《しかも構図までまったく同じ!》
■わが逃走[210]
冬の尾道の巻 その2
齋藤 浩
■もじもじトーク[78]
皆既月食、観ましたか?
関口浩之
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■わが逃走[210]
冬の尾道の巻 その2
齋藤 浩
https://bn.dgcr.com/archives/20180201110200.html
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尾道カメラ散歩の続きを書きます。
二日目も好天に恵まれました。毎度のことながら、私はとくに目的地を定めずにこの町を歩こうとすると、つい山の手の往復(だいたい三軒屋町から東久保町)をしてしまうのです。
というのも、複雑な細い路地が迷路のように入り組んだ土地なので歩く度に新鮮だし、迷子にもなれるし、同じ道でも午前と午後とでは光の当たり方がまったく違うので別の風景のようだし、東から西に向かう景色とその逆とでは、これもまったく違って見える。
なので飽きることなく行ったり来たりしちゃうのです。
しかし、なんとなく好きな道というのもあって、ぼーっとしているといつも同じコースを歩いてしまう。
そうすると、つい以前撮影したものと同じものをまた撮ってしまう、なんてことになるのです。
しかも構図までまったく同じ! なんてのもあってけっこう驚きます。
こうなると意識的に同じ場所に行って、異なるアプローチで全く違う写真が撮れないものか、と考えたりもするのですが、その場に立つと嬉しいやら懐かしいやらで、“戦略”なんぞすっかり忘れて、また同じような写真を量産してしまう。
尾道散歩を始めて10年になるから、さらにあと10年も通うと、定点観測としての価値が生まれたりして。
とか考えると、よくわからない使命感が芽生えてきて、明日への活力に繋がる。ような気がする。
○波板コンポジション
この町にはわりとこういった壁が多い。必然から生まれた質感や色彩の違いが、結果的に壁面をリズミカルに構成しているというかなんというか、そういった壁だ。
尾道の散歩は、現代美術の屋外展示を鑑賞しているような感覚に近い。
○板と陰影
波板に限らず、ベニヤ等においても同様。立てかけっぷりというか、絶妙な角度の斜め具合が見事、とつい感嘆のため息が。
ファインダーで日常を切り取ることで、詠み人知らずの芸術が発見できる、尾道散歩はクリエイティビティを刺激するゲームのような側面がある。
○二次元と三次元のはざま
このコースは、南側の斜面にびっしりと立ち並んだ家々の間を縫うように進むので、地面や壁に落ちる影につい見入ってしまうことも多々ある。これは家と家の間なのだが、二軒をつなぐ二つの線の正体を確認し忘れたことが心残り。
○空と屋根
雨の予報が出ても、たとえば5分も雨宿りすれば晴れることが多い。そうしたとき、木も家もクレーンも、コントラストが美しいのだ。
○屋根を下に見る
尾道は坂の町だから、路地を歩いていると右側は屋根、左側は縁の下ということが多い。この屋根は過去に何度も撮っているが、よほど好きとみえて、今回も撮っていた。
○ささえる
ブロック塀を裏からささえる棒とでっぱり。地味な仕事を何十年もつとめているかと思うと、なんだかうれしいし、ありがたい。
崖っぷちの道沿いのブロック塀をささえるという課題に対し、果たしてこの構造が最適解なのかとか、そもそもここにブロック塀が必要なのかとか、そんなことはもはやどうでもいいのだ。
○足元を見る
どこを歩いても階段だが、どれひとつとして同じものは存在しない。
オリジナルの地形を保っていることや、既成建材を使っていないことも、変化に富んだ町歩きを楽しめる要因となっている。
私の育った土地のように、曲がりくねった道を真っすぐにしたり、起伏のある地形を真っ平らにするなんざ愚の骨頂。
海を埋めてハワイまで陸続きになれば気軽に行けて便利、とか富士山を平に削れば登らずに山頂に行けて便利とか。ともすれば、本気でそう思っているとしか思えないようなことが進められている。
10年前の風景が存在しなくなるということは、親子で故郷を共有できないことを意味し、それはその土地にとって重大な損失となるはずだ。って思うよ。
○手すり
機能が味わいに。味気ないステンレスは何年経っても味気ないが、この風合いは芸術レベルだなあ。
球体の微妙なゆがみや錆と艶のコントラストなど、無作為だからこそ成立するストイックさがある。
○階段交差点
こういった次元の狭間みたいな場所が無数にある。上っても下りても、見上げても見下ろしてもすべて表情が違う。
「立体は四方向から見て、少なくとも三方向が面白くないとダメ」と高校時代の彫刻の先生が言っていたが、そう考えるとこの町自体が超彫刻と言えるのではなかろうか。
○瓦屋根
昨年もまったく同じ構図で撮っていた。この位置から、このように町を見下ろすことがよほど好きなんだなあと改めて思う。『転校生』の階段からの風景。
そうそう、春から月刊誌の表紙を担当することになりました。ちょうどこのあたりに立っていたとき電話がかかってきまして、久々のイラストの依頼だったので、やたら嬉しかったのです。
私のイラストと尾道の風景とでは“ミテクレ”はまったく違いますが、見えない部分に隠し味となって、階段や屋根瓦や陰影の記憶が活かされていると思っています。
なので、尾道カメラ散歩は仕事をする上で必要な行為と(オレが勝手に)認定し、これからもことあるごとに通うことにしよう! と思ったのでした。
【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/
1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられ
ないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィ
ックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。
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■もじもじトーク[78]
皆既月食、観ましたか?
関口浩之
https://bn.dgcr.com/archives/20180201110100.html
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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。
昨夜は3年ぶりの皆既月食でしたね。みなさん、ご覧になりましたか?
ご覧になった方も、ご覧になってない方も、素敵な皆既月食の写真をご覧ください。じゃーん!
http://bit.ly/2nuKoqd
関東地方の天気予報は曇天だったので、天体観測はあきらめてました。21時過ぎに帰宅して、ベランダから東の空を見上げてみると、あれっ、お月さまが見えるじゃありませんか!
しかも、お月さまが、すでに半分ぐらい地球の影に入って、欠けている状態ですし……。
ベランダ天体観測おじさんとしては、完全に油断してました(笑)
皆既月食が始まる21時51分までに撮影準備できればいいじゃん、ってノリで、今回はあまり気合いは入れず、望遠鏡とカメラを15分ぐらいでセッティングしました。
そして、皆既月食が始まる10分前から、パシャパシャと50枚ぐらい撮影して、そのうち5枚を掲載しました。
●なぜ、皆既月食のお月さまは赤いの?
最後の写真、赤色できれいですよね! 皆既月食のお月さまの色を、赤胴色(しゃくどういろ)とも表現します。
皆既月食のお月さまは、地球の影にすっぽり入っているので、本当は、真っ暗のはずです。
赤くなる理由は、太陽の光が地球の大気を通過する際、青い光は外側に反射するけど、赤い光は内側に屈折して、地球の影に入っているお月様を赤く照らしているからなんです。
太陽光の青色は波長が短いけど、赤色は波長が長いので、空気の粒に影響されずに、大気に入り込んで、内側に回りこんで、真っ暗なはずのお月さまを赤く照らしているのです
太陽と地球(と大気)と月を、紙に書いてみると理解しやすいと思います。
●スーパー・ブルー・ブラッドムーン?
今回の天体ショーを米航空宇宙局(NASA)は「スーパー・ブルー・ブラッドムーン(Super Blue Blood Moon)」と呼んでいます。
「スーパームーン」とは、お月さまが、地球に近づいている際、大きく見えるからです。月は楕円軌道で地球を周回しているため、地球から月までの距離は、約35万7000kmから40万6000kmまで変化しています。
近点の満月は、遠点のものよりも、最大で14%大きく、30%明るいそうです。今回のお月さまは、比較的、近点に近い距離のようです。
月って、思っていたより近いんですね。地球一周は約4万kmなので、地球の約10周分の距離です。でも、近くはないか……(笑)
そして、満月が同じ月に2度訪れることを、「ブルームーン」と呼んでいます。月が青くなるわけではありません。平均で3年ごとに、そのような現象が起きるようです。
つまり、月初1日と月末31日に満月が観られる確率は低いので、特殊な月と言えます。
更に、皆既月食は赤い色になるので、「スーパー・ブルー・ブラッドムーン(Super Blue Blood Moon)」が完成したわけです。今回の皆既月食は奇跡がいくつも重なった、素敵な天体ショーだったのです。
銀河系や宇宙全体のことを想像すると、楽しいけど、わけが分からなくなります。だけど、一番身近な宇宙である、お月さまの神秘的な出来事は、じっくり観察すると理解可能なことが多いので、まずは、お月様と仲良くしていきましょう!
ということで、久しぶりの宇宙ネタでした。
前回のもじもじトークで、「フォントかるた(後編)をやりますよ」とお伝えしましたが、今回は、臨時ニュースの「皆既月食」をお送りいたしました。
次回の「フォントかるた(後半)」では、かるたを楽しみながら、書体の見分け方を学んだり、セミナーの様子をお送りします。
【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/
1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。
その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。
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編集後記(02/01)
●福島香織「孔子を捨てた国 現代版中国残酷物語」を読んだ(2017/飛鳥新社)。わずか半世紀前の文化大革命期に徹底的に否定した儒教を、今は共産党中国の根本思想のように持ち上げる滑稽さには呆れ果てる。為政者の権力闘争のたびに、価値観も善悪もひっくり返る国家に、信じられるものは何もない。
実は中国人はとうに孔子を捨てている。昨今の儒教ブームは政治現象に過ぎない。建前と現実は乖離している国で、保身のため政権のスローガンに合わせた口パクに過ぎない。もはや「儒教を文化のベースに持っている中国」という認識は間違いだ。日本人的な甘ったるい善意や真心は通用しなくなっているのだ。
中国とは個人レベルでは通じることもあるが、国家レベルとなると恫喝、挑発、牽制によって日本の油断を突く「厚黒(腹黒で図太く生き抜く)」そのものだ。この本では、中国の社会システムの残酷さ、政治の残酷さ、近代史の残酷さを具体的に描いている。中国に生まれなくてよかったと、心底思うのであった。
他人が信じられない中国人にとって最も頼りになるのが身内、血族である。ところが、一人っ子政策という愚かな人口抑制政策によって、この伝統的家族観に歪みが出てきた。少子高齢化が進み、子供が成人したときに支えなければならない家族の数が増え、その責任と義務のプレッシャーが重くのしかかる。
バブル華やかだった頃に働き盛りだった親から、分不相応な贅沢を許されて育った一人っ子が、いざ就職して自立しようとすると、経済は急減速で、自分が望むような条件の就職先がない。忍耐や努力を知らない彼らは、開き直って堂々と親のすねを囓り続け、拒否すれば時に暴力をふるい、殺人も犯す。
いくつかの省ではパラサイト禁止法(老年保護法)なるものの整備が進んでいる。老親が子供のすね囓りを拒否する権利の法的根拠となるって、笑えない話だ。一族・血族の強いしがらみのなかで迎えた少子高齢化問題って相当に残酷だ。一方、日本は家族意識が淡白化しているが、そう悪いことではないんだな。
一人っ子政策の結果、中国の少子高齢化の歪を急速に拡大した。60歳以上の高齢者人口はすでに2.2億人を超え、人口の16.1%を占める。その高齢者のうち要介護者は既に4000万人超である。農村に取り残された老人に記憶障害や認知症が増えているのは、事実上の息子、娘たちの「遺棄」による孤独が原因だ。
「国連推計では2050年には中国で60歳以上が人口の3割を超える。中国の高齢化問題はまだまだ始まったばかり、『孝』を至上とした儒教発祥の地で、老人がこんなに虐げられる残酷な社会が待ち受けているとは、誰が想像しただろう」一人っ子政策という世界史上稀に見る大愚策のツケがジワジワと。 (柴田)
福島香織「孔子を捨てた国 現代版中国残酷物語」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B06XHMTN6Q/dgcrcom-22/
●皆既月食。関口さんの画像がとてもきれい。
アラームまでセットしていたのに、体調不良でダウン。次は2018年7月28日。大阪だと早朝4:30〜6:13(最後は見られない)。その次は2021年5月26日の20:09〜20:28。
/大阪マラソン続き。本番でも「GARMIN ForeAthlete 35J」とApple Watchを併用した。どちらもオートポーズ機能は止めて、ラップタイムや距離、トータル時間、現在時間などの目安として。
「目安として」と書いたのには理由があって、道路上の距離表示と、ウォッチが知らせる距離が離れていくから。最終的には1kmほど余分に走っていたことになった。 (hammer.mule)
皆既月食
https://www.nao.ac.jp/astro/feature/lunar-eclipse20180131/
プレゼント「グローバルWebサイト&アプリのススメ」
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