最初資料を当たって書こうかと思っていたのだが、さすがに元ネタを忘れそうなので、防備録代わりに書いておくことにする。
映画などのエンディングでも、お国柄を感じると思ったことはないだろうか。
その思いを強くしたのは、テレビアニメやその映画化でお馴染みの「フランダースの犬」が、ハリウッドで実写映画化され、そのストーリーを知ったときである。
ネタばれ承知で原作のエンディングを書いてしまうが、子供心に主人公ネロと愛犬パトラッシュの死に、当時はひどくショックと理不尽さを覚えたものだ。とはいえ、いくら子供心にショックでも、原作を改ざんして「ネロもパトラッシュも死ななかった事」にしてしまうのはまずいだろう。
しかも嫌らしいことに上映国に合わせて、しっかりハッピーエンド版とバットエンド版の二つが用意されているらしい。
さらに皮肉なことに(私は見てないものの)このハッピーエンド版、エンディングに向けてきちんと構成されていて、それはそれで良い映画になっているらしいのが困ったところである。
この何が何でもハッピーエンドというのは、ヤンキーのノリなのか、「フランダースの犬」のように対象年齢が低い話ならまだ分かるものの、「ディープブルー」(今やっているドキュメンタリー映画ではなく、人工的に知能を強化された鮫によるパニックホラーものの方)や「トゥルー・ライズ」のエンディングともなると、思わず「おいおいそれでハッピーエンドはないだろう」とつっこみを入れたくなってしまうのは、私だけではないだろう。
特に「ディープブルー」では、主人公のいた海洋研究所は建物ごと全滅、ヒロインは死亡と、惨憺たる幕切れなのにもかかわらず、生き残った主人公のナイスガイと人の良さそうな黒人のコック2人で、足を海にひたしてばしゃばしゃやりながら「今回はなかなかハードな戦いだった(意訳)」とにこやかに談笑する下りにいたっては、ここまでやられてしまうと逆に妙な爽快感を共感してしまうぐらいである。
逆にロシアの映画を見ると、どうも連中は悲劇が好きなようで、記憶にある数少ないロシア映画でハッピーエンディングの話を見たことがない。
なにせ、あの「チェブラーシュカ」でさえ、ストーリーはともかく挿入される曲は、どれももの悲しいメロディのものばかりというお国柄の国である。
一見コメディー風な演出の「鬼戦車T-34」は、第二次世界大戦下、ナチス・ドイツの収容所に捕らえられていたソ連軍捕虜たちが、標的用に使われるはずのソ連T-34戦車を奪取して脱走し、敵陣を突破するというストーリー。
前半は右往左往するドイツ兵を、奪った戦車で蹴散らしながら脱走するという話で「おっ、珍しくロシアで痛快な話が」と思っていると、エンディングで衝撃を受けるという罠が待っている。
案外救いのないストーリーで、有名なゲーム「DRAG-ON DRAGOON」あたりを持って行くと、売れるのではないだろうかと思うくらいである。
そういいつつも、私も結構アイデンティティはロシア人に近いものがあるのかも知れない。少々ひねくれているせいかもしれないが、ゲーム「フロントミッション」や「ダブルキャスト」で、わざわざバットエンディングを見に行ったのは内緒の話である。
【福間晴耕/デザイナー】
フリーランスのCG及びテクニカルライター/フォトグラファー/Webデザイナー
http://fukuma.way-nifty.com/
HOBBY:Computerによるアニメーションと絵描き、写真(主にモノクローム)を撮ることと見ること(あと暗室作業も好きです)。おいしい酒(主に日本酒)を飲みおいしい食事をすること。もう仕事ではなくなったので、インテリアを見たりするのも好きかもしれない。