終戦時、大陸に取り残された日本人たちは、迫り来るソ連軍に追われる形で必死の思いで日本を目指した。しかし、戦後の混乱の中、生きて帰るだけでも大変な事だった。ここら辺の話は小説「流れる星は生きている」などに詳しい。
ところで、終戦時の引き上げのエピソードをいくつか読んで、とくに印象に残ったことの一つが、生きて日本に帰るためにどうやったかということだ。
大抵は「流れる星は生きている」のように、筆舌に尽くしがたい苦労を重ねて帰国するのだが、比較的スムーズに無事に帰国できたケースで印象的な二つのエピソードを見たことがある。
一つ目は、入植時から現地の中国人と信頼関係を構築し、戦後はそれに助けられる形で、現地の中国人コミュニティーの人脈にそって送り届けられるように、全員無事に帰国した開拓団の話である。
そしてもう一つは、まったく対照的に、生き残るためならどんなことでもしようと割り切って、文字通りそれを冷徹に実戦した人たちである。
ある時は泊めてくれた家の人々を殺害し食料やお金を奪い、またある時は旅券を偽造したり、奪った金を握らせて女性や子供を優先して乗せる帰国便に割り込んだりして、これまた全員無事に帰国するのである。
景気も悪くなり、これからますます大変な時代が来ると言われている。また、首都圏大地震が来るといわれて久しい。生き残るために必死に努力しなくてはいけなくなったとき、あなたならどちらの方法を選ぶだろうか。
【福間晴耕/デザイナー】
フリーランスのCG及びテクニカルライター/フォトグラファー/Webデザイナー
http://fukuma.way-nifty.com/
HOBBY:Computerによるアニメーションと絵描き、写真(主にモノクローム)を撮ることと見ること(あと暗室作業も好きです)。おいしい酒(主に日本酒)を飲みおいしい食事をすること。もう仕事ではなくなったので、インテリアを見たりするのも好きかもしれない。