[4319] ロンドンでmanga

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《実写一発撮りは不自由だなあ》

■ローマでMANGA[107]
 ロンドンでmanga
 midori

■グラフィック薄氷大魔王[515]
 「セルフィービデオの撮影」他、小ネタ集
 吉井 宏



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■ローマでMANGA[106]
ロンドンでmanga

midori
https://bn.dgcr.com/archives/20170405110200.html

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ローマ在、マンガ学校で講師をしているMidoriです。私の周辺のマンガ事情を通して、特にmangaとの融合、イタリア人のmangaとの関わりなどを柱におしゃべりしていきます。

●ロンドンのエレナ

なんで「ロンドンでmanga」なのかと言うと、ロンドンに遊びに来ているからなのだ。ヨーロッパ内の二都市間の移動は、飛行機で約2時間だからかなりお手軽だ。もっとも、ローコスト飛行機を使うと、使用空港が都市から離れているので、地上移動時間を含めると5時間くらいになってしまうけど。

なんでロンドンに遊びに来ているかというと、20年来の友人エレナが7年前からロンドンに住んでいて、いつか訪ねて見たいと思っており、今回様々な環境が整って可能になったからなのだ。

エレナはナポリ出身で、母娘ほどの年齢差がある。当然、娘はエレナだ。若者の失業率40%のイタリアでは、仕事を得るのが難しい。大学卒業後、色々探したけど見つからず、イタリア脱出を決行したのでした。

当時はイギリスもEUだったしね。ここでエレナはベビーシッターから始まって、様々な仕事をした後、大学の美術史の助手のような仕事を今はしている。どうにか生活できる程度の定収入があるという。

30代のイタリア人というと、日本のマンガ、アニメを見て育った世代で、エレナもそのせいで漫画家になりたいという夢を持っていた。高校生だったエレナが、作品の講評を求めて来て付き合いが始まった。

ただ、周りからmangaなど仕事にならないとさんざん言われて、一時あきらめていた。それがここ数年、やっぱり好きだからやめられない、と描き始めた。

ロンドンでmanga好きを集めてグループを作り、イベントに参加。manga風似顔絵を描きます、とネットで商売。友達の結婚やイベントで本人の半生をmangaにしてプレゼントしている。

2004年スマトラ沖大地震と津波の後、mangaグループにインドネシア出身者がいたこともあって、被害にあった子供達が笑顔を取り戻すためにお絵描き教室を開く。そのための資金集めて、「家」をテーマにしたmangaの本を作って売る。こうして、mangaを描く機会を積極的に作って行った。

さらには、サイレント・マンガ・オーディションに参加することを決めて、せっせと作品を作っていった。
http://www.manga-audition.com/


このオーディションには四回ほど参加して、佳作にもひっかからないが、腕は確実に上達して来ている。

「上達するための描き方がわかった。もっと若い時からやっていれば、今はもっともっと上手くなっていたはずなのに」とくやしがっている。

他に、若い男の子原作のニンジャ風mangaの作画(これをイタリアの出版社に持ち込むつもりでいる)と、ロンドンに技術を習いに来た「長州ファイブ」のストーリーを企画して構想、資料集め、ネームまで進んだ。

これは、タダで作業するより報酬があったほうがモチベーションも上がるし、公にできる機会があったほうがいい、と考えを改めた結果、ロンドンの日本協会と日本文化の教授と話をつけて準備金をもらい、出版社とも話をつけてある。

準備金は本当に準備金で、エレナの利益にはなっていないが、マイナスにはならない。

この二作が終わったら、温めている企画があって、それに集中するとの事。

エレナはナポリ出身だから、ナポリ風ピッツァは、もう血となり肉となっている。日本人とラーメンの関係と言ったらいいだろうか。しばらく食べないと無性に食べたくなるのだ。

ナポリ風というか、ナポリ人にとっては、周りがちょっと盛り上がった香ばしい生地に、熟したトマト水牛モッツァレラをのせたものがピッツァであって、他の地方の薄べったいものは邪道なのである。

「ローマ風ピッツァ」とか「フィレンツェ風ピッツァ」とか呼ぶべきであって、ナポリのピッツァは冠をつけずに「ピッツァ」と呼んでいいものなのだ。

だから、そのピッツァを題材にする。こちらも同時にピッツァの歴史とか、生地に使う小麦粉の種類とか資料集めをしている。

自分が好きなものは心がこもるから、いいものになるんじゃないかな。たっぷりと情報も含んで。これは日本で出したいと目論んでいる。

「ナポリ風」ピッツァは日本でも注目されて、ナポリ・ピッツァを謳ったピッツェリアが増えているご時世だから、上手く出版社にあたればいけるかも。

●ロンドンで日本の漫画古本を買う

イギリスには約63000人、イタリアには約12000人の邦人が住んでいる。ロンドンには36000人、ローマは1200人程度。都市の規模も違うし、これだけの日本人がいるのだから、日本の物の流通も大きい。しかも、cool japanはここでもcoolだ。

すると、日本書籍の古本屋さんなんていうものがあったりするのだ。エレナに連れられて、重要訪問場所の一つとしてSohoにあるデラックス・クリーニングの看板を掲げた(まま)の古本屋さんへ行ってきた。セクシーショップがあったりする界隈で、昔の貸本屋を思わせる佇まいだ。

http://uklondonblog.com/150310archives/1021469823.html


好奇心で見るだけ、と思っていたけど「あすなろ白書(柴門ふみ、全3巻)」、「うどんの女(えすとえむ、全1巻)」、「この世界の片隅に(こうの史代、全3巻)」を買ってしまった。

日本の古本屋だから日本語版だ。古本屋だから著者の利益にならないのでごめんね。でも古本屋さんと私の利益になった。

そのほか、主に食料品が充実しているジャパン・センター、小ぢんまりしてるけど、manga新刊を含めた書籍が充実したJPBookも見学した。ここではいい子にして見るだけで、店の邪魔をするに留まった。

●ハリポタ博物館で感激

mangaとは直接関係ない話題だけど、書かざるを得ないはなし。

電車を乗り継いでワーナー・ブラザース、ハリーポッター・メーキングという、博物館と呼びたい場所に行ってきた。

https://www.wbstudiotour.co.uk/


ハリポタの映画撮影に使ったセットを展示してある。行った三日前に森が追加され、二か月ほど前に駅が追加され、その二点はエレナも見てないというので、ついてきてもらうのに悪いな〜という気持ちがちょっと癒された。

もう、年がいがないとか言われてもいい。感激でした!

ホグワズ(学校)の食堂から始まり、ハリー達の寝室、魔法使い用の店が並ぶディアゴンアレイ、駅、森……撮影に使ったセットだから臨場感がある。まず食堂に入った時に、鳥肌がたったことを告白しておきます。

臨場感のあるセットより、さらに感激したのはメーキングのコーナー。各建物や道具の設計図、紙による模型、怪物達のメイクのためのスケッチ。ハグリットが、一部はこうした着ぐるみと、モーターとコンピュータ制御の被り物で撮影されてたとは!

館内のコースで最後に見るのは、ホグワズのミニチュア。これも実際に撮影に使用されたもの。ものすごく精巧に作られていて、設計者をはじめ制作に関わった人達の真摯さみたいなものが伝わってきて、心が気持ちよくざわついた。それを感激というのか。

ショップにつながる魔法の杖の店には、何千という、一個一個手作りの箱が棚に納められ、箱の一つ一つに手書きでスタッフの名前が全員分書かれている。こういう配慮でスタッフの気持ちが一つになって、結果として作品に反映されるのだ。

ロンドンへ行く機会があったら是非とも一度行って見てくださいな。


【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】midorigo@mac.com

ロンドンのmanga店の事を書こうと決めていて、4日に原稿提出のところ、1日からのロンドン行きを待っていた。夕食の後に書こうと目論んでいたら、連日二万歩近い移動でクタクタ。来ない原稿を待つ編集部を心配させてしまいました。ごめんなさい。


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■グラフィック薄氷大魔王[515]
「セルフィービデオの撮影」他、小ネタ集

吉井 宏
https://bn.dgcr.com/archives/20170405110100.html

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●セルフィービデオの撮影

ある仕事でプレゼンテーションに使う自己紹介ビデオが必要と言われ、撮影した。数十秒の短いものだけど、これがもうめちゃくちゃ大変で、結局朝から夕方までかかった。前日に床屋に行ったし。

「スマホで簡単に撮ってね」って言われてたので、iPhoneでサクッと撮るつもりだったんだけど、考えてみりゃ三脚にiPhoneは取り付けられないのだった。

しかたないのでデジ一眼を三脚に取り付けたが高さが足りない。プリンタの台を引きずってきて、三脚を載せて高さをかせいだ。

画角を決めると背景が非常にさびしい。壁に追加で数枚プリントして貼ったり、大型フィギュアをトランクルームから持ってきたり。

Cintiq 27を立ててMODO画面にキャラクターを表示させたり。せっかくなので回転アニメーションを設定して、ぐるぐる回してみたり。

何度か撮影した後で、白いシャツのレフ板効果で、アゴの下の照り返しでめちゃくちゃ太って見えるのに気づいたり。しかたないので、青いシャツに着替えたり。

いろんなものを取っ替え引っ替えしてるから、撮影範囲外の机や床の上は散らかってグチャグチャだし。

原稿は大きくプリントして、カメラの下に貼り付けた。練習を兼ねた撮影を何度も繰り返すうちに、変更したり省略したり訂正が増えてきたので、原稿を書き直してプリントしたり。

撮影中、噛んでしまったりつっかえたり。声が枯れたりひっくり返ったり。結局、20テイク以上本番を撮影して、最後のいちばんマシなやつを採用。

もうこれ以上やりたくないw 不要な部分をQuickTime7で削除して完成。
http://www.yoshii.com/dgcr/yoshii_selfiemovie

思ったのは、俳優やテレビタレントって大変だなあってw セリフ覚えて噛まずにしゃべるだけでもスゴいわ。

ほとんど満点なのに一か所だけ噛んだり、動作を間違えたとき思ったこと。

映像なしで楽器の演奏や歌だったら、パンチイン/パンチアウト(というか切り貼り)できるし、CGキャラクターのアニメーションならキーを打ち直したりできるのに〜! 実写一発撮りは不自由だなあ。

むしろ、自分をCGキャラを作ってキー打って動かすほうが楽だわ。

●突然、板タブが苦手になる現象

数日間、板タブintuosで描くのが非常に調子良くて、「こりゃ液タブ不要だわ。やっぱ板タブのみで環境を作り直そう」とか思ってたのに。朝からしばらく液タブを使って、板タブに戻ったらぜんぜん描けなくなってたw

いつものことだけど、何だろうなこの現象。

板タブの手の動きと画面の対応というかサイズ感が、何日か続けて作業するうちに固まってくるのに、液タブを使った瞬間にリセットされて、全部消え去る感じ。

こういうときの対処法はある。ボールペン芯のインキングペンで、紙と画面を見くらべながらしばらく描いてると、画面サイズの感覚が戻ってくる。

それでも、時間がかかるし苦痛。板タブだけで全部やるには液タブ断ちしないといけないかもしれない。または逆に液タブをメインにするか。

●「線画自動着色サービス」

先日の「線画→写真っぽく変換」とは別のすごいサービス。線画をアップロードすると自動でそれなりに自然に着色してくれる。
http://qiita.com/taizan/items/7119e16064cc11500f32


やってみた。上がおまかせ着色、下は色指定してから自動着色。そこそこいい感じに仕上がる。
http://www.yoshii.com/dgcr/jidouchakushoku-01

使いものになるケースは限られてるかもしれないけど、色に悩んだとき自動着色して参考にしたり、大ざっぱに自動着色してから手動で仕上げてもいいかも。着色に適当な適度に複雑な線画を探してちゃんと試したい。

●スワロフスキー「Hoot the Owl」のデザインをしました

僕がデザインしたLovlotsシリーズのフクロウ「Hoot the Owl」の3種が先月末に発売されました。

SWAROVSKI http://bit.ly/2o0GMOr

日本語サイト http://bit.ly/2oOpgKg


5年くらい前、近くにできたSWAROVSKIショップを覗いたとき、クリスタルのフィギュア、それもヒップホップというかストリート系みたいなクマがあった。

自分には関係ない世界と思ってたけど、そのクマみたいな作家性の強いものだったら、興味アリアリ。ぜひやってみたい! とか思ったのでした。

後で調べたらBo Bearというシリーズで、SWAROVSKI社内デザイナー
Peter Heideggerの作。
http://bit.ly/2oyYVAI


数年後、たまたまSWAROVSKIから声がかかって、コンペに参加することになるとは夢にも思わなかった〜。店頭に並ぶのがめちゃくちゃうれしいです。


【吉井 宏/イラストレーター】
HP  http://www.yoshii.com

Blog http://yoshii-blog.blogspot.com/


♪ちゅ〜るちゅ〜るチャオちゅ〜る。CMで猫がペロペロなめてるものがおいしそうだなあ! 何味だろ? イチゴ味? バニラ味? 食べてみたい。商品サイトを見てみたら、まぐろ味、かつお味、とりささみ&いか味って、なんだやっぱ猫向けなのか。つまらんw

・ショップジャパンのキャラクター「WOWくん」
https://shopjapan.com/wow_kun/
>
・パリの老舗百貨店Printemps 150周年記念マスコット「ROSEちゃん」
http://departmentstoreparis.printemps.com/news/w/150ans-41500


・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii


・rinkakの3Dプリント作品ショップ
https://www.rinkak.com/jp/shop/hiroshiyoshii



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編集後記(04/05)

●ピーター・ナヴァロ「米中もし戦わば 戦争の地政学」を読んだ(2016/文藝春秋)。問題「宇宙軍事力におけるアメリカの優位を、中国がどう見ているかを選べ」 1)アメリカ最大の軍事的強み 2)アメリカの最も明白な軍事的弱点 3)1と2の両方 わたしは2じゃないかと思った。

1991年の第一次湾岸戦争で、宇宙という究極の高みから戦場を見下ろす能力と「情報優位」により、アメリカ側が300人未満の戦死者に対しイラク側の死傷者は10万人を超えた。人工衛星の軍事利用によりアメリカ軍は世界最強になった。しかし、人工衛星ネットワークに過度に依存することの弱点が生まれた。

その弱点を突いて、アメリカをそこから追い落とそうとするのが中国軍である。冷戦時代の米ソは互いの衛星システムには手出しをしない、常時監視しあうという暗黙の了解があったが、現在の中国はその暗黙の了解に関心がない。

中国は宇宙を平和な地球外共有地としてではなく、単に「情報化戦争」の新戦場と考えている。宇宙を最終兵器化しようとしている。いざ実戦となると、この戦略的高地を確保した方が確実に勝利するからだ。中国はいま、アメリカの宇宙ネットワークと張り合うという目標に着々と近づいている。

中国はアメリカから移転された衛星ビジネスにより、いつの間にか宇宙計画で凄まじい実力をつけてしまった。中国は商業衛星の打ち上げ請負では世界でトップクラスの実力を持つに至り、打ち上を通じて衛星技術の秘密情報を盗み出すことに成功。商業衛星の打ち上げ続行で、コスト面でも優位に立っている。

中国はいま複雑な偵察・監視・気象観測衛星ネットワークを構築中だ。30基の静止衛星と非静止衛星で全世界をカバーする。そのカメラはGPS並みの精度を目指す。中国軍は戦略論で、最先端宇宙兵器の使用を詳細に検討している。中国は人工衛星ネットワークに核弾頭を配備するかもしれない。

筆者によれば、「今後数十年のスパンで見て最も危険なのは、中国が人工衛星兵器を開発することではないかもしれない。さしあたってはそれよりも、中国がアメリカの衛星ネットワークの無力化を計画していることのほうが危険かもしれない」。無力化は簡単にいえば、ハードキル(衛星を直接攻撃)とソフトキル(通信妨害や衛星にめくらましを仕掛けるなど)のふたつに分類できる。

中国がアメリカの軍事衛星を無力化したときが、世界の終末になるかもしれない。その瞬間、アメリカは安全保障上、中国が核による第一撃を仕掛けてくると考えざるを得ない。アメリカ大統領は先制核攻撃以外の選択肢はないと考えるかもしれない。おそろしい未来である。地球市民(笑)は、核戦争になる前に中国が経済的破綻によって亡国するのを望むべきではないのか。 (柴田)

ピーター・ナヴァロ「米中もし戦わば 戦争の地政学」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01NBASROF/dgcrcom-22/



●「I'm so Lucky」がいいな〜。

ティファール続き。そしてさらに読み進めると「ロック解除状態の取っ手に衝撃を与えて外す!」とあった。

「部品を叩くことで、衝撃を与えて固着部分をはがすことにより、ボルト類を外しやすくする知恵」「なんともアナログな方法ですが、これ、かなり効果大なんですよ」と。

こっち先でしょう! ということで、ロック解除ボタンを押しながら、数回叩いたら外れたよ。いやっほうっ!

原因は、食べ物の汚れの付着と、洗浄によってグリスが分解・除去されてしまったことが挙げられていた。

毎回使用後に軽く洗っていたわ。お鍋につけたまま放置して自然乾燥させたこともあるわ。前回使ってから一か月ぐらい経ってたわ。続く。(hammer.mule)

取っ手の取れるティファールの取っ手が取れない時に外す方法
https://www.haruru29.net/blog/remove-t-fal-handle-method/