晴耕雨読[24]著作権の非親告罪化の恐怖
── 福間晴耕 ──

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少し前に話題になっていたTPP参加の陰で、アニメーションや漫画の二次創作、そして表現の自由自体に大きな規制がかかる危険性があったのを知っているだろうか。

TPPの中にある著作権の非親告罪化によって、これまでは被害者(著作権者等)だけが著作権侵害に対して告訴出来たのが、第三者や警察が独自に判断して告発・捜査出来るようになるのだが、実はこれには大きな問題点があるのだ。

その問題点とは、海賊版だけでなくパロディやファンが描いたカットや私的な作品までも非親告罪化することによって、「告発マニアが訴えたり、警察が勝手に動いて逮捕される」危険性が出て来たというものだ。

別にこれは極端な話をしているのではなく、同じような法改正が行われた韓国において、ファン同士の抗争から互いを違反申告するという地獄絵図が起きているように、日本でも起こり得る事だった。

もしそうなったら、59万人もの参加者をほこる世界最大規模の同人誌即売会でもあるコミックマーケットを始めとした、日本の創作活動やファン活動は大混乱になって、パロディやファン活動は踏み潰されていたかも知れない。




そもそも政治家は、コミックマーケットなど全然知らなかった。だからこそ、海賊版を潰す為に善意も悪意もなく、海外の交渉で非親告罪を受け入れて著作権は強化される事になったのだ。

こうした政治家に対して、粘り強く説得しロビイングしてくれた、多くの人たちの努力によってこのような問題点が理解され、最終的には安倍総理の口からも「TPPの際には二次創作の萎縮なきように」と答弁があったおかげで、こうした危機は免れたのだった。

こうした危機を救ってくれたのは、もちろん出版業界や漫画協会の二次創作への理解が大きかった事があるが、その中でも漫画家の赤松健さんと山田太郎議員の働きが大きかった事を知ってほしい。

彼らの働きかけが中心になって出版業界や漫画協会がまとまり、国会では議員たちへのロビイングと重要な答弁を引き出す事に成功したのだ。

だが、この山田太郎議員が今、ピンチだという。7月10日投票の参議院議員選挙で当選しないと次がないのだが、以前の参加母体である「日本を元気にする会」を離党し、次の参加団体を巡るゴタゴタもあって、この選挙ではかなり当選が危うい状態なのである。

一難去ったとはいえ、アニメ・漫画だけでなく表現自体も今後規制される危険は続いている。山田太郎氏のような議員はまだまだ必要なのだ。


【福間晴耕/デザイナー】

フリーランスのCG及びテクニカルライター/フォトグラファー/Webデザイナー
http://fukuma.way-nifty.com/


HOBBY:Computerによるアニメーションと絵描き、写真(主にモノクローム)を撮ることと見ること(あと暗室作業も好きです)。おいしい酒(主に日本酒)を飲みおいしい食事をすること。もう仕事ではなくなったので、インテリアを見たりするのも好きかもしれない。