい、いちいち再設定して回る羽目になってしまうことである。
そして停電で止まってしまうものの中には、電気製品ばかりでなくガスもトイレも最近は電気でコントロールしているので、これらにも注意が必要だ。もちろんトイレなどは、非常用に手動で流すレバーがついてはいるものの、隠し扉の中にあるので日頃から知ってないと見つけるのは難しい。
またお風呂やシャワーに至っては、湯沸かし器とは別にポンプや栓を電気で動かしているために、電気が止まればアウトである。
ガス栓の多くは、地震で止まってしまうと安全確認して再セットしないと再び使えるようにならないので、是非とも今のうちに再セットの方法を調べてみることをお勧めする。
また高層住宅の多くでは、さらに高層階に水を送るためにポンプをつかっているので、停電時には水道までもが止まってしまう。災害に強いとされる最新の住宅だが、電気が止まってしまうと電気以外の多くの機能が止まってしまうことは意識しておいた方がいいだろう。
そしてもう一つの問題は、高層建築に必ず付いているエレベーターの問題だ。シンドラー社製のエレベーターで、死亡事故が問題になったのを覚えている人もいると思うが、実は住宅設備の中ではエレベーターの故障率は意外に高い。
以前にSAFETY JAPANで「エレベーターに今日も誰かが閉じ込められている」というタイトルで扱われているが、その件数は一日に25〜30件。一年間では約一万件ものペースだというのである。
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/ba/54/
もちろんその大半は、短時間閉じこめられるといった小さな事故ではあるものの、そのうちのいくつかは機械の故障が生じており、放っておけば深刻な事故につながるものだった。
また、これらは平時の時の数値である。大規模な災害などでが生じた場合、この数値は何百倍にもふくれあがる。事実、2006年8月14日におきた首都圏大停電では、70件以上も人が閉じこめられる事故が発生し、停電の混乱もあって救出が遅くなったケースも多発した(ちなみに東日本大震災では200件)。
幸いこのときは停電だけですんだからよかったものの、地震などでは同時に火災も発生する。そうなれば、どのような惨状になったかは想像するまでもないだろう。
皮肉なことに、これでも日本のエレベーターメンテナンスは、世界一コストをかけているという
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20080930/172143/
そのため、逆に高層住宅では極力エレベーターを減らして、住戸を押し込むのがディベロッパーの腕の見せ所になっている有様なのだが、かえってそれがエレベーターの依存度を下げて、非常時の安全性を高めているのはまさに皮肉な話である。
【福間晴耕/デザイナー】
フリーランスのCG及びテクニカルライター/フォトグラファー/Webデザイナー
http://fukuma.way-nifty.com/
HOBBY:Computerによるアニメーションと絵描き、写真(主にモノクローム)を撮ることと見ること(あと暗室作業も好きです)。おいしい酒(主に日本酒)を飲みおいしい食事をすること。もう仕事ではなくなったので、インテリアを見たりするのも好きかもしれない。